Fate/Grand Order たっちゃんがグランドオーダーに挑むようです 作:這い寄る影
カール・サンドバーグ
一節 「合流・金塊ビンタ・再建任務」
今回のレイシフトは全てが予定道理だった。
サモライザーの投入もあって団体行動で目立つこともない。偽装礼装のお陰で若者三名程度となっているし。
衣類もあわされている。目立つ要因がないと言えた。
レイシフト先は小さな島の港町だった。
だが活気は薄い、人が町の規模に対し純粋に少なすぎるのだ。
「人が少ないですね」
「ええ、老人と子供にやる気のなさそうな若者だけ・・・ね」
「まぁ一応聞き込んでみよう」
兎にも角にも情報収集だ。
第一、第二のように切羽詰まっているわけでもない。
というか出だしからして難度がおかしかったのは言うまでもないし。
第一では殺傷特化、メガテン世界巡礼済みのジャンヌ・オルタとかいうメガテン&DMCの準主人公とかいう怪物が相手だったし。
第二では人類悪と対峙である、手札と手駒がそろってなければ圧殺されていた。
そういう緊急事態もあって一致団結、現地サーヴァントたちがそうなっていたから。政治の中枢核に食い込むのはさほど難しいことではなかった。
だが今回は違う、いや忙しいのは事実であるが。
接触する中枢核となる人物がいないのだ。
神代回帰による大陸の分断及び小島化によって行政は動いていないに等しいゆえにである。
だからこそ中枢核なんてものないし、地道に情報収集して海上の移動手段を確保するのが第一目標と言えた。
というわけで街中で情報収集と海上移動のための足、すなわち船の購入の為に街中にでる。
「皆、アトランティスに行っちまったよ」
「アトランティス?」
聞き込みの結果、町に住む漁師の老人はそう言って。
達哉が呆然とするの無理はない。
第一にアトランティスとカリブ海がどう関係しているかさえも分からなかった。
「アトランティスって地理的にも魔術的にも存在否定されてるわよねぇ」
「そうですね、痕跡が一切ないことから、各種学問からも全否定です」
オルガマリーの疑問にマシュも同意する。
アトランティスは表でも裏でも存在しないという証明が成り立っているのである。
ギリシャ神話の痕跡が魔術世界でも残っているというのにアトランティスだけは一切残っていないのだ。
海中調査だって裏表の両方でしている、つまり表でも裏でも架空の大陸なのだ。
第一、カリブ海とは絣もしない地域である。
行ってしまえば達哉の世界でも、この世界でも架空の大陸でしかない
そりゃ混乱するのも訳ないわけで。
「アトランティスに行けば不死が与えられる、食うことに困ることもねぇらしい、娯楽も腐る程あるようだ」
「「「・・・」」」
アトランティスに超技術はつきものだが不死なんぞ聞いたことがない。
三人はそろって顔をひきつらせた。
噂結界による、曲解されたアトランティスが具象化しているのである。
道理で資料にあたはまらぬはずだ。
道理で海流が異様なはずだ
「だから多くの若者はアトランティスを目指して帰って来なかったよ」
「そう・・・ですか」
特異点のサーチ結果、中央付近の海流は特に異様なまでに乱れていた。
一つの大渦潮を形成し、雲が竜巻のようにうなりを上げていたから。
それでも自分を取り巻く環境から脱却したい類の人種や生活基盤を持たぬあるいは失った若者たちはアトランティスを信じ目指した。
そこに幸運があるのだと信じて。
中には年老いた家族さえ捨て去っていく者までいるという。
それに絶句したようにマシュは呟き。
オルガマリーと達哉は悲痛の表情を浮かべるほかなかった。
古今東西家族問題とは重度の心理的病理でもある。介護疲れなどがその代表格であろう。
今のご時世、健忘症、認知症、医療の発展により老人が生きてしまい平均寿命の延びなどで引き起る共倒れを外を知らないマシュは実感できていない。
オルガマリーと達哉は外を生きていたのだからそういう類の話はよく聞く話だった。
だからこの時代では普通なのだ。
そういった病魔に蝕まれた老人をどっかに捨て去るなど、吐いて捨てるほどある。
日本で代表するなら姥捨て山が代表格である。
生きることすら難しい時代のやむを得ない知恵というやつだ。
老衰し役に立たぬ人間は切り捨てられる、精神疾患で気狂った人間は屠殺される。
現代では批判されてしかるべき事柄だが昔は生きるための知恵だった。老い先短く子供もなせぬ老人よりも若く子を残せる若者が優先されるのは当たり前の現実なのだから。
そして老人に礼を言いつつ金貨をチップ代わりに数枚手渡し。
次に行くことにする。
目指すは酒場。この時代、情報の坩堝といえば酒場なのだ。
働き手が一斉に集まる場所なのだから当たり前問いも言える。
されど、この時間帯昼の真っただ中。皆仕事に出ているのではと思う方々もいらっしゃるだろうかもしれないが。
なにせ海流が荒れているのである、一流どころ以外は酒場に集まっているし。
その一流どころもアトランティスを目指して場を離れているのは聞いている。
残っている若者共のたまり場も教えてもらっていた。
そこを目指すのは道理とも言えた。
そこで噂のド具合を確かめるのだ。
なぜかっていえば。間違いなく老人との会話で噂結界が全域に張られていることを確信したからである。
さらに言えば一度アトランティスに出向いて戻ってきた一団が屯っているらしいので、その話も押さえておきたい。
船大工がいればさらに最高だ。
船の調達もうまくいくかもしれないのだ。
行かないという選択肢はなかった。
故に大通りに戻りその酒場を目指す一行だったのだが。
「あっ、やっぱりきてたのね!!こっちよ~」
そして偶然というかすでに投入され、何やら買い物でもしていたのかパンやワインが入った紙袋を抱えていたエリザベートとばったり出会う。
第一、第二に前の特異点の事もあって、内心またかよと三人は思いつつも。
なんだかんだ言って重要な情報握っているため無下にはできない。
「ハァイ、エリザ、あの騒動ぶりね。こっちでも主要な情報抑えたの?」
「うーん、まぁ抑えたと言えば抑えたかなぁ、フェスの後すぐにこっちに来て騒動に巻き込まれたわけだし」
オルガマリーはあいさつしつつ、主要情報を抑えたのかと聞くと。
エリザベート曰くフェス終了後、即座にこの特異点に召喚されたらしい。
「クロヒーも召喚されていたから、今は黒髭海賊団として活動中よ」
「・・・海賊ということは、略奪行為とかしたのか?」
「先輩、この時期の海賊は国同士との代理戦争および、航路破壊などを代行する一種の傭兵的な存在です」
「そうなのか? 悪い疑って」
この時期の海賊と言えば確かに略奪は行うがそれは所属する他国に対してへの攻撃としてだ。
いわゆる交通妨害、国との代理戦争。
現代風にいうならばPMCによる代理戦闘の様なものだ。
だから海賊と言えば略奪だけではなく自分のシマの防衛だって行う。
ヤクザとPMCが混ざったかのような存在なのだ。
「っていうか、ティーチも来ているのか?」
「あんたたちが帰ってすぐに、意識が落ちて気づけば二人そろってここにきてたのよ。かれこれ二か月前になるかしら」
「ちょっとまて。俺たちからすればあのフェスは二週間前だぞ」
「タツヤ、ここは特異点、しかも外は焼却中で人理やら時間軸やらが無茶苦茶だからね、それくらいズレていてもおかしくはないのよ」
「あーうん、納得した」
「それなら良いわ、話し進めても」
「「「はい良いです」」」
「じゃ現状から話すわね、と言っても落ち着けるところで話しましょ」
「いや俺たち●●酒場を目指しているんだが」
「ああ、なおさらちょうどいいわね、そこいま私たちの拠点だから」
「「「そーなの?!」」」
「そうよ、いろいろ派手にやったから、酒場買い取って拠点にしているのよ」
なんと目指していた酒場はエリザベートたちが拠点にしている場所だったらしい。
であるなら話は早いとばかりに4人は酒場へと赴いた。
「・・・・なぁ」
「言わないでください!! 先輩、お願いだからその言わないで・・・」
だがそこで襲い掛かる現実はマシュの心情を圧殺しようとしていた。
なぜならひたすらに酒に管を巻くイアソン、アタランテなんて誰が見たいだろうか?
加えて妙に店長姿が板についたドレイク(女)などなどだ。
歴史家たちが見れば発狂もんだろう。
というかドレイクについては明確に男として伝わっているのに女でしたなんて通るはずもない。
「もうアーサー王が女だったって時点で流しなさいよマシュ」
「所長のいう通りだ。流したほうがいいぞ」
もう歴史家たちの証言が当てにならないことはすでに実証済みであり。
いい加減流せと二人は言うものの、こうも言い伝えや資料と違うと歴女のマシュとしては泣きたくなるものがある。
故に流せだ。
これから先、歴史書道理に偉人が書かれている保証なんてどこにもないのだから。
「達哉氏、オルガマリー氏、マシュ氏、こっちですぞ」
「ティーチ」
店長兼マスターをやっているティーチが三人を見るや否や、こっちだと手招きをしつつ。
カウンター席に座るように促す。
「折角ですからな、何か飲むと良いですぞ。一通り酒はそろっております故な」
「今は仕事中よティーチ、それより状況を教えてほしいのだけれど・・・」
「おっと拙者としたことが失敬失敬。主要メンバーを集めますからな、ちょっと待ってくだされ」
ティーチに何か酒でも飲むことを進められるが。
今の時間帯に飲むものではないとオルガマリーが代表して拒否。
それもそうかとティーチは納得し、店の前に定休日と看板を出して誰も入ってこないようにする。
そして大きめの丸テーブルに主要人物を集めた。
カルデア三人組は無論の事、アルゴノーツ代表としてアタランテ、ドレイク船団からは無論の事フランシス・ドレイクだ。
さらには女海賊として名を馳せたアン・ボニーにメアリー・リード。黒髭海賊団からは無論の事ティーチである。
ヘクトールは自棄酒しているイアソンをフォローするのに精いっぱいだがそうそうたるメンツだ。
名無しの部下も含めればさらに膨れ上がるらしいのだが。
他のメンツは船の修理やその資金稼ぎに追われておりこの場にはいなかったりする。
「ねぇ僕はビースト討伐歴のあるメンバーが来るって聞いていたけれど三人だけ?」
メアリーがそう指摘する。
ビーストは元来、一人に対し七騎の冠位が投入される大厄災である。
故に最低でも十人前後はサーヴァントの援軍が来ると思っていたら三人だけ。
無論彼らを舐めているわけではない三人とも一流だというのはわかる。
特に周防達哉は脅威だと生物的恐怖が襲い掛かってくる。
だがそれでもビーストという大厄災には不足が過ぎるのはわかるのだ。
「ビーストの件は運が良かっただけ。相手の心理状態に付け込んで鎮圧、もう一匹はタツヤの言い分によると外部介入があったから討伐できただけだし全員が気張った結果よ」
「その全員がどこにいるか僕は知りたいわけ。戦力の把握はしておきたい」
「ここに全員いるわ」
ビーストの件は運がよかった。相性が良かったのと口には出さないがニャルラトホテプかフィレモンの介入があったからどうにかなった。
無論皆の奮戦ががなければそれが在っても勝てなかった相手なのは無論である。
そして戦力もここにいるとベルトの横腰に装着されたハンディカムPCを中指で小突いて指さす。
つまり全員サモライザーの中という事を説明する。
「未来は発展してるわね~」
アンが気が抜けたように言うが。
サモライザーは科学技術と魔術技術の一品ものだ。
現存するのがすべてとなっている。ダヴィンチでさえ現状複製不可能だ。
なにせカルデアの霊基保存システムを小型化し最適化しているのだから当たり前である。
「現状9名、順次最適に投入可能よ、いつでもね」
カルデアのサーヴァントは順次いつでも最適に投入可能。
ティーチから事前にカルデアの戦力を聞いていた者たちはそれで納得する。
「それはたのもしいねぇ」
ドレイクも納得している様子だった。
特異点化の影響でサーヴァントレベルまで強化されているとはいえ。
サーヴァントの理不尽さは見てきている。
失った戦力を補充して余る戦力だ。
しかし。
「だがポセイドン相手ではな・・・」
第一特異点の事もばっちり記憶に残っているアタランテが気まずそうに敵の首魁の存在を口にする。
ポセイドン、海神だ。
ゼウスの次にアレな事で有名である。
「神霊でゼウスに次ぐ実力者だったか・・・」
達哉がぼやくように言う。
とすると対界宝具ぐらい持ち合わせているかもしれないからだ。
と言ってもそこはギリシャ神話、ゼウスが最強というのもあればタイマンならハデスというものもいるし。
いいやヘラクレスこそ最強というものもいる。
議論は終わらず出会ってみなければわからぬが。
それでも強大な敵には違いないのは確かであるのだ。
「それでそっちの状況はどういうことになっているわけ?」
敵の戦力把握よりも今は自分たちの戦力把握のほうが先である。
それで何ができるか、何ができないのか、現状の盤上はどういった状況なのかがわかる故にだ。
「じゃ説明しますぞ」
ティーチが説明役を買って出た。
あのトンチキフェス後、ティーチとエリザベートは即座にこの特異点に放り込まれたらしい。
それでもことは性急だ。何とかアン・ボニーとメアリー・リードを聖杯探索の中で回収。
孤島で取り残されていたヘクトールを回収し、黒幕製聖杯を保持しているのがアルゴノーツだという事を突き止め。
強襲を仕掛けるものの、ものの見事にそれにドレイクを巻き込んだ挙句、謎の第三勢力の急襲により。
聖杯は謎の第三勢力というかポセイドンの手下どもに奪われ
噂が広まり状況悪化。
乾坤一擲を狙って荒れ狂う海を乗り越えアトランティスに向かうが復活したてのポセイドンと聖杯を奪った謎の双子にもうくたばって、知名度もないから英霊にも幻霊にも慣れないはずの一部関係者からは恨まれているポセイドンの巫女にいいようにされ。
大駒の戦力をつぶされた挙句、船もズタボロにされ金もないもんで。
船の修理代金捻出の為になけなしの金を出して空き家になったバーを買い取って何とか船の修理代金を稼ぐのが現状という奴だった
「つぅー訳さ」
『『『元も子もなかった!?』』』
確かにサーヴァント複数機もいれば並大抵の敵は屠れる。
それに今回はドレイク船団、黒髭海賊団、アルゴノーツの少数が集まったのだ。
魔神柱とて袋叩きにされて試合終了である。
黒髭とエリザベートが状況が状況である故に頑張ったお陰なのだが。
まさか敵の作り出した聖杯と天然ものの聖杯+噂結界の効力でポセイドンが完全復活しかけており。
さらにはマシュを幼くしたような異形の力を使う双子の手によって主戦力のヘラクレスが倒されかけ。
仕方なく撤退を選択、ひーこら言いながらなんとか安全圏まで脱出し今の島まで脱出できたが。
問題は戦力の大幅なダウンと。
「現状、アルゴー号、拙者のアン女王の復讐に黄金の鹿号をニコイチにしても中央の海流を乗り切ることは不可能ですぞ」
「それだけ海流が変則かつ激流ってことか?」
「それもありますがな、達哉氏、前哨戦で三隻ともボロボロでありましてな。どうも噂通りに進まなければ現状どうしようも無いのが現状ってわけですぞ」
普通ならどんな海流であっても三隻ニコイチすれば行ける。
だが噂結界の効力とポセイドンの海流操作のおかげで無理と来ているのだ。
「黒髭のいう事が真実ならニコイチしたうえで幻想種の素材使って生まれかわらせないといけないらしいね」
そこで幻想種の素材による補強である。
「さらに言えば噂による検問もあるから、ポセイドンに認められかつ噂を信じるものしかとおれないらしいねぇ」
「うげぇ面倒くさい」
そこでさらにとドレイクに条件を出されゲンナリ気味になるオルガマリーだが。
「噂結界のほうは大丈夫だろう」
達哉は噂結界の方の検問は大丈夫だと所感を述べた。
「どういうことです?」
「噂結界というのは何度も言うが認識の具現だ。結界が張られている時点でそういうの起きてると認識して信じているからOKという事なんだよマシュ」
「そういえばそうですね・・・にしても条件緩すぎはしませんか?」
「そういうもんなんだよ、見たろ・・・俺の世界」
「そうですね」
というわけで後は噂の検問がどういうものかチェックするだけだ。
問題はポセイドンの海流操作の方だ。
そっちは噂関係なくポセイドンが海流操作しているため。
船を強化する必要がある。
「その船の強化が問題なのよねー、単純にお金ないし」
ボニーがそうぼやく、ニコイチ修理でも金はかかる。
金がないからこんな場末で飲み屋なんかしているわけで。
「その点なら大丈夫よ、タツヤ」
「わかった」
オルガマリーの指示で持っていたジュラルミンケースを開ける。
そこにはギチギチに金塊が詰められていた。
船をニコイチ修理するくらいなら余裕の金額である。
これには海賊一同面食らった。
金持ちだなカルデアと思うほかない。
「でも船の強度を上げるには幻想種の素材が必要なんでしょう? なら周辺の島めぐりしつつ幻想種を狩って素材にしましょう」
だが修理費だけでは無論駄目である。
根本的強度が足りず中央のアトランティスに乗り込めば轟沈だ。
故に神代回帰しているため湧き出た幻想種を狩って船の強化素材にする必要がある。
「ついでに行く先々で噂をばら撒いて周辺海域の安定化も図ろう、そうすればアトランティスへの航路も落ち着くかもしれない」
達哉はついでに行く先々で噂をばら撒いて周辺海域の安定化を目指そうと提案する。
全員それに乗っかった。
今はそれしかないし、噂結界のエキスパートになりつつあるのだカルデアは。
というわけで船は三隻を合体してのニコイチ修理は明日、船大工と交渉するにしても。
「あのイアソンさんの許可は・・・」
マシュがそういいつつ指さす先ではイアソンは痛飲していた。しかも完璧に出来上がっている。
「まぁヘラクレスにカストロ&ポルクスにアスクレピオスにカイニスまで落とされたからな」
アタランテがため息を吐きつついう。同時にカルデアの面々は目を見開いた。大御所が落されまくっているのだ。
どういったやつが敵にいたのかと言いたくもなる。
「どういったやつが敵なのよ・・・ヘラクレスを落とすって・・・」
「ミァハだ」
「「「ミァハ?」」」
聞いたこともない名前だった。
「あー以前に聞いた話ですと。ポセイドンの野郎の巫女で神話には残らなかったですが、裏で暗躍していた存在とアタランテ氏からは聞きましたな」
要するに舞台裏で暗躍するタイプの人間だったらしい。
英雄たちには積極的に絡みトロイア戦争でも暗躍し破滅へと誘引させ。
それでも大勢の人間の目には当たらなかったがゆえに。
英霊にも幻霊にもならなかった生粋のトリックスター。
それが今になって出てきている。
ともすれば。
「先輩、それがニャルラトホテプの化身という事でいいですかね?」
「間違いなくそうだろうな」
貌のないスフィンクスならぬ貌のない巫女とでもいえばいいか。
なんにせよ悪辣だ。
向こうは人理維持と人類進化という大義名分掲げて好き放題できるのだから。
「あん、アンタら、あいつの知り合い・・・ッッ」
トロイア戦争で妹のカサンドラ、さらには弟のパリスを盛大に嵌めた憎き相手である。
そりゃいつもは気のいいおじさんで通しているヘクトールも若干悪対応気味だ。
「あんた、その入れ墨・・・あいつの・・・」
そして達哉の右腕を覆うニャルラトホテプに魅入られたものの証を持つ入れ墨を見るや否や。
戦闘態勢に入ろうとして。
「違うぞ、ヘクトール!! 彼はある意味この中で一番の被害者だ!!」
アタランテが慌てて止める。第一特異点の記憶バッチしだ。
達哉が被害者であり悔しいが奴のいう通り加害者であることは知っている。
「それはどういう・・・」
「・・・俺はこの世界の人間じゃない」
そして達哉の説明が始まった。
もう何度目だと気が重くなるのも当然の身の上だった。
さしものヘクトールも怒気を引き下げ気まずそうに、
「すまないねぇ、おじさんも奴にろくな目にあわされていないからさぁ、ついイキっちゃった。本当にすまん」
謝罪する。世界滅ぼしてふっ飛ばしかけて、何とか勝ちをもぎ取り贖罪で滅んだ世界に独りぼっち。
そして気づけばこの世界に落され再び世界の救済の最前線で戦わされているのだ。
同情するなというほうが無理であるし。第一ニャルラトホテプに一度は敗北としたとはいえ一度は勝利している。
それ自体が驚愕に値する行為だ。
英霊誰しもというわけではないが関われば破滅させられているのだから。第二回戦に持ち込んで勝ったというのが驚愕物なのだ。
「ところでアタランテの姉さん、どこでそれを?」
「いろいろあったんだ・・・色々な」
アタランテはヘクトールの問をはぐらかした。
まさか第一特異点でジャンヌ・オルタに呼応しカルデアの敵やっていた挙句、ジャンヌ・オルタの怒りに汚染され大暴走してましたなんて生き恥もいいところだ。
だがジャンヌ・オルタとは友人ともいえる関係だったのも事実だ。
故にアタランテはあの後が気になっていた。
「達哉すまないが、あの後彼女はどうなった?」
「俺が殺したよ」
「・・・そうか」
「だがそれでよかったと思えるよ。傲慢な物言いになるかもしれないが無理してたからな彼女」
ジャンヌ・オルタは殺し合いが好きなわけではない殺す殺されるを好むわけでもない。
手段がそれしかなかったからそうしていただけだ。
そうしなければ自分の怒りが収まらなかったからだ。
「最後は多分、解放されたと思う」
「それは・・・よかった」
アタランテの心残りだった。
ジャンヌ・オルタが自分自身すら憎む憎悪から解放されたのかを。
それを確認し彼女を殺し看取った達哉に対し不謹慎ではあるが胸を撫で下ろした。
あまりにも見てもいられない様だったから。
本音を押し殺しての冥府魔道。
皆殺しの丘の暁に一人立つという末路なんてひどすぎたからだ。
だが達哉にもそれは言える。カルデアの面々にも言える。
皆必死で耐えているのに。
一向に試練という嵐はやまず、影は耐えている彼らをド付き回しているのが現状だ。
閑話休題。
兎にも角にもここからどうするかという話である。
「うちのサーヴァントも修繕に参加させましょう、ダヴィンチ」
『だからちゃんをつけてくれ給えよ所長。それで何さ?』
「エミヤ、孔明に造船技術の知識をインストールして頂戴。サモライザー内での霊体化中なら生身の時より洗脳は簡単でしょう?」
『まぁね、プログラムを霊基にインストールすればいいだけだからね。じゃ早速やるよ、ポチッとな』
『『イワァァアアアアアアアアクゥゥゥウウウウ!?』』
「あのー拙僧、その銃見たいのから悲鳴が聞こえた気がするんでござるが」
「奇遇だねアタシもだよ・・・」
「必要な犠牲よ。気にしない気にしない」
黒髭とドレイクの苦言に優雅にオルガマリーはミルクを飲む。
まるでいつもの事のように、いやいつも通りなのだが。
ちなみにシグルドは英知の結晶、ブリュンヒルデも原初のルーンがなければ同じコースだった予定なのはオルガマリーとダヴィンチ以外知らない事柄である。
書文は日曜大工の経験があるから組み立て組に参入だ。
「じゃ、さっそく職人たちのところに行きましょうか?」
コップを机の上においてオルガマリーは優雅に微笑み号令を下す。
後に黒髭とかその他のサーヴァントは語る、悪魔ってああいう笑みするんだなぁと。
というわけで造船に店で使っている荷馬車を使って移動。
組合長に合う
「それで、嬢ちゃん。何の用だ?」
「今、ニコイチで直している船があるでしょう?」
「ああ、あるな、つっても損傷がひどすぎて治せるかどうかわからんが・・・」
「それを三日で直してほしいのよ」
「・・・何言ってやがる」
「金は出すわ」
三日で直せと言われて怪訝な表情になる組合長だが。
達哉がトランクケース一個を机の上にのせて中身を見せる。
これには組合長も度肝を抜かれた。
金塊がぎっしり詰められていたからだ。
「い、いやぁ、これほど貰えるならそりゃこっちだって三日で直したい、それは本当さ」
「これ前金よ、作業完了したら、もう一つ分を明け渡す用意があるわ」
「もう一ケースだと?」
金塊がぎっしり詰まったケースがもう一個。
そうなればこのすたれた造船所も活気づくし。
何より働いている連中に良い給料を出せる。
だがそれでも。
「三日は無理だ。人員が足りてねぇんだわ」
「それならこっちからも5名ほど出せるわ。肉体的疲労のない超人よ。夜通し使ってくれてかまわないわ」
人材まで出してくれるという、しかも夜通し使ってもつぶれない人員らしい。
そんな奴がこの世にいるのかと組合長は思うが。
オルガマリーここで脅しの為に、少しペルソナパワーと魔力を放出。
組合長をビビらせる。受ける方向に落すために。
組合長は唸るように喉を鳴らして一分ほど悩み、人材などの配置状況や受けている仕事に資材状況を考えて。
「わかった。やってみる、だが」
「二日三日程度の遅れは容認するわ。最速で三日って話だしね。ちょくちょく見に来るからよろしく。ああ、あとね従業員さんの皆様方が仕事終わりに来る酒場なら●●酒場をお勧めするわ。店長と知り合いでね。お友達価格にできるように頼み込んであげる」
「そりゃありがてぇ。じゃ悪いが早速仕事に取り掛かる」
「わかったわ、じゃとりあえず前金としてこのケースは置いていくから。よろしく頼みますわよ」
組合長は金と急ぎではあるが好待遇の条件に屈し。
オルガマリーが満足げにうなずき達哉を伴って場を後にする。
それと入れ替わりで作業の為にシグルド、ブリュンヒルデ、書文、エミヤ、孔明が入ってたが。
エミヤと孔明の眼は死んでおり、ぶつぶつとシュウゼンガンバルとか言っていて怖いありさまだった。
「なぁあんちゃん、あの二人大丈夫か?」
「ちょっといろいろあってバグっているだけだから大丈夫だ。それよりもマスターたちのオーダーもある。遠慮なく当方たちを使ってくれ。ああだがしかし、従業員に徹底して言っておいてくれ彼女、我が愛ことブリュンヒルデにセクハラはしないでほしい、当方も剣を抜かざるを得なくなる」
「お、おう」
なんか珍妙な人材が来たぞと組合長は頭抱えた。
だが金をもらっている以上は真摯に仕事はしなければならない。
海関係の仕事をしている人々は基本暴力沙汰に慣れている。
故に分かるのだ。オルガマリーを怒らせればどうなるか。
さらに言えば派遣されてきた従業員たちもやばいことを見抜いていた。
受けるべきじゃなかったかなぁと金と好待遇に眼がくらんで受けたことを今更後悔する組合長だった。
今回は敵が少なめです、ドレイク、アルゴノーツ、黒髭が合流して行う冒険譚の様な話をコンセプトにしてますので
ミァハ
出展「ハーモニー」
ニャルの化身、ギリシャ担当の一人、ポセイドンの巫女というポジを利用しポセイドンを都合のいいように操っていおり。さらには数多くのギリシャ神話事件で暗躍した。
メドゥーサやカイニスにポセイドンを嗾けたのがこいつと言えばその悪辣ぷりがわかると思う
本作では第三特異点担当として第三に出現。
以前のように言葉巧みにポセイドンを操り、民衆が噂を使わせるために暗躍
ギリシャ神話において様々な悲劇を演出した。
マシュによく似た双子。
詳細は後々で語ります、強いて言うなら貫通持ち
故に前話で幼女なためバサクレスのトラウマ刺激しまくりで本気出せない上に十二試練が貫通でぶち抜かれるため相性最悪な相手。
さらには技量や再生能力持ちであるためバサクレスでは勝つのは無理、アチャクレスで呼べば無力化できていた。
ちなみにニャルが用意したマシュ虐め用の駒である
ニャル「第一ではたっちゃん、第二ではオルガマリーときたら第三ではマシュだよぁ(ニチャア)なぁ!! ■■■■にダヴィンチ!!」
■■■■&ダヴィンチ「~~~~~~~~~ッ!!!」
あと座のギリシャ組合はポセイドンVSギリシャ神格&英霊勃発中、特にペルソナ通して見守っていたアポロンが一番ブチぎれていたりする
さてニャルのいう通り、第一が達哉、第二がオルガマリーの試練場だったのでマシュの試練場ともなります。
あと活動報告でも書きましたが精神状態がよろしくない上に体がここ最近動かなくなってきたので次もだいぶかかります。
そんな中で頑張ってアケコラボ完走しきりましたが。一言
運営さん、ロクスタもっと早く出してくださいよ、そうすれば第二特異点もっと面白く書けたのに・・・ニャル的な意味合いで。
というわけで次回もよろしくお願いします。