Fate/Grand Order たっちゃんがグランドオーダーに挑むようです   作:這い寄る影

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乗り越える困難が大きいほど大きな名誉を手にできる。
優秀な船乗りは嵐の海で評判をえた。


エピクテトス


二節 「出港準備」

船の修理は十全に進んでいた。

急ピッチでニコイチ修理が進められているが。

十全に上手く行っているのはシグルドとエミヤと書文の活躍が大きい。

無論三人とも建築系ではないが、シグルドはフェスの件と英知の結晶、エミヤは強制挿入された建築知識プログラム、書文は生前の日曜大工経験があるからである。

ブリュンヒルデも無論活躍していた。その怪力と原初のルーンで活躍できていたのである。

もっとも孔明は。

 

「し。死んでる!?」

 

酒場のテーブル席に身を預けて口から魂が抜けかけるような有り様だった。

如何に疑似サーヴァント化して体力に余裕ができたとはいえそれは人間基準であり。

サーヴァント基準としては下の下である、元から体力がない上に憑依したサーヴァントもキャスタークラスだ。

肉体労働はキツイにもほどがあるのは当然ともいえる

というわけでその様を見たマシュは驚くのは当然といえよう。

 

「あちゃー、いくら疑似サーヴァントっていっても体力貧弱で有名なエルメロイ二世には無理だったか」

 

オルガマリーは片手を額に当てつつ無理だったかと割り切っている。

ペルソナ使いになり、アマネ達の猛特訓を受けて大幅に大量増強した手前。

疑似サーヴァントなら余裕だと思ってしまっていたのだ。

 

「でもどうします? そろそろここ引き払う準備始めなきゃですよね?」

「まぁね」

 

あと一日でニコイチ修理は終わる。

イアソンはアタランテ監視下での元小型のヨットを運転させている。

これは復帰訓練だった。

黒髭たちの活躍によって事前に防がれたが人理焼却犯の駒になっていたメディア・リリィの裏切りとポセイドンとの海戦でヘラクレスらなどの自慢の船員が落されたショックですっかり自棄酒するだけのダメ親父になっていたからである。

だが彼の操舵技術はこのメンツの中でも一番だ。

使わない手はないのだ。

というわけでアタランテが心情的にも肉体的にもイアソンの尻を蹴り上げ。

それでも文句を言うイアソンに。

 

「てめぇはそんだけ仲間を誇っているくせに弔い合戦くらいする気力もねぇのか!! それにここから全部ガキどもに任せて自棄酒か!! 自分が情けねぇ!!と思わねぇのか!」

「相手はポセイドンなんだぞ!! どう勝てっていうんだよ!!」

「それ以前の問題だろうが!! 勝たなきゃいけねぇからここにいるんだよぉ、そのために呼び出されたのもわからねぇのか!! この野郎!! そんな認識修正してやらぁ!歯ァ、食い縛れぇ!! このドヘタレがぁ!!」

「オブフゥッ!?」

 

長可渾身の右ストレートが炸裂、イアソン弧を描いて空中に吹っ飛び壁に激突、ノックダウンした。

そりゃそうだ仲間をやられてやり返す気力もないどころかぐちぐち文句を言っているうえに。

抑止のサーヴァントとして呼び出されたはずなのに、メディア・リリィにいいように誘導されかけ、実質人理焼却に加担しかけるわ。

ポセイドンに勝ち目がないからって僕関係ないとばかりに自棄酒である。

そんな様を見れば我らが戦国DQN事、長可が切れないはずがないのだ。

その後さらに数発の追撃を受け完全にイアソン、気絶。

顔面がえらいことになっていた。

ナントカ達哉たちが長可をいさめて。

その場は収まった。

次の日、顔を腫らしたイアソンはしぶしぶながらに船の操舵を請け負うといった。

あそこまで言われて殴られれば然しものイアソンであっても火が付いたらしい。

というわけで溜まりに溜まったアルコールを抜くためにカルデアから送られてきたアルコール分解剤の入ったペン型注射器を首筋にお注射後。

錆を取るという目的で、小さなヨットを借りて錆落としをしているというわけである。

閑話休題。

そういうこともあって着々と出港準備は進んでいた。

 

「さて・・・・」

「大丈夫ですか孔明さん? まだ休んでいられた方が・・・・」

「そうもいっていられん状況だろう・・・、改めて状況整理と我々がすべきことを確認すべきだ」

 

のそりと起き上がりため息を吐きながら懐のシガレットケースから葉巻を取り出し。

葉巻の先端をギロチンで挟んで切り取り、もう片方を口に咥えマッチで炙り、火をつけながらそういう。

やることのおおむねは一日目で実際できていた。

だがあくまで骨子という段階で肉付け作業ができていない。

つまりこれからする行動の+面-面、戦場の摩擦が起きた場合の対処法。

敵の戦力の詳細などなどがある。

 

「まぁそれは皆が戻ってきてからの方が良いんじゃないか?」

「それもそうか・・・なら少しゆっくりさせてもらうよ」

 

達哉が急ぎすぎだというとそれもそうかと孔明はゆっくり紫煙を吐きうなずいた。

実際、この酒場は引き払いが終わりつつあり。

メンバーのほとんどがこの場にいない。

買い出しやらなんやらで出払っているからだ。

と言っても時刻は夕刻、皆が戻ってくるのにはそう時間はかからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「では改めて説明するぞ」

 

海図を広げ、孔明が説明を開始する。

 

「まず噂結界を使っての航路の安定化による、アトランティスへの道のりへの開拓だ」

 

周囲の航路を安定化させて必然的に噂で引っ張るように、アトランティスへの航路を安定化させる。

 

「それができない場合には?」

「幻想種の素材などで船を補強し強行突破する」

 

メアリーの問いに孔明はそう答えた。

周囲の海域の安定による噂の引っ張りが起きなかった場合の最終強行手段だ。

船に関しては豪華メンツがそろっているし、船自体も宝具のニコイチの様なもの。

十分勝算はあるのである。

 

「だったら最初から強行でよくなぁい?」

「エリザ君、言っておくがこの島には幻想種はいない」

「あっそうだった」

 

そんなニコイチ船であっても補強材料がなければ現状アトランティスに乗り込むのは不可能である。

だから海域の安定化ついでに無人島なども回って幻想種などの素材を回収し船を補強する必要があるのだ。

 

「だったら噂に乗る形での突入はダメですの?」

 

ボニーがそういう。

噂に乗る形でアトランティスに行けばいいじゃないかと。

だがそれに否を唱えたのは達哉だった。

 

「それはダメだ。噂に乗る形で突入した場合。アトランティスで適応されている噂が俺たちに付与される可能性が高い」

「ただでさえ不老不死とかろくでもない噂たってるもんねぇ、それらがエンチャントされたら不利になるのは私たちよ、アトランティスに行ったら黄金になりました。なんていやでしょう?」

 

達哉が噂が付与される可能性を説き。

その不老不死の中身がわかっていない以上、ミダス王のようになるのは嫌でしょうとオルガマリーが引き継いで言う。

同じギリシャ系サーヴァントは口をひきつらせた。

確かにアトランティス上陸したと同時に意識ある金塊になんて誰もなりたくないからだ。

故に現状のアトランティスへの噂に乗る形での上陸はなしである。

 

「故にこれから、アトランティス海域を中心に据えてその周辺に存在する島々をめぐり海域の安定化を目指す」

「それはわかったんだけどさ。あんなに食料やら金品買い込んでどうするきだい?」

 

ドレイクの質問に孔明は答える。

 

「交易用だ。噂を広げるには交易も抱き合わせの方が早い」

 

つまるところ交易も絡めて噂をばら撒き浸透しやすいようにするという手法である。

この時代。商人は貴重な情報源の一つだった。

故に交易も絡めたほうが噂も広まりやすい。

 

「幻想種の肉なども売っていくぞ。幸い加工できる人材はいるしな」

 

補強用の物を除いて肉などは食用に加工しうっぱらう方向で行くことになっている。

加工できる人材もいるからだ。クーフーリンとかが筆頭候補である。

 

「さらに噂を効率よく真実味を持たせるためにほかの商人の護衛業務や航路の往復も行う」

 

一回こっきりでは噂に真実味を持たせられない故に往復も行うとのことだった。

噂結界とは大衆が真実と思う事で起動する故にだ。

故に往復作業も視野に入れなければならない。

 

「そして、完了後は速攻だ。人理定礎を間違いなく悪化させる行為だからな」

「え、なんで安定させるのに。悪化するんですか?」

「マシュ、いくら安定と言っても、それは我々の都合のいいように海流を安定させることであって。時代の海流に戻すという事ではないのだよ」

「あ」

 

そう海流の安定はあくまでアトランティスに乗り込むための物。

この時代にそぐわぬ行為そのものだ。

故に、施行すればどうなるか? 簡単である。

定礎が悪化する。

噂結界事態に敵味方はないのだ。無論定礎の正常化やら悪化にも両方に作用する。

第二がすでにアレだったためすっかり、マシュの頭から抜け落ちていた。

というかフェスのアレっぷりに忘れていたといった方が良いか。

第一のジャンヌ・オルタは上手く使っていたことを思い出し。

マシュは身震いすると同時に実感する”今回も綱渡りをするがのごときギリギリをついていく”のだと。

現に達哉は難しい顔をオルガマリーは眉間に座を寄せている。

噂をぶちまけ過ぎれば第二の二の舞だ。

ギリギリのコースをついていくのが本特異点の肝となるのだ。

 

「さて憂鬱な話しはまだ続くぞ。ティーチ、君たちがアトランティスに向かおうとしたとき襲ってきたのはポセイドンなのだな?」

「ポセイドンって言っていいのか? アレ? 拙者にはどう見ても鋼の咆哮とかに出てくる超兵器にしか見えなかったござるが・・・」

「「え、なにそれ? 怖い」」

 

ポセイドンの話のはずなのにいきなり出てきたのは超兵器戦艦。

つまり科学技術の様なものだったのだ。

オルガマリーもこれには困惑。

ついでに孔明もだ。

 

「神代の資料は非常に少ない、アタランテ、イアソン、ヘクトール、ギリシャの神々ってロボだったのかね?」

「「「いいやちがうぅ!!」」」

「どういうことなのだ」

 

これには全員が困惑。

当事者たちも知ることはないだろう、なんせセファール関係で、セファールに破壊されるまでは宇宙戦艦とかロボの類だったなんて知る由もないのだ。

 

「だけどな、あの神威は本物のポセイドンだったぜ」

 

だがあれはマジモンのポセイドンだったとイアソンは証言する。

だったら本物のポセイドンなのだろうと全員が思い。ヘクトールが蓄えた顎髭をなでながら思ったことを口にした。

 

「あー、トロイの木馬がロボだったし・・・もしかしてだよ? ゼウス様達って元ロボだったりするんじゃない?」

「「「トロイの木馬がロボ!?」」」

 

カルデアマスターズ三人驚愕の事実に驚愕する。

 

「だがギリシャの神々がロボという証拠はどこにも残っていない。そこまでの超技術、幻想を纏うほどのものが現在まで残っていないのはおかしい話だ」

「孔明、抑止でなんやらかの理由で残らなかったという可能性もあるわよ」

「まぁその線も捨てきれないか。いったんこの話は置いておこう。歴史研究をしている暇はないからな」

 

そういって一端ポセイドンの事は横に置いておき。

次の敵の話に移る。

 

「ヘラクレスたちを蹂躙したという双子についてだが。心あたりはあるかね?」

「アタシはないねぇ」

「拙者もないですぞ」

「ギリシャの面々は?」

「ないな、あれほどの実力があれば英雄として名が残っているはずだ」

「第一腕と一体化している近代兵器みたいな武器はやばい感じだったというか、あれはまずい。ヘラクレスの十二試練をぶち抜いているうえに魂食らいの機能までエンチャントされているみたいだからねぇ」

「というか服装が現代でいうゴシックロリータみたいな時点で我々とは関係がない」

 

双子も全員が見覚えがないという、ただ腕と一体化している武器が超性能かつ使い手の双子もトラウマで動きが鈍っているとはいえヘラクレスを圧倒するLvなのだ。

決して油断はできぬという事である。

そしてイアソンは顔を顰めて。

 

「むしろカルデアの方が因縁あるんじゃねぇの? そこの嬢ちゃんを幼くしてたような感じでそっくりだったぞその双子」

「ええ?! 私ですか?!」

「イアソンのいう通りだったよ。瓜二つだったとオジサンも思うよ。姐さん、たしかあの双子なんて呼び合っていたっけ?」

「左腕が銃火器ほうがシメオン、右腕が刃で構成されていた方がアンドレアだったか・・・」

 

耳のいいアタランテはあの乱戦下で二人が名前で呼ぶのを聞いていた。

左腕が銃火器なほうがシメオン、右腕が刃なのがアンドレアというらしい。

男らしい名前だが列記とした少女だったとか。

問題は、マシュを幼くして瓜二つにしたかのような感じだったらしいのだが。

 

『馬鹿な!?』

 

そこで大声を上げたのがロマニである。

ダンと両手で机を叩いて立ち上がる。

 

「ロマニ・・・アンタ、なんか知っているの?」

『あ、いえ。その知ってはいますが・・・。デミサーヴァント計画の後期に生み出された子供たちです、言わばマシュの妹に値する子供たちですが。度重なる失敗とマシュの適合後に計画そのものが凍結破棄されていて。僕が知った頃には、その、もうこの世にはいないはずだ・・・。』

「そう、あとでじっくり話を聞くから、覚悟しておいてね。マシュ・・・大丈夫?」

「いえ、そのはい・・・大丈夫です」

「大丈夫じゃなさそうだぞ、ティーチ、悪いが気付けになるものを」

「了解しましたぞ」

 

まさか自分に妹のような存在がいたことを聞かされてショックだったのか顔色が降下、ふらつき、達哉がそれを支えて。

ティーチに気付けになるものを頼みつつ。

後で追及するからなとオルガマリーはロマニに釘をさしておく。

といってもだ。

 

「そういうわけだからウチ関係ないわよ」

「どうしてそう言える」

 

関係ないとオルガマリーが言い切りヘラクレスの事もあってかいらだち気味にイアソンが聞き返す。

 

「そもヘラクレスをぶっ倒せる奴作れたらデミサバ計画やらマスターによる特異点制圧なんて必要ないでしょ」

 

ヘラクレスをぶっ倒せる人材を意図的に作れたとしたら。

それはカルデア運用が根本から覆る。

だってそうすればマスターもサーヴァントも不要になるからだ。

作れなかったからこそ現状があるのだから。

 

「双子の戦力も分かったことで次はミァハだったか・・・。ニャルラトホテプの化身として。奴は何をやってきたんだ」

「「「「わからん」」」」

「ええぇ~」

 

ミァハとはどいう存在なのか、どういうことが得意なのか孔明はギリシャサーヴァントたちに問うが。

帰ってきたのは分からないという事だった。

 

「要するに嵌められて気づいて破滅段階で奴が現れて煽り散らして帰っていくから何がどこでどう嵌められたのかがわからないんだ」

「その通りだ破滅するまで決して表には出てこないんだ。まぁヒッポメネスの友人経由で事を吹き込んだらしいが」

「船に潰される瞬間、見下して嘲笑われたよ、畜生めが!!」

「とにかく他者を経由、状況を支配し操作することに長けているというのは分かった」

 

だからこそミァハはギリシャ神話に名を残していない。

他人経由で英雄の近しい者にあらぬことを吹き込み気づけば事態を悪化させているという悪辣な存在だ。

決して自分の手ではことを行わない。

あくまで本人たちが自滅するように仕組むのがミァハの手管だからだ。

 

「あと最近分かったことだが戦闘能力も十分に高いことは分かった。なんせドレイクとカイニスの二人掛かりを余裕で捌いていたからな」

 

先のポセイドン海戦。

ミァハはドレイクとカイニスを相手どった。

最もカイニスは面倒くさいとばかりに煽り散らされ頭に完全に血が上ったところをアンドレアがお遊びとばかりに斬首して終了。

ドレイクは星の開拓者のスキルを逆手に取られ行動を読み切られ、ティーチが回収してなければまずいところまで行ったのだから。

戦闘力も伊達ではないという事だろう。

 

「戦闘スタイルは?」

「曲剣の二刀流、アラビア剣術とかに近いかもしれませんな」

 

孔明の問いにティーチが答える。

これで大方の戦力把握はできた。

 

「双子の方は、別段問題あるまい」

「へぇ、なんでだ?」

 

ヘラクレスを倒した相手に問題ないと言い切る孔明にイアソンが青筋立てつつ問いただす。

 

「我らがマスターの達哉なら余裕だからだ」

「ああそういえば彼にはアレがあったな」

「アレってなんだよ、アタランテ」

「彼は時を数秒止めることができる」

「「「「はぁ?!」」」」

 

カルデアメンバーと知り合いサーヴァント以外はその理不尽能力に驚愕する。

双子は確かに強力な相手だ。

だが時間停止して首を刎ね飛ばしてしまえば問題がない。

誰も彼もジャンヌ・オルタのように極まった怪物とか、そもそもヤルダバオトのように理不尽サイズを持っているわけではないのだ。

普通のサーヴァントどころか概念防御持っていない上級サーヴァントならタイマンという条件下ではノヴァサイザーで終了である。

それが宝具ではない上に最大停止時間から調整も可能と来ている。

しかも発動に使うのは精神力と来ている。

理不尽すぎるものがあった。

というか神々の権能の様なものをほいほい使える時点でいろいろおかしいのだが。

それが悉くメタられてきた戦場が多いもんだからカルデア勢はそこまで理不尽に感じていなかった。

閑話休題

 

「それ以外にも、書文、宗矩、クーフーリン、シグルド、ブリュンヒルデ、テクスチャごと空間をえぐることのできるオルガマリー所長がいるんだ。君たちもいる、完全に殺しきれる布陣ではある。あとはポセイドンが何をしてくるかだが、君たちと交戦したときは乗り込んできただけで。戦いはミァハや双子にまかせっきりだったのだな?」

「ああ、そうね、ポセイドンはステージ提供して高みの見物って感じだったわ」

「うまいこと手札を伏せられたな・・・とりあえずロボである以上乗り込み口が存在するはずだ。海戦でのりこんで「いいやそれはしなくていいじゃないか?」どういうことだね? 達哉」

 

ここはポセイドンに横付けして直接乗り込むかと考える孔明だが。

達哉はそれはしなくていいじゃないかという。

 

「なにか案があるんですか? 先輩」

「いや案も何も、エミヤの固有結界に取り込んで座礁させてしまえばいいじゃないか」

「いやまて!! マスター、いくら何でもそれは無茶だ」

 

相手が海中戦闘を得意としているのは目に見えているという事。

なら相手を陸に揚げてしまえばいいと達哉は言う。

その方法がエミヤの固有結界に取り込んでの座礁である。

それは無理だとエミヤは叫ぶが。

 

「あっそれいいかも。令呪6画とカルデアからの魔力供給+石割機使えば広範囲展開も可能でしょ」

「しかし、相手はポセイドン、対界宝具くらい持っていそうなもんだが」

「そこはリソースのごり押しで、崩された端から石割機使って魔力供給して再展開すりゃ問題ないわ。どうせ時間との勝負だし」

 

エミヤの必死の説得にもオルガマリーはどこ吹く風で言い切った

 

(持ってくれよ私の魔術回路)

 

故にエミヤは死んだ魚の様な目で自身の腕を見ながら内心ぼやく。

 

「相手の手札がこれ以上わからない以上、こんなところだろう。これを基本方針に動いていこうと思うが異存はあるかね?」

 

孔明の問いに全員が異存はないと答えた。

現にこれ以上の案の出しようがないからである。

これ以降は今会議で結論付けられたものを高度な柔軟性を保ちつつ臨機応変していくほかないわけだ。

 

 

「出来上がったぜぇ」

 

造船所は突貫作業でふらふらな従業員であふれかえっていた。

無理もない金塊ちらつかせてフル稼働させたのだから当たり前と言えよう。

 

「感謝するわ、これが約束の報酬よ」

「おいおい、二倍になってるぜ、お嬢ちゃん」

「実際のところ三日でものになるとは思わなかったからね、それに」

 

オルガマリーは金塊の入ったケースを机の上に置き組合長に渡しつつ。

横目でちらりと見ると大量の荷物を運びこむのを職員が手伝っていた。

 

「いい人たちみたいだし、長い付き合いはしたいの、あと貸し借り話にしたくないから色を付けたの」

 

単純にいい人たちみたいなのと荷入れを手伝ってくれるという事。

あとは三日は無理させすぎたという借りをなかったことにするために報酬に色を付けたのだ。

この世で只ほど高いものはないし、金や物が介在しない貸し借り程重いものはない。

だからそういったものはちゃっちゃと金か物で精算しておくべきという事をよく知っている。

そういう世界で生きてきたから政界は魑魅魍魎の巣箱であることは痛感している。

一方そのころ達哉は、カルデアから送られてきた医療品をチェックしていた。

ペルソナ使いだからと言ってスキルだよりだけではもしもがあった場合には笑えないからであるし、今回は長旅になるからだ。

だから達哉もマシュもオルガマリーも念のため各種病原菌対策用のナノマシンを体に入れているし。

送られてきた医療キット箱の中には各種鎮静剤やら医療キットが包まれ。

特にこの時代の問題である長期間の船旅で問題となる各種ビタミン不足からの病に対応すべく各種サプリメントが多く入っていた。

これは達哉たちだけの分ではない、ドレイクとその部下たちにも配る量だ。

ドレイクとその船員たちは生身だ病気になったら目も当てられない。

この時代が特異点化しているのはなにもアトランティスだけではなくドレイクたちも巻き込まれているというのが問題なのである。

故に彼女の身も最優先事項だった。

 

「加えてか」

 

達哉はペン型注射器を一個手に取る。

数量こそ少ないが送られてきたもののひとつだ。

内容物はコンバットドラッグ、サーヴァントにも使える優れものだった。

効果も意識の高揚だけではなく、代謝を活性化させ肉体の傷の治癒すら可能な優れもの。

サーヴァントにも適用可能なそれに改良されているがこの世界の米軍の特殊作戦群では正式採用されているとか。

無論、まだ表に出せない劇物とのことだ。

一度使えば治した傷の分だけ寿命が縮むそんな代物である。

それを一度も使う事の無いように達哉は祈りつつケースへと戻し次の部屋へ行く。

 

「ん? 達哉もチェックかね?」

「孔明も?」

「ああ、今じゃこうでもしないとすっかり体落ち着かん、加えて運用が海上だ入念にチェックせねばな」

 

孔明は自身のDSRー50とガリルACE52をチェックしていた。

周辺海域には海賊も出没しているとのことだ。

使うときは必ず来る故に入念にチェックしているのだ。

 

「達哉は刀使いなはずだが・・・」

「一応弾薬の確認だ。所長もマシュも積み込みで忙しいからな」

「そういう事か」

 

達哉は刀使いであるしペルソナ使いである遠距離中距離はペルソナで、近距離は自前の孫六でカバーできる。

故にここに来たのは手配した弾薬がちゃんとリスト通りにあるかの確認だった。

手慣れた手つきで達哉はウェポンボックスを開けて中の弾薬を数える。

孔明から見ても手慣れた様子で素早く数を数えリストの帳面に丸印を書き込んでいく。

 

「随分手慣れているようだが?」

「ん、バイクパーツの確認の応用だよ、趣味でバイク改造やっていたんだ俺」

「バイクかね」

「・・・なんかあったのか?」

「いやね、ロードなんて仕事をしていると、見栄を張らなければならん、車一つで舐められる世界だからな」

 

車のグレード一つで下に見られる。

いつの世も何処も一緒であるがゆえに孔明にとっては頭痛の種だった。

 

「いい車を買っても、こう荒事の多い世界だ。毎回大破するから出費がな」

「それは、ご愁傷さまです」

「そういった点ではムジークの御曹司が羨ましいよ、なんせ専用のカーレースチーム持ちだ。もっとも全部ひとりでやってるらしいが」

「それは何といえばいいか・・・」

「そうだな・・・むっ、こんな時間だ。私は所長とドレイク船長とイアソンと航路の最終確認をしてくる、達哉はどうする?」

「俺は見回りですかね、浅学なもんで。戦闘以外は役立てそうにありませんし」

 

その時である、振動、

それと同時に着水音。

積み込みが終わり、船が海に出されたのだろう。

積み込み終了と同時に海に出すとオルガマリーが言っていたから達哉はそう思った。

進水式はない、そんなまったりとしている状況でもない。

とりあえず格納区画を出て甲板へ、時間的に夜の出航と相成ったが風向きに問題はなく。

帆が張られていた、帆先ではメアリーが単眼鏡をのぞき周囲の確認中だった。

 

「こうゆっくり出るのは初めてだな」

「なんだい坊主、アンタ、いつも慌ただしく出てたのかい?」

「うぉ!? 船長びっくりさせないでくださいよ」

 

日輪丸に乗り込んだ時を思い出しつつ黄昏ているといきなり後ろから声を掛けられ。

達哉は肩を跳ね上げる。声の主はドレイクだった。

こう邪気がないから気づきようがないのだ。戦闘なら話は別だが。

 

「そうまでびっくりするなよ、折角の船出なんだ、で坊主も船に乗ったことがあるのかい?」

「前に説明した通り、ニャルラトホテプの件で、これより小さい船に乗ってテロリストの乗った客船に襲撃しかけたんですよ」

「ハハハッ、なんだいアンタも立派な海賊行為してるじゃないかい!!」

「面目ない」

「なんで謝るのさ。乗り込んだ船には敵だけ、その敵も確かに奇麗な祈りを持っていたかもしれないがねぇ、やってることが世界の滅亡だ、故に懸かるは世界の命運、立派だよ」

 

確かに幸せになりたいとか願ってああいうことを天誅軍はしたのかもしれないが。

いくら祈りが奇麗であっても、やってることはただのテロかクーデター、さらには世界の命運がかかっているという状況である。

故によく成し遂げたとドレイクは達哉の肩を叩いて励ました。

 

「それに念願の船出だ。景気よく行かなきゃ損だろ?」

 

右目でウィンクをしつつドレイクは達哉をそう諭す。

達哉はそれに頷いた。

 

「さぁ野郎ども。挑むは海神と悪神だぁ、気合入れていくぞぉ!!」

 

ドレイクの号令と共に歓声が上がり船が海へと出た。

海神に挑むため、楽園に到達するための旅が始まる。

 

 

 

 




ハーモニー読んでウーロン茶飲みまくってたら頭がフル回転始めたので早めに仕上がりました。
今回は戦術、戦略 船出回

それとオルガマリーのマリスビリーの株が底を割る会でした。
原作でもありそうなもんな話なんですよね、マシュの黒い姉妹やら兄弟関係。
あと時間関係とかはマシュもロマニとダヴィンチとグルになって隠しているのでまだ発覚はしません。

あとギリシャ神話勢の死にざまにぷぎゃってくるニャル、これはうざい。
特にカイニスには大爆笑してもよう、原点の死にざまからしてアレでしたしね彼女。
恰好の餌食となりました。
オジサンはライバルに家族全員ニャルられたからね。
そりゃ多くのギリシャ勢からニャルは恨まれてます。本人はそれでも嘲笑ってますが。

今回は異様になんか頭が動いたので速攻で書き上げましたが。
次回は間違いなく遅くなります、ご了承ください。



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