Fate/Grand Order たっちゃんがグランドオーダーに挑むようです   作:這い寄る影

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明日が”明るい日”と誰が決めた?

それが在る限り、人は不安から逃れられん。

安らぎは遠きあの日にこそあると思わないかね?


ペルソナ2罪より抜粋



第一特異点に向けてのインターバル
01 ベルベットルーム


気付けば……オルガマリーはどこぞとも知れぬ場所に場所に立っていた。

真鍮製の螺旋階段が壁際に配置された鳥かごのような場所に・・・

 

「ここは・・・」

 

魔術回路が起動しない。

刻印さえも機能不全だ。

寧ろ

 

「不味い」

 

神代のレベルで神秘にあふれていた。

起動しようとすれば情報に磨り潰される。

 

「なんなのよぉ・・・」

 

左手で包むように右手を包む。

彼の掌の温もりが残っていた。

絶望的状況で。

手段はあったとはいえ下手をしたら自分まで巻き込まれかねない状況で。

手を伸ばしてくれた青年の手の温もりを……。

 

その時である

 

 

『汝の名を問う』

 

 

声。

それは宗厳な予言者の男のような声であり老人の様なものであり。

それはオペラを謳いあげる名女優のような美しい声であり子供に物語を聞かせるような優しい老婆の声である。

つまり一定していない。

神秘に触れているオルガマリーにはそれが理解できた。

不安定に輝く恐ろしき者がいると。

 

「誰って私は・・・」

 

事はシンプルだ。

事前情報を達哉から聞かされている。

故にこれがペルソナ様という者だろう。

彼がペルソナを得た経緯は聞かされている。

 

故にこの場から脱出するには自分の名を言えばいい。

 

だが

 

 

「あれ? 私は誰だっけ??」

 

混濁する情報、削られる記憶。

自分が自分を理解できない。

自分の名を言えばいいだけなのに。

それができない。

 

『汝の名を問う』

 

声は大きく荘厳になっていく。

言えなければどうなるかまでは聞いていない。

達哉も含めてあの場所に居た全員が言えていたから。

故に神秘を知るものとして恐怖が倍増する。

存在を抹消されるのではないかと、それが可能な力を持つ者であることがオルガマリーには理解できているから。

最もそれは見当違いなのだが、知らなければそう思うことも無理のない話である。

 

『汝の名を問う』

 

死にたくない死にたくない死にたくないッ!!

やっと誰かに認めてもらって。友達もできて。あの手に還せてもいない。

だからオルガマリーは走馬燈を感じて。

それでもなお自分の名を探す。

でもそれを、心を奮い立たせるような思い出は無くて―――――削られて――――――

 

『――――――――!!』

 

自分が焼却されそうになった時の光景が脳裏にフラッシュバックして。

手を伸ばす存在が自分の名を叫ぶ。付き合いも短くて自分よりも重い物を背負って行っても。

それでもと手を伸ばし救ってくれた。助けてくれた。青年の姿と声に応えるために。

 

『汝の名を問う』

 

最後通告。

身体が分解されていく。それでもカルデアスに放り込まれるよりはマシなんだろうなぁと思い泣きながら。

彼の伸ばした手と自身の生存欲求を無駄にするわけにはいかないと。

彼が叫んでくれた自身の名を叫ぶ。

 

 

「私は――――」

 

 

声が響く

 

「オルガマリー・アニムスフィアよ!!」

 

自分は此処にいるのだと叫ぶように声の主に、フィレモンに伝える。

 

刹那ナニカが繋がりソレの使い方を知り。

意識が強制的に浮上した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

意識が揺らぐ。揺蕩う。

引っ張られる感触が達哉の掌を包み込んだ。

銀髪の紺衣の美女が微笑みかけてくる。

落ちる引っ張られる飛翔する。

そんな奇妙な感じを感じて・・・。

 

気付けば、そこは青一色の部屋の中だった。

 

「ここはベルベットルームなのか?」

 

ペルソナ使いとしては慣れ親しんだ光景ではあるけれど。

内装が違っていった。

 

ガタンゴンと線路と車輪が擦れて走る音がする。

そこは車両一両を貸し切って丸々一つの部屋として機能させたような物。

つまりVIP専用の個室車両に見えてる。

嘗て達哉が訪れていた。ベルベットルームは劇場の舞台上みたいなところだったが。

それとは違っていた。

 

「おはようございます、周防様、ようこそベルベットルームへ」

 

達哉の机を挟み向かい側の椅子に小柄で杭のように出っ張った鼻とぎょろりとした目が特徴的な紳士服姿の男性が座り。

その隣には銀髪のボブカットが眩しく輝く紺色の車掌姿の美女が佇んでいる。

達哉は、ふと隣を見ると、椅子に座らされウーンと魘され目を閉じているオルガマリーの姿があった。

 

「なぜここに」

「ここは現実と夢の狭間ですので。レイシフト中ならば現実世界に夢から干渉して呼び出すこととほぼ同じですので・・・」

「そうか・・・」

 

 

要するに呼び出すこと自体は容易いのだと老人は言う。

ベルベットルームの主にして「イゴール」はそう言って。達哉は納得して頷く。

 

「・・・・頼みたいことがある。」

「なんでしょうか?」

「オルガマリーを蘇生できないか?」

 

オルガマリーは今は魂のような状態である。

向こうに行ってもカードのままの可能性が高く。蘇生できるとしたら頼めるかと達哉は言うが。

イゴールは首を横に振った。

 

「やはり無理か・・・・」

「いえ、周防様、一度切りの蘇生手段はあるのですが、その必要はないということです」

「・・・アンタは?」

 

 

達哉の失意を正すようにイゴールのそばに控える女性が言う。

そう言えば、ベルベットルームにこんな人はいたかと達哉は思うが。

それを察した女性は苦笑を浮かべながら名乗り出た。

 

「お久しぶりです、そして初めまして。周防達哉様。私はエリザベス。ベルベットルームの住人です」

「・・・・お久しぶりって、俺はアンタと会ったことはないが・・・・」

「パラレルワールドのアナタ様と出会い。まぁヒッドイ騒乱を駆け抜けましてね・・・、一方的に知っているのでありますよ」

「そっそうか」

 

要は並行世界の自分と出会ったことがあるのだという。

イゴールは「身の上話はそこまでにしておきなさい」とエリザベスを窘めて。

エリザベスは優雅に微笑みつつ肩をすくめた。

 

「それで。イゴール、所長の蘇生が必要ないとはどういうことだ?」

「すでに意識だけがこちらに来ている状況でですので・・・。オルガマリー様の魂はカードから現在。この世界で言うところのドリーカドモンへの移植施術が始まっていますので・・・・ご心配召されるな」

 

ドリー・カドモンという言葉の意味は理解できないが。

様は完全蘇生がなされているという事実にほっとする。

 

「・・・・イゴール、俺はなぜここにいる」

「分かりませぬ、それが奴の策謀なのか。偶然の産物なのか・・・」

 

 

なぜ俺は此処にいるのかと問い掛けても答えが返ってくるはずもない。

イゴールはあくまでもペルソナ関係の仕事が主軸でありフェレモンとかニャルラトホテプの様に中心に居る男ではない。

故に返せない。達哉がニャルラトホテプの玩具であるならこいつらはフェレモンの人形であるがゆえだ。

 

「それでなぜ、呼び出した?」

「単純ですわ、周防様、ペルソナの仕様に変更がありまして。二度手間も愚かの極み。すべてはオルガマリー様が目覚めてから告げましょう、故に周防様、お飲み物はいかがでしょうか?」

「ああ・・・頼む」

 

 

達哉は気が気ではなかった。オルガマリーを救えたが。

 

 

―奴から聞いた・・・。影に抗い、勝利した一人目の人間だと・・・・なるほど・・・私では勝てぬか―

 

 

セイバーの言葉が心理内に反響して気が気ではなかった。

奴が来ているという言葉に気を取られ過ぎていた。

並々と琥珀色の液体が注がれたグラスをエリザベスから受け取り。

喉の渇きを癒そうとグラスの中の液体を一気に飲み干そうとするが。

舌と喉に襲い掛かるアルコールの刺激に耐えられず。たまらんと言わんがばかりに吐き出す。

 

「ゲホッ!? ゲホッ!! エリザベス――――これは?!」

「ニッカ、40年でございます、あの甲斐性無し秘蔵の酒の一つでございますれば、お気に召したかでしょうか?」

「俺はまだ未成年だ!! 飲めるわけないだろう!?」

「おや? そうでしたかあの甲斐性無しと戦線を共にした達哉さまはイケた口でしたので・・・失礼いたしました。ですが、気は晴れたでしょう?」

「え?」

 

ようはエリザベスは達哉の疑心暗鬼を一時的に晴らすためにわざと酒を出したのである。

彼女もまた抗う者ならば。奴の手管はよく理解しているゆえにだ。

 

「考えることは重要ですが、疑い深いのもまた”奴”の手札の内ですので・・・強引では御座いますが。疑心暗鬼の人間には不意打ちでの悪戯が効果覿面ですのでね。あの甲斐性無しを見るに」

「……エリザベス」

「怒ることないじゃないですか、イゴール様、寧ろ知らぬ我らが助けになるには・・・これがは一番早いのです。」

 

干渉できない立場としてはこれが達哉の気晴らしになるとイゴールの窘めを図太く払いのけ言いつつ。

手に二つのグラスを出現させ部屋の隅にある冷蔵庫から麦茶を取り出し注ぐ。

イゴールはため息吐きつつエリザベスが図太くなり過ぎたことに頭を抱えていた。

達哉はため息を吐きつつ椅子に深く腰掛ける。

それから10分もしないうちに。

 

「------」

 

オルガマリーが目覚めた。

パチリと瞼を開いたり閉じして周囲を確認し・・・・。達哉を認識すると凝視している。

 

「所、所長? どうした?」

「-----------」

 

さしもの達哉も何がなんやらと言ったように恐る恐るオルガマリーに喋りかけて……。

 

 

オルガマリーは忽然と動き出し達哉にしがみ付き。

叫び散らす。

 

「ダヅヤャ!? 怖かったよぉおおおおおおおお!?」

「お、落ち着いて!! 所長!?」

 

 

達哉にしがみつき泣き散らして鼻水垂れ流す。

情けないという概念そのものであるが。信じていた存在に裏切られ。新しく得た友に助けられ。

そして勘違いとはいえ消滅の危機に直面し助かり。

目覚めて横を見れば友達がいるという状況であるなら誰だってこんな無様を晒すだろう。

甘酸っぱいでありますなーとエリザベスは苦笑し

イゴールは深くため息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ということは、ここは要は阿頼耶識の一部ってことなのね……」

 

魔術師であれば最も根源に近いという場所ということもあって。

オルガマリーは『欲せば手に入らず、無視すれば要らなくても押し付けられるのね』とため息を吐く。

現状も此処がどこかついでに説明されていた。

故に彼女は精神の均衡を取り戻しつつあった。

そりゃ誰だって死にかければ精神的均衡がぶれるのは当然の事である。

 

「だが。なぜオルガマリーがここに?」

 

達哉は疑問を口にする。

オルガマリーはペルソナ使いではないはずだ。

ペルソナ様もせずフィレモンと接触したこともないはずだと。

 

「え、ええっと達哉。私、起きる前にフィレモンの領域に居たのよ……」

「・・・なに?」

 

オルガマリーの独白に若干驚きつつも。ありえなくはないと納得する。

フィレモンは奴と同じだ。

もっとも司る性質は逆で、太極図の白を司るポジティブマインドの化身である。

ニャルラトホテプが居る以上。自分にそうしたように。

この世界の誰かに干渉してペルソナ能力を与えるのはある種の必然だった。

 

「契約したのか?」

「ええ、したわよ、なんか殺されかけて……否応なしにだけど」

「はぁ?!」

 

そんなに厳しい試練ではなかったはずだ。

言えなければ現実世界に帰されるだけである。

 

「オルガマリー様……はテンパっていて、試練の一環で記憶を意図的にあやふやにするという現象を消されると勘違いしたのでは?」

「・・・・でも情報に押しつぶされかけたんですけど・・・」

 

イゴールの言う通り、確かに記憶があやふやになり意識が飛んでいく感覚だった。

だが情報に押し潰されかけるのは明確に感じていた。

ふむとイゴールは頬杖を突き、気付く。

 

「おそらくですが、その体の状態にも起因しているでしょうな。なにせ今のアナタは帰るべき肉体が無い」

 

要するにオルガマリーの肉体の状況のせいであった。

蘇生作業中で今彼女の魂は帰るべき肉体が存在せず。それゆえに存在自体があやふやで高密度情報体の阿頼耶識の情報に潰されかけたというわけだ。

読者に分かりやすく言うと肉体が移植中だった故にオルガマリーカルデアスチャレンジパート2になりかけていた訳である。

 

「何度殺す気よォ!!」

 

もうこれで実際に殺されかけたのは何度目か。

スケルトンにリンチされかけて、アダルティランサーに鎖で頭部を割られかけて。騎士王に聖剣で消し飛ばされかけて。

レフにカルデアスチャレンジされかけて。今度は一番まずい状態で阿頼耶識に引き摺り込まれ、阿頼耶識チャレンジで死にかける。

キレるのはしょうがない事だった。

 

「主はきっと親切心でやったものと思います」

 

イゴールの善意でやらかすフィレモンに対する必死のフォローだが。

生憎とオルガマリーはフィレモンが達哉にリセットボタンを渡した上に条件説明すらせず、見捨てて立場がヤバくなったから再度利用したことは見ているのだ。

そんなフォローなんぞ通用するわけもなく。

ブチ切れて。暴れ出そうとなるところを達哉が必死に後ろから羽交い絞めにして止める。

そして感情が高ぶったがゆえに。

 

 

『我は汝、汝は我、我は汝の心の海より出でし者・・・、地より星を見上げ未来を見る眼、ラプラスなり・・・・』

「「「「あっ」」」」

 

 

会得したペルソナが出現してしまった。

 

黄金に染め上げられた双眸に中性的美貌を持ち。陶磁器の様に白い肌、銀細工のように美しいセミロングヘアーに法衣服を戦闘用に仕立て上げたかのようなドレスを身にまとっている。

無論人間的な形こそとっているが、両方の側頭部から生えて後ろに向かって伸びている角のような物や。

体の関節部分は球体関節であるし、皮膚も陶磁器のように白く無機質で。

露出した両足は両方とも膝から下は巨大な杭のようになっており人間的な脚部ではない。

さらに右手で保持する豪華な装飾と刃と柄の接合部に時計のような装飾品が埋め込まれ。光の刃を持つ大鎌を右手で持っており。

人間的というよりは人形的にも見える。あるいは数式の様に美しい悪魔という概念を表せばこうもなろうという物であった。

 

状況に冷や水を浴びせかけられたのと。グダグダしてきたのと。おそらく一番くそ情けない覚醒したというのもあって。

全員が沈黙。

 

「達哉。ペルソナの出し方は分かったわ・・・戻すのには?」

「俺の場合は出す場合は脳裏にカードを描き場に出すイメージで。引っ込める場合はカードをデッキに戻すというイメージだ」

「ふぅん、自己暗示とかそういうのは魔術と一緒なのね・・・こうかしら?」

 

オルガマリーは達哉の言うことを魔術になぞらえて理解し。

引っ込めるイメージをオルガマリーなりに描きラプラスを引っ込める。

魔術と大して変わらないと述べつつ椅子に座る。

達哉もそれにつられて椅子に座る。

 

「話を進めていいですかな?」

 

イゴールの催促に両者はうなずく。

そして説明をし出した。

此処はペルソナを降魔したり合成し新たなペルソナを生み出す場所であるという。

ペルソナは人の人格の仮面だ。

闘争中に新たな側面に目覚めペルソナが生まれる。それを持ってくればそれらを使い、今のペルソナと合成して新しい物を生み出せるという。

 

「ん? ちょっと待て。俺の時は悪魔からタロットカードを集めて作っていたが・・・今は違うのか?」

「はい。人の総体的心の変化によってペルソナの運用システムもまた変わります。今はそうなったというだけの話であります」

「そうか・・・」

 

達哉の疑問にイゴールはそう答えた。

人の心が変わったのだからペルソナの運用システムもまた変わるのだと。

 

「と言ってもサポートの体制が変わっただけということでありますな。あなた方はフィレモン様と契約したがゆえにワイルドの素養がなくとも、相性によりますが、ワイルドの様にペルソナの付け替えが可能です」

「・・・?? ワイルド?」

 

またもや達哉の知らぬ単語が出てくる。

ワイルドという概念は聞いたことがなかった。

 

「あの事件の後。フィレモン様と契約しなくともペルソナに覚醒できる人間が生まれましてな、そう言った人間のペルソナは一人につき一体のみと制限されていますがワイルドと呼ばれる特別な素養の持ち主は制限なく付け替えることが可能ですので。こちらでサポートさせてもらっております、もっともあなた方には関係のない話でありますが」

「そうか・・・」

 

確かに関係がない。自分はワイルドとかそういうものではないのだから。

達哉の言葉に満足そうにイゴールはうなずき。

話を先に進める。

ペルソナ合体の他に、ペルソナを強化する「継承の儀」システムやペルソナをスキルカード化する「具象の儀」システムなどの追加。

ペルソナ事態の性能の表示がランクからLv方式に変わって入り限界値能力が高まったこと。

また達哉たちが利用していたころにはなかった。ペルソナ全書システムなど。

達哉たちが利用していたころには無かったものが実装され洗練されていた。

 

「要は此処はそれらを使ってペルソナを強くできるということでいいのね?」

「その通りでございます、ああですが、ペルソナ全書からのペルソナの再降魔はお金が必要になりますので・・・そこはご注意を」

「金取るの!?」

 

エリザベスはオルガマリーのいいように同意しつつ。ペルソナ全書からのペルソナの再降魔には金が必要と述べて。

オルガマリーは金取るのかよと驚愕する。

 

「ええ、無から有を生み出すのは不可能でございます、故にお金という最も分かりやすい資源リソースを使い心の海からペルソナを再現し呼び出すという奇跡を起こすのです。等価交換はこの世界の魔術の基本原則と聞きましたが?」

「まぁそうだけれど・・・魔法に近い能力だからもっと、こうねぇ?」

「世の中、こういった御業ほど結構、俗であることが多いのですよ」

「・・・・」

 

オルガマリーからすれば魔法染みた超能力なのに俗すぎてなんか来るものがある。

 

「一通り説明しましたな・・・、ではカルデアに戻ると良いでしょう、それとこの部屋への扉はお二人の部屋などに設置しておきますので・・・これを・・・」

 

説明が終わったから解散しようということになる。

イゴールが二人にベルベットルームのカギを渡し。

ここへの通路の扉を二人の部屋に立てておくと言って。

イゴールが指を鳴らす。二人の意識は浮上し存在が掻き消えるように退去した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Pi――――――――――――Pi―――――――――――Pi―――――――――――――

 

 

規則正しく生命維持装置が起動している。

オルガマリーはその音で目が覚めた。

白い天井が広がっている。

 

「かえってこれたのね・・・・」

 

 

酸素マスクを外して半身を起こす。

右腕がチクリと痛んだ。よく見れば点滴用の針が刺さっていたからだ。

右腕を動かすのは得策じゃないわねと思いつつ。

周囲を見渡す。カルデアの医務室の一角であった。

見慣れてはいるけれど、何度も死にかけて現実感が戻ってきていない。

隣のベットを見ると自分と同じように患者服を着せられて丁度今起きた達哉と目が合う。

 

 

「生きてるのよね?」

「互いにな・・・」

 

 

そのやり取りをしておかしくなって噴き出して笑った。

なんだかおかしくてしょうがなかったからだ。

 

「先輩!! 所長!! 目が覚めたんですね!?」

 

その声を聴いてマシュが駆け込んでくる。

 

 

 

 

 

 

 

彼等は帰還した。

 

 

 

 

 

 

 

だが次の旅が残っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

医務室に現在、失われた人材に変わって各部を統率する主要人物たちが集められた。

と言ってもカルデアの現状維持のためにマシュ、ロマニ、それと開発部の主任兼カルデア召喚サーヴァント成功例の二人目の「レオナルド・ダヴィンチ」であった。

もっともなぜかダヴィンチは女であった。

だが男でもありだが女だという矛盾した状態であった。

無論、達哉は余りの自己紹介のアレさとビッグネームに白目をむく。

だって普通ならそうだ。歴史教科書ではおっさんとして肖像画が乗っているのに。本人も男と認めているのに。

モナリザになりたいゆえにサーヴァントとして顕現するさいの全盛期の定義を弄繰り回し体を女にして現れたのだから。

いい年こいたおっさんが美女になりたい願望はちょっと理解が及ばなかった。

 

「達哉くんの反応。マリスビリーとそっくりだなぁ」

 

しみじみとロマニが呟く、ダヴィンチが召喚された日、オルガマリーの父であり前所長である、マリスビリーも同じ反応だったなぁと

 

「いや君も白目向いて天井を仰いでいたじゃないか」

 

君も同じだったじゃないかと不貞腐れ気味に言うダヴィンチに。

いやだって、正規の大天才が当時は女体化して「ダヴィンチちゃん」と呼ばせようとしてくる奴だと誰も思わなから仕方ないだろ。

と言いかけロマニは言葉を飲み干す。

ダヴィンチも怒らせると怖い存在に間違いないからだ。あるのが分かっている虎の尾を踏む馬鹿はいないのだ。

 

 

 

「それで現状は?」

「カルデアスの観測結果で七つの特異点の出現が確認されました。おそらくそれが現在の人理を焼却している元凶の楔だと思われます。現在特定班が必死の解析を進めていますが」

「先の爆発で機材の破損が大きい、我ら開発班でニコイチ修理で回して、カルデアの炉心はなんとか安定、施設へのエネルギー供給は十分ではないけれどリソース集中で。何とか設備運用は最低限だけれど出来ているよ、けれど現状じゃレイシフトによる介入は無理だ」

「つまりカルデアに残ったリソースをかき集めて、レイシフト運用できるまで修繕しなきゃいけないってことね?」

「その通りだ。所長、いやぁ逞しくなって」

「何度も死にかければ吹っ切れるわよ・・・ホント・・・」

「だろうねぇ・・・それでどうするのさ?」

 

ダヴィンチの問いにオルガマリーは決断を下す。

 

「現状は準備が整うまで復旧に集中して、休憩は交代制で行くわ」

「所長、俺にも・・・」

「タツヤはしばらく休んでおきなさい、言っちゃ悪いけれど。戦力として頼れるのはアンタとマシュだけなのよ」

「わかった・・・」

 

現状頼れるのはアナタしかいないと言われれば頷くほかない。

ああそれで思い出したとばかりに。ダヴィンチが述べる。

 

「達哉くん、君聖杯を使って元の場所に帰ろうとしていたよね?」

「え、まぁそうですが・・・」

「それは無理だ。一応解析にかけたが。回収された聖杯は願望機としての機能が大きく欠損している。あれじゃ世界の外側に行くなんてのは不可能だ・・・」

「・・・そうですか」

「・・・まぁ帰ることはおいおい考えてちょうだい」

 

 

帰るのは不可能だと言われる。

無論、現状放り出して帰るほど達哉も馬鹿ではない。

出来るだけ協力することは思っていた。

だから帰る考えは後回しにしてということにも納得する。

 

 

「さて働きます「君ね、まだその体に魂を叩き込んで幾分も無い、休んでいたまえ」でも」

「でもも糸瓜もありませんよ、所長、施術中に一度消えかけていたんですよ」

(フィレモンぇ・・・・)

 

だから馴染むことが確認できるまで休めとダヴィンチがいい。

施術中に起きた出来事ゆえにマシュも休んでいてほしいと言い。

その現状に地味にオルガマリーはフィレモンの要らぬ善意で殺されたことを再認識し殺意を少しばかりたぎらせた。

 

「じゃぁ俺は何か手伝います、機械の事はある程度分かりますし」

「達哉君も休んでいてくれ。精神的疲労が肉体面にも出つつあるからね。むしろその状態で手伝われても邪魔だから」

 

達哉は手伝うというがそれもロマニは却下する。

ルーンの効力で回復とごまかしをしていたがついにここで表面化しているから休めと医者として断言したて。

渋々ながらもそれを達哉は了承した。

二人の看病はマシュがすることになり。

カルデアも動き出す。

 

全ては発生した特異点を修正し世界を取り戻す時代を駆け抜ける大いなる旅路を乗り越えるためにだ。

 

 




ちと短いけれど、今回はこれでおしまい


各個人の現状


たっちゃん 休めとロマニに言われて休む ニャルが背後に迫っていることは知らない。

オルガマリー 何度も殺され駆けフィレモンの余計な采配でまたも死にかけ、ドッキリ仕掛けられた。国分張りリアクションを披露した結果。凄まじく情けなく、ペルソナ覚醒をする。

マシュ 付きっ切りで二人の看病をしていた。

ダヴィンチ ロマニから現状を聞いて、前所長の貴重な魔術作品からなんか代用になる物を探して橙子さんせいの人形発見する。そのままロマニ共にマリーの魂移植施術へ。

ロマニ 体があったという事でダヴィンチとオルガマリーの移植施術を行う、フィレモンのせいで所長の魂が消えかけ焦る物の、なんとか施術を成功させる。

カルデアスタッフ一同、施設復旧の為機材のニコイチ修理に奔走しつつ得点の座標特定を急ぐ。

イゴール 原作と大差なし、ペルソナ5の影響で疲労気味

エリザベス、原作とは異なる並行世界のエリザベス、此処の達哉とは違う向こう側の達哉と戦線を共にを共にしたことがある。
彼女もまた影の試練に抗った存在の一人。
色々合って監視役としてベルベットルームに復帰する。
衣装は女車掌の物に変更。


フィレモン オルガマリーの状態が最悪なのに干渉し契約を迫るという。うっかりやらかしをする


ニャル 次回のたっちゃん虐めの為に鎬紅葉染みたウォームアップ中


並行世界の人物。



甲斐性無し 達哉と出会ったことによってパラレルの罰事件に巻き込まれてから血反吐を吐きつつ走る存在。いわゆるところの綺麗なキャベツ。FateGO一部が終わったら彼の物語を書くかもしれない。


本作FGOに新たな機能が実装されました!!
QPを使ってたっちゃんとオルガマリーのペルソナを強化して戦闘を有利に進めよう!!
あとベルベットルームでペルソナガチャ機能追加。、現在ヴォルガヌス&ラプラスがPU中だぞ!!

オルガマリー 結局ガチャじゃない!?



オルガマリーのペルソナのステータス

名前 ラプラス
Lv1
アルカナ月
斬耐 突― 銃― 炎― 核― 地― 水― 氷― 風― 衝― 雷弱 重耐 闇耐 光弱 精耐 異―
力1 魔3 耐1 速3 運1
スキル
コウハザン 近くの敵に大鎌で切りつける、魔法スキルながら近接仕様 ダメージ量は小だがクリティカル発生がコウハより高くクリティカル威力のアップ具合が高い 本作オリジナルスキル
スクンダ
マジックカウンター 所持する魔法スキルで一定確率で反撃する本作オリジナルスキル
逆境への覚悟

元ネタは未来を計測するラプラスの悪魔という概念がペルソナ化した者
不安定な未来を排除したいという彼女の渇望もあって大鎌を持ち前衛攻撃よりなペルソナとなっている。
造形の元ネタは.hack・GUのスケィスとペルソナ3のオルレフェウスを混ぜ合わせたものとなる。


次回、英霊召喚&ニャルによるたっちゃん虐めと現状の第一特異点が、どうなってるかというのをジャンヌオルタ視点で書く予定









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