Fate/Grand Order たっちゃんがグランドオーダーに挑むようです   作:這い寄る影

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世の中で一番大切なもの、人間にとって最も大切なもの、それは「思い出」ではないか。


中坊公平


五節 「月の女神とジッポ」

救助した奴隷や捕虜には一か月は余裕で遊んで暮らせるくらいの金を一人一人にわたした。

元々強奪した金品だ懐は痛まない。

それに多くの若手がアトランティスにわたってしまった以上、各島は人手不足だ。

職業に就くにも困らない。

そして会得した幻想種は肉は加工して売り捌き、素材に使える部位は船の強化に回した。

 

 

「女神の島ぁ?」

 

第一の島と第二の島、第三の島を大体3から4往復して航路を安定化させ噂を流し。

海流の安定化にも努めた。道中の海賊も掃討し、噂結界によって安全な航路を確保し。

次の目的地はどこか確認しているときに剽軽な噂がまた彼らの元に舞い込んできたのである。

次の島には絶世の美女の様な女神がいる。

強引に襲おうものなら射殺されるなどの噂が流れていた。

 

「次のルート開拓で必ず通る島だ。女神が相手だとどうすべきか・・・」

 

孔明はオルガマリーと共に頭を抱えた。

と言っても神霊クラスであっても殺しきれる手札はある。

されどそれまでに出る損害が目が眩むレベルだろう。

ポセイドン相手にするのに全員が揃ってようやくベストメンバーだ。

神霊さえ超える何かゼット・ゼブ、神獣としては上位。魔王としては中堅どころのフロストカイザーを基本にその中間くらいの性能かなと予測を立てれば。

そりゃ被害が出るのも当たり前の話だったが。

 

「いや無視すればいいじゃないか?」

「なんでまた?」

「噂が伝えている、こっちから襲いさえしなければ射殺はしてこない。なら無視でいいだろう」

 

そう噂である。信仰心という心理的エネルギーを糧としている以上、神霊だって噂結界の力からは逃げられないのだ。

これがニャルラトホテプの恐ろしい所である、人間と接触し心理を共有した時点で浸食される。

それは無差別だ。地球外生命体やら世界の裏側の幻想の住人であっても、人との営みに関われば浸食され彼らの影となる。

故に強制力は神霊であっても信仰心を糧にしている以上作用するのだ。

神であれ魔であれ人であれ、平等に奴からは逃げられないのである。

 

「面倒くさすぎる!?」

 

孔明はそう叫びながら頭を抱えた。

改めてニャルラトホテプと戦うという意味が理解できた。

更に滅ぼすことが不可能であると聞いてもいるので頭を抱える。

 

「面倒くさいのは今に始まったことじゃない」

 

ある意味、ニャルラトホテプと付き合いの一番長い達哉はため息交じりに言い切った。

事あるごとに精神をえぐられてきたのである、怒りこそすれどいい加減慣れてきた感があった。

まぁそれが奴の存在意義でもある、人類の進化、矛盾を容認し進化し続けていく完璧な人間の創生。

もっともニャルラトホテプ的にはそんな使命はゴミ箱にぶん投げて悪意ある試練を次々に課してくる訳だが。

それはさておき次の目的地が決まった。

商売も上手く行って金も増えた。

救助した捕虜や奴隷には一か月は遊んで暮らせる金を渡し解放。

条件として噂を流れさせ、第一から第三の島までの海流と航路の安定化、海賊の掃討の噂を流れさせて航路と海流を安定化させた。

そして船の強化も行い。余った素材や加工した食料は第三の島。

ごく普通の島で売り払った。

交渉に出たのはオルガマリーと意外な人選としてエリザベートだった。

今のエリザベートは領地経営の経験、臨時ローマ帝としての経験。カエサル仕込みの詐術めいた交渉術と金のやりくりを覚えているのだ。

故に交渉に駆り出され効率よく物は売り捌けた。

それこそ捕虜たちに金をやり、船の強化費を引いてもプラスに転じるレベルでである。

そして捕虜や元奴隷たちは新たな雇用と消費を生むのだ。

アトランティスに行った者たちに代わっての人材補填という奴である。

そんなこんなで第一から第三の島までの安定化は完了。

第三の島に向かう前日の会議でそんなうわさが出てきたという。

だがまぁしかし噂としては穏当だ。

向こうにも攻撃制限が掛かるなら気にしなくてもいいというのは達哉の言い分である。

こちらから手を出さなければ攻撃できないともいえるからだ。

 

「攻撃制限が掛かっている以上、こちらから手出ししなけければ問題はない。あと女神が居るという縛りもある、向こうは島から出れない」

 

達哉のいうとおりで噂で移動制限まで掛けられているのだ。

アステリオスとエウリュアレと違い、件の女神は島から出れないのである。

故に精々不戦協定を結ぶのがベストな選択肢となるだろう。

というか女神とか誰も抱え込みたくないというのが心情だったりする。

達哉も魔術への対策として孔明から魔術の基礎を教わっている。

そのうえで妖精はサイコパス、神の類はシステマティックかあるいは大きな力を持った赤ん坊の類であることを聞かされているのだ。

魔術師であるオルガマリーは無論、歴女のマシュでさえ神の類のひどさは知っている。

できるだけ接触は控えたい。

噂が働いている以上向こうからの手出しはできないと推測できる。

なら無視で良いではないかと思うのは当然の事だ。

 

「オルガマリー、全行程終了したわよ~」

 

気だる気にエリザベートが会議室に入ってくる。

それ即ち奴隷や捕虜の解放と噂の散布、要らないリソースの売却に船の強化事業が終わったことを意味していた。

この島にもそれらの作業を終わらせるため四日ほど滞在している。

作業が終わった以上。もうここに用はない。

次の島を目指す時が来たわけなのだ。

 

 

 

 

 

 

そして三日後。

目的の島に着いた。

船を浅瀬に着けてボートで上陸、簡易指揮所と寝床を確保する。

 

「この島にはアステリオスたちがいた島のようにヤドは居ないようだな」

 

刀の鯉口を戻しつつ達哉が言う。

アステリオスとエウリュアレの居た島には凶暴な巨大ヤドカリが群生しており。

狩れども狩れども湧き出てきたヤドカリが不思議なことにいない。

だから安心して寝床と簡易指揮所は即座にくみ上げられた。

アン・ボニーにメアリー・リード。ティーチは海賊が来た場合に対処するために船に残っている。

本人達は上陸したがっていたが適材適所という事で、オルガマリーが酒で釣って納得させた。

 

「それでどうしますかな? ここはひとつ水練でも」

「トレーニングしてる暇はないでしょ、宗矩・・・ まぁやることはやることは変わらないわ」

 

いつも通りの狩りの時間である。

 

「ロマニ、サーチ結果教えて」

『了解・・・。サーチ結果を送るよ、サーヴァントが一体と幻霊かなぁ? それが一体、島の中心深部に大型竜種の反応が見られるね』

「おお、それは良いわね、シグルド、ブリュンヒルデ、そんでタツヤ」

「なんだ?」

「なんであろうか?」

「なんですか?」

「島の中央付近にいる、竜種ぶち転がしてきて。大型竜種は良い素材になるから」

「いや当方的には大型種、あるいは長命種はきついのだが・・・」

 

島の中央に居る竜は大型種である可能性が高い。

基本個体にもよるのだが。通常の竜は体格の大きさから生きた年月を推測できる。

通常の大型種なら良いのだが。通常種が大型種レベルの体格を持っている場合長命種とも呼ばれ。

基本1000年超えの年齢を持つ。

そうなれば基本普通の英霊が複数人いてもキツイのだ。

と言ってもだ。

 

「いや、シグルド、アンタは大英雄で専門家なんだし、ヒルデに至っては神霊クラスだし。達哉は何でもありならウチの最高戦力なのよ。長命種クラスでも余裕とはいかないにしても普通に倒せるでしょ?」

 

シグルドは生前にジークフリードと同名の悪竜を倒している。

ドラゴン退治と言えばいまだにシグルドかあるいはジークフリードの名が現代でも鉄板だ。

そこに何でもありならマスターなのに現在カルデアの最高戦力の達哉と。

神霊クラスでありワルキューレのなかでも賢人として名高いブリュンヒルデをつけるのだ。

不足はないはずである。

現に第一でファブニール相手にジークフリードありきとはいえ、成長前のオルガマリーも皆と連携しそこそこ遣り合えていたのだから。

今はこのメンツで問題ないと思うのは当然だろう。

いくら長命竜とはいえ一たまりもないメンツなのだ。

達哉はまぁシグルドが居れば大丈夫だと胸を撫で下ろし。

ブリュンヒルデは生でシグルドの竜退治の手腕が見れるとキラキラした目でシグルドを見ている。

それに対してシグルドは冷や汗をダラダラとながしていた。

 

「ん、シグルド、どうしたのです? 竜退治はアナタの専門でしょう?」

「それなんだがな。我が愛よ。必死に剣をふるっていたら倒せていた・・・故に弱点とかわかるが効率的な倒し方などはわからんのだ。」

「「「「はぁ!?」」」」

 

実際伝承においてシグルドが倒したのはファブニールだけである。

ワイバーン? あれは竜種とは言えぬ空飛ぶ蜥蜴だ。勘定の内にはカウントされない。

それだけ。大型種、特に長命種は隔絶している実力なのだ。

悪竜現象で人から竜に転じた種族も同等だ。なんせ人間の悪意と知性を保ったまま竜に転じるのだから。

故に単騎で対峙した場合は死に物狂いの殺し合いになる。

ファブニールは徹底した籠城作戦を取っているのだ。

始末するためには穴倉に乗り込んで真っ向勝負するしかない。

故に、どう倒したとか必死過ぎてシグルドはよく覚えていないのだ。

 

「じゃなんでまた心臓を食ったりしたんですか?」

「我が愛よ、竜の心臓は妙薬になると知られていたではないか」

 

じゃあなんでまた必死になって倒した竜の心臓を食べたのかという疑問が残り、それをブリュンヒルデは口にしたが。

真っ向からシグルドは反論を返す。

竜の心臓は妙薬になるではと。

 

「あの時の当方は重傷を負っていた。町に帰還することも難しかったので。心臓を食べれば傷も癒えるのではないかと思ってな。結果こうなったわけだが。妙薬になるというのも嘘ではなかったらしい、体の傷は癒えたぞ」

 

案の定、新鮮なしかも悪竜現象の高位竜の心臓とくれば。体を癒すには不足はなく。

身体は癒えて、叡智の結晶がひょっこり生えてきたわけだが。

 

 

「・・・不安ね、アタランテ、彼らについていってあげて」

「心得た」

 

というわけでそんな有様なので。一抹の不安がよぎったため一応、狩人として勘の鋭いアタランテをつける。

これで感知方面は補強された。

 

「あの私は・・・」

「マシュは他のメンツと組んで魔獣狩りね、たまにはそうでもしなきゃ勘が鈍るもの」

 

オルガマリーはそう告げる。

達哉たちにはブリュンヒルデがいるのだ。

防御もルーンで代用できる。

故にたまには他のメンツと組ませて違う経験をオルガマリーは積ませておきたかった。

第一にマシュは達哉の指示に依存しすぎるきらいがある。

戦場ではいつも一緒という訳にもいかないのだから、あえて切り離したのだ。

マシュには自己判断能力を培ってほしいがためにだ。

現に第一と第二では分断されて各個撃破の危機に直面している。

いつも一緒というのは癖になるし、それでは違うセットで分断された場合、達哉以外との連携も考慮しなければならない。

他の人との連携訓練はカルデアで行っているが。

訓練で得た経験は実戦でしか磨かれない。

故に今回はあえて分断する選択肢をオルガマリーは選んだ。

油断はできぬがこの島にはちょうどいい実験体がいるがゆえにだ。

 

「という訳で散開。各自の健闘を祈るわ」

 

指揮官として孔明を伴いオルガマリーは簡易指揮所に残るとして。

他の面々はオルガマリーに言われた通りに散開したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてなんやかんやあって昼食時。

 

「当方思うのだが、罰ゲームか何かか? これ?」

「ねちょねちょモソモソ、私たちの文明の時より酷いとは・・・どうなってるんです?」

「オルガマリーやエミヤの作った手料理は美味かった。なのになぜこんなまずい飯を?」

 

携行重視で持たされていたMREを食って。サーヴァント三人組は絶句していた。

未来の携行保存食がこんなに不味いとは思ってもいなかったのである。

この場に青王が居ればこう言うだろう『ブリテン以下の物が存在しているなんて』と。

されど栄養やカロリーは普通の健康食より上だ。

そうスペック表を見れば優秀なのである味という見えないものを抜きにすればの話ではあるが。

達哉は乾パン生活も長かったためか。こういう栄養だけのまずい飯を胃に詰め込むすべは身に付けていた。

つまり無心になって喉が渇いたり詰まりそうになったり戻しそうになったりすれば水で流し込む。

生きるか死ぬかの瀬戸際だったんだからしょうがないっちゃしょうがないのだ。

つまり在庫処分である、必要意外なこういうシチュエーションではいちいち手料理を作るよりMREで済ませたほうが迅速だからだ。

それだけMREは倉庫の中で眠っているのである。

 

「そうか? これ位なら、とにかく胃に突っ込んで、水で流し込めばいいだろ?」

「マスターは・・・・そうでしたね」

 

夢で達哉の過去を知っているブリュンヒルデが何かを言いかけて口を閉じた。

同情は彼に対する侮辱だからである。

そんなわけで沈黙しつつモソモソとMREを完食し終えた一行は竜の居る洞窟へと向かう。

すでに島全体の大まかなスキャニングはやっているのだ。

相も変わらず敵手は動かないご様子。

なら後は刈り取るだけだ。

メンツがメンツである。超高出力でペルソナを12種類使える達哉。

北欧の大英雄のシグルド夫妻。カリュドンの狩人であるアタランテ。

誰もかれもが戦闘特化、極め付きには達哉は回復及びバフ特化のアムルタートを降魔できるのだ。

如何に長命種あるいは大型種であっても負ける要素がまずない。

いくら強力であっても大英雄と最上位ペルソナ使いに囲まれれば竜種とて絶対ではないのである。

そんなわけで礼装に表示されるガイドラインに従って、小走りで面々は進む。

最も移動基準はサーヴァントだ。小走りだけでも普通の馬程度の速度は出る。

故に素早く、隠密に進むが。

 

『達哉君、サーヴァント反応の方が両方同時に動き出したよ』

「なに? 噂もある、神様がわざわざ俺たちに接触する意味はないと思うが・・・」

 

向こうからこっちに接触させるような阿呆な真似は達哉たちはしていない。

領域に踏み込むような馬鹿はしてないし、何より興味を引くようなことをしていない。

神に関わると面倒ごとになると孔明には口酸っぱく言われているからだ。

 

『サーヴァント未満の方が動きが早い、接触まで10秒』

「ちっ、皆、一応武器は収めて、神の眷属という可能性もある」

「思わずやってしまったら面倒になるからだな? マスター」

「そういう事だ」

 

余計な刺激はできない。

現在こちらに向かってきている幻霊以上英霊未満の存在がもし神の眷属なら。

攻撃はできない。

もし攻撃すれば、相手に攻撃することを許してしまうからだ。

だが万が一もある、武器は収めつつ、全員が臨戦態勢を整え、彼の者が出てくるのを身構え。

 

「お姉ぇさぁぁああん、その豊満なボディで俺の想いを受け止めてくれぇぇぇえええええええええ!!」

「ふん!!」

「ぎゃらばぁ!?」

 

人形サイズの熊?が飛び出てきてブリュンヒルデに飛びつこうとして。思わず瞬時に状況を理解したシグルドの拳によって殴り飛ばされ、近くの木にたたきつけられる。

その後すぐに。

 

「ダァーリィン、そうやって女性見つけると抱き着く癖なんで直らないかなぁ!!」

 

そして次の瞬間には怨叉の様な声が響き、無数の矢がクマの様なぬいぐるみに炸裂。磔にした。

振り向いてみれば煽情的な服に身を包んだ薄水色の美しい髪の毛をともなった美女が頭部に青筋浮かべた笑顔で弓を構えていた。

 

「あの・・・すいませんどういう状況か教えてくれませんか?」

「何言っているの糞弟・・・アレ? 君誰?」

「いやそんなこと言われても?」

 

恐る恐る達哉が磔にした人形を強引に引っ張って剥がそうとしている女性に話しかける。

すると女性は達哉を見るなり糞弟と言いかけ。違う存在だと気づき首を傾げ。

達哉の存在を問うた。

礼装からは目の前の女性がサーヴァント、磔にされた熊?のぬいぐるみが幻霊以上、サーヴァント未満の存在だと。

ロマニがこっそり教える。

とすると目の前の女性が女神かと全員が当たりをつける。

 

「あの・・・マスターが弟とかどうとかどういう意味ですか?」

「だってさぁ、明らかに糞弟と同じ気を身に纏っているんだもん観測用の分霊でも送ってきたのかなぁって思う訳でしょ? でもよく見たら糞弟の気が一番強いけど他の神の気もあるし、何より姿かたちも魂の形が違うわね。そんな訳でアナタは誰?」

「俺は達哉、周防達哉だ」

「周防・・・達哉?」

 

達哉の名を聞いた途端に女性は目を見開いた。

 

「君ってあの周防達哉!? 君の事は糞弟から聞いているわ!あの影をぶん殴って阿頼耶識の底に初めて沈めた人間でしょ!?」

「いや、あれは皆の力添えがあったから出来たことで。俺自身は大した事してないぞ」

「それでも初事例は初事例なんだよ!! ゼウスが虎視眈々と星座にしたがっているし、君の活躍を知っている神々は君を欲しがっているのよ!!」

 

なんか女神はアイドルのオタクが如きしぐさで達哉の両手を握って手をぶんぶん振っていっている。

シグルドとブリュンヒルデとアタランテは女神の言葉にん?と思った。

 

「達哉を欲しがっている?」

「そりゃ当たり前でしょ。神という存在は例外なく奴の影響を強く受けて成り立っているのよ。倒そうと思っても倒せないし、そもそも補足自体が難しいのよ。気づいたなら嵌められていたなんてざらだもの。倒そうって思った人間もいるみたいだけど、問答無用で嵌められたわ。けれど達哉くん、アナタは違う、一度は間違えど二度目で倒して世界を救った。別世界だけど奴を最初に倒した最初の事例、故に神霊たちはアナタを思い求めている」

「そりゃなんでまた・・・」

「現行人類滅ぼしてアナタをもとに構成した人類を生み出せれば影倒せるじゃねって思ってるわーけ。奴の言い分なんか引用したくないけど、人を育てるのは環境なのにね、君をクローン培養しまくって生み出した人間が影を倒せるはずないなんてわかるもんだけどねフツー」

 

女神の言ったことは女神自身が否定するような行いだ。

人を育てるのは環境である。

故にクローンを生み出し記憶を移植したところでそれらはある種の方向性こそ維持できるとはいえ。

環境次第で変わっていく。

達哉自身も生きているのだ。彼もまた変わっていく。

人間とは変わりながら生きて死ぬ生き物なのだ。

それが悪徳であり良いところでもあるのにそこらへんよくわかってないわよねーと女神は言う。

 

「じゃあなにか? 俺が死んだらどこかの神に連れ去られるのか?」

「その可能性は低いかと、座に登録された人以外には裏からの接触はありません、死後も通常の物に則るでしょう。マスターが阿頼耶識と契約し守護者にならなければの話ですが」

「その守護者ってなんだ?」

「我々はガイアの守護者に属します。いわば星に認められた英雄という事ですね、多少阿頼耶識の影響も受けますが、基本そういったものは契約ではなく功績で選ばれるのです。ですが近代に入って世界滅亡なんてものは簡単になってしまいました。核ミサイルなどの影響で・・・、故に世界を一度救った程度では選定されないのでガイアの抑止力には関係ないでしょう。問題は阿頼耶識の抑止力の方です、エミヤが該当例にあたり願いを一つだけかなえる代わりに人類存続の為に永劫戦わされる存在です。こちらはなるのはガイアに比べれば簡単で、阿頼耶識と契約すればなってしまいます」

「ならフィレモンと契約した俺は死後守護者入りか?」

「そうはならないでしょう、あくまでも相互契約ですので。ペルソナ契約は人類進化のためです。守護者契約とは別物でしょうね。まぁどちらも割に合わないという点は共通していますが」

 

ブリュンヒルデがそう説明をする。

ペルソナ契約は阿頼耶識が直に行う実験の様なものだ。

あくまでも自己確立のための物でしかない。

逆に阿頼耶識の守護者契約は願いを一つだけかなえる代わりに永劫の闘争を強いるものだ。

性質事態が違う。

早く言えばペルソナ契約は自己確立への試練であり試験。

守護者契約は願いを一つ叶える代わりに永劫の掃除屋雇用だ。

人類成長と人類保持。

役割が違う。故に達哉が死後、守護者になるという事はない、オルガマリーも同様にだ。

 

「だが、神々に狙われているんだろう?」

「それも大丈夫かと。基本的に裏から表には手出しできないはずですから」

「だが我が愛よ、現状焼却で境界線があやふやになっている、現にポセイドンが出てきているのだ。手出しできるのではないか?」

「あ」

 

だが神の手出しは話が別だ。

人理焼却による世界線の揺れと歪み、それには時間にまで及んでいる。

都合抑止が動いているのは阿頼耶識と人理のみだ。

故に物理法則を気にせず神々が干渉してくる恐れがあるという事だ。

そのシグルドの言葉にあっと口を開くブリュンヒルデ。

だがそれを否定したのは女神本人だった。

 

「あっそれなら大丈夫よ、本霊が出てくると特異点待ったなしだし、私もサーヴァントレベルまで霊基出力落してダーリンと此処に召喚されたわけだしね」

 

ダーリンと呼ぶ熊のぬいぐるみ?から矢を抜きつつ、そこは大丈夫だと女神は言う。

 

「だが現にポセイドンが出現しているではないか?」

「アレは奴の仕業だろう、噂結界で呼び出したんだ。」

「ああそういう」

「ちょっとーそれどういう事よ」

 

シグルドの疑問に達哉がそう答える。

影が暗躍している以上、噂結界で本体に近い分霊を呼び出すことは可能だ。

後は影の檜舞台である。分霊に聖杯を与え噂結界で力を増幅させ特異点化させるなんて朝飯前だろう。

なんせ生前は従順な化身として表向きは仕えていたのだ。

正体自体が死んだ神か英霊たちにしか割れていないのである。

余裕でやるだろう影なら。

 

「噂結界ね。本当ッッッに厄介な奴!! 私にダーリンを撃ち殺させたときの糞弟のようなやつね!!」

 

自分の逸話を例え話にしつつ女神は影を罵った。

 

「・・・なんだか本当に済まない」

 

アポロを卸している身としてはなんだか身に覚えはないとはいえ糞の様な事をしてしまったことに際悩まされつつ。

女神に達哉は謝る。

 

「あっ気にしないで君がやったわけじゃないんだし、君、糞弟を卸しているわりに本当に性格似てないわよね。というか女難の相以外似てないわ、うん」

 

それにとっさに女神はフォローを入れる。

と言っても女難の相以外似てないと言われても嬉しくもなんともないのだが。

 

「ところで一応確認させてもらう、御身の名は一体」

 

遂にアタランテが自分自身にとってのパンドラの箱を開けてしまった。

聞かなければいいものを、いや時間の問題だったので今更の話だが。

獲物が弓、自称女神、自身の夫を殺させた糞の様な弟、そして達哉の卸しているアポロが弟の欠片とくれば大体が察しが付く。

 

「ん? 私? 私はアルテミスって、アナタ、よく見たらアタランテちゃんじゃないのおっひさー!」

 

女神アルテミスという名を聞いてアタランテは膝から崩れ落ちた。

まさか自分の心底信仰している存在が、実弟を糞呼ばわりして、こうキャピキャピしているとは思ってもいなかったのである。

憧れは理解から最も遠い感情だとは誰かが言ったがまさにその通りと言いう奴であった。

 

「そんでこっちが私のダーリンのオリオンでーす」

「よ、よろしく」

((((え、えぇ~))))

 

まさかおまけで夫候補のオリオンをこうまで矮小化させて二人で一人のサーヴァントとしてくるとは思ってもいなかったし。

なぜにぬいぐるみにしたと疑問が出たところで。

第一にもう各部が千切れるまで矢をぶち込む必要があったのかと誰もが思う。

オリオンまでぬいぐるみ顕現とくればアタランテ、完全に白目向いていた。

 

「・・・周防達哉ですよろしくお願いします」

「敬語は良いよ、達哉君!! 普通に接して、私もその方が気楽だから!! 周囲の英雄さんたちもそうしてくれると私嬉しいかな~」

「わかった。周防達哉だ。よろしく頼む、アルテミスにオリオン」

 

こうして自己紹介を終えてカオスな時間が過ぎ去り。

アルテミスとオリオンを加えて竜退治だったのだが。

 

「すっごく簡単に行ったな」

 

素材を得るために宝具抜きでの討伐である。

苦戦すると思っていったが女神に大英雄二人、英雄一人、最上位ペルソナ使いという戦力を前に竜は蹂躙された。

それだけ手札があるという事である。

なんだか想定していたよりも手っ取り早く倒せたのだ。

竜は長命種で体格は大型種に並び人語を理解する程の物だったが慢心王していたのが大きな敗因でもある。

お陰で時間は食ったが被害は少なく倒せた。

 

「問題は、この巨体と財宝だな」

 

竜とは財宝をため込むものだ。どこから調達したのか知らないが金銀財宝の山である。

加えて竜の骨や鱗などなどの肉以外は船の補強材にも使える。

肉は現地食料分は取っといて、残りはカルデアに食料として転送することになった。

 

「どうする? マスター?」

「所長に連絡して人員を回してもらおう。アステリオスなんかが居なきゃ無理だぞこれ」

 

竜種は巨大なのは言わずもかな。

持ち出すには相応の手間がかかる。

という訳で達哉はオルガマリーに連絡し人員を回してもらうことにした。

 

「待たせたわね」

「・・・所長、そして宗矩さん、その恰好は一体?」

 

そしてやってきた所長は肉解体業者の様な恰好で両手には肉切り包丁。

尚宗矩も同様の格好だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで、何とか解体、搬出を終えて、すっかり日が沈み。

夜へとなっていった。

船に戻るのも面倒なので、皆でバーベキューと洒落込んでいた。

竜の肉はぜいたく品だが量が多く魔猪よりも臭みがなく食べやすい、

バーベキューにはうってつけと言えるだろう。

小分けにした竜の肉を串に野菜と共に刺してオルガマリーが焼いていく。

ちなみにこのバーベキューセットはオルガマリーの私物である。カルデアでの所長業がひと段落着いたら。

フランスの観光地あたりでやりたいと思っていたから購入したものだ。

ちなみに船からは全員降りている。

いわば一休みという奴だ。

それぞれが肉をほお張り、ベルベットルームやらサトミタダシで購入した発泡酒を楽しんでいる。

こういうとベルベットルームも車内販売しか利用してないように思えるが。

実際にはアマラ回廊で手に入れたスキルカードやらペルソナ、不要な概念礼装をスキルカード化させたりなど。

ちゃんと本来の意味での使い方もしている。

特にオルガマリーはまだペルソナ使いとしては中堅なのでスキル調整やペルソナ合体はキッチリやっているため使用頻度は高い。

サトミタダシも無論薬品調達としてフルに活用している。

何もカップラーメンだけではないのだ。

オルガマリーはステーキも焼いていた。

骨付きの1.2kgの大型ステーキである。

討伐した竜種の肉には寄生虫が居ないのも確認済みだ。故にミディアムレアでの新鮮な肉である。

最もオルガマリーは熟成させたいようだったが、この際文句は言っていられない。

その大型ステーキをちょっと離れたところで達哉は味わいつつ食べていた。

お供の飲み物はキリン生である。

すっかり飲酒にも慣れてきたころ合いである。

オルガマリーは必死に肉を焼き、海賊や英霊たちは薪を囲んで絶賛キャンプファイヤー中だ。

マシュも混ざってげらげら笑っている、時にはこういうことも良いだろうと思いつつ。

木の板上に熱した鉄板を乗せてその上にさらに乗せられた肉塊をナイフで切りオルガマリー自家製のステーキソースをちょびちょび掛けながらフォークで口に運ぶ。

実に美味いなと思いながら夢中になって食べる、白飯も欲しいところだがそういう状況じゃないので我慢。

喉が渇いたり口の中が脂ぎってきたところで、それらをビールで流し込む。

ああたまらない父さんや兄さんが夢中になるわけだとまた一歩大人になる達哉であった。

そんなわけで黙々と一人で食べていると。

そこにアルテミスとオリオンがやってくる。

 

「達哉君、こんなところでなにしてるのー?」

「うめうめ、焼いた肉うめ」

 

アルテミスはふよふよと浮ている。オリオンは肉汁が滴って彼女にかからないように器用に串肉を食べている。

 

「いや時々こう一人で食事をしたときがあってな」

「あー孤独のグルメってやつー?」

「・・・? 孤独のグルメ?」

「アレ? 達哉君知らないの? 表では有名な漫画だよ」

「ああ、それなら年代がずれているからかも」

 

達哉が過ごしていた世界の年代は1999年で時間が止まっている。

達哉以外が居ないのだ文明の発展がしようもなかった世界だ。

そしてこの世界は2015年。達哉の居た世界よりも時間が進んでいる。

達哉の知らない漫画があっても不思議ではないのだ。

最も達哉が高校一年の時に単行本が出ている作品なわけだが家庭事情でそんなことをしている場合でもなかった。

というか当時はマイナーだったのだ孤独のグルメ。

 

「まぁそれは置いておいて、忠告に来たんだ私」

「忠告?」

「ええ、忠告、昼間、神々に狙われてるって話したわよね?」

「ああ」

「アレ冗談じゃないから、神は奇麗で強い心に惹かれるの、私がダーリンに惚れたみたいにね」

「は、はぁ・・・」

「だから、主神クラスなら現状、君を利用しての新世界創生まで行かないとはいえど星座にするくらいはやるかもしれないし、美女神ならコレクションとして求めてくる可能性があるわ。現に私だってダーリンほどじゃないけれど惹かれている、アナタの在り様は強すぎる、英雄とは別ベクトルで。人とはこうあるべきと思い知らされる」

「俺は・・・そこまで大した人間じゃない、一度は滅ぼしているし、二度目は兄さんたちの助力があったからこそ決心がついただけだ」

「ペルソナという神卸を使い、時を止め、あらゆる魔を屠る力を得ても、自分は等身大の人間と言えるほど人間強くは出来ていないのよ。当たり前のことを当たり前に。英雄としてではなく人間として使命を全うするというのはまた英雄とは別の強さなのよ、英霊は武の極致ではあるけれど、人間としての強さは別、人間としての強さが英雄にはないから影に踊らされて悲劇を演じて失意に沈む、けれど君は立ち上がれた。それは称賛される行いと同時に神が欲っしてたまらないものだもの、神なら脳を焼かれるわ」

 

 

英雄と超人の強さは別ベクトルの強さだ。

達哉は英雄ではなく、一時的にとはいえ超人としての精神を発揮した。

故に影を追い返し阿頼耶識の底に沈めることに成功したのだ。

だからこそ神々は求めるだろう、達哉の心の強さに魅せられ彼に要らぬちょっかいを掛ける奴も出てくる。

新たな人類の設計図として。あるいは強く美しい魂に惹かれてコレクションしたがる奴もいるかもしれないのだとアルテミスは忠告する。

現に世界の境界線があやふやだ、本霊とはいかずにしても分霊がアルテミスのように呼び出されている可能性も高いのだ。

現にアマラの魔王たちは裏技使って干渉してきているがゆえにだ。

そんなことを告げられ、達哉はいったん食事の手を止めて、懐からジッポを取り出し、蓋を開けて閉じて音を鳴らす。

 

「そう、その火付けの器具もそうよ」

「このジッポの事か?」

「ジッポっていうのねそれ、まぁそれも狙われる原因。権能的でもなく魔術的なものでもなく、心のみで込められた絶対的契約が祈り込められている。それは神にとっても万物の宝石に勝る輝きなのよ。アフロディーテあたりなら奸計張り巡らしてでも殺してでも強引に奪いたくなる代物でしょうね」

「・・・悪いがこれは譲れない、誰であろうとだ」

「それだから余計に両方欲しがってくる神がいるってわけ。私は月の女神だからそこまでもないけれど美神あたりならさっき言った通りになるわ」

 

一度は破ってしまった誓、だからこそ今度は破れぬという誓。

魔術的にも、権能的な契約もない、破ったところでなんのデメリットもないけれど。

それでも破れば本人の精神がズタズタになるくらいには重い重い誓いと想いがこもったジッポは。

奇麗で不変的な思いと誓いが籠っているがゆえに神々の目を奪う代物だった。

だからこそ神々は自分たちが持つにふさわしい供物として見定めているだろう。

美神なんかは下手すれば殺してでも奪い取るとなりかねない代物だった。

 

「・・・冷えたから温めなおしに行ってくる」

「そう、じゃ私からの忠告はここまでだから。皆と楽しんでらっしゃい」

 

こうして達哉は冷えたステーキを抱え、今だ食事にありつけず、ヤケクソになりながらビールを飲みつつ肉串をかじりつつひたすら肉を焼くオルガマリーの元に向かい、ステーキを焼き直してもらいに行く。

そんな後姿を見ながらオリオンはポツリと一言。

 

「ほんと、なんであんな普通の小僧が神々に魅入られるような存在になるかね」

「それが私たちの目指したモノだからだよ、ダーリン」

 

皮肉だった。彼が望んでいたのは普通の物だった。

だが手に入れるためには強くなるしかなかった。

普通を望んでいるのに特別にならざるを得なかった。

嗚呼、それはなんて。

 

「皮肉だな」

 

皮肉の利いた物だとオリオンは思うほかなかった。

 

 




アルテミス「たっちゃん、糞弟にこんなに似てないのに何でペルソナ、アポロなの?」
アルテミスの逸話と姉弟関係洗っていたらアポロンクズ過ぎてワロタ。
そりゃアルテミスもこんないい子がアポロが専用ペルソナとか女難しか似てねぇ!!って困惑しますわ。
あと名無しの長命竜さんですが慢心王したのでキンクリです。
基本本作のモブで慢心王したらキンクリされます、あしからず。

女神からするとたっちゃんのジッポは宝石に勝るとも劣らぬ代物です。
そりゃ奇麗で破れない思いが籠っているものですからね、アルテミスも警告しますよ。それこそアフロディーテやイシュタルあたりならたっちゃんから殺してでも奪い取る足りうる品物です。
下手したらたっちゃんの魂もセットで奪い取りかねない案件です。
なお第四後のイベ特異点で超強化される三人相手にこれするとまぁひどいことになりますが

ああデミヤの過去が明らかになるたびに心の中のニャルがぴょんぴょんするんじゃ~(▼∀▼)

やばいな先にCCCコラボやりたいくらいだすわ。キアラとデミヤがひどい目に合うけど。

でもね第一部のスケジュール埋まりきってんですよねぇ。

ギリギリ、お虎さんが幼少期の頃のぐだぐだ越中国にやれるくらいかな。
幼少期のお虎ちゃんとたっちゃん達が出会い上杉家でグダグダしつつお虎ちゃんの脳をたっちゃんとオルガマリーとマシュがこんがり焼くお話。
あとはZEROコラボ特異点かなぁ、結構スケジュールギリギリです。
他のイベントは本編と変わらないのでキンクリしますのであしからず。

あと本カルデアでは黒王のような文句を言ったら一か月間はMRE強制接種の刑にされます。
たっちゃんたちはメンタル優先という事とオルガマリーが食材ため込んでいるので毎食オルガマリー手製の手料理ですが。
他はリソースが少ないため、たっちゃん達に頼み込んでベルベットルームやサトミタダシなどで狩ってきてもらったコンビニやら駅弁。
リソースが少し残った時、食堂をエミヤとウォンが開いて日本食か中華か時々食える仕様です。
故に文句を言ったらMRE一か月の刑が待ってます。


そんで次回は再登場、奥様の回になります。
イアソントラウマ再発回、またたっちゃん、オルガマリー、マシュがメンタルケアに奔走するの巻き。

あー早く第四特異点やりてぇー、第四特異点はニャルがニャルやる特異点ですからねぇ。
でもその前にこの第三特異点と水着イベやんなきゃ(泣き)
という訳で体調がなぜか前に戻りまして一日中寝たきり状態ですので次回も遅くなります。
それではまた次回によろしくお願いします

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