Fate/Grand Order たっちゃんがグランドオーダーに挑むようです 作:這い寄る影
霧慧トァンさん。
伊藤計劃「ハーモニー」より抜粋
凄まじい金属音が鳴り響いた。
双子の合体攻撃である。
熟達した盾使いを誇るマシュでさえ、衝撃を逃がしそこね。
体勢が一瞬崩れる。
それを双子は逃がしはしない。
シメオンの銃撃を防げばアンドレアの刃が。
逆もまたしかりである。
片方防げば詰まされる誤差の無い連携だ。
双子だから出来るのか血がにじむような特訓でもしたのか。
だが達哉にとっては関係がない。
マシュの気分がすぐれない。このままでは押し切られてしまう。
如何にもしかしてマシュの妹たちであっても、こちらを殺しに来ている以上。
やらねばやられる。故に覚悟を決めて
「アポロ! ノヴァサイザー!!」
「マハコウガオン!!」
停止時間は5秒。二人の首を跳ねるには十分な時間を停止させる。
がしかし停止しようとした瞬間。
達哉の視界一杯に広がる閃光
マハコウガオンによる非殺傷鎮圧使用である。
攻撃性がない分、通常のマハコウガオンと違い範囲が広い目くらましだ。
如何に時止め中でもこの光の中では攻撃は目が眩んで攻撃ができない。
それに通常のマハコウガオンでは達哉に余裕で避けられるしマシュには防がれる。
だからこその眼暗ましとして使用したのである。
そうこうしている内に停止時間が終了。
双子が挟み込むように攻撃を仕掛けてくる
「五月雨斬り!!」
「イノセントタック!!」
「ちぃッ、アポロ!! ゴッドハンド!!」
孫六を攻撃から防御へ、その瞬間、アンドレアの刃が動き刀と接触、達哉は宗矩の教えを履行。
刃を絡めとるように運動ベクトルを変更させるように弾く。
そしてその合間を縫うように付いてきたシメオンのイノセントタックをアポロのゴッドハンドで相殺する。
マシュも即座に動く。停止した時間内では確かに動けないが。
それが終わったと同時に動く訓練は反射レベルで叩き込まれていたからだ。
「アハハハ!! お兄ちゃん、それは対策済みだよ~」
以前も述べた通り対抗策は第一特異点のジャンヌ・オルタが取ろうとした対策のように。時止めしようとも回避不可能な広範囲火力で薙ぎ払う、再生力に物言わせてゴリ押す、あるいは相手の停止タイミングと間合いから停止時間を逆算し算出し距離を瞬間的に取るなどがあげられるが。
どれも人を辞めているか魔技染みた手段だ、一朝一夕でできるものではない。
だが二人は悪魔の様な物、人間ではない。
対抗手段として光属性によるフラッシュバン的運用なども可能。
時を止める瞬間を狙って場を光で満たし達哉の行動を封じる事は十分に可能だ。
双子は達哉とマシュを中心にぐるぐると周りながら絶妙な連携で攻撃を入れてくる。
ノヴァサイザーは対策済み。
故にここから物をいうのは達哉とマシュの連携練度が二人を上回れるかどうかだ
双子の猛攻を凌ぎながら達哉とマシュは背合わせになり対応する。
「守ってるだけじゃ、勝てないよ! お姉ちゃん!!」
「そうそう、ちゃんと攻めてくれなきゃ、アハハ♪」
好き放題言いやがってと達哉とマシュの内心が一致。
こちらが攻めに転じると双子の片割れが絶妙なタイミングで妨害してくるゆえに下手に攻撃に転じられないのだ。
加えて船上だ。サタンとかメタトロンによる高火力スキルも事実上封じられている。
これではなぶり殺しに合う上に千日手だ。
どう状況を打開しようかと思ったその時でである。
「キャ!?」
「うわ!?」
双子が突然そんな声を上げると同時に。連携を乱して回避行動に移る
『うそぉ、この距離で躱せるなんて!?』
原因はDSR-50を引っ張りだしてきた、オルガマリーだった。
DSR-50を構えて二人の援護に回ったのだが物の見事に回避された。
連携練度以外にも獣染みた危機察知能力までもってやがるのかと舌打ちする。
だが自身のペルソナとDSR-50を使ってオルガマリーが援護を開始。
状況の天秤が達也側に傾いていく。
数の暴力の差もあるだろうが達哉、マシュ、オルガマリーの連携訓練は死ぬほどやった。
それこそ双子の連携を超える域で差し込みを行う
さらにサーヴァントたちは最早なれたと言わんばかりに狗兵とX−3を解体していく。
種の割れた手品程滑稽なものはないという奴だ。
いまだ数はいるが、押し始めている。
特にアステリオスが無双し、そのフォローにシグルド夫妻、ヘクトールが入っているのだ。
駆逐まで3分掛からないだろう。
「いけない! シメ~、そろそろ時間だよ」
「ええ!? ”もう時間”!?」
達哉たちの猛攻を受けても楽し気に戦っていったアンドレアが時間を確認しシメオンが口惜し気に言う。
時間、時間とはなんだと思っている瞬間にも達哉とマシュは攻めに転じるが。
その瞬間、双子の近くに二機のX−3が海中から跳躍、甲板に着陸。
ハッチを開き。双子は素早くそれに乗り込む。
「じゃ、お兄ちゃんお姉ちゃん生きてたらまた遊ぼうね~♪」
「今日は楽しかったよ~♪ 生きてたらまたね!!」
「逃がすか!!」
「先輩後ろ!!」
「ッノヴァサイザー!!」
達哉の背後から切りかかってきた狗兵二人に対し、ノヴァサイザーで対応。
孫六で切り捨てる。
そして時の流れがもとに戻ると。
X−3が機銃を乱射し後退、達哉に向かって銃弾を放つがマシュがそれを防ぐ。
水柱を上げならまんまと双子は逃げおおせた。
「逃げられたか・・・」
「ですね・・・って先輩!?」
「これは!? 総員退避!! 退避しろー!!」
マシュも達哉も全員が気づく。
狗兵の後ろ首当たりから陽炎が漏れて、生きている狗兵も死んだはずの狗兵が痙攣する。
最悪の事態が考慮でき、達哉の警告もあって全員が後退。
万が一があってはいけないのでマシュも宝具を展開する。
それと同時に狗兵たちが爆発、宝具ランクにしてCにプラスして壊れた幻想ほどの威力の爆発が起き。
嵐の中に一瞬閃光が走りぬける。
交戦区域の甲板はボロボロになっていた。
幸いなのが幻想種の素材や魔術の重ね掛けの影響で航行に支障はないが大分やられた。
その時である。
『高度一万にミサイル状の飛翔体確認、高速落下、位置船上!』
『魔力反応特大、おそらくではあるが、高出力魔力炉心だったか? 魔力生成する炉それでいいんだよな?ロマニ?』
『ああ、それで間違っていない』
『よかった。とにかくカルデアの感知範囲外からの射出だ。それと聖杯には及ばないにしても、その船をふっ飛ばすくらいのエネルギーを持った魔力炉心を弾頭にしたSLBMと推測。宝具で防がなきゃさっきも言った通り船ごとふっ飛ばされるぞ』
「了解!! マシュ、マリーさん宝具とスキル準備、合体宝具で防ぐぞ!!」
「「了解!!」」
二人とも宝具を展開。
形状はSLBM。カルデアの感知外からの射撃だ。
恐らくポセイドンからの攻撃だろう。
弾頭の反応を確認したところ。高出力魔力反応を検知。
準聖杯レベルの魔力を内包したそれは。直撃すれば。いかに強化した黄金の鹿号であっても吹っ飛ぶ威力を誇っている。
故に一応をもって、達哉。マシュ。マリー・アントワネットの合体宝具による絶対防御壁を張ることにした。
「
「
二人が宝具を展開。さらにそこに。
「アポロ! ノヴァサイザー!!」
「ジュノン! クリスタルパレス!!」
ジャンヌ・オルタの時と同様。ペルソナスキルと宝具の魔力を同調させた。
時間停止という絶対防御壁を張り巡らす。
「「「
接触すれば時間停止と言う絶対的防御。
これをぶち抜くにはジャンヌ・オルタ級の火力を持ち出すほかない。
本家本元の一撃はテクスチャ事撃ち抜いたアレ級の火力。
如何に神霊と言えども易々と用意できるものではない。
『3、2、1、インパクト』
アマネのカウントダウン終了と共にこの海域の嵐が吹っ飛び青空を見せるほどの閃光が周囲を覆った。
それから10分後。
「くそ!!してやられた!!」
会議室でドンと机を叩き孔明が頭を抱える。
結果的に船は無事だった。さすがにジャンヌ・オルタ級の火力はなかったのか。
ミサイルによる損傷は無し。
ただし狗兵とX−3による被害はある意味で甚大だった。
宝具抜きとはいえ甲板で盛大にドンパチやったせいであちこち銃痕、剣傷にX−3という重量級が複数機暴れ話待ったせいなのと狗兵の自爆でボロボロだった。
加えてサーヴァントたちも無傷と言うわけにもいかない。
幸いにも達哉のアムルタートとマリー・アントワネットのジュノンにオルガマリーのパールヴァティという回復役がいたことで何とかなったか。
過敏に反応しすぎた。
「こちらの手札が割れてしまった」
狗兵と双子が乗ったX−3以外のX−3は撃破したが。
逆に言えば双子の乗ったXー3は取り逃がしたわけで。
おもくそに敵に戦力がばれてしまった。
加えて「
これがばれたのが痛い。あの程度なら「
故に過敏に反応しすぎた結果。次の弾頭はもっと高火力になってもおかしくないのだ。
それを「
『ああ、その件だが。アメリカやロシアが開発中の新型弾道ミサイルに酷似していたな。タイプが二種類あって本体自体は高度5000mで炸裂、それ以下の物をクラスターを広域散布するタイプと燃料気化爆弾の要領で薙ぎ払う代物だ』
「なに? それは本当か?」
『本当だとも、試射会にマリスビリーがお呼ばれしたときに護衛で付いていってこの目で見たからな。実用化の難しい核弾頭や水爆弾頭の代用品らしい、データを見た感じミサイルの概要は後者だろう威力はおおよそその時に見た奴の二倍はあるが。ジャンヌ・オルタの暴発に比べれば可愛いもんだ』
だが現代兵器に詳しいアマネが知識を出し心配し過ぎだと言う。
現代兵器風の攻撃であればデータを見れば正しい解釈ができるのが彼女の強みだ。
元非正規特殊作戦群として働いていたことは伊達ではない。
古今東西の開発中、試験運用中、歴史の闇に葬られたヤバい兵器やら魔術師やら相手どってきた歴戦の兵士だ。
現代兵器の様なものを相手が持ち出してくればデータと目視情報さえあれば速攻で分析できる。
『飛行していたのはプレデタータイプの無人機だな、搭載ミサイルは対空対地のマルチタイプ、兵員輸送をしていたのは、前にも言った通りだが、積んでる推進器が違うなアレは見たこともなければ、風の噂で開発していると聞いたことはない、おそらくポセイドン製のオーパーツだろう』
「アマネ氏、すっかりポセイドンの事を兵器扱いしておりますな」
『そう判断するのが、的確だろう? 黒髭、アルテミスやヘクトールの言い分を正しく解釈すると、連中宇宙から飛来した超文明だろう? 神霊の在り様曰く元からあったものが神になったもの、神として生まれ変わったもの、そこにあったものが神と定義されたものなのだから、ギリシャ神は証言と合わせておそらく三つ目のタイプなのだろうとな、ともすると現代兵器の未来版が攻撃手段なのも納得がいく』
「古来より宇宙から来るものの痕跡は魔術界隈でも恰好の研究材料で存在証明は成されている。最もギリシャ神がロボやら宇宙戦艦の類なのは想定外だったがね」
アマネが解説し孔明が補足を付け加える。
アルテミスから真体のことを聞かされてさすがに全員が頭抱えたが。
真体自体はすでにセファールとの攻防戦で破壊されているとのこと。
だからこそおかしいのだ。ポセイドンだけが真体を取り戻しているという事に。
もっともそれもすぐにわかった。流されている噂にポセイドン関係がありそれで真体を取り戻したのだと推測される。
そういう訳で閑話休題とばかりに次の話に移行する。
『とまぁ楽観視はできないが想定道理の戦力で大丈夫だと思うぞ、もっとも元軍人として言わせてもらうなら、遊ばせておく戦力が欲しいところだが』
「私もそう思うが敵の戦力がはっきりしないことにな、アルテミス、もう一度聞くが。真体に関する情報を持っていないのかね?」
「ごめんなさいねぇ、私も真体失った衝撃やら信仰で体を取り戻した影響やらで当時の情報はほとんど持っていないのよ」
アルテミスから情報を抜こうと思ったが真体が破壊された影響で情報消失。
信仰の力で何とかバックアップボディを形成し神格として成り立ったものの、そのおかげでデータバンクとして機能していた真体が消失。
過去のデータは完全ではないにしろ大部分が消失しているため。
ポセイドンのスペックは不明だった。
『だが、物差は必要だろう。一応基準となるものがある、絶対ではないが参考になるはずだ』
そこで似たような物を物差にすべきだとアマネがUSBを懐から取り出し。
その内部データを公開させる。
其処に写されていたのは超大型潜水艦と言うべきものであった。
「アマネさん、こんなものをどこで?」
『いろいろあってロシアに奪取されたソレぶっ壊す羽目になってね、その時の雇用主から開示されたデータだよ、もうかなり前になる、ちなみに現状の紛争レベルだとオーバーキル過ぎて予算も食うわで三機作られ、一機がさっきも言った通り私たちがロシアのドッグに入ったところをテロリストに偽装してジャックしてぶち壊して、残りの二機は試験運用終了後スクラップ行だ』
達哉は若干引きつつ情報の出所を問うとアマネは懐かしそうに言った。
やっぱこいつおかしいよとカルデア鯖たちはドン引きだ。
海賊たちはすげぇなこいつとビール(アサヒスーパードライ)を飲みながら笑っている。
オルガマリーはそんだけ実力あれば。全員単位で雇うわこりゃと眉間を右手で揉んだ。
『まぁ相手は元宇宙戦艦だ。参考程度にとどめておいてくれ』
提示したのはあくまでも潜水艦、相手は元宇宙戦艦だ。
本当に参考程度にしかならないしさせてはならない。
まんまのスペックで算出戦闘すると痛い目見るからだ。
だからここはフワッと参考にとどめておくのが吉だろう。
「イアソンさん、あとどのくらいでアトランティスに付きそうですか?」
「あと二日三日ってところだな。台風の風で早く動いてるしな、この船」
「その間、さっきみたいな奇襲やらポセイドンやらの襲撃が無ければいいけれど・・・」
マシュの言葉にイアソンはそう答える。
そのついでに憂鬱気味にオルガマリーがぼやいた。
確かに、残り到着時間が二日と三日と言われれば誰だって憂鬱になる。
なんせ相手は弾道ミサイル持ちだ。
射程はアーチャーの平均射程距離の比ではない。
相手は一方的に殴れるのだ。
加えて今回の様な奇襲攻撃も可能となれば気が重くなろうというものだった。
「兎にも角にもアトランティスを目指し、そこで一旦休憩だな」
「船の修理もね」
とりあえず奇襲を警戒しながらアトランティスを目指し。
アトランティスに付いたら休息と船の修理をしなければならないという事に、全員気が重くなった。
一方そのころ。
『やらなくて良いのか?』
「いいでしょう。直接対決になったとしてもまだ狗兵とX−3に各種ミサイル。さらにはプレデターですらあるのですから」
ポセイドンの問いに怖気すら感じるほどの美貌で微笑み。
ミァハはそう返す。
カルデア陣営は奇襲を警戒しているが。それはアトランティスに付くまでずっと気を張っていなければならないという事である。
肉体的疲れはサーヴァントに発生し得ないが精神的疲れは別だ。
それにこの嵐の中を如何に強化した船とはいえ行くのには精神的疲れも別口で累積する。
故に何時奇襲するか分からないという情報を押し付けるだけでカルデアは大幅に疲弊してくれるのだ
「だからあの場で私たちは大きく手札を開示し情報を押し付けた。あとは勝手に損耗してくれるでしょう」
『しかしアトランティスに着いたらどうする? 我が民たちを統制するシステムは魔術王の聖杯で駆動しているのだぞ?』
「まぁそれは確かにそうでしょうね。ですが神であるアナタ様は軽く決断できますが。島民を皆殺しにするという選択をただの人間が取れると思いで?」
『だが万が一という事もある』
「アハハ、それは人間を信頼しすぎだよ、人間とは基本的に責任は背負いたくないもの。だから神霊なんてものが生まれる。利益を享受するためのイコンと装置として、そして不幸なことがあれば神はそういうもであるから仕方がないと諦めをつけて責任を押し付ける装置でしかないのだから」
そう神とはそういうものだ信仰すれば利益を享受させる、反面、理不尽が起きれば神のせいにだってできる。
現に神は理不尽を強いる場合もあった。
神とはそんなものなのだ。信仰という形で生み出された人にとっての都合の良い物。
希望と諦観を押し付ける都合の良い装置でしかない。
『ふむ・・・それもそうか』
「だから安心して、彼らに手を下す余裕はない」
ポセイドンを安心させるかのようにミァハは説く。
ポセイドンも安心したようだったが。
(まぁそんな奴らだったらここまで来れるはずないんだけどね)
ミァハは内心嘲笑していた。
やはりポセイドンも所詮は神だ。人間の意志力と言うものをなめ切っている。
それも仕方がない側面もあろう。大多数の人間が彼に縋りついて来たのだから。
だが彼らは違う、一部成長過程にはいるが達哉は背負うだろう。
故に思うのだ滑稽だと。
達哉には取らずとも良い責任を背負う滑稽さを。
そして自分たちは楽でありたいと他人に責任おっかぶせる民衆を。
やりたいことの為に責任を発生させておきながら自分では取りもしない特異点の中枢核連中と黒幕を。
そしてそれ等こその負の側面こそ影の領域であるがゆえに自分自身も含めて嘲笑い。
影はそれら全員を試練に叩き落とす準備を始めていた。
そして三日後
「あーしんどかったぁ」
「しんどかったのは確かだがな所長、目の前の光景から目を背けてもらうのは困るぞ」
「わーってるわよ、タツヤ」
あの後、一行はアトランティスに到着した。修理ができるサーヴァントは船に居残りとなっていた。
後は敵の本拠地アトランティスに乗り込むという事もあって護衛出ていた。
主に三人を護衛するのはシグルド夫妻だった。
黄金の鹿号をドックに入れる。
だがそのドッグや街並みが問題だった。
明らかに第二次世界大戦以降の街並みだ。
いや一部技術は現代をも凌駕している。
歪と言えば歪だった。特に電子機器の発展は目覚ましい。
住人がタブレット使っている上に、体内に入れたナノマシンで己の健康状態を確認しているという有様だった。
故にアトランティスは不気味なところだった。
更に住人が不気味だった。やり取りに手ごたえがないまるでテンプレートをなぞるような感じなのだ。
「これが人間と言えるのでしょうか?」
「いいや言えんな群体生物に近い」
マシュの疑問に孔明はそう答えた。
表上誰もが普通にしているゆえに違和感しか感じなかったのだが。
途中で気づいた。人間特有の混沌とした様相がない。
ついでに言えば顔面の造形、髪型まで均一化されており体格もある程度カテゴリライズされている。
さらに言えば意思たるものが感じられない、用意されたテンプレートの様な受け答えをされては誰だって違和感に気づく。
つまるところ、アトランティスの住人の人格設計、肉体造形は均一化され、意志衝突の発生しないようになってしまっていた。
つまるところ個人個人の自我なんぞ存在せずなんやらかの方法で他人同士の自我の衝突を取り除き一体化、共鳴させて一括的に総合合体している群体生物に等しい。
「だがどうやって・・・。噂結界では不老不死、苦しみのない世界程度だぞ。俺の時のように新人類に進化する噂なんて立っていない」
「いいや達哉。それらと新人類は同値なのだよ」
達哉の疑問に答えたのは孔明だった。
「つい最近ギリシャ基盤の魔術が衰退傾向にある。なぜだかわかるかね?」
「表には出せない科学技術が出た影響って話だけど。それが噛んでいるのかしら?」
「SOPシステムという事に聞き覚えは?」
「いえないわ」
『私はあるがな』
孔明の問いに聞き覚えはないとオルガマリーが返したのも束の間で。
返した張本人はアマネだった。
『正式名はSons Of the Patriots(愛国者の息子達)だったか、衛星経由でのナノマシンによる全体管理と兵士の感情抑制、火器管制システムだな、マスキングシステムより楽であるから一部部隊で極秘裏に運用中だっただとか。私の部隊は運用前に切り捨てられたから、詳しいことは知らんが。まぁ問題が起きて現在でも研究中との事らしい』
「そうそれだ。近年まれにみるギリシャ基板の衰退、今回の事で納得がいった。米国が極秘裏に推し進めるその計画がギリシャ基板を衰退させたのだ。根幹にあるのはナノマシン技術であることがよくわかったからな」
「それで・・・そのSOPシステムと今回の噂性にいったいどのような関連性が?」
「感情の意図的コントロール、他者との摩擦を起こす感情の切除。さらには徹底した健康管理による寿命と美容の非常的飛躍による疑似不老不死にそれに耐えれるだけの感情制御システム。それらが噂の曲解とポセイドンが齎した技術で出来上がったという訳なのだよ」
数式を分解するように孔明はそう解説する。
近年のギリシャ基板の魔術の衰退が加速するのは文明の発展に比例して。
彼らの文明に近づいているからだとか。
『というかマスキングシステムってなんだい? アマネ』
『ロマニ、アンタが知らんでどうする? ベトナム戦争以降の帰還兵問題解決のために作られたセラピープログラムから発展して特殊部隊向けに。投薬と催眠術にメンタルセラピーを使って兵士の感情を抑制する。人力感情抑制システムだ。投薬の影響で痛みだけを消してくれる、ただ不完全ではあるから研究はNASAで極秘開発されたナノマシンを利用したSOPに取って代わられたらしいがな、もっとも先ほども言った通りある問題が解決できずにいて。SOPが廃止になり、マスキング技術の方を伸ばす傾向にあるらしいが、まぁ今は関係ないな』
アマネはそうロマニに言って会話を打ち切って煙草を吸う。
そして町の広場に到着した時だった
民族衣装に身を包んだ悍ましいほどの美貌を持つ少女がやってくる。
「皆さんお久ぶり、そして初めまして、私がミァハだよ」
二コリとほほ笑んでそう自己紹介する。
まさか黒幕が出張ってくる
その場にいた全員が武器を抜き放つ。
民衆は少し驚きこそすれどすぐさま元の日常に戻っていくという異常っぷりを発揮する。
さっきも述べた通り、感情の摩擦を失っているからだ。
争いごとと言うのが理解できない領域まで来ている。
「随分早いご登場のようだが・・・何かマジックでもあるのかね」
飛びかかろうとした三人とシグルド夫妻を止めるかのように孔明が前に出て問う。
因みにいつものウェイバーらしく足が若干震えていたが。
此処で五人に暴れられてはたまったものではないと矢先に立つのだ。
「マジック、そうだね。マジックの種明かしかな、着いてきなよ、この特異点の真相と根源を教えてあげるよ」
「孔明」
「マスター、一旦武器を収めろ、ここは往来だ。住人がどう反応するかわからん。それに種明かしをしてくれるというのなら着いていっても損はないだろう」
「孔明の言う通りだよたっちゃん、何も害するだけが私たちの試練の在り方じゃないってよく知っているでしょ」
孔明が達哉を押しとどめ、ミァハは挑発するように言う。
達哉は苦虫を嚙みつぶしたような顔で鯉口を戻す。
怒っていては勝てないのをよく知っているからだ。
だが他は違う。オルガマリーもマシュも暴発寸前だ。
第一第二でのことが許せないのだ。
シグルド夫妻は第二での件があるため逆に意気消沈していた。
だが二人が暴発しそうなのも事実、同時にエルメロイ教室のいつもの光景でもあるため孔明必死に抑えることにした。
「君も無用な挑発は止めたまえ、大人げない、阿頼耶識の黒神と聞いてはいたが呆れるぞ」
「ごめんごめん、これが私たちの役目でもあるからね。法を垂れ流す存在だからこそ法に縛られるという法則は知っているでしょ?」
全てを嘲笑い者と言う特性上、この程度の挑発はジャブだとコロコロ微笑みながら尚もやめないミァハ。
孔明はため息を吐くしかない。
「故にだ二人とも一々付き合っていたらキリがない、武器を収めたまえ」
「ですが!!」
「もう終わったことだ。過ちは認めるべきなのだマシュ。他人に擦り付けていい物ではない、ただ受け入れて糧にするのだ。でなければ奴には勝てない」
「っ・・・わかりました・・・」
なんとか孔明がマシュを押さえつける。
オルガマリーは分かってはいるのか自発的に抑えた。
良くも悪くも人間性が出る、情緒の成長具合の問題か達哉は言わずもかな、オルガマリーは世間にもまれているが、マシュは温室育ちだ。
今まで人の汚い部分を見てきて悪意にさらされ続けた事がないゆえにストレス値が限界にきているのである。
現に何度か暴発している。
今の今までは敵に向けられたが暴走して味方にまで脅威を振りかざしたらたまったもんじゃないという話だ。
とにかく、この場は収まった。
故に全員がミァハの後ろをついていく。
通り過ぎるのは日常会話をしている住人達。
だが言われようのない不気味さが漂う、どことなく人間とは違う精神構造のようで。
不気味の谷みたいだなと孔明は思った。
そして進先には巨大なコンクリート作りの塔だった。
厳密に言えば高層ビルディングのような建物でピンク色の不気味なものが血管のように張り巡らされている。
狗兵が警護していたが。
ミァハのお陰で顔パスだ。
ビルに入りエレベーターに乗り込んで地下30階を目指す。
その間は皆無言だ。いいやミァハだけ鼻歌を歌っていった。
古い洋楽で詳細は誰もが知らないマイナー曲だった。
そして地下30階に到着する。
其処は広大な白い地下施設で巨大な円筒状の白いサーバーのみが置かれていた。
「これがこの特異点の元凶の一つ、ハーモニープログラムだよ」
「ハーモニープログラム?」
「そう、例えば人間の意識っていうのはね脳の欲求を表すエージェントと理性を表すものがぶつかり合ってその摩擦で生じるものが魂や意識って呼ばれている物なわけ、あるいは魂自体がハードウェアで人生と言う物で見聞きした情報から作り上げたソフトウェアから成り立つのが意識だとする。だから大まかに人格を分類するとできるけど、細かいところまで分類すると十色で無数に分岐する、だからそこから起きる君は僕とは違うというのが理由になって戦争や紛争、喧嘩、場末の殺し合いが起きるんだ」
そう戦争、紛争、場末の殺し合いから痴話げんかまで。
僕は君とは違うというのが根幹にあるのだ。
それを解決しない事には人類の完全統一なんてできないだろう。
其処に過去の怨恨、宗教観、富の格差、etc.なんてものが加わって混沌模様を紡ぎだす。
故に争いは止まらない。
「だったらその表面意識を消し去ってしまえばいい」
「馬鹿な、そんなことをすれば全員廃人ではないか!?」
「そうじゃないんだなぁ、表層意識をナノマシンコントロールすることによって均一化、さっきも言った衝突するエージェントと言うべきものを抑え込む。そして表層意識の衝突をなくすことによって人類は均一化できる、そして表層意識がナノマシンコントロールによって消えるというより抑え込まれても無意識化の選択で人は必要不可欠なコミュニケーションと日常生活を送るってわけさ、ちなみに動力は黒幕の聖杯だよ」
最低限の選択肢は無意識で。それをさらにナノマシンコントロールすることによって代行。
他者との意識同士の衝突をなくし争いを限りなくゼロにし完璧な社会福祉をなすのがこのハーモニープログラムという訳だ。
「こんなのただの動く肉塊生成機じゃない!!」
だがよく考えれば人類の意識を殺しナノマシンと言う装置を使っての強制操り人形システムの様なものだとオルガマリーは吠える。
「所長の言う通りだ。これは俺たちの先人が積み重ねてきた高徳に対する冒涜だ。第一に自分で選んで抗うのが人間だろうと貴様が嫌味交じりに言っていったじゃないか!!」
達哉もオルガマリーに同調し言葉を口にする。
お前の言っていることは自分自身にぶっささるブーメランだと指摘する。
「うん、君たちの言っていることは実に正しい。だけどね、現実は君たちと同様に戦える人なんて少ないんだよ。だから君たちはあの本体気取りに選ばれここにいる」
現実と戦える人間なんてごく一握りだ。
現代に入り、おおよその価値観が飽和した現在。
何が正しいのかという永劫の問いと戦い続けられるほど人類は強くはない。
現代でもそれなのだ。航海時代の一部の海賊の華やかさに目が行きがちだが実際のところ。
何時襲われるかも分からず富まずという一般人にはつらい時代でもある。
眼を背けてハーモニープログラムに逃げたくなるのもわかるという物であるが。
一度受けたが最後、それは自分自身の人間性を捨てるという事に他ならない。
「そこをどけニャルラトホテプ」
達哉がアポロを召喚し、鯉口を切る。
システムの事はよくわかった。
要するにこのシステムが時代を歪ませている元凶の一つなんだろうと思い。
破壊を決意する。
『やめろ達哉!!』
それを制止したのはアマネだった。
「なぜです、アマネさん」
『今ここでシステムを破壊すれば、アトランティスの住人が全員死ぬぞ!!』
「さすがは元米国非正規特殊作戦群タスク404の長、システムをよく理解しているね」
『黙れ、貴様、破壊した後で事実を告げるつもりだったな?』
「問題ないでしょう? なんせ特異点を直せば全員戻ってくるんだもの。気兼ねなく殺してもチャラなんでしょう?」
『それはそうだが・・・』
「アマネ、住人が全員死ぬってどういうこと?」
『先も話したSOPシステムの欠陥だよ、所長、なんやらかの形でシステム化から離れると、今までナノマシンコントロールしていたストレスや恐怖や後悔がぶりかえして。良くてPTSD発症、悪くて廃人だ。SOPより強力なナノマシンを使っている以上、もしシステムが停止したら・・・』
「―――――――」
そうハーモニープログラムで使われているナノマシンはSOPより数段凶悪な代物だ。
もしシステムを停止させれば火を見るよりも明らかである。
ストレスによる発狂からの自殺、最悪は脳の神経が切れてからの脳溢血まであり得るのだ。
加えて肌から感じる五感もコントロールしているとすれば、いきなり住人からすれば灼熱の砂漠か極寒の表土に叩きだされることと同意義である。
「まさか貴様、これを狙って選ばせるために!!」
孔明がミァハを睨みつければ、彼女はコロコロと嗤っている。
「いや施行初期ならそうはならなかったんだよ、でもね君たちは日数を掛け過ぎた。結果住人たちはシステムに慣れ切った訳だ」
「・・・っ」
「さぁ選びなよ、アトランティスの住人か人理か。誰がどう責任を背負うのかしら?」
クスクスとミァハが絶句する一同を嘲笑う中で。
達哉が鯉口を切る。覚悟は決まった後は背負うか否かだけだと苦渋の表情で決心し。
その肩を掴んで止めるものがいた。
シグルドだった。
「君はまだ若い、こんなものを背負う必要はない」
「しかし」
「だからこその我々がいるのだ。達哉。責任を背負うために」
そう大人としての役割を果たすために呼ばれてきたのではないかと。
故に達哉を制止し背負う覚悟をシグルドは決めた。
「
そして夫と重荷を分けて背負うという決心と共に。
ブリュンヒルデが宝具を発動、サーバーの外装をえぐり飛ばす。
そしてその中にはあらゆるコードにつながれた聖杯があった。
「シグルド!!」
「応!!」
そしてシグルドがすかさず右手を突っ込み聖杯を掴んで引き摺り出す。
コードがブチブチと引き千切れられ。
聖杯が完全に引き摺り出されると同時にサーバーが機能停止した。
「ふぅんそういう結果になるか、成長したね二人とも」
「貴様に言われても嬉しくないがな」
「次はアナタでしょうか、悪神」
「いいや私はここで一旦退場させてもらうよ、ポセイドンに君たちを通したことがバレたら事だからね、それじゃ次はポセイドンで会いましょう」
そういってミァハは霧のように消えていった。
それと同時にカルデアから通信が入る、ロマニだった。
『聞こえるかい、六人とも!! 湾口施設にミサイルが叩き込まれた。それと同時に膨大な魔力を沖の10km先に感知!! 反応とスキャン結果を言うとポセイドンだと思われる!!』
「船は無事なの!?」
『アントワネットが防いでくれたから安心して、君たちが其処から着くころには出航の準備が整っているはずだ』
「わかったわ、急ぎましょう」
「ですね、特異点最後の異物、ポセイドンを倒して」
「ええ人理を修繕するわ」
この特異点の異物は二つあった。ポセイドンのナノ技術と噂と黒幕の聖杯で具現化したハーモニープログラム。
そして野良聖杯を持ち、尚且つ噂によって真体を取り戻したポセイドンの二つだ。
6人は脱出する。
外はひどい惨状になっていった。
ナノマシン制御を失い、発狂して他者に襲い掛かるもの、首を吊るもの、刃物で自害する物に。
他人と殺しあうもの、皆理性が吹っ飛び地獄の様な様相を呈している。
「駆け抜けるぞ」
だがそれに付き合っている時間はない。
全員で一気に駆け抜けるぞと指示を達哉が飛ばし。
全員一斉に走り出す、孔明は純粋に身体スペックが低いのでシグルドに抱えてもらっていった。
そしてマシュはこの光景を見て思う。
ハーモニープログラムは人を殺すと、適応すれば争いこそないが意識を殺しテンプレートだけを行う人形に仕立て上げてしまう、笑顔が其処に合ってもそれは全くの偽物だと。
そして適応外になってしまえばストレスで自死だ。
笑えない冗句でもある。
更に怒りが沸いた、ミァハに対してだ。
もしシグルド夫妻が背負わなければ民を皆殺しにしたという責任を負わされていたかもしれないからだ。
状況を操作し、選ばなければならないを強要するニャルラトホテプに対し怒りがこみ上げる。
同時に何もできない自分に対する情けなさも出てきていた。
だって現状。こうやって苦しむ人々を見捨て、襲い掛かってきた奴は盾で殴り飛ばし、見捨てる。
―ああ、もっと力があるなら―
そう思っても仕方の無い事だった。
ドックに近づくと、船に残った全員がバリケードをヘクトールの指揮下の元作り上げて防衛線を張っていった。
黄金の鹿号には「
ミサイルの直撃から守ったのは本当らしい。
「皆早く!!」
ヘクトールが腕を振るって6人を誘導。
6人がバリケードを超えたのち、陣地を放棄。
船に乗り込んで急いで出航する。
マリー・アントワネットは次弾が来ないのをカルデアに確認し「
船がそれと同時に出向する。
『こちらカルデア観測班、8km地点に超大型の反応あり、迎撃準備されたし』
「オルガマリー了解、ダヴィンチ、石割機の準備は?」
『ちゃんをつけてくれ給えよ所長、準備は出来てるいつでも』
「タツヤ令呪準備、エミヤも固有結界の展開準備!」
「「了解」」
「他の面々は作戦会議通りの配置についていつでも乗り込めるようにして、じゃあいくわよぉ!!」
第三特異点の最後の攻防戦が始まる。
二回も文章が消し飛びかけたので焦った自動保存はありがたいですねほんと。
という訳で徐々に敵ネームドに通用しなくなってきたノヴァサイザー。
まぁニャル&閣下&四文字のネームド手駒は対策持ってるから仕方ないね。
ポセイドンの装備は独自設定です。
本作のカルデアはエミヤを酷使することによってポセイドンを座礁させる&障壁突破の手段があるので。
盛らせてもらいまいした。
モデルは言わずもかな空のACの方のシンファクシ級潜水空母です
ハーモニープログラムはまぁニャル的には黒幕さんの理論否定と第五異聞帯の否定のための予習ですね。
苦しむ航海時代の人間にプログラムの噂を流し広いめて黒幕聖杯とポセイドン技術を融合させて具現化させました。
優しいですねニャル様(白目)
あとがっつり用語としてSOPシステムも出したのですが今回っきりの一発裏設定なのですのであんまり気にしないでください。
型月世界の軍事の裏側じゃSOPシステムやマスキングシステムくらい実用化か試験運用されている可能性は高いです。
なんせ神の杖を実用化しているみたいですし。
という訳で次回から戦闘回が連続します。
マシュがブチギレする日も近くて作者の自分としてもわくわくすっぞ。
つまりどいう事かって?
シャドウによるマシュ虐めが入ります。
そこにニャルが煽りを入れてキレさせます。
そんでマシュシャドウが大暴れして
ポセイドンが巻き添え食ってひどい目に合います。
ここ最近結構早めの投稿が出来ていますが。
次回は脳みその中に虫が這いずっているような感覚が取れず。
多分遅くなると思いますご了承ください。