Fate/Grand Order たっちゃんがグランドオーダーに挑むようです 作:這い寄る影
冥王星にだけ知的生物が生きていた。
我々の他に、そんな生物の生存は許せない。 根絶やしにしてやったよ。
ウルトラセブン 第19話『プロジェクト・ブルー』より抜粋。
歯車で覆いつくされた夕日の元。
達哉たちはポセイドンの後方甲板に着陸する。
「オールコール!」
そして着くなり達哉はサモライザーを抜き放ち、サーヴァントを呼び出す。
クーフーリン、シグルド夫妻、森長可が呼び出された。
「長可さんはクーフーリンとメアリとボニーで左舷を、シグルドとブリュンヒルデはすまないが二人で右舷のサブコアを破壊してくれ、先頭部は俺とマシュで破壊する」
「我が愛とならどんな敵も倒せる自信はあるが・・・マスターは火力が足りるのか?」
「そこはシヴァやサタンでどうにかする」
シグルドの言う通り、火力的に厳しいのは達哉組である。
なんせ最大火力がサタンかシヴァなのだから。
と言っても光子砲は下手な聖剣よりも火力はある、勝算は十分にあった。
「まぁそれは置いておいてだな」
クーフーリンが話題を変える。
目下の問題を目の前にしてのびのび雑談なんかしている暇すらありはしない。
「とにかく一度試してみよう、来いサタン!!」
なぜなら目の前に後方甲板のサブコアがあるからだ。
加えて近くのハッチから狗兵が出てきており。
甲板に特殊ワイヤーで固定されたX−3がワイヤーを切り離して動き始めているからだ。
だが貫通限界は調べておかねばなるまい。
万が一貫通し破壊できなかった場合のプランを出さなければならないからだ。
そこで達哉はサタンを呼びだしコンセレイト込みでの収束発射を行う。
それは一撃でサブコアの障壁を貫通し破壊した。
「総員、決められた割り当てで散開!! 時間も押している、一気に押し込むぞ」
このくらいなら破壊できるという目安ができた。
シグルドの宝具、クーフーリンの宝具で十二分に破壊できるとの証明だ。
故に全員決まった割り当ての編成で散開。
各々の目標に向かって走り出す。
だがしかし先ほども言った通り易々とはいかない。
狗兵とX−3が動き出した。
しかし。
「ヴィシュヌ!! メギドラオン!! オーディン!! 真理の雷!!」
ここは黄金の鹿号の上ではない。
ポセイドンの上なのだ。自嘲する理由がなく。
圧倒的火力で狗兵とXー3を達哉はねじ伏せていく。
無論、ペルソナチェンジの隙を狙い、達哉に銃口を向ける生き残りもいるが。
マシュが大盾で防ぎつつ前進。
大盾裏に装備されているハンドアックスで狗兵の頭をカチ割り。
大盾を使い鉄山靠を叩き込んでふっ飛ばす。
そこを達哉が刀で切るなり、ペルソナで高火力を叩き込み絶命させていく。
誤射すら気にする必要がないのだ。達哉、マシュの連携はそこまで徹底している。
故に駆け抜ける、狗兵たちはアポロの炎に焦がされ絶命し、X−3はオーディンの雷に打たれ。
それでも抜けてきた者達はマシュの大盾やら崩拳にハンドアックスに達哉の刀術で駆逐されていった。
「先輩、前方にVLSハッチ確認です!!」
「潰すぞ、マリーさんやエミヤの負荷を軽減したい!!」
「了解です!!」
前方に開かれたVLSハッチ。
それはまさにミサイルを発射しようとしていた。
此処でこれを潰せるならエミヤたちにとって大いに負担軽減になると達哉は判断。
面ではなく点でヴィシュヌによるメギドラオンを炸裂させる。
それと同時にマシュが前に出て宝具を使用。
爆発と誘爆から達哉を守る。
ミサイルが爆発しVLSハッチは使い物にならなくなる。
しかしだ。
『どんだけ頑丈なんだ・・・』
アマネが溜息を吐く通常ならこれで大体の船やら潜水艦は吹っ飛ぶ。
だというのに、損傷はVLSハッチ程度の損傷で収められた。
次弾は発射機が壊された影響で発射できないであろうが。それでも船が真っ二つにならないのはおかしい強度である。
さすがは元宇宙戦艦と言ったところか。
「時間がない、進むぞ」
「了解です、先輩」
だからと言って贅沢は望めない。
残り10分時間が切っている。
もう半分も時間を使い切ったのだ。
これ以上はさすがに構っていられない。
最も遠くのサブコアの破壊が使命なのが達哉たちなのだから。
海水で濡れて滑るような甲板の上をこけない様に走り抜ける。
そして道中の狗兵やXー3を無慈悲に葬り。
先頭のサブコアについた先には。
「アハ♪ 遅かったね達哉おにーちゃん、マシュ姉ちゃん♪」
件の双子がいた。
すでに武装を展開している。
達哉は調整に調整を重ねたアポロにペルソナをシフトする。
此処からはほぼ、アポロでの戦闘になるからだ。
第二特異点で達哉が一時会得していた力、即ち貫通の力を二人から感じるゆえにだ。
下手にペルソナの各種耐性に頼ると、それごとぶった切られるか撃ち抜かれかねない。
故にここは絶対回避をある種約束してくれる時止めを持つアポロに固定するのは当然の事だった。
今のアポロはレベルが上がっており、上昇ステータスもサタンやヴィシュヌにシヴァ、メタトロンにも見劣りしていない。
スキルもゴッドハンド及びマハラギダインなどで物理、魔法耐性どちらにも対処できるのだ。
「もう・・・言葉は不要だろ・・・」
達哉はいつもの構えを取る。
脇の下段、宗矩には居合のほうがあっていると訓練はしているが今だには完成に至っておらず。
故に抜き身であるし何時もの構えを取るのだ。
戦場で付け焼刃を披露する程、達哉も馬鹿ではない。
そんな物、命のやり取りの場では何の役にも立たないことを知っている。
ジャンヌ・オルタ戦で披露した合撃もそうだったがノヴァサイザーでどうにかしたに過ぎない。
「違うよ達哉お兄ちゃん」
「そうそう、私たちはマシュお姉ちゃんに昔のお姉ちゃんに戻ってほしいだけ」
「何を言っている」
「達哉お兄ちゃんはしらないよねー」
「まぁ別世界から来た存在だしねー」
双子はそう言いつつケラケラと嗤う。
ただ自分たちはマシュが昔みたいに自分たちに優しくしてくれて遊んでくれる姉に戻ってほしいのだと。
「人修羅の兄様から聞いたけど。定期的に記憶を消すなんて酷いよー」
「え? 私はルシファーの小父様から聞いたけど、アン?」
「そうなの? シメ?」
人修羅やらルシファーやらなにをゴチャゴチャと言っていると達哉が敵に向かって走り出そうとして気づく。
マシュの様子がおかしいことに。
右手で頭を抱えて今にも蹲りそうに震えていた。
「マシュ?」
「だ、い、じょうぶ、で・・・うぅぅ」
マシュの脳裏にあふれ出る過去の記憶。
ロマニが彼女を救い出す以前、デミサーヴァント計画が動いていた時の記憶だ。
殺菌された大部屋、少しの娯楽、自分と似たような容姿をしている兄弟姉妹たち。
日を追うごとに人数は少なくなっていく。
そういった日常。
「くそ!! どういう事だ?!」
「アレー?達哉お兄ちゃんは、マシュお姉ちゃんの事聞かされてない?」
元より徹底的にデミサーヴァント計画はもみ消された。
当事者はマシュしかおらず適合以前の記憶もメンタルを強制安定させることと反乱分子が生まれることを防ぐために記憶の消去処置が施され。
マシュ自身も知らないことが多い。
だが双子はそういった処置を悪魔王直々に外しているから全て思い出している。
そしてニャルラトホテプの精神攻撃でそれが緩んでいる。
故に双子と接触したときから封印された記憶の扉が開きかけているのだ。
如何に魔術とて完全な記憶消去処置は不可能に近い。
何かしらの切っ掛けがあれば脳はバックアップしていた記憶を思い出せるのだから当たり前だ。
魔術+ナノマシンコントロールや薬物投与でもできればそうではないのだが。
英霊を降ろす以上、それはできない相談だったのである。
故にスティーブンは根幹から破綻しているとしたわけだったが。
それは聞き入れてもらえず。現状に至るという訳である。
根本から破綻寸前なのが今になって破綻する時が来ただけの話だ。
「じゃいくよ~!!」
シメオンが開戦の号砲を打ち鳴らす、射出されるグランドタック。
それをマシュが防ぐが精彩を欠いていた。
即座にマシュの後ろに回り込んでいたアンドレアがその刃を振り下ろす。
「ちぃ!!」
グランドタックで釘付けにされ動けぬマシュのフォローに達哉が入り。
刃を上手い事弾く。
アンドレアの刃は高周波ブレードだ。
真っ向から防ぐと得物事叩き切られない性能を所持している。
故に捌き弾く、出ないと如何に孫六であろとも物理法則的に真っ二つだ。
「ねぇーねぇー思い出してよ、一緒に絵本読んだじゃない」
「そうそう、絵も描いたよー」
「あっくぅ・・・」
「お前ら、いい加減しろ! アポロ!! マハラギダイン!!」
炎が渦を巻き二人を薙ぎ払おうとするが軽やかなステップで回避されてしまう。
そしてついにマシュが頭を両手で抱えて膝を付いた。
―マシュお姉ちゃん、この本読んでー―
―マシュお姉ちゃん、一緒にお絵かきしよう!―
脳裏によみがえるのは二人と過ごした日々だ。
だがある時を境に人が減っていく。
―No1からNo18まで駄目だったか―
―何がダメなのだろうか? 素体の要求スペックは満たしているぞ―
―それにスティーブン技術局長がダメ出しを入れている、何時まで素体を生成できるか―
―それだがマリスビリー曰く、現行の素体では問題があるとしてNo26以降の後期ロッドには強化施術を施すらしい―
偶然聞いた当時の会話。
すでに18人もの同胞が死んだことを表す言葉だった。
―な、No25?! 聞いていたのか?―
―慌てるな取り押さえろ、所詮は小娘だ保安部の連中に知られるわけにもいかんしな―
そしてそのまま記憶を処理され。
また無知な自分に戻る。
―マシュお姉ちゃんどうかしたの?―
―いつもと様子が違うよ―
周りにも心配され当時は困惑しつつも何とか自分を演じていた。
―また失敗するんじゃないか?―
―前期ロッドは彼女で最後だ。これで成功しなければな―
―後期ロッドがいるだろう?―
そして自分の番がくる。
研究者たちはそんなことを言いつつマシュを連れ。
召喚台に固定して行った。
―これより第二十五次英霊降霊実験を行う、各員持ち場に付く様に―
マリスビリーがそう宣言し実験が始まる。
マシュの中に降ろされた英霊は高潔だったが。
それでも自我の薄いマシュには耐えかねない精神的激痛が走った。
精神が燃やし尽くされてしまうと思ったところで。英霊はマシュの身体を使ってひと暴れしたのち。
何かしらの交渉をマリスビリーと交わした後。
マシュの心の奥へと引っ込んだのである。
その後は簡単だ。マシュに再度の記憶処置が施され。
デミサーヴァント計画は破棄され。
後期ロッドは全員破棄処分。
双子だけがひっそりと悪魔王に選ばれ極秘裏にアマラに救い上げられた。
事の顛末をロマニが知ったのは全てが終わってからこのとであった。
そして無色な日々を過ごし、外の世界にあこがれ。
―あ、じゃ自己紹介します!! 私はマシュ・キリエライト、ここの職員みたいなものをしています。よろしくお願いします、先輩!!―
―先輩?―
―はい、ええっと年上みたいですし、ダメですか?」
―いいや気にしない。それでだ。マシュ、適当に休めるところがないか。まだ意識がはっきりとしないんだ―
―あっ、じゃこっちです、休憩所がありますので―
あの日ついに少女は運命と出会った。
「マシュ!!」
そして意識が現実に引き戻される。
自分が夥しい死体の山の中から生まれてきたことを知ったことに混乱し。
現状が見えていなかった。
そう目の前に振り下ろされる刃。
かつて絵本を読み聞かせてやったり絵を描いたりしたかつての同胞は悍ましい笑みを浮かべて。
此方を殺傷してくるという現実を。
自身のオリジンを知り取り戻し。呆然となる。
それがあまりにも致命的で、達哉もシメオンに抑えられている以上致命的で。
死が迫って。
「こなくそ!!」
達哉に庇われた。
達哉は咄嗟に右腕でマシュを突き飛ばしたのだ。
「あっ」
空中に舞うは刀を握っている達哉の右腕。
血が一瞬遅れて噴射しながらくるくると回り。
看板上に落下しそのままポセイドンの下へと落ちていく。
「アムルタート!! メディアラハン!!」
切断された上腕部から血が噴射するが即座にアムルタートを呼び出し傷を治癒する。
だがあくまでで傷口を完全封鎖し生命活動に問題がない様にしただけだ。
斬り飛ばされた腕があれば、即座に引っ付けて戦闘続行も可能だが。
生憎と腕事態がポセイドンの下に落下してしまった。
コレでは回収も出来ず、傷口をふさぐことしかできない。
更に状況が悪化、固有結界が解けて、再び嵐の海原へと戻ってきたのである。
「せ、先輩!!」
「俺の事は良い!! 自分の身を守ることに集中しろ!!」
「ですが!!」
「いいから!!」
「っ―――――――――」
達哉は上手く起き上がれない。
右腕の消失と共に体幹が崩れて無様に転げまわるだけだ。
マシュは泣きたい気持ちを抱えつつ実際半泣き状態で大盾を握りしめて立ち上がる。
「これでお邪魔虫はいなくなったねぇ」
「そうだねアンドレ、それじゃお姉ちゃん」
「「遊びましょ♪」」
「こっちは遊びでやってんじゃないんですよ!!」
オルテナウスのフレームが軋みを上げ駆動系ギアが咆哮する。
マシュと双子が走り歩み激突する。
パワーは上がっているが怒りに思考を支配されたマシュの動きは単調だった。
相手はあのバーサーカーヘラクレスに対応できる双子である。
パワーが上がった程度で対処できるような楽な相手ではない。
「クソクソォ!!」
「そんな棒振りじゃ当たらないよ!」
「棒振りじゃなくてこの場合盾振りだよシメ」
「そうかなぁ・・・そうかも、まっどっちでもいいか!!」
やることが悉く空回りし双子に翻弄される。
このままだとと思いながらも冷静さを取り戻せない。
これればかりは訓練でもどうにもしがたい。
実戦経験で覚えていくしかないのだから。
そして大振りになった盾を銃身で引っ掻けグランドタックを撃ち込もうとするシメオン。
咄嗟に身をよじって何とかするマシュ。
だがその隙をついて。
「はい、鬼神楽、どーん!!」
アンドレアが体当たりの鬼神楽をマシュの腹に叩き込む。
内臓にダメージ、多少の吐血と共にマシュの意識が飛び―――――闇に落ちた。
―私の祈りはこんなにも弱いのですか? 嗚呼力が欲しい―
そんなことを願いつつ闇に落ち。
闇に落ちた先で。
『それを実現できる力をあなたは持っているのに』
黄金の瞳になった私服姿のマシュが嘲笑っていた。
―あなたは―
『ああ私ですか? 我は影、真なる我、アナタの本音の部分ですよ』
もう一人のマシュはそう自己紹介する。
―あなたが私?―
『そうです。邪魔になる存在を問答無用でぶち殺したいと思っている本音の私です』
つまりマシュのシャドウ。
心の奥底に秘めている邪魔な者をぶち殺したいという排他的欲求そのものである。
―私はそんなことは思っていません!―
『嘘はいけないですねぇ。だって今だって思っているはずですよ、盾ではなく”剣”ならば戦力として活躍できたのにと』
―それは・・・―
シャドウのいう事は本当であった。
現に盾と言うのは殺傷兵器としては使いづらい。大盾なら猶更の事だ。
大盾より優れた武器なんていくらでも存在する。
『ね? そうでしょ? 皆を守れない盾よりも効率よく相手を殺した方が味方を守ることにつながる、本当は気づいているんでしょうもう一人の私』
戦闘や戦争においては如何に相手よりも攻撃目標を制圧するかが味方の損害規模にもつながる。
早く制圧すればするだけ味方の損害は減るのだ。
盾でチマチマ守っていることより当然の事。
だが。
『惑わされてはいけない』
其処に霧のようにあやふやな存在が出てくる。
ああこいつは私に卸された英霊なのだとマシュは直感した。
あやふやなのは自分の覚悟が出来ていないか。
あるいはと考え、騎士は言葉紡ぐ。
『これは悪魔の誘いだ。剣なんて一度握れば戻れなくなる』
『悪魔とはひどいですね、アナタもよっぽどですよ、ちゃっちゃと真名を告げてれば先輩を守れていたはずなのに・・・今更出てきて高尚な聖人ぶってるんじゃないですよ』
騎士の事を鼻先で笑い一蹴するシャドウ。
だがシャドウの言う通りでもある自ら名乗り出てさっさと霊基を定着させればこんなことにはならなかったと。
『そうすれば君自身の時間を削ることに『言い訳するな』ッ』
そうマシュには時間がない。
霊基を定着させ宝具を十全に使えれば使うほど時間を削ってしまう。
シャドウもそのことは百も承知。
だから鼻先で笑い飛ばせるのだ。
『もう一人の私もそう思うでしょう? 時間やら何やら気にしすぎて、守れなかったなんて笑い話を実現したくないでしょう? 只でさえもう一人の私は弱いんですからねぇ?』
―なにを根拠に?!―
『根拠なら沢山あるじゃないですか、第一ではマリーアントワネットを自爆させ、救助に向かうもニャルラトホテプに良い様に掌の上で転がされて先輩は死にかけて。第二では夢と気づかず夢に入り浸り、私が介入して強引に引きずり出さなきゃ、今でも棺桶の中だったし、オマケに所長が致命傷を負う事案じゃないですか、そして今回はさっさと知るか死ねしとけばよかったのに、故人に引っ張られて先輩の足を引っ張った挙句、右腕を犠牲に庇われる、それを無様と言わずして何というのです」
―あッ、あぁぁぁぁああああああああああああ!?―
そうここまでの総合点を見るにマシュは盾役として活躍できていない。
誰かが大怪我をする、あるいは致命傷込みで自爆特攻だ。
それを自覚し叫び嘆く、自分が何の役にも立っていないことに。
あれだけ盾役を自称しながらも滑稽な結果である
―私はぁ・・・私は・・・―
『さてその上で問いましょう、アナタの欲するものは”剣”ですか? ”盾”ですか?』
そうマシュの目の前にあるものは剣と盾。
シャドウは問う、何方を選ぶのかと。
本性の剣か、あるいは理性の盾か。
―私は――――――
マシュは思考を走らせる、ジャンヌ・オルタの殺意や技術、達哉が聖槍に貫かれた事、ネロの慟哭に、身を投げうってオルガマリーの示した愛。
そして今は、達哉の右腕が自身の過失で消失したこと。
だからこそ盾を担いで貝のように閉じこもっているだけではダメだ
『ダメだ!! その剣を手に取るな!!』
騎士は言う、剣を手に取るなと。
確かにそれは正しい、一度人を殺せば殺戮者か英雄の道を歩むことになるがゆえに。
だが騎士は真の意味でそれを理解していない。
もう盾でマシュは殴り倒しているのだ。
高尚で純白な心に眼を焼かれた騎士にはそれが理解できない。
失ってしまう恐怖をこの騎士は使命と自身に言い聞かせて目をそらして来たから。
故に少女が願うは。
―剣が欲しい―
そう剣と言う力を今は何よりも望んでいた。
だからよこせと言う、自身や相手に対する憤怒と殺意のままに。
ああ、あの時私はジャンヌ・オルタを否定したけれど。彼女も同様の気持ちだったのかと理解し。
今、この瞬間、マシュは力を欲する。
『アハハハハ!! もう遅かったみたいですね!! 騎士様!! いつまでも良い空気吸っているから私は私に染まった!!』
『――――――――――』
『そう睨まないでよ騎士様、それとも全員が奇麗なものを抱えてると思っていたのですか? だとすれば実に滑稽!! 白の反対は黒なんですよ? それを理解できずに人形のままくたばったのがアナタなのです』
騎士に自身の弱さに妥協したマシュをシャドウは嘲笑う
『―――――――――――!!』
騎士の姿が遠くなる、必死でマシュを止めようとしているが。
役立たずは邪魔だと言わんばかりに遠くに押し流されていく。
『そう喚かないでください、遠くもない未来、アナタも絶望しやらかす側なのですから、さて、もう一人の私』
―なんです?―
『少し”混ざって”あげましょう、私と私が相対するのは少し先の事ですけれど、先輩が死んでもらっては困りますものねぇ』
これは影を受け入れ克服したわけではない、理性と本性。
即ち本人とシャドウの利害が一致したことによって一時的に使用できるようになっただけだ。
そして理性と本性が混ざり合い、マシュの意識が浮上する。
遠くから必死に叫ぶ騎士を無視しながら。
彼女は殺意に染まり。鉄塊の様な剣を手に取った。
色々あって明かされた出自。
それはきっと奇跡だったのだろう。
だがその果てに積み上げられた犠牲はいかばかりか。
現代だってそうだ。
品種改良という名目であまり喚かないポメラニアンを作るのに。
一千頭以上の破棄処分という名の流血の上で商品が作られている。
故にありえないのだ。
マシュ・キリエライトという個体が生まれるまで屠殺された同胞がいないとは言わせない。
彼女が失敗すればと生み出されたスペアがいないとは言わせない。
マシュ・キリエライトは確かに失敗したが。彼女に乗り移った英霊はそれを許さなかった。
だから一定の成功例として彼女は生かされ後続の個体は屠殺された。
ニャルラトホテプと悪魔王の手によって引き上げられた二人以外は。
「ふはぁ」
そしてそんなこと知ったことではないという風に彼女は”混ざって”起き上がった。
心臓からアイビーとスノードロップを飾った杭が生えていた。
そして右手には持ち手の部分が鉄塊を刳り貫いて作った感もような漆黒の鉄塊が逆手に握られ。
背は骨格の様な鎧に覆われ右背から突き出た器官から片翼の光の翼を形成する。
マシュの右目が黄金色に変貌する
「え? え?」
「ハァ―――――――」
ランランと片目の瞳を黄金に輝かせながらマシュはため息交じりにアンドレアの大剣を漆黒の鉄塊で殴りつけるように受け止めかつ真ん中からへし折る。
その光景にアンドレアは呆然とし。
マシュはニヤリと嗤い。左腕でカウンターの崩拳をレバーブローのようにアンドレアの脇腹にねじり込む。
その技は完成されていた。
確実に相手の命を奪う行為であり普段のマシュからはあり得ない行動でもある。
今の彼女は彼女であって彼女ではない。
いわばシャドウが生存のために主人格変わって混ざりながら浮上してきた状態である。
故に完全な制御とはいかない。
だからこそ暴走しているのだ。
「―――――――」
吹っ飛び血反吐を吐きながらも頭部さえ破壊されなければ再生する能力を持つアンドレアだが。
今の一撃が重かった、打たれた場所の内臓は破裂し再生に時間を要する。
それまで動けない。
故に殺意の籠った声を吐き出しながらマシュが近づいて、その鉄塊を逆手に持ちアンドレアの首と胴を分離させて殺すべくだ。
「アン!!」
その様子を見たシメオンが銃撃してくる、吐き出されるグランドタック。
だがマシュはそれを冷静に見定め逆手に持った鉄塊で全てを叩き落とし平面で受ける。
そして瞬時に縮地を使って詰め寄って、鉄塊を逆手に持った右手でシメオンの左腕の銃身を思いっきり殴りつけ破壊する。
砕ける銃がバラバラになり鉄の破片が宙を舞った。
そのまま左足を軸に半反転「打開」を左腕を使って叩き込み肺などを破壊したのち。
それでもくたばらないという手ごたえ。
吹っ飛んで仰向けに倒れるシメオンは回復に手間取っているのか、数秒起きれないでいた。
マシュはそれを逃さず、シメオンとの間合いを詰め。
震脚の要領で右足でシメオンの胸元を踏み抜く。
心臓と肺に肋骨が完全粉砕され背骨も逝かれてしまうほどの踏み抜きだ。
もう少しマシュが完成度を上げていればマシュの足の大きさくらいの穴が開いていただろう。
だがそれでも生きている。
双子は人間ではない喰人と呼ばれる悪魔人間だ。
頭部を物理的に切り離すか完全破壊しなければ死ねない。
「―――――――」
マシュが殺意を滾らせ喉に狙いをつけて鉄塊を振り下ろす。
「うわぁぁぁああああ!!」
其処に恐慌状態のアンドレアが飛びかかってくる。
折れた刃を振り下ろすが。
いとも容易く、鉄塊で弾き飛ばしアンドレアをふっ飛ばす。
そして再生中のシメオンをいったん無視してアンドレアの方に疾駆。
「マシュ、これ以上は・・・」
右腕を切り飛ばされ体のバランスが取れずもがく様に這いつくばりながら。
マシュを止めようとする達哉だが。敵と味方の彼我の距離が小さい。
これでは誤射しかねずペルソナでの援護は不可能。
加えて近距離スキルも射程外だ。
手が出せない、つまり彼女の暴走を止められない。
故にどんどん殺意に染まっていき、やることが過激になっていく。
マシュは乱雑に振り回されるアンドレアの刃を鉄塊でパリィし。
左手でアンドレアの首を鷲掴みにして。強引にねじ切りにかかる。
「絞め殺す―――――――」
愉悦の表情と三日月状に口端を釣り上げマシュが笑いそう宣告する
只では殺さないと。
アンドレアの首を万力の如く締め上げる。
「アガ、ガッ、ガシュ・・・アガ・・・・」
ギチギチと音を立ててさらに首を締め上げられアンドレアは白目をむき泡を吹いている。
だがその瞬間、アンドレアの右腕が震えた。
マシュは咄嗟にアンドレアから手を放し身をよじる。
瞬間アンドレアの右腕から五本の小さな刃が出現しマシュを貫こうとしたが。
肝心の致命傷は避けられた、だが致命傷こそ避けられただけで心臓を避けて刃こそ刺さり。
マシュは吐血したものの。
「痛いですねぇ!!」
刃が刺さったまま鉄塊を斜め袈裟斬りに叩き込む。
身体の半ばまで切ったが力を入れ過ぎてそこで鉄塊からアンドレアの身体がすっぽ抜け。
そのまま一回バウンド。復帰したシメオンがアンドレアを受け止めて一旦後退。
刺さった刃はスペツナズナイフのような使い方もできるためかそのまま切り離され。
マシュの胸に突き刺さったままだったのだが。
彼女はそれを強引に引き抜く。
すると双子のようにとはいかないまでにしても傷口がふさがっていった。
鉄塊もまたペルソナである。その鉄塊の持つ大治癒促進で自動回復しているのである。
そして視界の先には怯えた双子が一組。
「――――殺しきる」
肺に溜まった血を吐き出しつつそう宣言する
もう生温い手は使わない。
自分自身の手の最大手で殺しきると思考し。
鉄塊を空に放り投げる。
生れてはじめてだった。
「クッ」
認識して心が黒く、黒く染まって堕ちて行く。
「アハッ」
元よりそこに合ったのだ。
周防達哉との契約による切っ掛けで。彼女は既にフィレモンと接触している。
情緒が育ち切っていないがゆえに。影は薄かった。
力は発揮されず。霊基と一体化したペルソナは出てくることが無かった。
だが。ジャンヌ・オルタの憎悪、ネロ・クラウディウスの慟哭。ニャルラトホテプの悪辣な奸計によって。
純白の少女は黒く染まり切った己を見る。
「まったく、フィレモンも酷いことをする」
クツクツと
ニャルラトホテプはポセイドンの管制室からそれを見て嗤う。
今の今までマシュは誤認されていたデミサーヴァントだと。
事実は違う、自身のペルソナと英霊の霊基を融合したデミサーヴァントモドキで厳密に言えば英雄の力を振るえるペルソナ使いだ。
「英霊の霊基とペルソナを融合し、出力を反転や世界と宇宙以外の既存システムを凌駕するペルソナ」
そう、反転領域や世界に踏み込まねば、威力や範囲はともかく宝具クラスの強度を出すのは不可能である。
現に達哉の出力は対軍などに匹敵するが。
概念的強度が足りないため、セイバークラスの防御系スキルやせめぎ合いには弱い。
宝具を打ち倒すことは不可能だ。
ジャンヌ・オルタは反転の領域を超えて魔人の領域にあったためあのような理不尽がなせた。
ネロはビーストの正規No持ちであったがゆえにペルソナシステムを使ってビーストが現出したからこそ成せただけ。
故にマシュの出力は異常だった。
「英雄の宝具の方向性を反転させ攻撃に転用する。絶対に殺すという殺意、人々が短いながら持つ影」
マシュの宿した英霊は守りに特化したタイプである。
その宝具の出力は心で変わる。
ああなるほど。これほど都合の良い物も早々ないなと。ニャルラトホテプは納得する。
結果。生まれたのは心で出力する剣。
殺意を強度に如何なるものを貫く不屈の刃。
「だがな、悲しいな。愚かしいな。本当にタダで済むと思っているのかな?」
殺意が純粋であればあるほど。そのスキルの強度は上がり続け、切れ味は増し続ける。
ニャルラトホテプが見ても。
ポセイドンの張る障壁を突破したうえで。
この真体を貫くには十分だ。
だがそれをやっておいてタダで済むかと言われれば別問題である。
ただでさえ強引につなぎ合わせているのに。そこにさらに押し売りの強引的改造だ。
当然ただで済むはずがない。
そして宙に放り投げられた鉄塊がはじけ飛ぶ。
厳密に言えば外装を外したという表現が正しいだろうか。
弾け飛んだ鉄塊の中から光る球体が出てきて。
マシュがそれに向かって手をかざすと剣の形へと変貌し、巨大化していく。
その大きさはマシュの殺意に準じて大きくなっていく。
所謂、限定的無限出力だ。心の力を彼女の殺意を倍加させ出力化する。
相手を殺したければ殺したいほど剣の出力は上がっていく。
剣を抜く
だがかかる負荷は
なぜならペルソナに目覚めた段階でアマラにおけるLvシステムを食い込ませられる。
MAGやマガツヒを媒介とする負荷の無い魂喰らいシステムが強制インストールさせられると思ってほしい。
オルガマリーはそれこそ生まれ的には、真っ当ではないものの人間的規範に沿う形で生み出されており。
インストールには問題はなかった。
だがマシュは違う。デミサーヴァント前提の身体として設計されたため根幹が違うのだ。
つまるところ、OSの違いゆえにオルガマリーと違いインストールされたソフトに対応できないのを強引に動かしている。
さらに体のいびつさゆえにペルソナが生み出す高負荷に耐えられないのだ。
「イノセントォ!! ダストォォオオオオオオオオ!!」
だが今のマシュこと表に出てきているマシュシャドウにとっては関係のないことだ。
自分の過負荷をガン無視して殺意を叩きつけるかのように掲げた右腕を双子に向かって振り下ろす。
その動作に連動して固形化寸前の超高出力エネルギーの剣の切っ先が落着。
一瞬にして双子を影もなく蒸発させ。
「アハハハハハハハハハ!」
「マシュ!! マシュ!!」
彼女の叫び笑いと共に足場にしているポセイドンすら貫き。
盤面が崩壊。
カルデアの面々はパニック状態だ。
なんせエミヤの固有結界はすでに切れており下は水面だ。
飲み込まれればどうなるか分かったもんじゃない。
メインコア、サブコア、双子を破壊したが聖杯を回収できていない。
まだ終わっていないのに、こんなに盛大に破壊したらレイシフトアウトも出来はしないがゆえに。
だからマシュを呼び止め回収しようとする達哉だが。
先ほども言ったとおり腕を斬り飛ばされ体感バランスが上手く取れず、すっころびもがくことしかできない。
彼の叫びもマシュと大嵐と崩壊の音に搔き消され飲まれていった。
マシュ大暴走回ですた。
同時に彼女の中の某騎士さんマシュのペルソナに取り込まれているの巻き。
そして、ニャル「真っ白な組織なんてこの世にはねぇーんだよ、バーカwwwwww」
マシュ(呆然)
案の定のカルデアブラックネタ、なおまたしても何も知らず頑張ってホワイト経営してたオルガマリーの図。
というか原作でマシュ周りのブラックネタなんでやらないんでしょうか、そういった試練と真実を受け入れてこそ成長と呼べるのに(頭ニャル)
まぁカルデアがブラックなのはオルガマリーが悪いわけではなくマリスビリーが全部悪いわけですけど。
現に原作でもヒステリックながらオルガマリーの方はホワイト経営しようと頑張っていたみたいですし。
これもそれもマリスビリーが悪いんだ!!(確信)
そしてマシュInシャドウ「防御ばっかりじゃ無くて攻撃に役立つ宝具寄越せや!!(右ストレート)」
某騎士さん「ホゲラァ!?」
現状だと攻め手がないせいでシメオンに抑え込まれ隙突かれてアンドレアの攻撃からマシュをたっちゃんが庇った結果右腕ポーンなわけだし。
そりゃ盾よりもたっちゃんと並び立てる剣の方を所望するよねって話。
あと某騎士さんが喚いていますが、大分前の正月特番アニメでやらかすことが示唆されている上に。
ニャルからの批評が「騎士とかいう人殺しを職業としていたくせに聖人とか何ほざいてんのwww」という評価ですね。
マシュのペルソナはジャンヌ・オルタと同様、カルタシスエフェクトタイプです。
某騎士さんが取り込まれたせいで超高出力化してます
実はこれニャルがやったんじゃなくてフィレがやりました。
新しいタイプの開拓と力の具象実験も兼ねて特異点Fに入るときに干渉しました。
特異点F第一話の冒頭のシーンですねはい。
で契約、覚醒した騎士さんは取り込まれマシュのペルソナとなったわけです。
皆デミサバだと思っていたら実はペルソナ使いになっていったでござる。
英霊の霊基も取り込んでいるからデミサバと誤認してしまったわけです。
マシュのペルソナはペルソナ+英霊霊基の複合品ですからある意味特別製ってわけですね
と言ってもまだ影や騎士さんと対峙してないから盾を中途半端にしか使えないし剣に至っては使えないというね
まぁ今回はシャドウがたっちゃんのピンチに、理性の私と喧嘩してる場合じゃねぇ!!って混じった結果。
限定的に後期ペルソナの剣と固有スキルを一時的に使える状態になったけです。
マシュシャドウもたっちゃん大好きですからね。
固有スキルも宝具と同じ性能です、暴走収まって自身の取り込んだ騎士さんと向き合えばロードキャメロットが使えます
まぁ、自由に使えるようになるのは第四以降のイベ特異点クリア後になりますけどね。
シャドウの使っていた鉄塊はいわゆる後期型になるのでシャドウと相対する上記と同じタイミングで使えるようになる予定です。
今回はシャドウの方が主導権を握っているため使えてるだけ。
鉄塊(仮)は逆手で握って殴るソル・バットガイの聖騎士時代の鉄塊がモチーフです。
固有スキルはロードキャメロットのキャノン砲版ことイノセントダスト
本人の殺意や決意が高まれば高まる程、出力が上昇する馬火力仕様ですね。はい。
やろうとおもえば某神星さんみたいなことも出来たりする。
ただし現状ではマシュの時間を削る諸刃の剣です
次回第三特異点終了となります。
マシュ個人の怒りが引きずり出されたおかけでまだ切れてます
具体的にはジャラジ戦レベルの五代レベルで切れる。
ロマニ&ダヴィンチ、所長に吊るしあげられる、鯖から不審な目で見られる回ですかね。
ペルソナらしくギスギスしてきたぞぉ。
最も元非正規特殊作戦群のアマネが見過ごすはずないですけどね。
戦闘員のギスギスで戦闘力が低下するのを見過ごすことはしません。
次回は構想はあるけれど、文字起こししてないので。すんごく遅れます!!
早めの更新は期待しないでね!!
定期生存報告はするんでそれで勘弁してつかーさい。
という訳で次回もよろしくおねがいします~ノシ