Fate/Grand Order たっちゃんがグランドオーダーに挑むようです   作:這い寄る影

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ぼくは、生まれて初めてマジに心の底から神様にお祈りした…
「どうか、このぼくに人殺しをさせてください」……と。

ジョジョの奇妙な冒険 第四部ダイヤモンドは砕けないより抜粋。


第三章幕引き 「殺意の果ては荒野しかなく」

マシュが気づけば。

アトランティスの浜辺だった。

だが奇麗だった浜辺もハーモニープログラムの停止によって。

脳損傷を負って死んでいた住人の死体の山だった。

 

「先輩。先輩は・・・ゲホゲホ!!」

 

そして肺に入った海水を吐き出しながら。

周囲を見渡す。だが心配する必要はなかった。

達哉はすぐ近くに倒れていた。

どうやら海水を吐き出した後気絶したらしい。

今では規則正しく息をして倒れている。

良かったと思わず胸を撫でおろすマシュ

 

『マシュ! タツヤ! 二人とも応答して!!』

 

其処にレイライン通信が入る。オルガマリーからだった。

 

「所長? 無事だったんですか!?」

『なんとかね・・・、それにしてもマシュ、アレはなに?』

「アレは私にもよくわかりません・・・英霊の力なのか・・・別の力なのか」

『・・・そう、取りあえず状況を教えて』

「私は無事です、ですが私のせいで先輩の右腕が消失しました」

『出血とかは?』

「大丈夫です・・・自力で傷口部分をふさいだみたいですから」

『わかった・・・回収しに行くからちょっとまって「それでいいの?」!?」』

 

通信でそんなやり取りをしていると。

マシュの横隣にミァハが立っていた。

ケラケラと嗤いながら。

 

「まだ状況は変わっていないよ?」

 

彼女の右手には聖杯。

黒幕産ではなくポセイドンが手に入れた純正聖杯である。

それに生命の無意識下の悪意の化身が願いを込めればどうなるか火を見るよりも明らかだった。

ザッザッとマシュの脳裏にノイズ交じりに走る光景。

達哉の慟哭のシーンが再生される。

その時にすでにマシュの意識は怒りに支配されていた。

今度はシャドウではなく自分自身の意識で怒りを発露したのだ。

 

「さて次の試練はどうしましょう? ジョージ・オーウェルの1984年みたくしてしまいましょうか、フフフどれも楽し「うぁぁぁああああああ!!」アハ♪」

 

ミァハの挑発に返すは右手拳。

無論全力右ストレートだ。

ミァハはたたらを踏みつつも返すは笑みと嘲笑。

 

「なんだ。ファイトクラブがお望み?」

「黙れぇぇええええええええええ!!」

 

左レバーからの右フックのコンビネーション。

それをミァハはわざとまともに食らう。まるでお前では殺せないのだと言わんばかりに。

そのままマシュは、一歩間合いを詰めてCQCでミァハを張り倒しマウントポジションを取って。

我武者羅にミァハの顔面を殴りつける。

 

 

「ハァァァアアア!! ウァァァァアアアアア!」

「ウフフフフ」

 

それでもミァハは嗤うばかり。

滑稽で仕方ない、第一目標を忘れているぞと嘲笑っているのだ。

現に聖杯はまだミァハの手の中にあるし介護すべき達哉の事も忘れて殴りかかっている。

ミァハは横に回転し、マウントポジションから脱出。

すぐさまマシュから背を向けて立ち去ろうとする。

 

「逃がすかぁ!!」

「ハハハハハ!!」

 

滑稽、滑稽、滑稽、実に滑稽と嘲笑い。

挑発するかのように時折、ミァハは振り返り聖杯をこれ見よがしに見せつけ嗤いながら。

二人で追っかけっこの様相を呈する。

最もそれは美しくもなんともなく。

浜辺は死体だらけ。マシュは鬼のような形相で、ミァハはそれを指差して笑っている。

そしてマシュがミァハを捕まえては殴り。再びミァハが抜け出してを繰り返す。

マシュの脳裏には第三特異点まで犠牲になった人々の映像が流れていた。

無論、カルデアの爆発で亡くなった人たちの記憶も。

それが彼女の怒りを増大させる。

盾はいつでも呼べるが、それがすっ飛ぶほど今の彼女は怒り狂っている。

 

「ハァ・・・ハァ・・・」

 

だが怒りに身を任せ全力で殴り続けてきたのだ。体力が限界に来る。

 

「フフフ。もう終わり?」

「まだ、まだぁです!!」

「その割には息が切れているみたいだけれど。クスクス」

 

ミァハはそう言いつつ浅瀬に手を突っ込み何かを拾い上げた。

それは達哉の得物の孫六だった。

偶然にしては出来過ぎている。

そしてレイライン通信。

 

『こちら達哉、こっちは所長たちと合流した。マシュ! 何があったんだ!! 応答しろ!!』

 

達哉からだった。

オルガマリーと無事合流し意識が回復したが隣にいたマシュがいないことに驚き通信したのである。

もっとも通信を無視しマシュはミァハと相対していた。

 

「私を殺したい?」

 

ミァハは孫六をマシュのすぐ足元に投げる。

マシュは躊躇なく、地面に突き刺さり起立した孫六の柄を握りしめて見よう見まねで達哉と同様の型を取る。

 

「喜びなさいな、それで私を切った瞬間、お前が敬愛するあの男と一緒の人種になれる」

 

クスクスと嗤う。

まるで達哉が殺人者かの言いようだ。

だが真実そうだろう、彼は殺している。

其処にどんなお題目があろうがそうなのだ。

一人殺せば殺人者、10殺せば殺人鬼、100人殺せば英雄、自分以外全て殺せば神という奴である。

だが本質は変わらない、人を殺せば人殺しなのだ。

其処に区別はない。

 

「うぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!!」

 

だがそうなるまで追い込んだのはお前だろうと、マシュは怒り刀を振りかざす。

だが刀はただ振るえば斬れるという便利道具ではないのだ。

専門の技術が必要になる。

肉は断てて骨までは断てない。

中途半端な斬撃を食らいながらミァハは嘲笑うのをやめず無防備に受け止め言葉を紡ぐ。

 

「結局、君も自分のエゴで生きている! 自分の邪魔になるものを傷つけながら生きている一人間だ! 喜びなさいよ、君はどこまでも人間だと!!」

「だまれぇぇ!!」

 

人間らしく慣れたじゃないかと祝福するミァハと絶叫しながら黙れと無茶苦茶に剣を振るい斬殺さんとするマシュ。

ついにミァハが倒れる。

そしてマシュがミァハの上に立ち逆手で無茶な運用をしたため刃毀れし歪んだ刃になった孫六の切っ先をミァハの心臓部に向ける。

 

「これで分かったでしょう? 美しき世界なんてどこにもないと! 故にこの汚れた世界で生きあがきなさいな、でも忘れないで。アナタの手や顔、そして体に付いた血は決して消えはしない!!」

「うぉぁぁああああ!!」

 

そして孫六の切っ先がミァハの心臓を抉り背まで貫通する。

マシュの顔と体に返り血が付く。

そして目標は達したとばかりに、ミァハの右手から聖杯が滑り落ちた。

 

「フフフ・・・これがアナタの感情の起点、成長は始まったばかり。・・・・・また会いましょう・・・・」

 

そして事切れるミァハ。

ただただ呆然とマシュはそれを眺め。

 

「うぁ・・・」

 

両目から涙が溢れ出す。

何が何だか分からなかった。

怒りと悲しみがごちゃ混ぜになって涙が止まらない。

やってしまったという事実もある。

なぜなら死体は消えずそこに残っていたから。

 

「うわぁぁあアアアアアアアア―――ッ!?」

 

そしてやってきた事実を再度確認しマシュは泣き叫んだ。

 

「「マシュ!」」

 

其処に皆がやってくる、達哉とオルガマリーの叫びが聞こえてくる。

二人は心配そうにマシュに寄り添い。

クーフーリンが転がった聖杯を回収する。

そしてレイシフトアウトが開始された。

 

 

 

第三特異点 定礎復元完了

 

 

 

 

達哉、オルガマリーは早々に医療室に叩き込まれた。

オルガマリーは全身打ち身。

達哉は右腕消失という重症である。

現在ダヴィンチが達哉の新しい腕として万能細胞に達哉の遺伝子を組み込み前の腕と変わらない生体義手を作っているところだった。

今現在の前。

つまるところ一日前はそれどころじゃなかった。

ロマニが吊るしあげられたのだ。

 

「デミサーヴァント計画について全部話しなさい!! 何があったのかを今すぐここで全部、マシュの状態もね!!」

 

ロマニは壁際に追い詰められオルガマリーは右腕でロマニの首を壁と挟み込むように吊るしあげつつ圧迫し。左手にはリペアラーを握りしめて銃口をロマニの額に当てながら。

殺す気で吊るしあげていた。

サーヴァント全員が引きはがしに掛かるよりも速く。

アマネが動く。

 

「グッ・・・ハァ!?」

「少し頭冷やせ所長、ロマニを殺した所で何の得にもならん」

 

リペアラーのスライドを掴みスライドさせ発砲を不可能にし。

そのまま腕をねじり上げ。足払いに顔面に掌底を食らわせつつアイアンクローに移行しながら。

オルガマリーを張り倒しつつ残った左手にLARグリズリーを向けつつ。

オルガマリーが取り落としたリペアラーを蹴り飛ばし彼女を無力化する。

見事なまでに卓越したCQCだった。まさに一瞬の早業という奴であった。

まだまだCQCのレベルはアマネの方が遥かに上だったという訳である。

 

「だが説明責任は果たしてもらうぞ。保安上の関係にもかかわる」

 

そしてアマネは後日説明しろと言った。

英霊たちも納得していなかったのだから後日説明しろという事で落ち着かせたのである。

 

「とりあえず、メディック、所長と達哉を医務室に叩き込んでおけ」

「「「「了解」」」」

 

ロマニではオルガマリーの怒りが再燃しそうだったので。

アマネは部下の衛生兵たちに達哉とオルガマリー達を医務室に叩き込ませる。

その後は解散となった。

ロマニは憂鬱な気持ちでダヴィンチに励まされつつ廊下をとぼとぼと歩いていると。

シャワーを浴び私服に着替えたマシュと接触する。

 

「マシュ、どうしたんだい?」

「ドクターとダヴィンチちゃんにお願いがあってきたんです」

「「お願い?」」

「二人には酷なお願いになりますが聞いてください。私の時間の事は黙っていてほしいんです」

「「!?」」

 

二人は驚愕した。バレていないはずだと。

当時の資料は全てロマニが破棄した筈だからだ。

 

「私、全部思い出したんです、大勢の同胞の犠牲の上に生み出されたんだって。そしてその時同時に研究者が時間について言及しているのも思い出したんです」

 

全てをもう思い出している。

双子との接触による記憶のフラッシュバック。

シャドウが表に出てきたことによる反動。

執拗なミァハことニャルラトホテプの煽りによる怒りで。

完全に記憶消去が解けていたのだ。

だからこそ願う。

周りの人々には時間の事は秘密にしておいてくれと。

ただでさえ負担が達哉とオルガマリーには降りかかっている。

これ以上自分の事で気を遣わせたくないという思いがあった。

逆に言えば怒り狂った醜い自分を見られた以上。

これ以上自分のどうしようもない部分を見られたくないというのが本音でもあった。

無論、下手に時間の事を言って戦線から外される恐怖もあったし二人に負担を掛けたくないというのも掛け値なしの本音だった。

 

「だからお願いです・・・どうか・・・どうか時間の事は・・・」

「「・・・」」

 

もうロマニもダヴィンチも何も言えなくなっていた。

まるで絹糸で首を絞められるような感覚だった。

 

「わかった。マシュの時間に関しては言わないでおこう」

「レオナルド!?」

「だってさ考えても見なよ、言ったら最後、マシュの戦線投入の決断は最終的に所長が決定することになる、所長は悩んで達哉にも相談するだろう、結果二人に責任おっかぶせることになるんだ」

 

ダヴィンチの言う通りだった。

此処で黙っていないと。最終決断はオルガマリーが行う、そして達哉も巻き込まれるのは確定事項だった。

 

「黙っておくしかないか・・・」

「そういう事、という訳でマシュは安心してくれたまえ」

「ですがいいんですか?」

「バレた時にはまぁおとなしく所長に二人で殴られるさ。アマネもいるし殺されはしないだろうしね」

「まって!! 殴られるの前程?!」

「それだけの事をしたんだから甘んじて受け入れるべきだよ。私たちはあの子たちに重荷を負わせすぎている」

 

ダヴィンチは黙っておくしかないかと言う。

あっさり自分の嘆願が通ったことにマシュはオロオロとしつつダヴィンチが理由を簡潔に述べる。

言えど地獄、言わねど地獄という奴であり。だったら現場の負担にならないようにするのは当たり前。

バレたらもう潔く殴られようと腹を括るという事だった。

第一に彼らを欺くような真似を最初にしたのはロマニとダヴィンチである。

バレて殴られるくらいの罰があるのなら、甘んじて受け入れるべきだというのは実に当たり前の事だった。

 

そして現在医務室。

 

「ところで、なんで腕を元に戻すことにしたの?」

「機械義手とかはいやでね」

 

医務室でオルガマリーと達哉はそんなやり取りをしていた。

達哉の右腕の事に関して出てある。

達哉は結局、万能細胞に自身の細胞を植え付け。前と変わらない生体義手を選択した。

ダヴィンチが持って来たカタログにはいろいろな義手があったのだが。

案の定のゲテモノだらけだった。

右腕だけが通常よりも高スペックと言うのはバランスが崩れるとして。

結局薬局、万能細胞に達哉の細胞を移植、増幅させて元の右腕を作ることになったのである。

ぶっちゃけ機械義手とかよりも作るのは大変だったので移植手術は二日後になるとの話だった。

 

「というか体幹バランスが崩れる。見てみろよこのラインナップ」

「うげ。ゲテモノだらけじゃないの・・・」

 

カタログを渡されオルガマリーは呻いた。

確かに達哉のパワーアップは出来るだろうが。体幹バランスが崩れるものだった。

と言うか下手すれば移植した機械義手自体ただ一度使えば自壊しかねない代物だったのである。

両手で刀を使う達哉からすれば。元の腕が培養でき、生体義手として移植できるなら。

それこそ元の腕と同等の生体義手の方が良いだろう。

第一下手に機械義手を接続して現地で壊れてメンテですなんてのは阿呆のすることである。

故に生体義手にしたわけだ。

機械は壊れたらそのまんまだが。

生体であれば壊れることも少なく治癒もできる故にである。

 

「でもまぁ、後悔はしていない、腕一本でマシュを守れたんだ。普通の戦場だとこうはいかない」

「それは言えているわね、タツヤ」

「それより、オルガはいつまでここに? 全身打撲程度なんだろ?」

「全身打撲を程度に言えるのはある意味感覚が麻痺ってるって保安部の連中に言われたわよ、外の入り口じゃ保安部が見張っていて三日静養しろって外にも出れはしない」

 

達哉は後悔してなかった。

腕一本で親愛を持てる相手を守れたのだ。

当たり前だろう。かつて世界を一つ滅ぼしかけてようやく一人と三人を救えたのだ。

腕一本ぐらい安いものと考えていたし通常の戦場では腕一本で仲間を守れたら安いものだとも思う。

ペルソナ使いは何度も言う通り頑丈だ。大抵の重症でも治癒スキル使って一日寝込めば大抵の傷は完全治癒する。

腕が切り飛ばされた今回のケースだって。斬り飛ばされた腕が海に落ちなければその場で接合できたりするのだ。

だから感覚がずれている。

お陰で達哉たちは笑って必要経費、仲間が守れればOKと思いこんでいるが。

マシュから見れば二人とも自分を守っての大怪我である。

つまり三人の間の認識に致命的なずれがあるわけだ。

マシュは負い目を感じ空回っていることを二人は知らない。

 

「三日もか?」

「私は大丈夫って言ったんだけどね、アマネが許可してくれなかったのよ」

 

現在、医療部は一般スタッフと保安部からの出向のメディック達によって運営されていた。

これにはロマニを出して下手な刺激を与えたくないというアマネの思惑が絡んでいたからである。

今はキツイ期間だからアマネが踏ん張らなければならない時でもあった。

だが元は非正規特殊作戦群の長であった女傑である。そこは苦にもしていなかった。

伊達に少女兵から今の境遇にのし上がったわけではないのである。

 

「フォーウ」

「あら、またアナタなのね、ごめんなさいね、今日はベーコン作れないのよ」

 

其処にトコトコとフォウがやってくる。

カルデアに住む不思議動物のようで見える人には見える見えない人には見えない存在らしいが。

今のオルガマリーには見えていた。

最も達哉が来る前はそんな噂を気にしている余裕はなかったので。フォウの名前は知らなかった。

朝、ベーコンを焼いていると物欲しげにやってくる魔術生物程度にしか思っていなかったのである。

あの爆破があるまでカルデアは魔術師の巣窟でもあった。

故にこんな生物もいるくらいにしか思っていなかったのである。

 

「フォーウ、フォウ」

 

今日はベーコン目的じゃないよと表現するかのように。フォウは首を横に振る。

皆無事だったのかと言った風に。心配そうな目線で二人を見つめていた。

 

「久しぶりだな、フォウ、もうかれこれ一か月近くはあっていないのか」

 

フォウのそんな思いを知らずか、久しぶりとフォウに返す。

なんせ強行軍だったとは言え第三特異点は大海原を旅する大航海だったのだ。

それでは久しぶりともなろう。

だがそれはそれとしてオルガマリーには気になることが一つ芽生えた。

 

「アレ? この子、達哉のペット? 勝手に飼うのはよしてよね」

「良いや違うぞ、マシュのペットだと思う」

「マシュの?! 今までそういうそぶり見せてなかったんだけどあの子!?」

 

フォウの特性を知っていれば出現パターンとかわかるのだが。

どこぞのロクデナシが放り込んだ超生物であることが分からない現状ではどうしようもない事だった。

 

「いや、マシュ曰くある日突然現れたらしいぞ。つねにカルデア内ほっつき歩いているから会えるのはレアなことだとか、ただマシュのところには頻繁に来てるっぽいな」

「そうだったの、なら報告くらいしなさいよ」

 

という訳でフォウの処遇の決着はついた。

マシュに事後報告させるという事と自分のペットはちゃんと面倒見なさいという奴だった。

 

「密閉空間だから各種予防接種もさせないと」

「フォウ!?」

 

密閉空間になりつつあるカルデアで動物飼うにはそれこそ各種ワクチン接種は重要課題である。

 

「まぁそれはロマニにあとで言っておくわ」

「フォーウ!! フォウ!!」

「あっ待て逃げるな!!」

「まぁまぁ、落ち着けオルガ。マシュ曰く人理焼却前から居たらしいから変な病原菌は持ってないと思うぞ」

「そうなの? まぁそれならいいか」

「フォ・・・」

 

注射されたくないのか逃げ出そうとするフォウだったが。

達哉のフォローのお陰で注射は免れたことに安心するフォウ。

そして四日後。

 

「どうだい達哉君、腕の調子は」

「新しい腕なんだがやっぱり過去からは逃げられないか・・・」

「・・・」

 

ダヴィンチが製造した生体義手を達哉は移植され。

感覚を確かめるように右手を開いたり閉じたりしている。

だがニャルラトホテプの刻印は移植完了と同時に元に戻った。

如何に腕を新しく治そうと過去からは逃げられないという啓示かのようである。

 

「神経や骨がつながるには時間が掛かるはずなんだけど・・・なんでもうつながっているの?」

 

そしてロマニの疑問。

普通移植手術でつないでも完全癒着まで一週間はかかるし、完璧に使いこなせるまでリハビリが待っているはずなのだが。

其処はペルソナ使いだった。

 

「麻酔切れて起きてからメディアラハン連打して繋いだよ」

 

起きてから回復スキル連打&ペルソナ使い特有の回復力で繋いだという。

元々、斬り飛ばされた腕が海に落下し行方不明にならねばその場で繋ぐことは可能だったのだから。

もうロマニとしては頭を抱える通りこして呆れもする。

 

「だが違和感はある・・・」

「だったら医者として言っておくよ。違和感が消えるまでは戦闘訓練及び微小特異点やカルデアの修復手伝いも禁止だ」

「分かってますよ」

「ならいいんだけどね・・・達哉君」

「なんですか?」

「ここに来て。帰れなくなって後悔していないかい?」

 

達哉は選択の余地すらなくここで働いている。

だから後悔はないのかとロマニは達哉の愚痴を聞き出そうと言葉を紡いだ。

それに対し達哉の返答は。

 

「さあ・・・どうだろう・・・ ただここに来ていろんな人たちにまた助けられた。奴が言う汚れた世界であっても、そこで血まみれになっているのだとしても、俺は贖罪も兼ねて己が願いも込めて生きてみたいと思う」

 

前向きになった返答だった。

以前の達哉なら贖罪意識全開だったが。

今は少し前向きになっている。オルガマリーやマシュ、そしてカルデアの人々に数々のサーヴァントがそうさせてくれたのだろう。

 

「ならよかったよ。僕。所長の診察もあるから行くね」

「ああ、所長お冠だったから気を付けて」

「マシュ・・・のことでかい?」

「全身打撲で三日医務室に放り込まれることになったことにだ。仕事が溜まりまくってコノヤローって怒っていたぞ」

「うへぇ・・・そりゃまた・・・」

 

はぁまた雷かと両肩を落とすロマニに達哉は苦笑しつつ。

次の瞬間には厳しい目線になる。

 

「だがマシュの事も同様以上のLvで怒っていたしサーヴァントの皆も説明要求を出しているし、保安部も同様に説明要求している、俺も同様だ」

「・・・やっぱり?」

「所長は最終意思決定はマシュにさせたいと願っているが。それも説明しなくてはな・・・、仕事がひと段落着いたら。説明要求を行うそうだ」

「・・・そうか、そうなるよね、じゃ僕も気合入れて資料作りしないと」

 

デミサバ計画はそれこそ気密性の高い計画だった。

なんせ保安部にですら知らされていなかったのである。

技術部のスティーブンは自らの手で嗅ぎ付けマリスビリーに直談判していたようだが。

それさておきと。

 

「ロマニさん、俺もう退院でいいよな?」

「うんいいよ、でもさっきも言った通り戦闘訓練とかはだめだからね!」

「分かってますって、じゃこれで」

 

そういって達哉は診察室を出る。

残ったロマニは壁に右手拳を叩きつける。

 

「どうすればいいんだ!!」

 

どうすればいいんだ。どの口でと。

その時である。空間が灰色になった。

そして俯いていたロマニの前には瞳が黄金になり皮肉気に歪んだ表情をしたロマニが存在していた。

 

「君は・・・誰だ」

「誰? 誰だと? お前は私の事をよく知っているはずだ」

「もしかしてもう一人の僕ってやつかい?」

「クハハハ!! ある意味ではあってるぞ! だが私はお前たちそのものだよ」

「まさかニャルラトホテプ?!」

「そうとも」

 

ロマニの前にニャルラトホテプが直々に表れた。

 

「警備システムは!? 保安部は!?」

「そんな物、意味をなさない私は何処にでもいるのだから。達哉を当てにしても無駄だぞ? 気配を消しこの空間の位相をずらしている、どうあがいても助けはこない」

「僕を殺す気か?」

「そんなことしてなんになる、私はただ助言しに来ただけだよ」

「助言?」

「そう助言だよ、話す機会が出来たのだ。すべて吐き出してしまえ」

「・・・マシュの事かい?」

「それは無論ある。だがそれ以外にもあるだろう?」

 

マシュの事は無論だが。それ以外にも隠している事実があるだろうと嘲笑いながらニャルラトホテプは指摘する。

既知感はやまず、変わらずロマニに教えているのだから

 

「まぁ好きにすればいい、だが治癒が遅ければ遅いほど悪性腫瘍と言うものは増大する」

「・・・」

「あと自覚しろ、最早”お前の知る人理焼却ではないのだから”ではまたな。クククク」

 

そう言ってニャルラトホテプは姿を消した。

空間も元に戻る。

 

「なにをどう話せっていうんだ!!」

 

再び壁を叩く。

だが言っても信じてもらえないという建前を盾に皆に失望されたくないという本音をロマニは押し殺したのだった。

同じようで別の物語

つまり周防達哉ではなく藤丸立香の物語を生き抜いたのだと言えるはずもなかった。

そしてこの二つの物語、その藤丸の方をすべて思い出したわけじゃないが。

第三終了まで思い出していた。

そして話さなかった事をロマニは後に後悔することになるのだが。それは少し先の話となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方そのころ達哉はと言うと。

炭酸飲料と雑誌を左手で持ってリフレッシュルームへと向かっていった。

リフレッシュルームは誰も使っていなかった。

理由としてはデジタルなリアルグラフィックによる景色を見てのセラピー効果が期待できる施設なのだが。

カルデアがこんな惨状である、休暇が入ったら最近ようやくエミヤとウォンが切り盛りして稼働し始めた食堂で美味いもん食って。

オルガマリー&達哉経由でサトミタダシかエリザベスから買った物を自室で楽しみ寝ると言う方が圧倒的多数派なので今の今まで使われていなかった施設である。

気晴らしにはちょうどいいかと向かっている次第だった。

基本施設のセキリュティはカードリーダータイプを採用(指紋認証とかだと魔術で偽装可能なため)している。

そして達哉はリフレッシュルームのカードリーダーにカードキィをスライドさせ扉を開くと。

 

「おっマシュ」

「・・・先輩」

 

マシュが部屋の隅の椅子に腰かけて俯いていた。

 

「どうした元気ないぞ?」

「・・・すいません先輩。あの時、記憶のフラッシュバックで動けなくてその結果先輩の腕が・・・」

「死んだわけじゃないんだ、腕一本程度、気にしすぎだよ」

「ですが!! 運が悪ければ腕一本どころじゃなかったじゃないですか!! というか腕一本でも大した負傷ですよ!!」

 

マシュに言われて達哉は気づく。

また悪い認識を自分はしてしまったなと。

ペルソナ使いだから頑丈ではあるが。普通なら致命傷なのだ。

腕もカルデアと言う施設があったからこそ取り戻せただけで。

下手すりゃ欠損である。

達哉が海上で戦闘経験があるのは第三特異点除いて日輪丸に一人で特攻しかけた時くらいなものだ。

後は陸地、腕が吹っ飛んでも即座に回復スキルでくっ付けられる状態だったのも大きいのである。

 

「先輩は少し自分自身の身の事にも気を使ってください・・・」

「・・・それでも腕一本で仲間を守れるなら安いさ」

「先輩!!」

「すまないなマシュ、どうしても、舞耶姉の時のトラウマが抜けきらないんだ」

「・・・ッ」

 

達哉は救えなかった。

だからこそIFの想像が止まらない。

あの時、岡村真夜の妄執に気づいていればニャルラトホテプの策略に気づいていれば等。

ぱっと思いつくだけでこれだ。細分化すればもっと多くなる。

それでいて世界すっ飛ばしましたなんてなれば容易に抜けきれるものではない。

そして達哉はまた得てしまった親愛なる同胞を。

それが失われるなら腕の一本や二本と思ってしまうのも仕方の無い事だろう。

 

「だからマシュ、本当に無事でよかった」

「いいえ、先輩、私が、私がもっと強ければ。ジャンヌ・オルタさんのように強ければ!!」

「マシュ!」

「はいぃ!?」

「俺やジャンヌ・オルタの様な強さを求めるのはやめろ!!」

「なんでですか!!」

「俺やアイツの強さは失ったから強くなろうとしただけなんだよ。手遅れになってさらに力を渇望する、それは修羅道だ!! 時期に手段と目的が逆転するんだよ! 俺だって宗矩さんや長可さんに指摘されなきゃ危ないところだった」

 

そう今までの訓練が無ければ目的と手段が逆転する可能性だってあった。

その末路がジャンヌ・オルタである。彼女の強さに目を引かれるのも事実ではある。

だがそれは守りたいものを失い続けた結果、力を求めて結果殺戮に乗り出す本末転倒な末路である。

そこまで行けば本人も止まれない。

確かに強くはあるが間違った強さなのだ。

マシュが求めていい物ではない。

 

「だったらどうすればいいんですか。私は皆に失って欲しくない・・・」

「だから協力するんだ。いつもそうだったじゃないか。そしてゆっくり強くなろう、俺とマシュとオルガの三人で・・・」

「はい・・・あの先輩一つ良いですか?」

「なんだ?」

「泣かせてください・・・」

「いいぞ」

 

達哉はマシュの願いに了承し、彼女を抱きしめる。

マシュは達哉の胸元に顔を埋め泣いた。

ただひたすらに泣いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

そしてそこからさらに二日後。

会議室に全サーヴァント、達哉、オルガマリー、マシュ、ダヴィンチ、ロマニ、保安部代表のアマネが集められていた。

 

「こんな」

「馬鹿な」

「計画が」

「なぜに」

「通った」

 

オルガマリー、ブリュンヒルデ、宗矩、孔明、エミヤが言葉を合わせるかのように言った。

 

「マリスビリーは馬鹿かね? 白のキャンパスに黒の塗料を垂らし、白を維持すると言っているようなものだぞ」

「これなら普通に英霊召喚して交渉を重ねたほうが良いですね」

「こんなやれば失敗することが分かっている計画なんぞ行ってどうするんだ」

 

そしてさらに孔明、ブリュンヒルデ、エミヤが言葉を重ねる。

デミサーヴァント計画は成り立ちからして破綻の要因を抱えていた。

人工授精から生成したデザインドチルドレンに強化処置を施し。

英霊をその身に降ろして兵器として運用する。

極端に言ってバカの発想である。

まず生れ出たばかりの魂に英霊を降ろせば間違いなく被験者の魂が破損どころか粉砕するのは目に見えている。

幻霊級くらいならどうにかなるかもしれないが。あくまでどうにかなるかもしれないというだけで失敗は目に見えていた。

孔明が例えたように真っ白なキャンパスに漆黒塗料垂らして真っ白を維持するという矛盾しすぎて火を見るよりも明らかに失敗することが目に見えている。

なら魂を成長させるために今度は人格育成すればいいと思われるだろうが。

今度は人格を育成しきった所で降ろす英霊との相性というものがある。

それが合わなければ結局、人格粉砕、魂破損と言う事実は覆せない。

これなら普通に英霊召喚して価値観の擦り合わせして兵隊として運用する方が遥かにコストとしてもすぐれている。

オマケに本来の出力出せないならオルテナウスで補う?

それでは本末転倒も良いところだろうという話である。

 

「馬鹿かぁ!!」

 

オルガマリーが切れた。

手に持っていたボールペンを思いっきりテーブルに叩きつけて叫んだ。

 

「保安部!! こういう時のための保安部でしょう!!」

「いやさすがに私たちにも何も知らされていなかった」

「それを知って止めるのが保安部の仕事でしょうが!!」

「所長言っては悪いが私たちは暗部じゃない、あくまでも任務はカルデアの治安維持だ」

「畜生!! 言い返せねぇ!! それよかなんでスティーブンは・・・アイツ私が着く前にくたばっていたわね畜生!! ロマニィ!!」

「は、はいぃ?」

「当時の関わっていた技術者や魔術師連中はどうなった訳!?」

「さきのレフの爆破で既に死亡済みですしより深い部分に関わっていた連中は前所長が逃がした様子でして」

「糞親父ぃ!! 何、やらかしてんじゃぁぁああああああ!!」

 

オルガマリー完全発狂である。

それからも出るわ出るわオルガマリーからの口からマリスビリーに対する愚痴が。

全員、ドン引いていたがマリスビリーが元凶なので何も言えない。

とにかく、今は久々にヒステリックに切れているオルガマリーが落ち着くのを待つしかなかった。

10分ほど叫んでオルガマリーは落ち着いたのか。

ゼェゼェと息を切らしつつ着席する。

 

「で? 現状でマシュの容体はどうなの?」

「取り込んだ霊基は不安定ですがオルテナウスで安定はしています」

「じゃ、アレは何? ポセイドン叩き割ったアレも想定の内?」

「いえ違うでしょう、あの時、マシュをモニタしていた時に判明していた事実ですが、達哉君や所長がペルソナを使っているときの脳波パターンに近く。おそらくマシュのペルソナかと」

 

デミサーヴァント計画のコンセプトは分かった。

なら次はマシュの状況をオルガマリーは聞いたが。

ポセイドンを砕いた力は要約するとペルソナに近い何かとしか判別できなかったらしい。

その後、細かいところを聞いて。

とりあえず全員は納得した。

マシュも約束は守られたようで胸を撫で下ろした。

そしてその場は解散。

若干の不信感を抱えながら。カルデアは聖杯に記された次の特異点攻略準備へと取り掛かるのであった。

 

 




毎回、誰か医務室送りになってんなこのSS!!


それはさておき良くも悪くもマシュの基準はジャンヌ・オルタなんですよね。
第一特異点の一戦とその後のデータを見てそう結論付けちゃいました。
現実、目の前の敵を倒さなきゃ味方を守れなかったわけですし。
書文や宗矩にアマネも精神的鞘を作ることに急ピッチで行っていましたが間に合いませんでした。
それだけジャンヌ・オルタの存在はマシュの中でデカいです。

ニャル「もっとも世界をも殺す殺意を持ったジャンヌ・オルタでも誰もまもれなかったけどなーwwww」

たっちゃんはP2の事があって鞘は完成済み(暴走しないとは言っていない)ですし。
オルガマリーも伊達にカルデアの所長をやってきたわけではないですし周りのフォローもあって精神的鞘は出来てます(なお暴走しないとは言っていない)
ぶっちゃけマシュはそんくらい邪ンヌがトラウマになってしますし。データが擦り切れるレベルでたっちゃんVS邪ンヌの戦闘データとやり取り見ているので。
良くも悪くも邪ンヌの強さを渇望してしまった、それがどんな意味かを知らずにって感じ。
結果、武人組が早く鞘作るより早く、邪ンヌの様に殺意マシマシで殺しに掛かった方が早いのでは?と思ってしまったわけです。
其処を的確にニャルが暴発するように的確に設置したのが今回のあらまし。
ぶっちゃけポセイドンも双子もそのための生贄、無論ミァハという化身ですらです。
マシュシャドウの根底には邪ンヌが間接的に関わり、暴走にもかかわっている次第です。
ぶっちゃけ邪ンヌが悪い。
それを見て嗤っているのがニャル。
本作では邪ンヌ、某地母神の事は結構後まで引く予定です。
それこそ戦闘単位がボスサーヴァントが1邪ンヌ、ボス神霊が1某地母神と言うレベルで。


そして今回のマシュの暴走はシャドウ抜きにマシュ自身で行いました。
イノセントダストが直撃と同時にシャドウもとりあえずは去っています。
つまりいつものマシュに戻っていますが怒りが収まらずジャラジ戦の五代レベルで切れた結果。
ニャルに煽られこのざまですよはい。
そのせいでマシュ記憶をすべて思い出すという惨事に。

そして所長に吊り上げられるロマニ&ダヴィンチ。
時間の事は意地でも言わないで下さいと言うマシュ。
不信感は一応払拭したもののまだ何かあるのではと思うサーヴァントたち。

あとフォウ君はつい最近、第二が始まる直前当たりから所長の元に現れてました。
無論ベーコン狙いと言うのもあるのですが親友やペルソナ能力得て変わったからですね。
こっそり現れていたので所長からはどっかの誰かが作った使い魔程度に思われていた様子。
今回初めてフォウの名を知った様子である。
なお認識は誰かが作って捨てた使い魔をマシュがペットにしていると思い込んでいる。
なおオルガマリーが真実知ったらマーリンがボコボコにされる模様。
そして。

ニャル「ロマニィ、まだ思い出したくない、話したくないというのなら、こちらで最高のタイミングで暴露してやろうじゃないか(ニチャア)」

ロマニ。爆弾のスイッチをニャルに手渡して宝生永夢ゥの準備整うの巻きでしたー



という訳で次回 幕間の水着イベ開幕です。五話か三話くらいで終わると思います。
精神的に休めないと皆疲れちゃうからね(厄介事が増えないとは言っていない)


次回はもっと遅くなるよ!!
舞台は選定してるんだけども・・・皆が納得いくような話を作れる気がしねぇ・・・

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