Fate/Grand Order たっちゃんがグランドオーダーに挑むようです 作:這い寄る影
それはビーチに行くこと、ディズニーランドに行くこと、楽しむことである。
ブライアン・ウィルソン
もう何年も歩き続けました。
もう何年も悩み続けました。
もう何年も空を見上げ続けました。
そして私は。
「私は・・・・」
私が私であることを認識できなくなりました。
そして私は。
『ほら皆がお前を望んでいるぞ衆生を救済する救世主として、ああ擦り切れて自分すら忘却したか、であるならば思い出すがいい、お前が何者であるかをな』
そして背後から引っ張られる感触。
同時に無色の空間から漆黒へ、そして漆黒の空間から目線の先には光が。
気づけば私は水中にいたのです。
朝、松島海岸。
朝早くなので観光客もおらずほぼ貸し切り状態だった。
だが今は真夏、朝であっても湿度と気温は高く、達哉と宗矩にエミヤの日本人たちはともかく。
他外国人系は慣れない様子だった。
「日本って朝からジメッているのね」
「所長は何度か、日本に来たんじゃないのか?」
「冬の時期やら空調効いた施設にいたから本格的に外で動いたことはないのよ、用が終わったら直帰だったしね、日本の魔術機関って封鎖的だから。とっとと帰りたかったというのもあるけれど」
達哉の疑問にそう答える。
会食や会議終えたら、封鎖的空気に耐えられず。
ちゃっちゃと帰っていたらしい。
他国はそこまででもなく観光旅行とかしてたらしいのだが。
「しっかし、嬢ちゃんよ、こう朝から早く出る必要あっか?」
「場所取り争奪戦は勘弁だしね、それに好き勝手やりたいじゃない?」
「そりゃそうか」
クーフーリンの疑問にサンオイルを自身の身体に塗りながらオルガマリーはそう答える。
真夏の時期だ。観光客も押しかけてくるだろうと判断した一行は故に朝早くから。
浜辺のいい場所に陣取っていったわけである。
準備だけされるBBQセットに海鮮物と食材その鮮度を保つために氷がたっぷり入ったクーラーボックスと。
飲み物一式とたっぷりの氷が詰められたクーラーボックス。
両方が数個ずつ、パラソルの脇に積まれている。
大人数という事もあるが、基本サーヴァントは食べた物をその気になれば即座に分解。自身の魔力へと変換できるので。
多ければ多いほどいいというエミヤの実体験をもとに集めたものだった。
無論、海の家が開けばそちらも利用する。
あと、後片付けの準備も万全だ飛び立つ鳥後を濁さずという奴でもある。
「そういえばマシュは?」
「ちょっと浜辺を散歩してくるって言って一人で出ていったよ」
「そう・・・、まぁ良いんじゃない? 後タツヤ、背中にサンオイル塗ってくれるかしら?」
「いや、そういうのは同じ女性陣に頼んで・・・」
「私はタツヤに塗ってほしいの、これは所長命令です」
「はい・・・」
「なら良いわ・・・。この鈍感(ボソ)」
そんな青春のやり取りをしながら。
時間は進んでいく。
一方のマシュは水着に上着を着るという姿で浜辺を歩いていた。
松島の景色は美しい、伊達に日本三大風景の一角を担う場所ではないのである。
水温が朝早く低いため泳げないので取り合言えず浜辺を歩きながら景色を楽しみつつ歩いていた。
その時である、波打ち際に誰かが倒れていた。
マシュの善性ならそれを見過ごせるはずがない。
急いで駆け寄る。
「大丈夫ですか?!って?!」
打ち上げられていた人物は西洋鎧にマントという恰好という恰好である。
場に似つかわしくない。
故にさしものマシュも一瞬たじろぐ。
人命救助のためのレクチャーはレイシフトチームに配属が決定したとき保安部から叩き込まれている。
と言っても万が一がない様にカルデアに通信をつなぐ。
「ドクター、浜辺に打ち上げられた人がいました。どうも溺れていたのか意識が無い様で。これから救助手順を確認したいのですが、今暇ですか?」
『うん暇だよ~、手順確認したいって・・・・ええ!?』
「どうかしたんですか? ドクター?」
『いまマシュの傍に倒れている人? スキャニングしたんだけど。神霊じゃないか!?』
「え? えぇぇえええ!?」
マシュ驚愕。
まさか神霊が溺れて浜辺に打ち上げられているなんて誰が思おうか。
カルデアは一気に臨戦態勢となる。
達哉たちも慌てて駆けつけてきた。
「「大丈夫!?マシュ!!」」
「先輩、所長・・・私は大丈夫です・・・とりあえず神霊と言うだけあって蘇生処置の必要は私の見た限り必要ない様でたし、人間的にも必要ないみたいだったので」
マシュはすでにとりあえずの全チェック項目を終わらせていた。
鎧をひっぺ剥がし呼吸や心臓の動作を確認。
呼吸からすでに肺に入った海水は吐き出したと判断したのである。
「しっかし、神霊がなんで浜辺に打ち上げられてるのよ、しかも西洋系みたいだし、マツシマってそういう伝承とか逸話とかあるわけ? タツヤ?」
「いや俺に聞かないでくれ。修学旅行先は生憎、東京だったんだ俺」
そんなやり取りをしつつ。
マシュが謎の神霊を抱きかかえつつ言う。
「とにかく皆で陣取っている場所に運びましょう」
「そうね」
「そうだな」
とりあえず神霊故に病院と言う手は使えない。
幸い気絶してるだけだしという事でパラソルの下に敷いたシートの上で寝かせることにした。
「嗚呼、シグルド!! シグルドォ!! ロマンシアスパイクショット!!」
「宝具使う筋力全開でスパイクショットはやめたまえ!! シグルドッォ!!さけろぉ!!」
「我が愛の愛を受けらずして何が夫か!! こぉい!!」
「おいばか、やめ!!」
浜辺のさざ波の音が聞こえて皆が騒ぐ音が彼女の耳に届き眼が覚める。
ついでに鉄に鉄をぶつけた衝撃音と砂浜が爆散してクレーターを作る音もだ。
「あっ目が覚めましたか?」
「貴方は?」
「私はマシュ・キリエライトです、イギリスからの観光客(そういう風に擬態している)ですよ、びっくりしたんですよ、朝散歩してたら、アナタが浜辺で倒れていたんですから」
「そうだったのですか・・・感謝を・・・私は・・・・私は?」
「どうかしたのですか?」
「いえ、名前が思い出せない、私って誰でしたっけ・・・」
「えっ、え~!?」
まさかの記憶喪失である。
海で溺れたショックで記憶喪失にでもなったのかとマシュはあたりを付ける。
「アル・・・までは思い出せるのですが、そこから出て来なくて、思い出そうとすると頭痛が・・・」
「無理して思い出さなくて良いですよ。いずれきっと思い出せるでしょうから」
「そうですか?」
「はい、まぁ記憶喪失の症例の治癒法はふとした切っ掛けを与えることが一番とも言いますし」
マシュは胸を撫で下ろす。ある意味記憶喪失で助かったと言える。
神霊がその暴威をもって行動すれば震災の二の舞を行いかねないからだ。
自分が何者であるかが分からぬなら力の発揮のしようもない。
「みんなー、浜焼きと焼きそばかってきたわよー、ってシグルドォ!?」
「すまないマスター。私は夫婦を抑えられなかった」
「そこは何とかしてよ、いくらサーヴァントが楽しむために認識阻害の結界張ってるとはいえさぁ、限度ってものがあるのよ」
シグルド、さすがに二発目は耐えられず轟沈。
砂浜に人型の穴作ってボールと共にめり込んでいる。
因みにこのボール。スティーブン製であるシミュレーションでサーヴァントが使うのを前提に作らた特注品だ。
最もブリュンヒルデロマンシアとかいう超重量宝具を使うブリュンヒルデの怪力に耐えられるだけって何を想定して作ったのかもはや分からぬ代物だが。
そして真名解放に匹敵する威力のスパイクを二発も食らいシグルド、決死の顔面セーブで轟沈。
ブリュンヒルデの相方のマリー・アントワネットはエミヤのスパイクを受けきれずゲームセットとなり。
現状に至るという訳である。
されど場が荒れた。
こりゃ、楽しむ前に元に戻さんととため息を吐くオルガマリーだった。
「とりあえず、記憶喪失ねぇ」
「どうする所長? 放って置くわけにはいかないだろ?」
「こっちで保護する方向で行きましょう加えて神霊だからね、放って置くと震災の二の舞になりかねないし」
神霊を舐めてはいけない。
下手に放置して震災の二の舞なんぞ微小特異点から特異点にランクアップだ。
折角のバカンスが台無しになるのはごめんということで。
「という訳で、記憶戻るまで。こっちで保護しようと思うのだけれど。アナタはどう?」
「良いのですか? 身分も出生も知れない私を保護するなんて」
「いいのいいの、マシュもタツヤもそれでいいわよね?」
「俺はかまわないぞ」
「私も先輩に同意見です」
という訳で、この謎の神霊を受け入れることになった。
「そういえば、アナタの事はなんて呼びましょう?」
「確かに呼び名が無いとキツイな」
「所長に先輩、一応、アルとまでは出かかっていたのでアル呼びでいいのでは?」
「そうなの? なら暫定アル呼びで良いわね。アルあなたは?」
「私もそれでいいです」
「じゃそれで決定ね、私はオルガマリー、よろしくね、アル」
「俺は周防達哉だ。よろしくなアル」
「私はマシュです。よろしくお願いします、アルさん」
「こちらこそよろしくお願いします」
といわけで一行にアルが加わった。
打算ありきと言うのもあるが。
記憶喪失者を放って置けないっても無論あるのだ。
「あのーところでですが、達哉」
「なんだ?」
「ご老体二人が首の下から埋められているのですが・・・」
「ああ気にしなくて良いぞ、昨日やらかした罰だからな」
アルの視線の先、宗矩と書文が首から下を砂浜に埋められていた。
昨日のやらかし+この二人旅館でやらかしたからである。
旅館でまぁ酔っぱらってやらかしたとだけ書いて置こう。
それが男性陣の怒りに触れてしまった為、
このような状況になっている訳である。
そして達哉がより残酷な報復処置に出る。
「主殿!! これではあんまりに残酷と言う物!!」
「然り然り!! これはあんまりだ!!」
「それだけのしたんだ。しっかり反省してくれ」
「「マスタァァァアアアアあ!!??」」
埋まって身動きが取れない二人の眼前に浜焼きと焼きそばを置く。
無論箸などが無くては食べれない。
サーヴァント固有の身体能力を発揮すれば埋もれている状況から脱出出来るのではあるのだが。
その場合、脱出した勢いで舞い上がった砂塵で浜焼きも焼きそばもダメになることは確定だ。
「うーん、この焼きそば美味しいです!!」
「有名な焼きそば職人さんが作った物らしいからね、値段は少々張ったけど、焼き加減に秘伝のソース、最高だわ」
「こればかりは真似できんな」
日本では有名な焼きそば職人さんが作ったという事もあり。
マシュ、オルガマリー、エミヤが感嘆の声を上げる。
その他の仲間たちも感嘆の声を上げていた。
「ところでクーフーリンは何処に行った?」
「なんか調べたいことがあるって言って、ここに来た時から泳ぎに行って帰ってきてないわね」
達哉の声にオルガマリーはそう答えた。
クーフーリンはこの浜辺に来て早々泳ぎに出てから戻ってきていない。
心配になった達哉はカルデアに通信をつなげる。
『クーフーリンなら遠泳中だよ、うわ、早い、沖をマグロの様に泳いでる』
偶然担当だったムニエルがそう伝える。
クーフーリンは沖の方を遠泳中であるらしかった。
ものすごいスピードで泳いでいるらしい。
「槍で魚取ったりしてないでしょうね・・・」
「あれほど言ったんですから大丈夫だと思いますよ」
槍で魚とりは立派な密漁である。
少なくとも地元で海を管轄している組合から漁業権を買わねば、
槍を銛代わりにして獲っても立派な密漁だ。
そのことに関しては口酸っぱく言っているから大丈夫だろうとマシュは言う。
「もっとも水中で取った魚をその場の水中で食えば問題ないらしいが」
「先輩、そんなバカでアホな事する人はいませんって呼吸の問題もあるんですよ?」
「そうだな、はははは」
「そうですよ、はははは」
余談ではあるが某魔人探偵の女子高生がそれをやったことは二人は知らない。
まぁ、かすりもしない別世界の話なので置いて置くとして。
「・・・」
アルは焼きそばを見つめていた。
ついでに浜焼きもである。実に食べたそうにしていた。
気が緩めば涎を垂らしそうな表情である。
「食べますか?」
「いいんですか?」
「はい、皆さん良く食べますから、多少多めに買ってきてありますし」
「なら是非に・・・」
「あと、食べ終わったらで良いですから、こちらに着替えてください」
「これは?」
「着替えです。さすがにその恰好で街中歩いたりするのはあれなので」
マシュは焼きそばの入ったパックと箸を手渡しつつ、着替えも差し出す。
体格などが近いアマネの私物夏バージョンである。
相変わらずダサかった。
下着はスポーツタイプの色気皆無の実用性重視の物である。
「・・・あの」
「なんでしょう?」
「これどう着ればいいんですか?」
アルはそういってブラを指さす。
ああ神霊だからか下着の付け方分からないのかとマシュは納得し。
「じゃ食べ終わったら更衣室に私もついていきますからそこでつけ方教えますよ」
「ありがとうございます」
そういってアルは箸を手に取るが。
全然だめだった。
箸の使い方は外人には難しい。
神霊もそれは同様みたいだったので。
マシュは一応持ってきていたプラスティックフォークを手渡す。
アルはマシュに再度感謝し、奇麗な手捌きでフォークに焼きそばを絡めて。
口へと運んだ。
「これは・・・すっごく美味しいですね、何杯でも行けそうです」
「さすがに今回はそれで勘弁してください、夜にエミヤさんがBBQで焼きそばも作ってくれるそうですから」
「それは楽しみです、このイカゲソ焼きも絶妙で」
「ふふ、美味しいですよね」
二人は食べながら食べ物の話をする。
こういう経験はゼロだったからだ。
達哉は女性同士の会話に混ざるのも気まずかったのでノックダウンしたシグルドを陥没痕から引きずり出していた。
頭から血を派手にシグルドは流していた為、
アムルタートを呼んでメディアラハンを掛けて治療している。
オルガマリー―は麦わら帽子にサングラス水着姿と言う形でサイダー飲みながら焼きそばやら浜焼きを楽しんでいた。
「あー酒が美味い、せっかくだからタツヤも飲んだら
「俺は未成年だから酒はダメだぞ」
「わかってるわよー、近代日本って融通効かないんだから」
普段は酒飲んでいるが、それは古代だったりカルデア式特殊法の法下にあるからであって、
今現在は日本の法治下にいるのだ。
未成年は酒飲めないのは当たり前である。
「それより孔明は?」
「ブリュンヒルデのスパイクを顔面に食らって休養中だ」
「ヒルデェ・・・バレーは顔面狙う競技じゃないのよ・・・長可は?」
「森さんなら海の家でカキ氷やアイス堪能してたな」
それぞれエンジョイしている風であった。
「まぁお昼の時間だからバレーやってる四人、お昼にするわよー」
という訳でバレーしている連中も合流。
他の連中も合流し大所帯へとなる。
因みにアルはアマネの私服夏バージョン(糞ダサい)に着替えていた。
「アルさん・・・今日遊び終わったら明日は服買いに行きましょう」
「? 別段不自由はしてませんが?」
「いや、アルの様な人が着てると別の意味で目立つんですよ」
マシュはそう指摘するシンヨコとか胸元あたりに掛かれた半袖Tシャツに膝だし短パン、ピンクのサンダル。
アルは美女である確かに目立つのだ。
これなら折角の現代である新しいの買った方が良いと思う訳である。
そんなところでクーフーリンが戻ってきた。
「よう、戻ったぜ」
「随分泳いでいたみたいだけど、何かあった?」
「いいや、”なんもない”」
「ちょっとそれって」
オルガマリーが顔を顰めた。
それはおかしいと、なんにもないというのは実におかしい話だと。
よく考えてほしい。3年前に震災が起きた地で爪痕が癒えきってない場所で霊障の一つもない。
如何にうまく霊たちが隠れていようとクーフーリンの鼻から逃げ切ることなんて不可能だ。
「ソレを話すのは後にした方が良いだろう、真昼間からじゃ警察に御用だ。それにアテがない、今はこの話は無しにしよう」
そういってもぐもぐと焼きそばを食べるアルをちらりと一瞬だけクーフーリンが見て言う。
「・・・観測班動かす?」
「いや無駄に終わるだろうな相当の手練れだ。アタリをつけねぇことにはバレもしないだろうよ、達哉」
「ん? なんだ??」
「何か感じるか?」
「”いいやなにも”」
「ほらな」
「うそぉ・・・いや私も言われるまで気づかなかったし、でも達哉は・・・精神耐性持ちなのよ?」
「防ぐと逸らすじゃベクトルが違うってことなんだろう。もしくは一点に集めて隠していて、精神には作用しないタイプかだ。それに俺たちは当事者じゃないんだ。詳しい判断は出来ねぇぞ」
意味深気なことを二人はやり取りする。
つまり全員の認識がずらされていることについてだ。
オルガマリーとクーフーリンが感づけたのは偶々である。
オルガマリーがクーフーリンに依頼していたのだ。海水浴中に幽霊に足引っ張られるの嫌だから調査しておいてと。
だから気づけた、霊障が無い事の異様さに。
認識がずらされているか、一点に集められて上手い事隠したうえならばペルソナ使いの精神干渉無効能力にも影響をきたさないからである。
「まぁ今は気にする時じゃねぇ、説明するのも旅館に戻ってからでいいだろう、今はバカンス楽しもうぜ」
「クーフーリンが言うならそうよね」
「嬢ちゃんも気にするなよ、今は休み時だ。休める時に休んどけ」
「そういわれても私、午後から泳ぎの訓練あるんだけど?」
「それはご愁傷様なこって」
「他人事の様におもって!!」
今のところは厄介事になるような状況ではないとして休めるうちに休んどけとクーフーリンは言うが。
今はバカンス中、一旦は置いて置くとしてとしてだ。
残念なことに午後からはオルガマリーは達哉とマシュを教師として泳げるようになる訓練だった。
「オルガマリーは泳げないのですか?」
「はい・・・人生で一度も泳いだことが無いらしくて」
「それはまたなんで・・・」
「そういう家系なんですよ、会社の令嬢(表向き設定)ですから経済学とか経営学とか帝王学とか幼少期から詰め込められているらしくて教育も学校に行かず家で詰め込まれていたようです、大学には行く予定だったらしいですが(表向き設定その2)」
「そうなんですか・・・詰め込み教育・・・うっ頭が・・・」
マシュは表向きの設定を交えつつ説明する。
すると詰め込み教育と言う概念がアルの頭を揺らした。
そうそれは、生まれてすぐにエク■■■に預けられ彼のもとで育ち。
そして。体力作りの為に義兄の■■と共に―――――――
「アルさん!!無理しないで!!」
「マシュ・・・すいません・・・」
「すごい冷や汗ですよ、ほらこれで汗をぬぐってください、一応スポーツドリンクも飲んで」
無理に思い出しそうになったがゆえに脳が悲鳴を上げ頭痛と言う形で現れる。
アルが頭を抱え倒れそうになったところをマシュが支え、アルを揺らして現実に引き戻す。
そしてスポーツドリンクとタオルを手渡すのだった。
「ありがとう、マシュ・・・」
「いいえ気にしないでくださいゆっくり思い出せばいいんです」
マシュに礼を言いつつアルは汗をタオルで拭いてスポーツドリンクを飲んだ。
そして十分後。
「ねぇこれ大丈夫?! 本当に大丈夫なのよね!!」
「大丈夫だから、ゴーグルもつけてるんだ!! 風呂で顔洗うのと一緒だ!!」
「そうです!! 先輩の言う通りですから!!」
オルガマリーかなりヘタレていた。
最初は海水に身を浸し浮かぶところからだと思いきや。
まさか顔面を海水浸すところから駄目だった。
これには達哉もマシュも想定外だった。
二人はこれ若干泳ぐ程度まで行くのに午後丸々つぶれるだろうなぁと思う。
「マシュ、これは重傷だ」
「ですね」
「だからマシュはあっちで皆と遊んできていいぞ」
「いいんですか?」
「この微小特異点に来るまでこってり絞られてたんだ。だから休むか楽しめ、あとアルの事もあるからな」
「分かりました」
「じゃ、そっちはよろしく頼む」
「ふええええ、ダヅヤー無理よぉー」
「何で風呂では顔つけられるのに泳ぐってなったらそうなるんだ!!」
「お風呂で顔洗うのと水泳は違うのよ!!」
そんなやり取りをバックにマシュは苦笑しながらその場を後にし、
アル達の元へと向かった。
相変わらず老人技量コンビは首から下が埋まっている。
いつの間にやら設置されていた食べ物が浜焼きと焼きそばから、かき氷(ブルーハワイ)とソフトクリームにチェンジしていた。
悪魔かとマシュは思うが、
そこらへん突っ込むと、自分も含めた女性陣全員が同じ刑になりそうなので。
あえてスルーする。
「あっ、マシュちょうどよかったわ」
バレーボールを抱えたマリー・アントワネットがマシュを向日葵の様な笑顔で出迎えた。
「なにかあったんですか?」
「いえね、ほら、午前中のバレーはシグルド夫妻のお陰で顔面確殺バレーになったから、今度は女子だけでやろうって話になってね、けれど人数足りなかったからちょうどいいところに来てくれたわ」
「でも私含めて三名だけですよね?」
「アルちゃんが出てくれるのよ、これで四名、ちょうどいいでしょ?」
確かにマシュも含めて四名丁度である。
だが記憶喪失で神霊の力を出せぬアルにサーヴァントが跋扈する
ビーチバレーについていけるのかと思い視線を横に滑らせると。
ズドン!!
ブリュンヒルデにも負けない威力でスパイクを放っているアルが其処にいた。
記憶喪失でもさすがは神霊と言うべきか。
まぁ、それ言ったらブリュンヒルデも神霊級ではあるのだが。
という訳で顔面セーブだけは嫌だと思いながらチーム分けである。
くじ引きで公正に決められた結果。
アル&マシュVSブリュンヒルデ&マリー・アントワネットと相成った訳だ。
ポジショニングはレシーバーがマシュ、敵側がマリー・アントワネット。
ブロッカーがアル、敵側がブリュンヒルデとなった。
最もビーチバレーは2ON2である。
めぐるましくポジションが試合中には入れ替わるからあってないようなものだが。
これが一番良いポジショニングだった。
先行はマシュチーム。マシュがサーブを放つ。
「行きます!!」
案の定デミサーヴァントパワー全開にしつつコントロールは十全。
コーナーギリギリを狙う。
「させないわ!!」
だがマリー・アントワネットはそれを読み先回り。
午前中に伊達にシグルドのサーブを受けてはいない。
宙に浮くバレーボール。
それを捕えるのはブリュンヒルデ。
「容赦はしません」
冷酷な処刑宣告とも取れる一撃を放つ。
夫のシグルドがかき氷とビール片手に応援しているのだ熱も入ろうというものである。
その威力、午前中と変わりがない。
だが。
「させません!!」
アル渾身のブロック。
コートを軽く超えてボールはブリュンヒルデ側へ。
思いっきり飛んでスパイクショットを打ったのが仇となり。ブリュンヒルデはまだ空中に。
ブロックされたバレーボールは地に落ちると思われたが・・・
「こんちくしょう」
王妃、キャラ崩壊しつつも滑り込みでなんとか高く宙にボールを上げる
「いけ!! そこだ我が愛!!」
「ええ!! 行きます!! ロマンシアスパイクッショットォッ!!」
ズドム!!と先ほどよりも威力の高い球が放たれる。
今度はアルが地面に着地しており再度の飛翔は間に合わず。
ボールは閃光となってマシュに襲い掛かる。
確実に顔面セーブを狙った玉だ。
直撃すればシグルドじゃないんだから耐えられるわけでもない。
だがそこは書文の弟子であるマシュ、瞬時に着弾ポイントを見極め後退。
ボールが組んだ両掌に収まる位置に完璧調整。
砂塵を巻き上げながらもちゃんと受け止め、ボールをベストポジションへレシーブ。
それを受けてアルも完全なタイミングで飛んだ。
「カウンターの聖槍ショットォ!!」
ブリュンヒルデにも負けないレベルで放たれた威力の聖槍ショットが慌ててポジションに戻ったマリー・アントワネットに襲い掛かる。
それでも、先のエミヤのカラドボルグⅡショットからの経験則から。
砂塵を巻き上げつつ受け止めレシーブ、ブリュンヒルデへと弾を渡す。
「なぁ孔明よぉ」
「なんだね? 長可」
「これ千日手じゃね?」
これを見ていた二人の内、長可は孔明にそういった。
良い勝負と言えば聞こえはいいが千日手であるという事である。
つまり勝負は終わらない訳で。
「いやそうでもない、君たちサーヴァントと違い私やマシュは疑似サーヴァントにデミサーヴァントだ。体力の限界値はあるから。いつマシュが体力切れするかにもよるな」
「でもよぉ、いくらサーヴァント言ったってなぁ、精神的には疲れるわけだから、痺れ切らしたら致命傷になるんじゃねぇの?」
「フムン、それもそうか」
いまだに轟音鳴らして勝負は続いている。
もう何リレーになるかもわからぬ押収具合だ。
特にマシュはどっしり構えて援護に徹し、アルがショットで上下左右にマリー・アントワネットやブリュンヒルデを焦らしていく。
だがしかし。
「これ一点取るまでに日が暮れっちまうよ、マシュも伊達に長期戦のための訓練受けてねぇんだぜ?」
「ならそれなら一点取った方が勝ちという事でどうかね?」
「そりゃいいな」
「なら私が言ってくるとしよう」
そういって孔明はビーチチェアからのそりと立ち上がり。
そのことを伝えに行く、ブリュンヒルデチームのとこからだ。
「そこまでにしておきたまえ、この試合一点取った方の勝ち・・・」
「孔明よけて!!」
「え?」
炸裂する聖槍ショット、それは明らかなアウトラインで取るに足らない球だ。
それが孔明の顔面目掛けて炸裂し顔面セーブと言う形でバレーボールが、虚しくブリュンヒルデチームのコート内に落ちた。
アル&マシュチーム、一点先制。
よって審判役も兼ねていた孔明の言葉もあってアル&マシュチームの勝利となった。
唖然とするブリュンヒルデとマリー・アントワネットを他所に。
互いに掌を叩きあい喜ぶアルとマシュ。
「やりましたね!! アルさん!!」
「いえ、マシュの助力があってこそです」
「ノーカンです、今の勝負ノーカン!!」
「そうよ孔明が言い出す前だものもう一勝負!!」
「口には出していましたよ。よってこの勝負、私たちの勝ちです」
ノーカンと言い張る二人を鼻先で一蹴するアル。
この人相当負けず嫌いだなとマシュはため息を吐く。
そんな午後が過ぎていき。夜になる。
「さぁ、ジャンジャン食べてくれお代わりはいくらでもあるぞ!!」
「・・・なんで私、また肉焼いてんのよ」
エミヤは焼きそばを作り、オルガマリーは第三特異点よろしくBBQの肉を焼いていた。
オルガマリーはそれはもう午後は悲惨だったのである。
無論、付き合った達哉も同じ事は言えるのだが。
「先輩、お疲れ様です、どうです進捗状況は?」
「何とか犬掻きまで出来るくらいにはさせたよ・・・」
「犬掻きって・・・クロールとか平泳ぎとかは?」
「無理だったよ。続きは、カルデアでだな。あっちにはアマネさんたち軍人もいるから大丈夫だろうし」
「・・・落ち着いて聞いてくださいね、先輩、プール施設は資源を無駄に使うしと修復に手間がかかるってことで修理自体されていないんです」
「・・・マジか」
「マジです」
プール設備というもの自体が水という資源なくらいだ。
カルデア自体が外部からの補給に頼っている為、人理焼却下では水も貴重なのである。
実際には濾過循環装置とベルベットルーム経由で飲み水と生活水は何とかなっているだけで。
プール設備に使う余裕はないのだ。
「みんな―肉も焼けたわよー」
オルガマリーの声に焼きそばに夢中になっていった皆が殺到する。
無論ビール片手にだ。
「うう、酒飲める連中が憎い」
「我慢しましょうよ所長・・・」
「そうはいってもね、見なさいよあのアルの食べっぷり」
アルはここで自重という留め具を外していた。
焼きそばを音を立ててかっ込み、ビールを一缶一気飲み、肉にかぶり付きビールを飲む。
男衆はいいぞーいいぞーなんてまくし立ててよりおだてている。
すっかり宴会だ。まぁそれがもくてきなんだが。
「すいません、お肉お代わりで」
そしてそこに食べ終わったアルが串持ってきてお代わりを要求する。
「はいはいーってアル、アンタ泣いてるわよ」
「え?」
アルの目頭から一筋の涙が流れていた。
それを右手長手指で拭きとってアルも初めて気づく。
自分が泣いていることに。
「ああ、私はきっと忘れてしまった皆とこうしたかったのだと思います。ただ笑いあってたわいのないことを話してくだらないことに笑いあいながら美味しい食事をとる。ただそれだけのはずだったのに、うっうっ・・・なんで・・・思い出せないけど悲惨なことになったのは覚えている・・・」
アルはそういう。当たり前が欲しかった。たったそれっぽっちの平和が欲しかっただけなのにと。
最もそうしたかった同志たちの顔にはモザイクや砂嵐が掛かって名も思い出せない。
それは辛い事なのだ。愛した歌や人々の名も顔も思い出せないという事はそれだけ辛い事なのだ。
「・・・ゆっくり思い出していきましょう、しばらく私たちはこの場にいますから」
「マシュ」
「マシュの言う通りよ全部一気に思い出しても感情が負の咆哮になるからゆっくりでいいのよ」
「オルガマリー」
「だからこの場は楽しもう、時間は癒しだ緊急時は待ってくれないだろうが今は通常時だし時間はある」
「達哉」
そういって三者三様に励ましの言葉を与える。
「はい!!」
アルはとびっきりの笑顔でそれに答えた。
辛くとも、時間は癒しになってくれる、頼れる人々がいるのだから。
だがしかし。
『衆生に救世を報われぬ人々に救済を。故に今こそ開かん夢幻郷への扉を』
英雄や救世主の足に縋るのが民衆の常。
今まさに濁り水はゆっくりと流れだしていたのだ。
一体、アルは何某王なんだー(棒読み)
まぁ冗談はここに置いて置いて。
某王さんの時間軸はここ→特異点解決後カルデアと別れてまぁ色々あって発狂(主にニャルのせい)→人理焼却と同時に第六特異点となっております。
時間が捻じれているのは特異点と人理焼却と言う現状によるものです
そしてシグルド南無。
さすがにロマンシアスパイクショットを顔面に二度食らえば誰だって轟沈するよ。
そして不穏な空気。
果たしてここは本当に微小特異点なのか。
それはさておき、アルちゃんとマシュの交流が始まります。
地味に第六でアっくんの顔面にマシュの全力右ストレートめり込む事確定回でした。
あと今回は震災の事にも触れていきます。
忌避感がある人は切ってくれてかまいません。
作者がまだ若く元気だった頃。交通機関が復活して石巻に出向いて仕事してたんですけどガチ幽霊出るからって封鎖されていた橋がありましたからね。
まだ作中時間軸の3年程度では癒えてないし、海は全てを受け入れるが同時によくない物も出てくるわけです
さぁ始まるザマスよ!
という訳で次回も遅れます。本当に遅れますからね!!