Fate/Grand Order たっちゃんがグランドオーダーに挑むようです 作:這い寄る影
人の憎悪を招くものである
マキャヴェッリ 1469年~1527年
燃える燃え尽きる。
三千世界燃やし尽くすというのはこういうことか。
焼死とは遍く死に置いて惨たらしい物である。
まず即死はない、皮膚が焼け爛れる激痛如きで人間の人体というものは容易く人を死なせてはくれない。
火災における死傷の事例で最も多いのは熱傷によるものではなく煙に巻かれての窒息死が多いことからもうかがえる。
息と一緒に熱が喉を焦がし二酸化炭素などが心肺機能を犯して。
窒息死させるのだ。
「------」
それを漆黒の聖女はただ眺めていた。憎悪にぎらつかせた目をしながら。
その双眸をどこまでも冷たく染め上げて。
悲鳴によるものは竜たちの息吹、召喚された邪妖精の類が執行している。
与えられた能力でワイバーンを統率しワザとブレスを直撃させずあくまで死ぬように着火するように仕向けている。
何匹かのワイバーンが捕食に走るが。
それでも即死だけは絶対にさせることはない。
惨たらしくゆっくり咀嚼させるのだ。
「ひゃはははは!! いいねぇ、いいねぇ!! ヒャハハハハ!!」
凶嗤を上げて白髪の男が剣を振るう。
男も女に即死させるなと厳命されている手前、即死はさせない。
だが刃で器用に戦闘不能に持っていきつつ出血死を狙っている。
即死させるなという命令でさえ男は自分自身の殺人欲求を満たすものでしかなかった。
「ジャンヌ」
女は見ている只惨たらしく死を行い死んでいく者たちを見ている。
そんな彼女に声を開ける大柄のフード姿のぎょろめの男。
女「ジャンヌ・ダルク」の副官にして狂信者の「ジル・ドレェ」だ。
「この町の攻略は終了しました」
「そう」
興味なさげにジャンヌは適当に返し、炎を見つめ続けている。
「この時代のジルが率いる本隊は?」
「まだ落とせませぬ、他の砦も引きこもり防衛陣を引いており大火力を持つ対軍宝具でもない限りは・・・」
「まぁそうよね、幾ら”噂”を使っても、私と接点がないおかげで”噂”の適用外みたいだし。殺傷能力で選び過ぎたわね」
ジャンヌは聖杯を使いサーヴァントを召喚していた。
どいつもこいつも人格破綻者の上での殺人狂、狂っている怪物たちである。
それでいいと思っているし事実それを覆す気はない。
伝説に謳われる大火力持ちのサーヴァントなんて光の奴隷連中だ。
使い辛いったらありゃしない。
狂化を付与して無理やり殺戮本能を引き上げてもいいが、それではだめだ。
生身の殺意を世界に切り刻んでやるという情念が必要なのだとジャンヌはそこに拘る。
噂の力によってこの時代の人間ではジャンヌには勝てない。
絶望が起点となって広がって人は駆逐されるだけの存在と化していた。
だがしかし抑止力として呼び出されたサーヴァントは”噂”の効力は通用してなかった。
これは単にジャンヌに関する噂ゆえに接点がなく効力外となっているがゆえであろう。
「ようお嬢ちゃん戻ったぜ」
「お帰り、注文通りね」
「ああ殺しが出来ねぇのは残念だがな、電波様のお告げじゃぁしゃぁあない、でも楽しめているから問題はないぜ」
戦場から先ほどまで奇声を上げながら殺戮疾走していた男。
「須藤竜也」がジャンヌのもとに帰還する。
ジャンヌは注文通りと彼を誉めてそれにジルが反応し。
視界に物理的圧力を込められるのなら人ひとりくらいは余裕で殺傷できそうな威圧を込めて睨み付けた。
須藤は「おお怖ッ」と大げさに肩をすくめて見せる。
それを挑発と取ったかジルの機嫌はより加熱した。
それを見て須藤は獲物を見つけたかのように表情を歪め口を開きかけ。
「そこまでよ」
ジャンヌが二人を制する。
このままでは売り買いの喧嘩という名の殺し合いに発展しかねない。
どっちを失っても痛手なのだから。
「それでジークフリードは見つけたかしら?」
「不明です・・・、翼竜たちに後を追わせていますが。抑止力のサーヴァントの助力があったのでしょう、補足できません」
「そう、まぁその件については私が一方的に悪いわ。確実に殺すために呪いをたらふく打ち込んでから首を跳ねようと思っていたらすきを突かれて逃げられましたなんて笑い話にしたのも私だもの。だからジルが気にすることはないわ」
「おおジャンヌ」
不手際は自分の不手際だと言って許すジャンヌに歓喜極まっているジル。
須藤はクツクツと笑い声をかみ殺して笑っている。
ジャンヌはその様子を見て呆れて冷たい目でジルを見ていた。
「それでどうするよ? お嬢ちゃん?」
手元でナイフをくるりと弄びつつ須藤がジャンヌに問う。
「なにも、このまま予定通り行くわよ」
「ジャンヌ、予定とはカルデアの到着を待つということですか?」
「ええそうよ、聖杯がこちらの手にある以上、カルデアさえ始末してしまえば王手詰みですもの、だからこの時代のジルや抑止には牽制球だけ投げて置いて。カルデアを連中から切り離してあとは叩いてお終い」
戦力比で上回っているのだから分散する方が愚行の極みである。
人理を完全崩壊させるという目論見を達成するのならカルデアを潰した後に。
バラバラの抑止サーヴァントを各個撃破すればいいのだから。
それに。
「こちらには切り札はもう一枚存在する」
ちらりとジャンヌが自身の持つ旗の切っ先を見つめる。
人理焼却犯とはちがうルートで授けられた穂先だ。
それは聖人の身体を貫き癒えぬ傷を刻んだという物である。
自分の宝具ではないけれど。エンチャント系故に常時能力を発揮する優れものだ。
「確実にここで全部殺しきる」
ジャンヌはそう呟く。
全ては自分が生まれた日より始まった。
―貴様、何奴!?―
―貴様らの影だ。まぁどうでもいいことだが―
突如として現れた白い学生服の青年は両目の瞳を黄金色に輝かせて。
ジル・ドレェをあしらいつつ。
ジャンヌを見るて口を吊り上げた。
―フハハハハ!! これは傑作だな!! こうまでに側面を切り取られ呼び出された英霊とは実に無様なのだな!! なるほどなるほど。これでは獣畜生のお使いにふさわしいという物だ。―
無論その嘲笑に当時のジャンヌとジル・ドレェは襲い掛かったが。
青年の両方の手に拳銃のような物が握られ。
炎は鈍器の様に使用されたそれで打ち払われ。海魔は吐き出された銃弾で穿ち倒される。
その後の攻撃も”未来予測”でもしているかのように回避され対処される。
状況は一方的にジャンヌとジル・ドレェが圧倒されて終了した。
聖杯は青年の手に渡り。ジャンヌは漆黒に染まった青年の左手に首を鷲掴みに握られ持ち上げられる。
ジャンヌの首に指がめり込み動脈を圧迫しながら骨をへし折り筋肉繊維を引きちぎらんばかりだ。
ジル・ドレェは地面に這いつくばり手足に細い杭上の物を撃ちこまれ地面に縫い付けられて動けない。
―ククク・・・、ジル・ドレェ、貴様は確か神が憎かったはずだな? 己が敬愛というよりは狂信を募らせていた。聖女モドキを殺されてナァ―
聖女モドキ、それは誰だとジャンヌは遠くなる意識の中で思い。
―貴様ァ! 彼女を侮辱するか!!―
―侮辱?? 嗚呼、聖女モドキ呼びの事か? だが真実だろうが? 私の認識では、聖人は死後奇跡を起こすことが条件だったはずだが?
あの聖女モドキは生焼けの丸焼きで生きていただけで。その直後の彼女が無様に生きていたのを死んだ後でも生きていると貴様らが誤解しただけだろう?
それに神の声を聴いたと叫び散らし戦場でのルールを勝利のために破って戦端を開いた先導者だ。
良いところ聖女の皮を被った神の玩具。あるいは大衆の人形だろうよ。”勝ったから” ”都合がいいから” ”大衆がそう思ったから” 聖人扱いされているだけで。本性は思考の欠けた愚物だ。聖女モドキと言って何が悪い?-
私は当たり前のことを説いているだけだがなぁと青年はニタニタ嗤っている。
―だがまぁ、そこは論点じゃなぁない、私が言いたいのは。貴様がその聖女モドキに哀れみを抱き。現実逃避の狂行に走った挙句。あの聖女モドキが神に受けた仕打ちを。お前自身が行っているという点だ。―
― -------え? ―
ジルが呆ける。
青年は遂に耐えきれぬとばかりに大笑いした。
―だから。私は、自称神の声であの聖女が先入観を植え付けられて愚行に走ったという。
貴様が最も嫌っている事象を、貴様自身が、一から無垢なジャンヌを作り出し、あの神の様に先入観を植え付けて作り上げるという。
自分自身が最も嫌う存在と同じ行動を、何故とっているのかと聞きたいのだが・・・
なんだ・・・自覚がないのか? であるなら本当は神が憎いのではなく、理想のジャンヌ・ダルクという自慰人形でも欲しかったのか??―
青年の物言いにジャンヌは首を締め上げられながら。
驚愕に瞳を染めてジルを見る。
要はこの青年はこういっている。お前はジルの考えている理想のジャンヌという贋作であると。
無論。それはついでに述べられ。
事の論点の焦点は。なぜジル・ドレェが敬愛する聖女に対して最も嫌う神が行った先入観と思想の植え付けと誘導という事の発端的所業をジル・ドレェ自身が行っているのかということであるが。
ジャンヌからしてみれば最も衝撃的だったのは自分が出来の悪い贋作でしかないということである。
―うそ―
―嘘ではない。貴様はジル・ドレェという人物が用意した。
青年が嘲笑いつつジャンヌ・ダルク・オルタの額に右手の人差し指を当てて事の経緯を直接流し込む。
ジル・ドレェは事実を突きつけられて「私があの愚神と同じことをした?」呆けている。
ジャンヌは真実を知り叫ぶ。
―偽物が嫌か? であるなら・・・・なぁ周防達哉、理解者は多い方がいい。この私が貴様に憎悪が何たるかを教えてやるとしよう!!―
そのあとは坂を転げるが如くだ。
理不尽を見た。
絶叫を見た。
悲哀を見た。
理不尽な罪を背負わされ孤独に叩き落された青年の夢を見た。
世界を救ったというのに敗北者に未来を奪われた最後のマスターの夢を見た。
悪魔に悪魔にされて永劫神と戦うことを義務付けられた混沌の王の夢を見た。
ほかにもほかにもほかにもーーーーーーーー
―くくく、いい塩梅だ。祝福しよう、逆襲劇を奏でるというのなら、ぞんぶんに奏でるがいい!―
それを見て気づく。
この男が発端なのだと。
―舞台は用意してやったのだ!! そこの男を使い、私が張った結界を使いカルデアを滅ぼせた後に。自力で人類を滅ぼせたならば。直々に私が相手をしてやろう!! フハッ、フハハハハハハ!!―
私は叫ぶ、炎を焦がす。
だがあの青年「ニャルラトホテプ」には届かなくて。
奴は選別として眷族である「須藤竜也」をジャンヌに付けて。
さらにとジャンヌに聖槍と噂が具現化する結界をゆずって消えていった。
まだ見下すかとジャンヌはへたり込みつつ歯ぎしりし
故に――――――
「滅迅滅相よ、人類は滅ぼす、私も含めて全て燃やし尽くすッッ!! それが何もできなかったオリジナルへの!! ジルへの!!
何も変わりはしない人類への!! あの哀れな周防達哉への―――そしてぇ!!何よりも悍ましいニャルラトホテプへの!! 返礼であり私の復讐だ!!」
その日。ジャンヌ・ダルク・オルタナティヴは冥府の底より太陽を食らわんとする漆黒に堕ちた。
もっとも影ではニャルラトホテプとその眷族である「須藤竜也」が嘲笑っていることに気付きはしなかった。
カルデアの修復作業やらマシュとオルガマリーの特訓に奔走していた達哉は疲労でベットに寝そべるなり眠りに落ちた。
此処10日、休まる暇はなかったが、楽しかった為、達哉的には全然苦ではなかったのである。
英霊召喚目途も付き。
明日に英霊召喚を行い、その後。不信感やら連携の不備やらないように休息と英霊とのコミュニケーションを三日ほど行い。
第一特異点への介入を始めるという段取りであった。
オルガマリーも無論忙しそうであった。
人理焼却という未曽有の事態は無論だがそれを解決するためにはペルソナを行使せねばならず。
ペルソナ事態が封印指定というお前ら根源に行く気在るのかという謎制度に引っ掛かる代物であったため。
オルガマリーを筆頭にカルデア一同の入念な打合せが連日連夜行われているからしょうがない事であろう。
誰もかれもが忙しいのである。
休める機会があるだけましと言えた。
がそれでも因果は巡る、人の心は宇宙の星のように光り。
それを漆黒の宇宙空間が覆う。
その中に真鍮製の鳥かごのような場所が一つある。
「ククク・・・就寝前に呼び出して悪いな。周防達哉」
そこに気づけば達哉は立っており、彼の数m先に嘲笑う青年が一人。
その姿は達哉と同じだ。
瓜二つとはこのことを表す言葉だろう。
もっとも着ている衣類は違うが。
今、達哉が着ているのはカルデアのレイシフト員が着ている服であるが。
相対するもう一人の達哉が着込んでいるのは胸元に罰点印のロゴが刻み込まれたライダースーツである。
ついでに言えば瞳は黄金色に染まり。その表情は皮肉に歪み切っていた。
「随分早いお出ましだな・・・・ニャルラトホテプ!!」
「決着を付けよう・・・と言いたいところだが・・・そう急ぐとはあるまい。この場所はあのフィレモンの人形の住む場所と同じとほぼ同一とまでは言うまいが。此処は阿頼耶識の底、時は永劫に近くあるのだからな」
達哉は戦闘要員ということもあってマリスビリーが英霊召喚の触媒用に用意し、蔵に眠っていた物をロマニと所長が引っ張り出し。
譲ってくれた日本刀を構えるが。
あいも変わらずニャルラトホテプは嘲笑うようにそれを制する。
奴がこう言うということは大概決着をつける気はない。
大方自分を煽る為に呼び出したのだろうと検討を付けつつも油断なく刃は構えたままにしていく。
「ククク、全く相変わらずせわしない男だよ、すこしは父親役であった私と旧交を温めようという気にはならんか?」
「だれが貴様と! それに俺の親父は一人だけだ。」
「そうだった。そうだった確かに。明確に父親役を演じたのは哀れなピエロ・・・、名は黒須淳だったか。そいつだけだった」
「・・・また俺を煽りにでも来たのか。その下衆じみた思考であの世界を巻き込もうとでもいうのか?」
もうここまでくるとこいつは本格的に煽りに来ただけかと思いつつ。
あえてその煽りに乗る。
歪めてこそいるがこいつは乗るだけで真実を語るからだ。
故に問う。今度はどんな下衆じみた考えで関係のない他世界を巻き込もうというのかを。
「あの世界? ああ、あの腐れ樹のような無様極まる世界か・・・・いやこの言葉は相応しくはないな・・・ふむ、ではこう言おう。生き死体の様な世界と形容するべきかな?」
「生き死体だと?」
「そう、形容するほかあるまい? なぜならば貴様と私が居たアマラの宇宙とは違い。この世界は最善も最悪も許さずにパージする世界だ」
「・・・・何を言っている?」
「容量の問題だよ、周防達哉。この世界には容量があってだな、最善を突き詰めすぎた並行時空、最悪を突き詰めすぎた並行時空や結果は、発展性がない疾患として排除されるのだ。幾ら英雄共が努力し貴様が気張って我が試練を乗り越えたところで発展性がないという理由だけでパージされる。・・・さながら多数の疾患を患い死が確定した脳死患者を生かすようにな?」
そうこの宇宙は最善と最悪を容認し、作り直せるシステムが存在しない。
最善と最悪は異端認定され、さながら疾患の様に扱われパージされそこそこの結果で埋め合わされる。
多数の疾患を患い、死にかけるたびに臓器をパージし人工臓器で埋め合わせる。
まるで脳死患者を無理やり延命するように。
「その哀れで無様な人間の事をなんというか知っているか?
生き死体だよ。無理に周りの認識で生かされているだけのものに過ぎないのだから。
そう言う以外になんと言えばいい? どうせ先細りして死ぬのは一緒だろう?」
ニャルラトホテプが言う。
容量不足なんぞでパージを続けていけば先はどうせ先細りし死に至る。
この世界のパージ法は所詮無理な延命処置でしかない。
故にその無理な延命処置で行かされる世界を、生き死体と形容して何が悪いというのだと嘲笑っている
「貴様ッ!」
「ククク、怒るなよ事実を述べたまでだ。なんの矛盾も無い真実だよ」
「滅びに加担して色々滅ぼしてきた貴様がそういうか?!」
無意味にパージしてきたのは貴様も一緒だろうと達哉は庵に言う。
世界は残酷だ。だがそれでも友達が生きている世界を”生き死体”やまだ賽子の目も出ていないのに無駄と断言されて怒りがわかないはずがない。
それに無意味に愉快犯的動機でパージに等しい滅びを行ってきたのはニャルラトホテプも一緒であろう。
「確かに・・・そうだな、だがなそれは大衆が私に望んだことだ。貴様が望んだことだ。それを実行したにすぎん。貴様もな・・・」
「ッ・・・」
其処を突かれては痛い話になる。
だが。
「ああそうだ。望んでしまったことだ。だが、その意味を無意味と断じることは出来ない」
「ほう、ではこの世界のパージを容認すると?」
「ああ、仕方がないことだ。進めなくなってしまったのならそうするほかないだろう、俺の様に・・・だが彼女たちは今を生きてる。まだ世界は此処にある・・・!! 俺もまた歩みを止める気はない!!」
人は必ず何かを犠牲したうえで成り立っている。
それを踏まえたうえで先細りで死ぬか。新たな結果を開拓するかの賽の目はまだ出ていない。
だからこそ無意味と断じられぬし同時に価値があるものだとも断じられぬ。
自分はドンズマリだが、それで終わるつもりはないし。彼女たちは生きて世界を紡げるのだからと矛盾を言いながらまだ終わっていないと叫んでいる。
「矛盾だな。だがそれを抱きかかえて現実に挑む。結果は出ていないのだからと・・・、パージされた世界に意味はあったのだと叫ぶのだな? 見事な成長だな? 周防達哉? さすがは私を倒しただけのことはある・・・・」
「・・・受け入れて進め。それだけが償いになるのだと。お前が教えてくれたことだ」
「そうだったな。クックック」
達哉の成長にも彼は嘲笑っている。
「何がおかしい?」
「いやな・・・今日はその成長に免じて疑問の解消と贈り物を用意してきたのだよ」
「??」
「まず一つ目、疑問の解消だ。もし貴様らがあそこでリセットを選ばなかったとしたらどうなっていたか・・・ということについてだ。アマラ宇宙はこの宇宙と違い、世界を文字通り再構築できるのだよ」
「・・・・なに?」
「可能性の維持のためにな? この宇宙とは違って可能性を形にできる。お前たちがリセットをできたように・・・な? ならば逆のことが出来ても当然だろう?」
「!?」
つまりあの時。もしリセットを選択しなければ。
「そう貴様たちは私に勝利出来ていたのだ。早い話が。無駄に貴様は滅びをかざしたにすぎん!!」
勝利出来ていたということである。
アマラ宇宙の法則としてドンズマリになった世界は受胎しその中で理を開くことによって世界を再度構築できるのである。
「奴もまた私だ。私もまた奴だ。属性こそ違えどな? ペルソナ能力の授与だけが奴の試練の与え方ではない・・・。極限状況下で正しい選択ができるのかと迫ることもまた在るのだ。私とは形が違えどな?」
「だがそれが出来なかった。それだけだ・・・・まさか」
「ククク、なんだ周防達哉?」
「俺はまた逃げたのか? 誓いを破ったのか?」
ニャルラトホテプが言ったことが本当であれば達哉のいる世界は再構築されていたはずである。
つまり受胎状態だったはずだ。
その影響下はまさしく万能の願望機にふさわしいことは分かる。
故に再構築されずこの世界に来てしまったのは”受胎”を利用した世界跳躍を行ってしまったのかという考えに至ってしまう。
その考えに至ったことにニャルラトホテプは内心嘲笑いつつ。
優しく諭す。
「いいや私から見ても、それはない。今回の事故はこの世界のせいだ」
「?」
「魔術師共は愚か者共の集まりだ。世界は自分たちだけがどうのこうの出来ると思い込んでいる。その中の馬鹿が我々の宇宙を観測した。
結果。私はまぁスカウトされここにきている。そしてその結果を知った馬鹿が私を倒す抑止力として丁度受胎しあやふやになった世界に干渉し貴様を引き摺り込んだ」
「・・・いやに優しいな貴様」
「ここまでくると私も哀れみを覚えられずにはいられない故にな・・・・」
だから貴様の責任ではないぞと優しく語りかける。
無論。達哉はこいつの言葉信じない。
どうせ来てついでだから感覚ということさえあり得るのだから。
「なぜなら・・・貴様の住んでいた向こう側はすでにないのだから」
「・・・・はぁ?」
「当たり前だろう? 受胎し周防達哉という理を開きし存在の願いをかなえるべく世界はあやふやになっていた。
つまるところOSインストール寸前のパソコンからOSを強引に引き抜いたようなものだ。世界自体が機能を停止する。
流石にそうなるとアマラの宇宙もパージを実行する」
「!? じゃ俺は・・・帰れないのか・・・・」
「そう言うことだ。ククク、また帰る場所を失ったな。周防達哉?」
「黙れ・・・・」
「黙れだと? それは誰に対していっているのだ? 私は影だ。誰も影を消すことは出来んゆえにな?」
心が揺らぐ。達哉の心が。
影が深くなっていく。
嘲笑う。
「そこでだ。贈り物の話になる」
「・・・何の関係があるんだ」
「いいやあるさ。世界とは理不尽だ。まぁそれはどこの世界でもいえることだがな。それでも私は思うのだよ。私を倒して雄々しく成長した貴様に。贈り物の一つや二つくらいは用意せねばとな?
まったく英雄譚を駆け抜けたお前にそれすらしてやれんのは敵役としての沽券にかかわる」
「貴様からの贈り物なんぞ要らない!!」
「まぁそういうな話を聞いてからにしても遅くはない・・・。私は良く知っているぞ? 二つの世界の為にお前がどれほど奔走し。血反吐を吐き大事な者を失っても走り抜けたのか、故にすまなく思っているのだ」
そう知っているともと影は言う。
その時に達哉の脳裏に警報が鳴る。これ以上の事は聞いてはいけないと。
それを察した影はニタリと口を吊り上げて。
「だからこそ。贈ろうと思ってな? お前が何よりも欲するものをな?」
「俺が欲すもの?」
奴はそういうがテンデ心当たりがない。
これ以上。言わせてはいけないという警報が強くなる。
もうだめだ奴の言葉を聞いてはいけない。
ペルソナを準備し刀を握る手に力を込めて。
それより早く奴は言葉を紡いだ。
「つまりお前を理解してくれる誰かとそれらと共にする新天地をな」
「理解してくれる・・・誰かと・・・新天地?」
そうそれは二度と手に入らず、達哉自身が最も望み。
もっとも拒む物である。
「そうだとも!! 先も言った通り、この世界は貴様を巻き込んだ。どれだけ足掻き苦しみ憎悪し絶望し慟哭した貴様の意思なんぞ知らんというばかりにお前を巻き込んだ。この生き死体じみた世界を破壊し、お前と同じ苦汁を持つ人々を作り、それらと共に新天地を目指すという英雄譚をだ!!」
「!? 貴様ァ!! 貴様ァァァアアアアアアアアアアア!!」
達哉は理解し叫ぶ。望みながらも望まぬゆえに。
「察したか、つまりマシュ・キリエライトを、オルガマリーアムニスフィアを・・・カルデアの連中を同じ目に合わせ、理解者にしてやろうということだ!! 状況も都合がいい。己が贖罪も兼ねられるしこの世界を断罪もできる・・・ククク・・・最高の舞台になるだろう?」
ようは達哉という走り切った英雄を巻き込んだ世界を断罪として、ぶっ壊し理解者を作り新天地へと赴く英雄譚をプレゼントするということだ。
この状況下では実にニャルラトホテプには実に容易い事であろう。
それゆえに達哉は、同じ目をよりにもよって新しい友となった人々に味合わせるということに激高する。
「フハハハハ!! 確かに感じたぞ? 理解者と新天地という言葉を聞いて貴様の心が揺れ動いたのをな!! 私は全人類の影だ!! 誰も私に対し虚偽の報告はできん!!」
「黙れぇぇええええええええ!!」
「いくら叫ぼうが無駄だ!! 車輪は既に回っている!! 私は貴様らの影だ! 故に私に対し嘘を吐くことなどできん!! 貴様は望んだ!! 故にその望みを叶えてやろう! もっとも貴様が心の裡に抱える深淵の底で燃え続ける様な何よりも形容しがたい渇望を、この脆弱な世界が!! 無垢なる少女が!! 歩き始めた少女が受け止められるかは知らないがな!! ククク・・・フハハハハ!!」
「ニャルラトホテプゥゥウウウウウ、貴様が!! 貴様ぁぁあああああああ!」
影が消えていく、残るは達哉の絶叫のみで。
運命の車輪は動き出し始めていた。
「せん・・・ぱ――――」
誰かの呼ぶ声がする。
「せ・・・ぱ・・・・い――――――」
薄っすらと明けられたしかに薄紫色の髪の毛が特徴的な少女が映る。
「マシュ?」
「はい、私は此処にいます」
「どうやってこの部屋に・・・・」
「鍵が開けたままになっていたので・・・すいませんが勝手に上がらせてもらいました・・・」
「そうか・・・」
「大丈夫ですか? 酷く・・・獣のように魘されていましたよ・・・?」
「マシュ・・・」
「? なんでしょうか」
「悪い・・・」
達哉はマシュを抱きしめるかのように引き寄せる。
いきなりの事にアワアワと慌てるが。達哉の惨状をみてそれはすぐに掻き消えた。
「何かあったんですか?」
「すまない、今はこのままで頼む・・・お願いだ・・・・」
人のぬくもりが欲しかった。縋るものがあまりにも無さすぎて。
そうするほかなかったのから。
きっと酷い夢を見たのだろうとマシュは察して。あの時とは違い彼をあやす様に抱きしめた。
この人理すっごいよな、ニャル様たっぷりだもん!!
英雄召喚をすると言ったなありゃウソだ。
今回はニャルニャル回で終了。
各個人の状況。
たっちゃん。まさかの望んで最も望まいことを押し付けられメンタルボロボロ
マシュ、ニャルに煽られズタボロの達哉を抱きしめるヒロインムーブ
オルガマリーを含めたカルデア職員 疲労で交代制で休息
邪ンヌ。贋作あることを突き付けられそのうえでアマラ宇宙の悲劇の数々、現実の理不尽を見せつけられビーストモドキ化する
ジル、ニャルにへし折られ邪ンヌの人形状態。
須藤竜也 電波ッパーパー
ニャル様、、第一特異点に噂フィールド展開し稼働率チェックの為に降臨。邪ンヌに真実を突き付け。
ジルに「それってお前がもっとも嫌う神と同じ所業だよね?」と煽りながらへし折る。
その後、邪ンヌに真実を語ながら世界の無常さを叩き込み憎悪を仕込み力を押し付けてビーストモドキ化させる。
その帰り足でたっちゃんをモナド曼陀羅に引きずり込み。この世界の真実となぜ来たかということを嘘とホントを交えつつ、「お前の世界は型月連中のやらかしで滅びたんだから。私をかつて倒した褒美に、こっちを滅ぼして断罪してやるよwwww、ついでに貴様への理解者と新天地もセットなwww」と
最も達哉が望み。故に望まないものを押し付ける宣言してボコボコにする。
座では
ジル ちょっと腹掻っ捌いてきます
ジャンヌ ジルー!?
アルトリア 言葉も出ない
エミヤン 白目
第七特異点では
英雄王。第七特異点で過労死寸前で働き続けている時にたっちゃん虐めの映像が飛び込んできたため、たっちゃん虐めのひどさとニャルの世界への見解という名の冒涜に職中にキレて魔獣共にスデゴロで八つ当たり。
次回は英霊召喚と、たっちゃんへのフォロー回、特異点突入までできればいいいなぁ・・・・
修正作業と同時にニャルが妙にたっちゃんがこちらに来たことについてへの言及についての解説。
ニャルは達哉に事故と言っていますが、実際に引き摺り込んだのはニャルです。
じゃないと、本作のあらすじ詐欺になりますしね。
無論ニャルが他人の願いをかなえるという名目で巻き込みました。
そこをあえて。たっちゃんのメンタルをヅタヅタにするためと、あとでロマニとマシュの殺意を自分に向けさせる為の伏線としてたっちゃんが型月時空に来た理由はかなり歪めています。
なお世界再建の事は全て真実を語った方が達哉が効率よく傷つく為、嘘偽りなし。
つまり世界は受胎しコトワリを達哉が見出せば再建出来ていた。悪いのは近い未来にやらかす獣の眷属と。
罪と罰の時に何の説明もしなかったフィレモンが悪い。
あと次の更新は遅くなるかもです
コメント返しについてのアンケート
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コメ返した方が良いよ
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コメ返ししなくても良いよ