Fate/Grand Order たっちゃんがグランドオーダーに挑むようです 作:這い寄る影
ウィリアム・シェイクスピア
今回はより一層慎重に動かなければならない。
モードレッドやジキルがねじれてシャドウ化していているのだ。
カルデアのサーヴァントはフィレモンが選出したサーヴァントである。
唯一の不安があったシグルド夫妻も成長した故にと言いたいところだが、
影は常に付きまとう、光が強くなればなるほど濃くなろうという物だ。
故に慎重に動かねばならない。
ホームズをして神出鬼没と言わしめる謎の魔術師。
単独で時計塔を攻め落とし今代魔術元帥すらも倒した存在の捕捉は出来ていなかった。
出来ていればモードレッドやジキルをどうにかできたかもしれないがもう後の話である。
故に進行ルート及び敵拠点の判別を煮詰めなければならない。
なんせ地下は噂結界で広大化しており時計塔本部、学園都市のカレッジ。政府が主導で掘った地下通路が、
蜘蛛の巣の如く張り巡らされている。
そして外や地下には魔術師共がねじれてシャドウ化したり悪魔の召喚媒介になったお陰で幻想種が徘徊しているのだ。
下手に外に出ようものなら今度は迷路のように張り巡らされた裏路地との格闘が待っている。
更にはペルソナ使いやサーヴァントには通用しないが装備の探査系が近距離以外使えなくなる上にカルデアからの観測も難しい魔霧の発生。
地味に詰みに近い状況であった。
幸い、カルデアが地下に入ればカルデアの管制室からの観測が効くとダヴィンチが太鼓判を押したことによって、
如何に地下に突入するかがカギとなる。
地下迷宮も幻想種やら噂で具現化した蛇人間がうろついているとの事であるし、
入念に突入ポイントは剪定しなければならない。
つまりいつも通り詰みの状況からの挽回をしなければならないというのが現状であった。
「問題はねじれだかとかいうシャドウ化現象を行っているのは間違いなくニャルラトホテプだ。その化身の正体について分からないのか? ホームズ」
「敵は痕跡を一切消している。というよりシンプルに動いているね。だから逆に分かりづらい。愉快犯的というのは良くわかったが、それではヒントにもなりゃしない。時計塔の方で名簿を探りたいが・・・いささか私の手に余る」
ホームズはため息交じりにコカインを注射器でキメてそう言った。
ヤクをキメてなけりゃやってられんと言った感じである。結構頻繁にキメていた。
これには、この場には居ないシャーロキアンのマシュも顔を顰めいてた。
逆に言えばそれだけ調査領域を潰されているという証拠であるし、
第一にホームズがヤクやっていたのは公式である。
「せめて時計塔で名簿などが手に入れば、今回の事件、ねじれだかシャドウ化だかをさせている魔術師の名を掴めるのだが・・・オルガマリー嬢心当たりはないかね?」
「心理魔術はこの時代にも少数かつ希少だから封印指定を恐れず時計塔に席を置く人物は一人しかいない」
「ほう?」
オルガマリーには心当たりがあったようだ。
「だけど、どこぞの姉妹の様に自由奔放な人でね。この時期の彼女がロンドンに居たという記録事態はあやふやなのよ。けれどニャルラトホテプの化身だとすれば介入してくるはず」
「介入の可能性は?」
「あくまでも化身と仮定した場合だけど100%ね。現代ではすでに死亡済みみたいだけど・・・」
「ちなみにこの時代生きているのかね?」
「記録上は生きている。でも詳しいことは分からない。彼女は行動自体が謎が多い。この特異点の年数から10年後に魔法使いと一般人に殺されたってことは確かみたいだけど」
「その名は?」
「ガリオン、爪と呼ばれる特殊な戦闘人形を抱えてあらゆる封印指定をとっ捕まえた規格外よ」
「そんな人物が2015年まで生き残っていないのは後継も作らず、生き残っていないのはなんでかね?」
「やり過ぎたのよ」
ホームズの問いにオルガマリーはそう答えた。
「本来なら封印指定が掛かる予定だったらしいけど。ガリオンは執行者として封印指定魔術師どころか、将来有望な魔術師まで潰していた。趣味趣向を満たすためなら上級死徒や真祖狩りから逃れた真祖ですら手を出して破滅させた。故に封印指定を通り越して危険視されたがゆえに抹殺指令が出るほどの人物だったらしいわ。だからこの特異点の時代から十年後。宝石翁と一般人協力者の手で抹殺されているのよ。もっとも現状を考えれば考えるほど、彼女、ニャルラトホテプの化身だから過剰戦力ってわけでもないし、跡継ぎがいないのにも納得できるというものだわ」
ニャルラトホテプの使徒とて恐ろしい存在だ。
第一特異点の須藤がそうだった。
だったら戦闘特化の化身であれば魔法使いが入っても決して過剰戦力ではない。
ガリオンと呼ばれる化身が単独で時計塔を落としているのだから言わずもがな。
「気になっていったのだが。なぜ彼女をニャルラトホテプの化身だと断言できるのかね」
「聞かなくてもわかってるくせに」
「はは、そうだね、彼女に対する情報を紡ぎ合わせるとそうなる」
黒幕が作りし七つの特異点、第三まで攻略したが。必ず奴の化身が存在し事態を悪化させ、
カルデアに嗾けてきたのだ。
状況証拠だけだが、魔術回路を暴走させねじれというシャドウ化は実際に魔術ではなく奴の権能とすれば納得がいくし、
矛盾点もない。それに化身であれば人ではないので後継を作っていない事にも納得が行くという物なのだ。
魔術師というものは自分の代で到達できないと判断するな否や後継を作るし、
神秘の隠匿上、こうも愉快犯的な真似はしないからである。
故にニャルラトホテプの化身であると判断できるのだ。
「と言っても神出鬼没には変わらないから、位置特定も不可能なんだけどね」
「そこだね。純粋に拠点も持っておらず神出鬼没の愉快犯、手を焼くよ」
奴の悪意の底は知れない。というか計測のしようがない。
普遍的無意識下の黒、絶対負とも呼べる存在だ。善も悪も嘲笑うあらゆる側面の負の化身である。
どう転ぼうとも奴の想定内とも言える。
多数の人間を使って事態を暴走させコントロールする側面上。ホームズも奴の補足には手を焼いていた。
多数の暴動を無秩序に放ち、関係のないそれらを最終的に一個の目的にまとめるのだ。
故に初期段階では一個一個無秩序に動いているからそこから割り出せるには至らない。
最終的に収束する段階に至って補足は出来るだろうが、その段階では手遅れの可能性が高い。
最悪の確信犯的愉快犯。それがニャルラトホテプだとホームズは考えていた。
まぁそれはさて置き、
「やっぱりアサシンクラスが必要ね。こういう状況では・・・」
「ジャックにさせればいいのではないかな」
「彼女、英霊ギリギリじゃない、正体は水子の集合体とか、後言っちゃ悪いけど彼女にビーコン設置なんて繊細なこと出来ると思う?」
「思わんね」
「でしょう? あとジャックみたいなやつ。奴の好物ですもの、屋敷から出た瞬間にシャドウ化されても驚かないわよ私」
「それを逆手にとってジャックをおとりにしつつガリオンを引き寄せるというのは?」
「幼子を囮にするほど人間性や品性まで売った覚えはないわ」
「そうか、安心したよ」
オルガマリーは魔術師としては真当な人間だ。
ペルソナ能力に開花し魔術刻印の冠位指令を外したのというのも大きいが、
元より目の前のことに手一杯でそんな暇もなかったというのも大きい。
魔術師失格、事実上は魔術使いに近いが。
そう言う訳で人間性と品性を売った覚えはないという。
ホームズもそれには安心した。一般的魔術師なら根源に行くためにこの状況すら利用し余計なことをしかねないからである。
「けれど偵察は必要よ・・・ ほんとアサシンクラスがいれば・・・」
「ジャックは使えんと来た。されど私に任せてくれまいか?」
「ホームズ、アンタなら出来るっていうの?」
「変装用の宝具が在る。リソースで完成度が打って変るが」
「分かったわ、リソースはこっちで用意しておく」
「そっちもカツカツじゃないのかね?」
「最初期の頃よりましよ。第一特異点じゃ本当にギリギリだったからね。そのころのに比べればリソースも設備も潤沢だわ」
そう、カルデアはレフの爆破の時よりは充実している。
第一はまさにギリギリの勝負だったのだ。大海魔に魔人・ジャンヌ・オルタ。
達哉にクーフーリン、そして第一では抑止力として呼ばれたマリー・アントワネットにアマデウスにジークフリードがいなければどうなっていったか。
後、なけなしのリソースで来てくれたサーヴァントたちがいなければどうなっていたか。
さしものオルガマリーも寒気がするというものである。
はっきり言って複数要素が絡まなければジャンヌ・オルタに壊滅させされていた可能性が高い。
それだけ規格外だったのだ。達哉が寸前で間に合わなければ確固撃破に持ち込まれ、碌でもないことになっていたのは確かだ。
ぶっちゃけその思想、行動、実力共に危険すぎたのである。
本領を発揮させられればどうなっていたか・・・考えるだけでも怖気が走る。
彼女は第一特異点を橋頭保としてしか考えていなかった。
第一特異点を飲み込んだ後、後の特異点や聖杯も飲み込み黒幕を滅ぼし、
文字通り、殺戮の丘に一人立っていたであろう。
それはさて置き。彼女を食い止めたから今は関係のない話でもある。
重要なのはリソースが第一の頃より余分に在るという事だ。
これでホームズの第二宝具は十全に機能しうる。
ホームズをアサシン代わりに使えるという事だ。
「とりあえず契約しましょう」
そう言って紙の上に魔法陣を描いて。
カルデアとのパスを繋げる。
これでホームズはカルデアのバックアップを受けることが可能だ。
「では、行ってくるとしよう」
ホームズはそう言って早速仕事をしてくると言って館を出ていった。
「・・・」
「なんだ?」
「ひけるんだ・・・それ」
偶々、バロックギターを見つけたので達哉は弾いていた。
ジャック達にも受けがいいので数曲弾いていたが。
やはり現代のギターとは弾き方が違うから何回か調整と調律、手慣らしで何とか弾けるくらいにはなっていた。
要するに現代のギターを弾けるからその応用であるという事である。
手習ったことの応用は大事だ。
だから基礎技術は大事にしろと教練の時に宗矩に徹底的に言われていた。
応用を聞かせるのは基礎が成熟してからであるとの事。
最もそのおかげで応用段階に入り、訓練でボコボコにされているのはさて置いて、
余りに奇麗に奏でる物だから、フランも達哉の演奏に興味を持ったのだ。
「・・・どうしたい?」
「おしえてほしい。わたしもひいてみたい」
「分かった。だが指が最初は痛くなるのが通過儀礼だ、我慢してくれ」
「うん・・・」
そう言ってギターを握らせたが、
彼女は2時間ほどで達哉レベルになってっしまった。
がしかし、
「つまらない演奏ですなぁ」
其処にシェイクスピアがやって来てフランの演奏をそう評する。
技術関しては問題なし。
だがそれは達哉も思っていたことだ。
現代だと特に顕著と言える。
「つまらない?」
「ええ、アナタの演奏は詰まりません吾輩のオペラに居たら叩き出してますよ」
シェイクスピア、結構辛口コメントだった。
「譜面に正確ではありますが、そんな物現代だったら機械にぶち込んで演奏させれば良い。だが人々を感動させる演奏や歌というのは譜面に誠実なのは前提として感情を揺らすものでなければなりません。そう、言うなれば己の感情を相手に叩き付けそれでもなおエゴイズムに染まらず相手を己が心情に引き込み共感させる技術に他なりません!! といってもそう言ったレベルはまぁ初めて二時間の幼子には難しいでしょうが」
「だったら、だれをもくひょうにすればいいの?」
「エリザベート殿がよろしいかと。あっでも彼女教えるの苦手そうですな」
「今の彼女、本当に凄いからなぁ・・・世が世なら世界的アーティストだ」
今のエリザベートは本当に凄い、一億人に一人とされる声質。
サーヴァント化によって強化と増幅系宝具持っているとはいえ城壁破砕できる肺活量。
古典音楽家並の絶対音感にさらにサリエリが教導し研磨した歌唱技術。
そして未来の自分との再融合を果たしたことによって音痴から抜けだし、
世界有数の歌い手になっているのだ。今のエリザベートはつまるところ化け物アーティストなのである。
生まれる時代が違えば血の伯爵夫人としてではなく、アーティストか巫女として名を遺せていたであろう。
と言ってもだ。そこまで恵まれているエリザベートだが欠点はある。
それは後続を育てられないという事。
つまり一代限りという事だ。エリザベートは死んでいてサーヴァント化している。
現世の評価が改まることはない。
だが逆に言えば、
「フラン殿が教わるようなことは一切できないという訳ですな!! なんせ感覚派の天才であるからして!!」
「まぁそうだなエリザベートの歌唱法は誰にもまねできない」
「じんぞうにんげんであるわたしでも?」
「無理ですな!」
「無理だな」
達哉もシェイクスピアもそう言う。
本当に稀代の歌い手なのだ。時代さえ噛み合っていればという奴である。
そして人造人間であるフランにもそれは真似ができない。
というかそう言う設計がなされていないから、肉がベースであっても機械の様な精密さしか出せないのである。
歌とは心の表現だ。スペックが伴った上で先ほども述べた通り。自分を押し付け、尚且つ観客を共感させ熱狂させることに掛かっている。
ただ精密なだけならそれこそ機械で事足りる。2015年現在でも多くの歌い手が観客を魅了するのはそこにあるのだ。
「それでもわたしも・・・えりざべーとのようになりたい」
「それは歌い手として?」
「うん」
フランは必死に逃げてシンに救われ、この館に来てからエリザベートの歌に触れた。
ジャック、ナーサリー、アリスを癒す子守歌は本物だったから。
こうなりたいと初めてこんな人間になりたいと願ったのである。
「まぁそれはさて置いて置いて吾輩は達哉殿の話を聞きに来たのですよ!!」
「なんで俺の身の上話を聞きたがるかなぁ・・・別段面白い話でもないぞ?」
「いえ、全生命体の絶対負に勝った英雄譚、それならば吾輩の願いを叶えられると思ってですなぁ!!」
「まぁもう何度も話した話だしな・・・言うよ」
そしてシェイクスピアも人間性も薄いフランでさえ絶句した。
忘れたくない、それだけで。ここまで達哉は来てしまった。
望まない望むにかかわらず運命という名の策略によって。
これが実際にあった事なのだ。
故に茶化すことはできない。
さしものシェイクスピアも創作物にはできなかった。
だってこうして現在進行形なのだからシャレになっていない。吐き気すら感じる。
生きている限り影はまとわりつく。
演劇は終われば茶化すことも出来ようが、
終わらぬ試練の釣瓶打ちにどうこう言えるような生涯をシェイクスピアは歩んではいない。
「本当は吾輩、喜劇作家になりたかったんですよ」
「いや、アンタ喜劇も結構書いてるじゃないか」
「いやそれはそうですが、吾輩の書きたいのは最初に書いた純度100%の喜劇である間違いの喜劇みたいなものをね、書きたかったんですよ」
だがそうはならなかった。
余りにもシェイクスピアは人間の観察眼に優れていたからだ。
本質を捉えた以上、そうなるはずがないと心の奥底で思ってしまい。
最初に書いた作品から遠く離れ、今では四大悲劇が取りざたされる作家となってしまい。
ついつい悲劇を書き連ねる作家になってしまったともいえる。
本当は純度の高い喜劇を書きたいのに卓越した観察眼から得られるのは胸糞悪い情報だけだ。
善は正しくとも痛く無益である。横から搔っ攫った方が楽なのはいつの世も通じる悪である。
それがシェイクスピアには目に入るし、アンデルセンは心圧し折られ厭世家になり果ててしまった。
これでは人に喜劇や善意を求める純粋な楽しい芝居や本を書くのも無理という物。
そういった意味では達哉はその悲劇の歯車の極地的人間であったが故にだ。
「でもそうはならなかった。だがそうしてみようと努力はしたのですよ」
「どういう?」
「それは単純です、フラン殿。普通に恋をして結婚をして普通に暮らす。それさえ経験できれば吾輩は喜劇を書き上げられるのだろうと思っていました。でも現実は違った」
そう、普通という奴さえ感じ取れればシェイクスピアの人生もまた違ったのかもしれない。
他者の悲劇を追い他人もこうなんだ自分と一緒だと安堵するような人生やサーヴァント生活をしなかったかもしれない。
だが現実は違う。最初は良い人とだと思って結婚した相手は悪魔のように悪辣な人物だった。
シェイクスピアの観察眼ですら欺いたのである。
「アレはひっどい女でしたな。いやはや吾輩の望みとは逆でしたよ」
「だが・・・彼女はアナタを愛していた」
「ええ、英霊の座について驚きましたとも、まさか吾輩と一緒の墓に入ると望むとは。まぁそれが子供たちに遺産を残すための策略だったのか愛だったのかはわかりませんがね」
死んだらすべての真相は闇の中だ。
それが変えられぬ現実である。だから某世界で赤のキャスターなんて名乗って。どこぞの馬鹿極まるエセ聖職者の甘言にまでワザと乗ったのだ。
「吾輩は真実の愛を知らないだからこそ。君が羨ましく憎々しい、周防達哉」
「・・・」
「他者の為に自分を忘れろですか・・・、それはどんな死よりもつらい事です。自分の痕跡すらも消してしまえという事なのですから。それこそ真実の愛! ああだから吾輩は羨ましい!! その愛を得たアナタが!! だからこそ憎い!! それを裏切ったあなたを!!」
シェイクスピアの言う通りだ。環境や状況に強要されたとはいえ、忘れろと言った天野舞耶を裏切った事は事実だ。
故にシェイクスピアは将来全てをもってして得られなかった愛を得たにも関わらず裏切った達哉を尊敬し憎むのである。
要するに嫉妬しているという事である。
武力があれば、達哉に手を出していた程度にはだ。
だからこそこの前の晩餐会、達哉に起きた悲劇を聞こうとした際にオルガマリーとマシュはインターセプトにはいった。こいつに達哉の話を聞かせればろくなことにならないと。
だが話されれてしまった。
しかし、シェイクスピアは肩で荒く息をするだけだった。
「すいません、吾輩としたことが取り乱し過ぎましたな。忘れたくない・・・という気持ちもわかるのですよ。吾輩も息子の事が在ります故な」
シェイクスピアも若い息子を失っている。
愛していた最愛の息子だった。尊敬する友人の名と同じ名をつけるくらいには愛していた。
だからこそ忘れられないのだ。人とは実に不便なものである。
だからこそ奴がいるのを忘れてはならない。
だからこそ筆を執り続けたのだ。
悲劇を謳うか、あるいは失敗して人間はそんなもんじゃないと誰か言ってほしかったのか。
だが、現実は彼を裏切った。
彼の書いた悲劇は大受けしてしまったがゆえに。
ままならないという奴である。
「これは劇には使えませんな」
そう言って取っていたメモをシェイクスピアは引きちぎって灰皿の上に乗せてマッチで焼く。
「なんでまた・・・」
「貴方の嘆き、憤怒、渇望、心に来るものが在ります。それは吾輩も認めるところ。こう当時者のやり取りであればそれは感じられるが、劇にすると一気にチープになってしまうのです」
「それはなんで?」
達哉の問いにそうシェイクスピアはそう答えて、
フランが首を傾げつつ再度問う。
「ニャルラトホテプというデウスエクスマキナのせいですよ。小説とかならいざ知らず、劇でやるなら全て奴のせいでしたなんて興ざめも良いところ」
そう、黒幕が神の如き存在で全ての状況をコントロールしているなんてのは受けない。
演劇でそれやったら大顰蹙も良いところだ。
むしろそのデウスエクスマキナに立ち向かう罰の方の物語の方が受けは良いだろうが、
罰もまた罪在りきな以上、セットで演じなければならない。
罪の段階で顰蹙買ってしまえば、後の物語である罰を素晴らしい物に仕上げようと最初に顰蹙買っている以上お客さんというものは入ってこないものだ。
だから罪と罰で一気にセット販売できる小説媒体やゲームなら受けるが、
演劇の特性上、どうしても分割しなければならないため、受け入れられない。
演劇とは確かに脚本の質、演者の質、主題などの要因が多々あれど。いかに最初の公演で客の心をつかむかにかかっているのだ。
そう言った意味では罪と罰の物語は罪の段階でニャルラトホテプというデウスエクスマキナという存在が邪魔となり演劇には向いていない。
「まぁそう言う事ですな。当事者のやり取りや小説媒体なら名作になるでしょうが。そこはアンデルセン殿の領域、それに悲劇は書き飽きました故にね」
そういってシェイクスピアはため息を吐いた。
「そういった意味では、吾輩、貴殿に期待しているのですよ。スカっとした冒険譚を描いてくれるかもしれないことにね」
そう言ってシェイクスピアはほほ笑んだ。
達哉はシェイクスピアの嫌う凡人ではあるがデウスエクスマキナに挑み勝ちをもぎ取った超人でもある。
だからこそ彼の物語に、いや彼らが紡いでいく旅路にシェイクスピアは期待していた。
同時に危惧もしていた。
「ですが。達哉殿、その胸の内に秘めたる怒り、なんやらかの方法で発散した方が良いですぞ」
「それはどういうことだ?」
「吾輩の私見ですが、アナタはオルガマリーやマシュにカルデアのサーヴァント達よりもはるかに怒り狂っている。それは見境の無い炎と化している節があります故な、”いつ暴発しても可笑しくはありません”適度にどうにかして抜きなさい。暴発してからでは全て遅いですぞ」
シェイクスピアは達哉の怒りを見抜いていた。
これまでキレてなかったが着実に怒りは溜まっている。
それが、心の力を出力するペルソナ使いが暴発すればどうなるか分かったものではないのだ。
だから何かしらの手段でガス抜きしておけと忠告する。
我慢耐性が高すぎるがゆえに今の今まで抑えてきた分をだ。
「こんな状況で無ければ演者を集めて劇一つでもと思っていったのですがな。そしたら楽しい演劇を一つカルデアの皆様にプレゼントできたのですがな」
「そんなにため込んでるのか俺?」
「自覚なし?! それはそれで危険ですぞ!!」
カルデアも何とかしてはいるのだが、本職が瀕死凍結状態&オルガマリーとマシュの方が不味いという事。
達哉が臆面にも出さないという事にさらに本人が自覚なしという事が重なってアマネやロマニのカウンセリングが実際には上手く行っていないという事で今の状況に至る。
この状況にはシェイクスピアも天井を仰いだ。
劇ができるならストレス解消も出来たしれんが、すでに特異点自体がシェイクスピアの嫌うデウスエクスマキナことニャルラトホテプが荒らしまわり、罠にかかるように誘導しつつ虎視眈々と狙っている状況なのだ。
故に今から達哉のメンタル問題をどうこうできる状態ではない。
アンデルセン? あやつに達哉を任せれば、アンデルセンは達哉の心に火を注ぐだけである。
暴発時期が早まるだけだ。
それだけ達哉はシェイクスピアからしてみれば危うい。
土砂降りの中、決壊寸前のダムを見ているように映る。
故に断言しよう、皆騙されていた。達哉自身でさえだ。
いくら理由付けをしようが人間、怒るときは怒るし切れる時は切れるそういう生物なのである。
それだけは古今東西、どんな人物であっても同様だ。
例え自分に怒る資格がないと戒めていても、必ずその時はやってくる。
だがガス抜きという名の空気抜きで引き延ばすことは可能だ。
それでも不味いとシェイクスピアは感じていた。罪悪感と自罰意識で覆い隠して自らを縛ってはいるが、
爆発したとき何が起こるか分かったものではない。
これまでの特異点、第一、第二、第三でニャルラトホテプは地雷を起爆するように達哉の逆鱗をスタンプしつづけたのはシェイクスピアでも分かる。
起爆する限界ギリギリまでだ。
ニャルラトホテプならそうだ。おそらくこの特異点で黒幕を引きずり出すはず。
その時にキレたら目も当てられない。
「達哉殿、おそらくそろそろですぞ」
「それは感じている。奴なら操っている黒幕を出すはずだ」
「おおう」
シェイクスピアの警告に達哉がそう言う。
シェイクスピアは再度天井を仰いだ。
これどうしようもない奴やと。おそらくそれが狙いかと思ったがゆえにシェイクスピアは助言を授ける。
「いいですかな、達哉殿。おそらく奴は貴殿を怒らせたいのだと思います」
「俺をか? なぜに?」
「それは分かりませんなぁ」
如何にシェイクスピアも達哉も心当たりがない。
だがシェイクスピアからしてみれば達哉の周囲を攻撃しつつ達哉自身を怒らせる方向に向いているのは読んで取れた。
だが肝心の達哉を怒らせる理由が到底浮かばない。
無論それは達哉自身にもだ。
怒って急激にパワーアップするなら誰だって苦労しないのである。
気合に根性、憤怒に渇望、その領域こそニャルラトホテプの掌の上であるが故だ。
「ニャルラトホテプ、負のデウスエクスマキナ・・・古代程奴が介入しているのは気のせいでしょうか?」
「いやこの世界だと現代程、世界側と人理側の抑止力のお陰で介入できていないんだろう。SNSとかLINEとかフェイスブックとか奴好みのものが溢れすぎている」
そう、それらを使用すれば即座に噂結界は起動する。
ネットという情報の渦を人は制御しきれていない。何が真で嘘かを判別するなんぞ現行人類の思考では不可能だ。
だから都合の良い情報に縋り付き真だと嘯く。これもまた噂。人々が真実だと思う物であるからして。
ニャルラトホテプの凶悪さは現代から未来になる程に凶悪化していくものなのだ。
それはさて置いて。
「アンデルセンはそこまでひねくれているのか? 屋敷の住人の言葉を聞く限りいい事は聞かないが・・・」
「まぁ達哉殿との相性は最悪でしょうなぁ。出来たのがアナタだとすれば。出来なかったのがアンデルセン殿ですからなぁ・・・」
「なにをだ・・・」
「現実を受け入れ尚もあがくそれが出来ているのが達哉殿、できなかったのがアンデルセン殿ですのでね。嫌悪感も沸くという奴ですよ。貧困者は富むものに嫉妬心を抱かずにはいられない、そういうものです」
シェイクスピアはそう評した。
どうしようもない現実、それを受け入れた上であがけたからこそ勝てたのが達哉。
負けたのがアンデルセンである。
口でなんと言おうがその本質は変わりがない。
そして人理焼却という理不尽に立ち向かうのも達哉を含めたカルデア一同。
反りが合うはずがなく、完全に書斎に引きこもっている。
まぁそれは仕方がない、人間には合う合わないが存在する。
藤丸?アレは一種のコミュ規格外だからノーカンだ。
「俺はそんな大したことしてないんだけどな・・・」
「いや全人類の負を相手に勝ちもぎ取れるとか神話の英雄でも無理ですからな!?」
シェイクスピアが突っ込みを入れる。
よく考えて欲しい、普遍的無意識化の負というのはアマラ宇宙の複数世界も跨ぐ無限蛇だ。
それに打ち勝つなんて規格外も良いところである。
故に謙遜も嫌味になるというものだ。少しは自信を持てとシェイクスピアも突っ込み入れるのは当然と言えよう。
「そう言えばマシュや所長たちはどうしているんだ? ロマニさん」
『所長はホームズと打ち合わせ中、マシュはジャック達とリアルおままごと中だよ』
「所長は兎にも角にもマシュが子供相手にお遊びに付き合っているのも分かる。だがリアルおままごとってなんだ??」
『具体的に言えば牡丹と薔薇だね。あっマシュがバットの代わりにこん棒振り回し始めた!?』
「どういう状況!?」
「吾輩もびっくり」
「わたしもびっくり」
牡丹と薔薇、日本の昼ドラであるが一部シュール過ぎて一世を風靡したドラマである。
リアルタイム視聴をしたのならさぞシェイクスピアも気に入った名作だ・・・
あらゆる意味で、そう言った意味では小沢真珠劇場を。
マシュが完全再現してしまったことによって幼女たち大盛り上がり。
なおバットやら財布ステーキやら完全再現しすぎて、カルデア管制室から心配の声が上がる。
オルガマリーはそんなことしちゃいけないと、ホームズを見送った後現場にダッシュすることになるのだが完全な余談である。
「マシュ!! こん棒振り回すなんてどういう了見よ!!」
「いやさすがに本気で振り回してませんからね!? ナーサリーさんたちにもっと気迫のある感じでと言われたので・・・」
「黙らっしゃい!!」
「すいません、所長・・・・」
「この気迫なら・・・オルガマリーにさせた方が良いかも」
「そうね、ナーサリー」
清原香世役はオルガマリーの方が似合っていると評するアリスとナーサリーであった。
こういうもんかと雰囲気で参加していたジャックは首を傾げるだけだったというオチであった。
「牡丹と薔薇というのは子供たちが真似する程素晴らしい物なのですかな?」
「いや俺に聞かないでくれ。俺だって1999年の人間なんだ。その後に放映されたドラマとかは良く知らない」
「そうですか」
そういうオチが付き、ホームズが帰ってくるまで彼らは暇であった。
という訳で幼女組交流とシェイクスピアとの交流回でした。
シェイクスピア、Wikiで調べてみたんですが結婚生活ズタボロすぎひん?
ここで七年間の失踪生活をたっちゃんに吐露するの巻き。
大人は辛いよで地味に意気投合する二人でした。
あとアリスは主戦闘員です。
あと人修羅君パーカー問題ですが。
此処にいる人修羅君や閣下も分霊ですので本体ではなく第四特異点当時の服装で固めています。
人修羅くんは中流階級、閣下は上流階級の出で立ちですね。
飯は糞まずいんで閣下が直接肉とか取り寄せて調理しています。
でこの二人、分霊ですがゼットと同じく高位分霊なので正体表せばゼットと同様並の上級サーヴァントなら一蹴できますね。
本体が出てきたらどうなるかって? 試合終了してるよとっくの昔にね。
と言っても舞台の主役はたっちゃんたちカルデアであるため人修羅と閣下は傍観者兼調整役なので本気で舞台に上がってきたりはしませんが。
前話で人修羅がにっこりしたのも試走チャートたっちゃんよりも今作たっちゃん方が思った以上に強くなってるためです。
人修羅って結構戦闘狂の側面在りますからね。
さて話はズレましたが現代パーカー自体は返して貰ってません。
今の人修羅には人間に化ける以外の使い道がないからね仕方ないね。
要らないよね?という事で閣下に処分されましたあのパーカー。
あとジキル氏ですが金時たちと合流前にガリオンと出会ってしまい、まぁあとは察し的な感じです。
まおニャルの化身事ガリオン、第四特異点の時代から10年後、宝石翁とこの世界では一般人ペルソナ使いにボコられた模様。
まぁあくまでもガリオンも一化身にすぎませんからね。
魔法使いと上級カタルシスエフェクト型の覚悟ガンギマリペルソナ使いに襲われたら無理ですね。
といっても本体気取りの這い寄る混沌との勝負はでは現状たっちゃん以外には無理ですけどね。
あと宝石翁と共同戦線を張ったペルソナ使いに関しては皆さんの想像にお任せします
まほよコラボを見たニャル様
ニャル「あのさぁ、嘲笑うってそう言う事じゃないのよ、叶えてあげて後の祭りにした上で解釈違いですって叫ぶ奴に本質突き付けてへし折ることなのよ、ねぇわかる? シャイニースター君?」
シャイニースター君「ぼ、ぼくに何する気ですか?!」
ニャル「何もしないよ? だって君、第一部終了後のたっちゃんズには君でどうあがいても勝てないし」
シャイニースター君「へ?」
ニャル「だって君程度殺せないと計画破綻するしね、ああそうだ。それではつまらないな、少し改造すっか!!」
シャイニースター君「ヤメロー!! ヤメロー!! シニタクナーイー!! シニタクナーイ!!」
悲報、まほよコラボできるなら、青子と有珠とかまほよ勢酷い目にあうかも知れぬ。
ニャルラトホテプやフィレモン、閣下、聖四文字が介入している世界でドが付く厄ネタを下手に不法投棄はやめようねって話です。まず付け込んで来るから連中。下手すりゃ受胎案件ですよ。
完全にとばっちり食らう青子と有珠とまほよ勢とカルデアであった○
あとまほよコラボですが第二部あたりでやりたいなと思ってますが。
作者の体力と精神力が続かないと思うのであまり期待しないでください。
第一部でやれって? もう予約がギチギチなんだよ!! 第四終わったら。たっちゃんは邪ンヌ異聞帯、所長は監獄塔、マシュとロマニは空の境界コラボを三つ特異点やらなきゃなんないし。それ終わったらある意味ターニングポイントだし。
それが終わって第五終了後はZEROコラボに、第六終了後はお虎さんがお虎ちゃんの頃のグダイベ予定しているから無理っす。
なお体調が悪いので遅れます。
ではまた~ノシ