Fate/Grand Order たっちゃんがグランドオーダーに挑むようです   作:這い寄る影

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神様は私たちに。

成功してほしいなんて思ってはいません。

ただ、挑戦することを望んでいるだけよ。


マザー・テレサ 1910年~1997年


03 存在肯定、そして集う英傑たち。

カルデアの状況は事は順調に進んでいると言っても過言ではない。

周防達哉を除いて、だ。

 

「・・・タツヤ、何かあったの?」

「ええっと・・・そのだな・・・」

 

オルガマリーに即座にばれた。達哉の狼狽はそれだけ酷かったし。

マシュもニャルラトホテプや無意識の住人の事は聞いている。

故にマシュも昨日晒した就寝間際の達哉の狼狽から何かあった。

ということは理解できており。それが態度に出ているのだ。

落ち着いて周囲を見れるようになったオルガマリーはカルデア所長として相応しい存在になったがゆえに。

それを見抜いていた。

出会った頃の様に眉間に皺を寄せながら黙々とコンビニ弁当を食べる達哉。

達哉のとなりに座りながらどこか喋る機会をうかがってるようにチラチラしているマシュ。

何かあったのかというのは理解できる話で。

達哉は女性を襲うような男ではないのも確かなので。

無意識の住人の特性とやらかしを知っているオルガマリーは。

達哉がソレ関係の事で何かあり、マシュが狼狽している達哉とばったり会ったとかそう言った事だろうとあたりを付ける。

人間不信時代に培った観察眼は伊達ではなかった。

もっともフルスペックを発揮できるようになったのは。オルガマリー自身が余裕という物を持てるようになってからである

 

ちなみに食料がレトルト主流なのになぜコンビニ弁当があるかというと。

 

「新しい商売を始めてみました」

 

ベルベットルームでまさかの食糧が購入可となったからである。

エリザベスが向こうのアマラ宇宙で手に入れた食料を買うことが出来るようになったのだ。

折角、ベルベットルームが新幹線車内の様なものなのだから車内販売を開始したとのことである。

無論、金は取られるが。

さらにベルベットルームの一角にサトミタダシ「ベルベットルーム支店」なるものまでできており。

ベルベットルームにできたそんな珍妙な看板の下をくぐると。

おばちゃん店員が店番をしながら、何故だかえらく脳に残る電波ソングが店内ソングで流れる珍妙な薬局に放り込まれた。

故にベルベットルームを視認し入ることの出来る達哉とオルガマリーは職員などから頼まれて金を受け取り購入してから。

購入したそれらをカルデアに持ちんでいる。

お陰で食糧事情と民生品とはいえ医療事情はだいぶ改善した。

最も一部、魔術師でアレ、現代科学者でアレ、白目をむくような品もあったが。

 

 

閑話休題

 

という事もあって。達哉の様子がおかしいことに気付く。

達哉は心配かけまいと誤魔化す様に言うが。

 

 

「ダヴィンチ」

『ちゃんを付けてくれたまえよ。所長』

 

 

オルガマリーが指を鳴らすと同時に彼女のバングルからダヴィンチの映像が投影される。

此れには達哉もマシュも面食らった。

 

「あのそこでなぜにダヴィンチちゃんなんですか? 普通、ドクターではないのですか?」

「アイツ、手心を加える気があるからね。いい事? マシュ。 タツヤは抱えこむタイプの人間だからこういう時はズバッというのがいいのよ。躊躇していちゃだめよ・・・」

「それはそうですが・・・」

「タツヤをカルデアで囲う以上、奴の策謀に巻き込まれるということだもの。という訳でやっておしまいなさい、ダヴィンチ」

『だからちゃんを付けてくれたまえよ。まぁそういうわけだ達哉君、諦めてくれたまえ』

「え・・・えぇー」

 

先も述べた通り、所長の観察眼はいかんなく発揮されていた。

吹っ切れたということも有ろうが、伊達に魔術の世界を生き抜いてきたというわけではないのである。

といっても普通の人間なら逃げようとするところを達哉は困惑しつつもそれに応じた。

影の嘲笑という物は自分自身では解決できぬ物であるしオルガマリーの言う通り。

抱きかかえていたところで何もできないのは痛感済みだ。

だがそれでもオルガマリーの問いをはぐらかそうとしたのはひとえに達哉が抱える罪悪感と不安からである。

それを、ここまで言われて理解できぬほど達哉は馬鹿ではなかった。

故にカウンセリングを大人しく受け入れて。

ニャルラトホテプに言われたことを吐き出す。

 

『うわ・・・うわぁ・・・・まさしく知性体の黒だ・・・。私も奴とは面識があるが・・・、ここまでされたことはなかったからなぁ』

「俺はどうすればいいんだ」

 

さすがのダヴィンチもドン引きしさすがはニャルラトホテプというほかない。

他者を貶める事については右に出る者はいないというほかないだろう。

なんせアイツは本当に、個人であれ群衆であれ、ゆがんだ形でその望みをかなえるのだ。

それが奴だ。

やると言えば必ずやる。

過程に偽りはあれど結果は必ず叶える最悪の形で。

だが結局は抗うほかない、知性体は奴から逃げられないのだから。

 

「あの、ダヴィンチちゃんはニャルラトホテプと面識があったのですか?」

『あるよ、と言っても座で共有される情報で初めて気が付いたけれどね。歴史の影に奴が居る、古今東西の英雄譚が今風のハッピーエンドに終わらないのも、そいつの影響さ、無論終わった物もあるが必ず後継がやらかすからね・・・』

「それは・・・・本当ですか?」

『影との戦いに終わりはない、話が一つ幸せに終わっても実際にはそのあとにもいろいろ問題が終わるわけがない。

例えば勇者が魔王に打ち勝ち姫と幸せなキスして結婚して終了と締めくくられたところで。

そのあとの問題はいろいろある結婚生活とか王族になったがゆえの統治やらなんやら、無論当の本人たちが幸せに頑張ったところで後継はやらかす。

身近な所ではイエスの教えが現代に多角的視点と解釈がもたらされた結果。様々な問題を生んだようにね・・・、故に奴との戦いは現実そのものとの戦いだ。だから終わりはない』

「どうしようも…ないのですか?」

『ないね、奴は現実そのものの無常さであり、人類のあるいは知性体の影だ。殺すには奴のいる宇宙をすべて滅ぼし、自分の首を刎ねるほかない』

 

ダヴィンチの説明にマシュは涙目ながらに終わりはないのかと問うが。

ダヴィンチはマシュの懇願を切って捨てる。

本当にどうしようもないのだ。すべてを受け入れた上でなおも足掻くという超人の領域に至り。

ようやく奴を追い返せるのである。

故に達哉のやったことはある種、大英雄クラスの偉業であるのだ。

全人類を敵にして勝利をもぎ取ったのだから。

最もソレでも戦いは終わらない。光在る限り影は消せない。闇があるかぎり暗がりは永劫で。夜明け前が最も暗いという様に奴は不死身だからだ。

ニャルラトホテプは再び顕現するのである。

まさしく悪夢であろう。

 

『だからさ、達哉君、君にはこの言葉を贈ろう、気にするな!!』

「・・・え?」

『どうにもならんことは天才の私にさえならんことさ!! 現実、生前の私はモナリザに成れなかったんだぜ!! 現実を見ることは大事だが、固執しすぎるのもまた逃げさ!! だからそこそこに気にして、欲しいけれど要らねぇんだよ!! ボケェ!でいいと思うよ?』

 

故に奴に勝つには矛盾して猶も貫ける精神力が大事なのだ。

周防達哉はそれがかつてできたがゆえに勝利した。

あの達哉の映像を見て客観的にダヴィンチはそう評価する。

 

「・・・俺が悍ましくはないのか? 世界の断罪を願い、理解者を欲し・・・新天地を望んだんだぞ・・・」

「それ言ったらレフにカルデアスに放り込まれる前に、私なんてとっくに死人よ、死人」

 

達哉の自虐をオルガマリーは切って捨てる。

それはある種オルガマリーも望んだ事ゆえだ。

なにせ魔術業界に一般人メンタルで生まれてきた女である。

 

『というよりもね、達哉君、君やオルガマリーに関わらず誰だってそう望んだことがないと言えばウソになるよ、うん』

 

ダヴィンチがすかさずそういう。

そうともニャルラトホテプはそういうが。誰だって望む普遍的な願いでもある。

無論、達哉は状況的にそう望んでも仕方がないしある種許されるのもあるが。

平和な国の住人だって些細なことでそれを望むのだ。

今日は雨が降ったから天気予報許さねぇとか、コンビニで気に入った商品の仕様が変わっているだけで世の中クソとか思って。

断罪やらなんやらを望むのだ。

そう望んでしょうがない事なのである。

痛みを肉体的にも精神的にも感じぬ人間はいないのだから。

 

『もっともそれをしょうがないと思いこそすれど私たちは歩いて行かなきゃならないんだ。君はどうであれ此処にいてマシュをオルガマリーを救い、冬木のどんちゃん騒ぎを解決したんだ。戻れないのはしょうがないとしても、私は此処にいていいと思うぜ?』

「そうですよ!! 先輩!! 先の事は誰にもわかりませんし私にもわかりません。不安と言わなければウソになります。だから何か起こった後でこういえばいいんですよ」

 

ダヴィンチが達哉の存在を肯定し。

マシュが不安が無いと言えばウソになるということを言いつつ。

あの大人たちの言葉を引用し紡ぐ。

 

―すべては運命だったと―

 

「ダヴィンチちゃん、マシュ・・・・」

「二人の言う通りよ、まだ賽子の目は出ていないのよ? そしてまだ結果は出ていないのよ・・・。なら此処に居て生きなさいよ・・・。あなたは世界を滅ぼした罪持ちとはいえ世界を救ったのも事実だしね。それにアナタは行動で結果を出した。

私やマシュは無論の事、カルデア一同が達哉が居てはいけないと思ったことはないと言うのは保証できかねるけど。

ここにいて居て良い存在だとは胸を張れるし保証できるわ・・・」

「所長・・・」

 

 

その言葉をオルガマリーが受け継いで此処に居ていいのだという。

色々あり過ぎて確かに居てはいけないとは思ったことが無いと言えばウソになるが。

居て良い存在だとは胸を張れると微笑みつつ述べる。

 

「・・・すまない皆・・・ほんとうにすまない」

「先輩、そこはありがとうでは? 本当に自己評価低すぎます!! 私は胸を張っても良いと思います!!」

『マシュの言う通りだぜ? 自己の品性を自分自身で貶めるってのは他人の評価も貶めてるんだから。どっかの王レベルで自己評価エベレストまでに成れとは言わないけれど、君はもうちょい自信を持つべきだ』

 

 

謝る達哉であったがあまりにも自己評価低すぎるとマシュとダヴィンチに窘められて。

またも謝る達哉であったが。今度はソレを所長に窘められ。

ワイのワイのと休憩に来ていた職員までも巻き込んでの談笑へと発展していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

賭け事は大概上手くいかない。

それが世の常である。

 

「やっぱりさ私が言うのもあれだけど・・・、大英雄狙って。確率0.5は糞じゃないかなぁ」

 

ダヴィンチがぼやく。

『システムFate』。カルデアが有する英霊召喚システムで。

強力な魔力リソースを使用して行うものであるが英霊召喚第一号の正体不明サーヴァント 第二号であるダヴィンチなどの召喚から得られた情報をもとに改良され現在に至る英霊召喚システムだ。

確率魔術と呼ばれている技法を使っている。

要はあえて確率を絞ることによって高価な現実を得るというものだ。

この魔術の最大のメリットは。どのような事象でアレたどり着くことを可能とし、”確率設定”次第ではローコストでたどり着けるのだ。

がそこでデメリットの話になる。

より高度な結果を望めば望むほど。確率を遠くしなければリソースを高価にする必要があるということだろう。

等価交換の原則であり、遠い確率ほど安く済むが当たるまで結局同じくらいかかるということであるし。

確率を近くしては払うリソースの増大を招き、結局他手段を行った方がいいという本末転倒っぷりと成る。

現にこの魔術を使う大家は根源にこそ行けたが、その後継は下手すりゃロードエルメロイⅡ世ですら裸足で逃げるレベルの借金を背負う羽目になった。

それによって、「あまりにも不確実すぎかつ誰にでも出来るがゆえに封印指定には値しない」と判決が下り。

時計塔でも野放しである。

それでなぜその大家の術式があるというのかと言うと。

借金返済のために術式をカルデアに売り払ったのである。

日々借金取りに追われ、金策の為に長男があの魔郷「アルビオン」に日々潜り。

魔術資源を集める為では無くそれらを売り払うという金策に走っているくらいに貧困しているのである。

そうなった元凶の術式をダメ元で買い取ると言ったらそりゃもう。

あらゆる国の紙幣を表す言葉が瞳に出るほどという揶揄ができるくらいに食いついてきた。

当時人間不信であったオルガマリーも信じて引くくらいにはドン引きした物である。

 

それで強力な魔術リソースである「聖晶石」を対価に設定。

ダヴィンチが最適な確率演算を行った結果。

一流サーヴァント狙いで0.5% 狙えば0.25を余裕で切る数値に設定され。

Aチームが全員そろって爆死したという結末が具現したので在る。

聖晶石も無料ではなく下手な魔術礼装の数倍のお値段が掛かっているのだ。

そこでシステムFateはコストに見合わず確実性がない物として凍結、現地の霊脈から聖杯にアクセスし英霊を現地で召喚するという方針に切り替わったというのが事の経緯であった。

 

 

されど現在のカルデアは人手不足も良いところ。

マシュは新米デミ・サーヴァント、オルガマリーもペルソナ能力の開花に伴いレイシフトできるようになったこともあるから。

責任は自分自身が取ると言って後方指揮をロマニに委託し最前線にでることになったとはいえ。

ペルソナ使いとしては下位である。

達哉も英霊に対抗できるペルソナ使いとはいえ彼一人の押し付けて戦術、戦略リソースを限定するのは悪手にすぎる。

故に藁も掴む思いでこのシステムに賭けたオルガマリーであったが。

カルデアの聖晶石の数は90個ピッタリ。

本来の投入個数は一回3個で10回を行うのに30個であったが。

レフボンバーによってシステムに異常が発生し、このまま運用するには一回を四個、10回を40個投入しなければならなくなったのである。

縁にもすがる思いで90個を半分に分けて爆死である。

達哉もペルソナを得るために”噂”でカジノ化してペルソナの降魔に必要なものを狙っていたから。

人の事は言えないのだが。

 

「・・・ガチャって駄目ですね」

「・・・マシュ・・・。賭け事ってのはそういうことだ」

 

達哉はガチャは駄目とマシュに言われてもピンとこなかった。

ガチャと言われれば達哉にとっては幼少期に父や兄にねだってやった。フェザーマンガチャ(一回100円)であり。

マシュが思い浮かべるソーシャルゲームガチャでは無かったりする。

無論、両者ともに低い確率を目指すというのは一緒であろう。

 

「・・・ウェwwww ウェwwww」

「先輩、なんかこう、所長が陸に上げられたマグロみたいに寝そべって飛び跳ねながら・・・・女子が発してはいけない声を出してます」

「・・・そっとしておこう」

 

マシュの視線の先にはマシュの述べた通りの風体になり下がったオルガマリーが存在していた。

達哉は哀れみに目を反らしながらそう言う。

されど確率、だがしかし確率だ。

当たるときは山ほど当たるし当たらないときは全く当たらない。

そう言う類の物なのである。

ちなみに聖晶石の単価は無論、我々の視点や、我々の知る価値とは違うのだ。

一個につき日本で大マグロをそれこそ4匹釣らなければ賄えないような値段の物が40個

わずか数十秒で無意味に消し飛んだのだから。

そう言う風体にもなろうという物であろう。

 

「達哉くん、次は君の番だ。オルガマリーはあの様子じゃ後にした方がいいだろうし。頼んだよ」

「・・・微力を尽くすさ」

 

ダヴィンチに催促され。

達哉はどうしようもない現実。

即ちガチャ確率へと挑むべく。

聖晶石を投入機材へと放り込んだ。

 

 

サークルが回転する。

 

案の定抽出されるのはしょっぱい礼装である。

これは英霊の座にアクセスするというプロセスで英霊に届かなかった場合人理の記録から礼装として外れ賞として出されるものだ。

英霊の霊基に付属させることによって素のスペックを底上げしたり能力を後付けできる優れものである。

ただしその特性上。英霊にしか装備できない代物なので。

こうもぽこじゃか出てきても無用の長物に等しい。

英霊一人につき一枚しか装備できないため、マシュが居てもこればかりは、数が多すぎて使いどころがない。

 

『おお、結構強力な霊基反応だ!!』

 

約、9回目にようやくサーヴァント反応が出て。

先のオルガマリー爆死の件もあったから気が気でなかったがようやく英霊が来てくれて。

管制室でモニタリングをしていたロマニも胸を撫でおろす。

ちなみに先ほどの時は顔が真っ青だった。

 

「セイバー 柳生但馬守宗矩・・・召喚の命に応じ参上仕った・・・・ 貴殿が我がマスターか?」

 

サークルから出現したのは着物姿に腰に刀を下げた初老の男である。

名を「柳生但馬守宗矩」と男性は名乗った。

柳生と言えば柳生流で有名な剣士であり。将軍家の剣術指南役も勤め上げ。

今なお現代にも残る実戦式の剣術流派でもある。

創作物にも多く取り上げられ有名な流派の中興の祖ともいえる人であった。

一概には剣術使いとしてはそこそこと言われ政治の人ともいわれるお方であるが。

実際に会ってみればそんな先入観は吹っ飛ぶ。

多くの修羅場を駆け抜けてきた達哉でさえ明確に勝てぬと思うレベルであった。

 

「ああそうだ・・・」

「ふむ・・・そこそこできると見た。がそれ以上に心が強い、貴殿に仕えることはいささかの不足なし、我が剣、いまより貴殿の刃となる。よろしく頼む」

 

宗矩はそういいつつ達哉に右手を差し出し

達哉も握手を交わして。マスターの契りを結ぶ。

 

「あの・・・先輩」

「どうしたマシュ?」

「所長が、マグロを通り越して・・・・ 地獄兄妹の兄の様に・・・」

「いいわよねぇ・・・アンタは・・・・」

 

 

運がいいよなぁとオルガマリー部屋の隅で矢車の兄みたいになっている。

ちなみにマシュは仮面ライダーを詳しくは知らないがロマニのせいでネタライダーは知っていたりする。

それをちらりと見た達哉と宗矩は。

 

「「そっとしておこう」」

 

と呟くほかなかった。

 

召喚も最後の一つとなり。

今度は黄金にサークルが光って回転する。

ダヴィンチは強力な霊基を確認しロマニ側でもそれを確認したと報告が飛んでくる。

 

「ほう、これは・・・・」

 

笑みとは本来攻撃的な表現に使われる。

宗矩は感じ取ったのだ。

召喚される存在が極めた武術家であることを。

それに心躍らないとなれば嘘になる。

 

「我が名は李書文、槍も持たぬ只の老人だが・・・召喚の命に応じ参上した。貴様が我がマスターか?」

「そうだ。」

「ふむ、なかなかに良い心の持ち主と見た。よろしく頼むぞ」

 

宗矩と同じ武術の生き字引であった存在である。

神槍の李書文、八極拳と槍術を極めた武術家だ。

宗矩より後の時代の人間ではあるが彼もまた近代で英霊に召し上げられるレベルの偉業を残した兵である。

宗矩と槍を持たず八極使いの暗殺者として召喚された李書文。

この二人が居ればアポクリファ時空で行わる通常開催の聖杯戦争くらいは勝利で来そうな人材と言えた。

そのあとの余った聖晶石を突っ込むが。

まぁ当たるわけもなく。

最初の十連のショックから立ち直った。オルガマリーが最後の一回を回して終了となる物の。

 

『おお、これは!!』

「凄まじい霊基反応だ。神話のトップクラスだぞ!!」

 

サークルが通常の光を発しつつ回る。つまり最後の一回をヒットさせたのだ。

出てくるサーヴァントは神話のトップクラスである。

此れにはロマニもダヴィンチも大喜びで。オルガマリーも渾身のガッツポーズであった。

 

「よう、サーヴァントランサー、クーフーリーン、召喚の命に応じ駆け付けたぜ!! 冬木以来だな。嬢ちゃんたち。まぁよろしくな」

「おぉぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 

 

出現したのは槍持った。クーフーリンである。

これにはオルガマリーも叫び声をあげた。

クーフーリンとは言えばケルトの大英雄、ケルト版ヘラクレスである。

クラスに縛られているとはいえ槍は彼の得意中の得意とする、神話通りの活躍は期待できる大当たりだ。

最もそのあまりの引きに、召喚されたクーフーリンさえ台詞を言い切った後でドン引く位にオルガマリーは歓喜の絶叫を上げていた。

 

「・・・嬢ちゃん、何があったよ」

 

説明しろよとこっそりと、いまだに歓喜の声を上げているオルガマリーをスルーしながらクーフーリンは達哉に何があったのかと問う。

 

「ええっとだな・・・なんといえばいいか・・・」

「先輩、私も頑張りますから・・・説明しましょう・・・」

 

 

達哉は困惑しつつマシュも共に召喚システムやら召喚の対価やら説明し。

それじゃああなるのは仕方がないことだと、クーフーリンと宗矩と書文は納得する。

通常の聖杯戦争とは違い通常の手段では呼び出すことは不可能なので。

虚しくてもこんな運任せ極まる物に命を預けなければならないのは誰だって気が気でなくなるという物であるからだ。

 

「・・・ごめんなさい、はしたないところを見せたわ」

「気にすんなよ、運任せでよく俺らを呼び出すしかなかったんだ。誰だってそうなるよ」

 

まぁ重要な局面を策謀で埋め合わせて0.1%の運を賭すというのなら納得いくが。

最初から運任せというのも糞みたいな話であるというのは理解できるという物だ。

さてと召喚は終わった。

あとはレフによる爆破を免れた、レクリエーションルームで交流し三日後の作戦へと備える。

サーヴァントは人理の影法師ゆえに人間付き合いと同じように交流なども必要であるからだ。

ではとオルガマリーがレクリエーションルームに皆を連れて行こうとしたとき。

召喚機器が動き出す。

 

「え、ちょ、どういうことよ!!」

「うーん、連続召喚で・・・魔力が蓄積されていたみたいだね、言わばオマケによる召喚かなぁ」

 

オルガマリーの驚愕に、機器を見てダヴィンチはそう判断する。

切り捨てられた端数が溜まりに溜まって1になり一回分の召喚が自動的に行われたということであった。

サークルは廻るが。

 

「むっこれは不味いな」

「感じたか? 神槍」

「無論、闘争の狂気に染めきった感じのだ、クーフーリン殿は?」

「ケルトじゃぁ日常茶飯事でね。でもまぁ現代からすりゃ危険だわな」

 

 

そのサークルの気配を察し。クーフーリンと宗矩と書文が達哉たちを庇う様に前に出て。

各々の得物を構える。

達哉もその血の匂いの濃さにペルソナをスタンバイし。マシュもサーヴァント形態に移行して備える。

どういうことなのと下がりつつ達哉と違い素手での戦いはできないため、達哉とマシュの背後に下がってペルソナをスタンバイしながら。

魔術回路に魔力を送り込み魔術をスタンバイする。

 

サークルが回転し光が収まる。

 

全員が戦闘態勢に移行しつつ光が張れるのを待ち。

それを見た。

全身鎧にバケツヘルム、右手には十文字槍。

チグハグすぎて一見どこの英霊か分別が付かない存在がそこに立っていった。

 

「召喚の命に応じ参上した。バーサーカーこと森長可だ。テメェが俺のマスターか? つまんねぇこと言ったら即ぶった切るからそのつもりでな!!」

 

不良の自己紹介じみたことを言う、バーサーカーこと『森長可』。

一応命令は聞くつもりがあるかと先んじて召喚されていたサーヴァントたちは得物から手を放す。

危険なバーサーカークラスということもあって達哉たち三人はあえて「召喚したいと思って召喚したわけじゃない」ということを胸の内に秘めた。

それは賢明な判断であろう。

その後、交流会を開き、長可が「交流ってやっぱ茶の湯だろ! 茶の湯!!」ということもあったが。

今のカルデアにはそんなものがあるはずもなく。

されど文化人四人である。

クーフーリンも王族として無論、そういう嗜みは存在し、兄貴的イメージがあるが実際には文化人としても、かなりできるのだ。

茶の湯の詫び寂びというケルトにはなかった概念を理解し。

異文化交流と言いうこともあって。インスタントであるけれど皆で楽しく。

最終的に酒盛りになって皆で暴走した。

 

 

でも楽しかった宴会である。

 

 

 

 

一生心に残る思いでに。出会った。

 

 

 

それは闘争の間の泡沫の如き思い出の一つ。

 

 

運命は迫ってきていた。

 

 

 

「・・・ロマニ医療主任。大変です!?」

 

 

抹茶を飲みつつ一息ついていた。ロマニは長可の仕切る茶会を見つつホッコリしていた所にムニエルがロマニのもとに駆け込んでくる。

 

 

「なにかあったのかい?! 敵がこちらの座標位置に気付いて乗り込んできたとか!?」

「違います! 観測された七つの特異点の内、我々が最初に介入予定だった特異点の人理定礎値が悪化しました!!」

「なんだって!?」

 

ロマニはムニエルのいいように慌てて観測結果を覗き込む。

 

 

 

「これは・・・」

 

 

 

人理定礎値A-「憎悪深淵紛争 オルレアン」  『冥府の聖女』

 

 

 

所詮は泡沫の夢は泡沫の夢にすぎぬ。

 

願望を具現化するとはそれだけで大罪になるがゆえに。

 

それでも憎悪を持った聖女は月へと吠えるのだ。

 

世界の何もかもを飲み尽くし、砕いて逆襲劇を成すために。

 

殺戮の丘を歩む。

 

 

それがかつて自分のオリジナルが行った道とは知らずに。

 

 

 

『ククク、喝采せよ、喝采せよ、喝采せよ!! おお素晴らしきかな、第一の生贄が今英雄譚に捧げられるのだ。時計の針は動きとまらず、多くを犠牲にして星見の戦士たちに深き傷を与えるのだ』

 

 

 

どこかの底で蠢く混沌が嗤う。

 

 

英雄譚に喪失は付き物で。嘆く者が今、生贄に捧げられる。

 

 

全ては周防達哉という英雄、あるいはカルデアが成すことへの生贄として。

 

 

なぜなら英雄譚に置いて痛みや喪失という物は必要であるから。

 

 

そして敵という存在もまた英雄譚には必要であると嘲笑って。

 

混沌は視線を移す

 

 

混沌の見る視線の先にある七つ蝋燭が立てられた燭台には未だ火が灯らず。

 

 

灯るのを待っていった。

 

 

 

 

 

 




前回やら予定される特異点がニャルニャルしすぎたがゆえに英霊召喚と作者が慣れぬ、ほのぼの回

現状

たっちゃん。オルガマリーとダヴィンチちゃんのカウンセリングである程度持ち直す、地味に現状のカルデア召喚システムで星5サーヴァントをヒットする。

オルガマリー。ガチャで吹っ飛んだ金額を見て砂浜に打ち上げられたマグロが如き無様を晒したのちに地獄兄妹の兄の方みたいになって。兄貴を当てた時は地下闘技場に連れ去られたシコルスキーみたいな雄たけびを上げる。

マシュ。突っ込み担当 森くんの勧めで茶の湯に嵌る

ロマニ&カルデア職員。モニタリングしながら戦力整ったことに一安心、森くんにインスタントだけれど振るわまれた抹茶でリラックス。

ダヴィンチ。天才であり英霊ということもあってニャルと面識在り、ただし気づいたのは英霊に召し上げた後の事。たっちゃんのカウンセリングを成功させる。
芸術家として森くんと書道で勝負したいなぁとか思っている

宗矩。達哉に召喚される、達哉が刀を使うということもあって手ほどきする気満々。

書文。達哉に召喚された人、その二。茶の湯に舌鼓を打ちつつ新米サーヴァントであるマシュを要として鍛える気満々

兄貴。予告通り駆け付けてくれた我らの兄貴、茶の湯の概念にカルチャーショックしながらも楽しむ。
達哉、オルガマリー、マシュの強化メニューを思考中。

森くん。フィレモンが用意したニャルラトホテプに対する手札その1、交流会で抹茶がないことに(´・ω・`)しながらインスタントで妥協する。
文化人が集まったこともあって本人的にはにっこり、でも本物の抹茶を使いたいとか思っている。


フィレモン。「対ニャル戦を考慮しこういう采配になった。食事とか考えると無いけど。私は後悔していないし謝る気もない」

ニャル。絶望は希望が増大するにつれて深まるとして傍観、ジャンヌいじめと第二特異点をひっくり返す準備中、それはそれとして第二部でダヴィンチの殺傷を決意。

エリザベス。車内販売開始。

サトミタダシ薬局。時計城の伯爵のはからいでベルベットルームに出店。



座では。


エミヤン「食糧事情を解決するために、テンプレ的そこは私ダルゥオオオオオオオ!?」 

フィレモン「君じゃニャルに対抗できないから後」

エミヤン「クソガァァアアアアアアアア!!」

アルトリア「火力担当として私が行くべきダルォォオオオオオオ!?」

フィレモン「火力だけな上に、過去にボコボコにされたヤツはお呼びじゃないんで。火力的にまずくなったら呼びますから引っ込んでろ」

アルトリア「クソガァアアアアアアアア!!」

へラクレス「ならば私が!!」

フィレモン「幼女を助けたいのに、凶戦士であえて呼び出された馬鹿を派遣する気は御座いません、ちゅーかニャルの策謀に負けてパンツに毒塗られて死んだ奴を派遣するとでも?」

ヘラクレス「クソガァアアアアアアアアア!!」

メディア「なら私が!!」

フィレモン「ギリシャ神話でニャルに面白いように踊らされていた上に魔術王に敗北したから駄目です」

メディア「クソガァァアアアアアアアアアアア!!」

メデューサ&アサシン(真)「あっ私たちは勝てなさそうなんで辞退します」

フィレモン「カルデアには派遣しませんが、ニャルが特異点無茶苦茶にしてるんで。召喚された特異点では原作以上に頑張って下さい」

メデューサ&アサシン「クソガァアアアアアアアアアアアア!!」


ステイナイト組、ランサー&英雄王以外はニャルに勝てぬからフィレモンにインターセプト食らい現状出撃出来ず。
英雄王は過労気味で出れず。
ランサーが出撃。

ノッブ「だからッて森を出撃はないじゃろ!?」


ちなみにたっちゃんのカルデアのガチャ仕様は排出キャラは限定もでる現在に相当しますが。
PUなんて甘えたものがない上に闇鍋使用&キャラ排出がニャルへの対抗の為に著しく絞られています。
あとガチャシステムもFGO稼働初期状態という煉獄使用。
聖晶石の単価も凄まじく高く。
一個の石で凛の宝石の一個の二倍以上という糞単価です。
控えめに言って煉獄地獄仕様ガチャ。


一応、フィレモンやらペルソナ能力のお陰で特異点でであったサーヴァントはたっちゃんたちの事を覚えている仕様です



次回の進行状況は、現状半分程度です。
仕事忙しすぎて首が回らぬぇ・・・・
予定としては一週間後くらいになるかなぁ・・・・



 

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