Fate/Grand Order たっちゃんがグランドオーダーに挑むようです 作:這い寄る影
カール・マルクス著『ルイ・ボナパルトのブリューメル』より抜粋。
最後の日が訪れた。
サモライザーも修理とヴァージョンアップが完了しカルデアに召喚された英霊もこれで戦力にできる。
行きのルートの敵もジキル討伐後に掃討した。
まだスコットランドヤードに一般人と警察が立てこもっているらしいが。
そちらは無視で良い。
あとはこの特異点の黒幕を張っ倒すだけなのだから。
決行時刻は夜になる。奇襲の意味も兼ねてだ。
「やってられませんな」
シェイクスピアはそう言いつつピアノを弾く。
「なにが?」
一方達哉は汗かきながらフランのステップに合わせる。
今度はフォークではなくロンドだ。
難度が愕然と上がっている。
体力あるから達哉もフランも踊っていられるが動きは実にぎこちない。
その中で突然のボヤキである。
まさかまた乱れたかと達哉は思ったのだが。
「いいえ、そうではありませんよ。馬鹿が馬鹿をやった結果真面目に生きている人間が損をする。やってられませんな、挙句の果てに吾輩たちのような死人さえ導入される。本当にやってられません」
そう言って吾輩なら却下する脚本ですなと続けた。
本人曰く悲劇ばかりというの気が滅入るとの事だった。
これが一本の劇なら笑いながら作ったかも知れぬが連続性のあるものなら脚本家を蹴り飛ばしているとの事である。
だが相手は。
「ですが相手は生命体の真理の黒の具現、蹴り飛ばす前に吾輩は何もできずに否定され、なにも出来ずに消し飛ばされるでしょうな」
そう相手はニャルラトホテプ、作家系とは相性最悪だ。
それこそ否定し嘲笑する者なのだから批評させたら右に出る者はいない。
元々戦闘力のないアンデルセンやシェイクスピアだったがカルデアが対峙している黒幕の黒幕がそいつと聞き。
此処に引きこもる選択肢を取るほかなかった。
ある種の現実に絶望した人種であるシェイクスピアもアンデルセンも。
故に勝てぬと思ってしまった。だから出来るのは敗残兵としてカルデアやフランに現実に負けぬ成長を促すのみであった。
難度も言うが批評家としてはニャルラトホテプは一流を超えている。嗤いながら、作家たちの作品を批評しつつ人格否定までやってのけるだろうことは理解できた。
故に戦力に成れない。
というか今回の事件の黒幕もニャルラトホテプに操られた無自覚な傀儡に他ならないのだから。
作家陣営が突くと碌なことはないというのがシェイクスピアとアンデルセンの判断である。
無論自分たちも介入したいが戦闘力で黒幕に対し負け。
精神力でニャルラトホテプに負けるのは蠟燭の火を見るよりも明らかだ。
「だから自分が不甲斐ないともおもいましてな、歳だけ食って若人を死地へと見送ることくらいしかできないなどなりたくはなかった」
「仕方がないじゃないですか。誰もが全員戦えるわけがない」
「達哉殿は何故、戦えるのですかな? はっきり言いますが達哉殿は巻き込まれた側です。逃げようと思えば思えたはずです」
「もう一回逃げてる」
「はぃい?!」
「それで自分の世界を滅ぼしかけた。だから誓ったんだもう自分の犯した罪にも自分にも背を向けないと・・・な。まぁ結果的にこっちになぜか、まぁ奴に引きずり込まれてこの世界に来てしまって向こう側は滅んだけどな。だが誓いは変わらない」
「達哉殿はこの世界の住人ではないと・・・?」
「まぁ説明が必要か・・・休憩がてらに話すとしようか・・・」
そして休憩に入り達哉は二人に自分の身の上を話す。
嘗てニャルラトホテプに挑んだことを。
一度目は敗北し勝利条件である忘却を拒んだことで、世界が滅んだ世界と事が起きなかった世界に二分したこと。
そして特異点となったことで達哉自身が特異点となったこと。
それによる世界の滅びが再度訪れた事。
その事態の解決、二度目の対峙で勝利したこと。
だが自分は忘却を拒んだ以上、滅びた自分自身の世界に帰らねばならぬ。
でなければ二分化した世界は統一され滅びるからだ。
だから何も起きなかった自分へと体を返し。滅びつつあった世界へと帰って。
一人で生活していた時に、なんの前触れもなく関係のないこの異世界に放り込まれたのだという。
これには二人とも絶句した。
シェイクスピアが震える唇で問う。
「では元の世界に帰りたくなかったとは思わなかったんですかな?」
「いや当初は帰るつもりだったんだが・・・」
「だが?」
「奴曰く俺が居なくなったことで完全に向こう側は消し飛んだらしい。現につながりを感じられないからな。だからこの世界で生きていくことにした。やることは沢山ある。死んで逃げるなんて自分が許せない」
達哉の決意を聞きシェイクスピアは無神経な質問をしたと眉間を抑える。
本当に帰る気が合ったら特異点F解決の時点で帰っているかもしれないし、
この人理焼却が終わったら帰るつもりと覚悟をヒシヒシと感じたからだ。
だがもう帰れない。向こう側は達哉という最後の人類が消失したことやらなんやらが重なり消し飛んでいるからだ。
だからこの世界で罪と罰を背負い自分自身からも逃げないと決めて生きることにしたのだ。
かなり重い決断だ。シェイクスピアなら逃避か死を選んでいても可笑しくはないと思えるほどのものがある。
「いやはや・・・これは失礼な質問でしたなお許しを」
「いいって、もう何度も説明している」
「・・・なんでまた?」
「これのせいだ」
そういって達哉は右袖をまくる。
其処にはべっとりと何かの腕と掌の様な入れ墨が刻み込まれていた。
「それは?」
「奴に気に入られたという証だ。だから敏感な人には奴の手下扱いされたり。あとペルソナで間違われたこともあったから」
そうこの入れ墨があるという事はニャルラトホテプに魅入られている証である。
聡い英霊や神霊ならニャルラトホテプ関係で気づき、まず身構えられる。
それにペルソナ使いという事もあって要らぬ勘ぐりまでされる。
故にこれまで事情説明で何度も現に話してきた。
不幸自慢をする趣味は達哉にはないが、説明の為に何度もする羽目になったので、なんか慣れてしまったのである。
「それはまた・・・苦労なさって来たのですな」
「まぁ不幸自慢は趣味じゃないしな」
これにはさすがのシェイクスピアも同情気味である。
達哉が言うように彼自身が不幸自慢は趣味ではない。
語らずに済めばいいのだが何度も言う通り状況がそれを許してくれない時だってあるのだから。
「少し疲れた。今夜は強襲だから、少し寝る」
そう言って達哉は立ち上がろうとしたが突然隣のフランに押さえつけられ頭を膝の上に乗せられる。
「フラン?」
「たつやはひとりじゃないよ・・・」
「・・・」
「だからだれかにあまえてもいいんだよ?」
「そうか、そうだな、ならこのまま寝るから膝を貸してくれ」
「うん」
フランの了解を聞き、すぐ達哉は寝始めた。
向う側で身に着けた技能だ。必要な時に寝れないと死ぬ羽目になる。
そしてすぐ起きれるようにもしていた。鞘に収まった刀を握り締めている。
何かあったらすぐに臨戦態勢に入れるようにだ。
「なんで・・・」
「フラン殿?」
「なんで・・・たつやたちだけこんなめにあうの?」
「そうですなぁ、一度犯した過ちからは逃げられないのですよ。過去という名の運命は何処までも追ってくる」
「しぇいくすぴあも?」
「吾輩もですな、最も記憶ではなく記録として残されているだけですが、平行世界の聖杯戦争で熱狂するあまり私は私になれませんでしたからな」
そうシミジミ言いつつ自分で淹れた紅茶を飲む。
シェイクスピアだって名を馳せる前は自分で茶を入れたりもしていたので、このくらいは出来る。
「・・・まえからおもっていたんだけどそれおいしいの?」
「生前の癖ですな。一時期妻と失踪していた時期には上等な茶葉なんて手に入りませんでしたし、執筆活動中は忙しすぎてこうして出涸らしの茶を飲んだものですよ、フラン殿も飲んでみますか?」
「わたし、こうちゃとかこーひーとかよりたんさんじゅーすがいい」
「それは未来ですぞ。悲しいですが、故に今のうちに出涸らしの紅茶でも飲んで舌を慣らしておきなさい」
炭酸飲料が普及するのは此処より未来の話だ。
今はカルデアがいるしペルソナ使いがいるから手に入るだけの話で、
彼らが居なくなったら手に入らなくなる。
故に無意識化で舌が慣れっぱなしというのもキツイ話だ。
という訳で致し方なくフランはシェイクスピアの煎れた紅茶を飲んだ。
案の定薄かった。
一方カルデアサーヴァント達は。
「まだやってるの?」
「じゃねぇと現状戦力に成らねぇからなアルの嬢ちゃんは」
オルガマリーが中庭にサンドイッチの入ったバスケットを持ちながら出てみると。
クー・フーリンは缶ビール片手に観戦モードに入っていた。
何を見ているのかと言われればアルトリアの特訓風景を眺めている。
マシュも先ほどまで書文と組み手をして現状最高の仕上げを行っていた。
過去形なのはこれ以上は任務に支障が出ると書文が判断したからである。
よってインナー姿で休息しつつ、スポーツドリンクを飲んで汗を拭いていた。
だがアルトリアはサーヴァント、体力は無尽蔵にあるはずなのでギリギリまで詰めることにしたのである。
座に帰ればこの成長も記録に成り果てるが、逆に死ぬか成長限界に達していなければ今だったら伸びるはずなのである。
アルトリアの才能はマスター勢を凌ぎ、下手すればシグルドや宗矩を凌駕しかねないものがあった。
よってこの短期間で新陰流の大半を収めている上に書文の気当てすら覚えつつある。
いっぱしのサーヴァントまであと少しだから仕上げてしまえと強行軍だった。
「マスタータスケテー!!タスケテー!!」
「頑張りなさいよぉ、宗矩も良いところで終わらせなさいよ、昼食にするから~」
「相分かった」
「マスターの鬼、悪魔!!」
アルトリアの罵倒も涼しい顔で受け流しつつ。
鼻歌歌いつつシートを広げつつ視線を横に移す、長可がぶったおれていた。
「長可、ものの見事に気絶してるけど何かあったのかしら?」
「ああ、俺が少し揉んでやった」
クー・フーリンはこともなげに言う。
さすがはケルト版ヘラクレス、長可では分が悪かったみたいである。
「そう言えばマリーはどうしたの?」
「アンデルセンの所でガキンチョ共と遊んでるよ、ついでに孔明も駆り出されている、アーチャーの野郎はどうした?」
「無駄に料理に凝りそうだからサモライザーの中よ、シグルドとブリュンヒルデは待機中、今頃、リビングでいちゃついているじゃないかしら」
「そういえば先輩は?」
「そういえばマシュの言う通り見てないわね」
それぞれがそれぞれの思うように過ごしている。
夜になれば全員でカチコミなのだ。当たり前である。
その中で達哉が見えないなと疑問を呈するマシュにオルガマリーも同調。
「達哉殿なら仮眠中ですぞ」
「シェイクスピアさん・・・なんでそれを・・・」
「フラン殿とのダンスレッスンに強制的に突き合わせましたからな、ゆっくりさせてあげてください」
「あのねぇ・・・」
「分かっとりますとも!! 吾輩も悪いことをしたと思っているのですよはい!!」
「ああ、もうわかったわ、私たちも私達で休憩としましょう、宗矩!! そこまでにして!!」
「了解しました。立てますかな? アル殿?」
「正直両手両足プルプルなんですが・・・それは・・・」
シェイクスピアはあえてフランが達哉に膝枕していることは言わなかった。
下手に言ってキャットファイトが起こり今後の行動に支障が出たら大問題である。
もっともこの男、個人的には見て見たかったと思う衝動をこらえていたりする。
そして訓練が終わり、実戦形式でやったので精神的に疲弊したアルトリアと涼し気な顔の宗矩もやって来て。
皆で昼食を取ることにした。
「ついにカチコミかぁ、どんな蛇が出てくるのやら」
長可がそう呟く。
「なんで蛇なんです?」
「あん? 俺らの国には藪を突いて蛇を出すって諺があるんだよ、要するに余計なことしてひどい目に合うっていう意味だな」
「そうなんですか・・・」
「まぁ長可の言う通りだけれど、今夜することは突くどころか藪に突撃して蛇退治だからね」
オルガマリーの言う通り藪を突くどころか。トーラスジャッチもって藪に向かって突撃しての蛇退治だ。
蛇も猛毒持ち確定。
「まったく今度はどんな奴が出来るのやら」
「クー・フーリン、酒は控えてね。本当にどんな奴が出てくるか分かったもんじゃないから」
もう数缶もビールを開けたクー・フーリンに忠告しつつ。
オルガマリーは憂い気な表情で言葉を紡ぎため息を吐いた。
第一では超絶強化されまくったジャンヌ・オルタ、決まり手、運による相手の疲弊。
第二ではビーストⅡR/L 決まり手、オルガマリー決死の説得と達哉が謎の力に一時覚醒。
第三ではポセイドン&メガロス 決まり手、女神の超火力とマシュの謎の超火力。
作戦と事前準備で何とか詰めたが最後は盛大に運だった。
故に今回もそうなるだろう、いつもギリギリだ。
奴がそうしないはずがないのだ。そういう奴ことニャルラトホテプがそう甘い設定をするはずがない。
ジキルの件で奴の化身ことガリオンがまだ生きていたことも分かっている。
下手すればこの特異点の黒幕とガリオンを同時に相手どらねばならぬかもしれない。
「嬢ちゃんは少し気を緩ませた方が良いぜ、何事にも遊びは必要だ。遊びが無い策は対応された瞬間に対応できなくなる」
だから飲めよとクー・フーリンが次のビール缶を開けて押し付けるように差し出す。
クー・フーリンから見ても、いやサーヴァント勢から見ても張りつめていると感じていた。
達哉がロンギヌスで刺された時より酷くはないが、日に日に張りつめているとも感じていた。
あの達哉ですらアップアップな感じが否めない。
(この特異点が終わったらマスターたちには長期休暇が必要だな)
(それは俺もそう思っている、前の休暇がアレだったからなぁ)
クー・フーリンと孔明はオルガマリーやマシュに聞こえないように会話する。
松島で休暇は碌に取れずその後、立て続けに特異点の発生と解決。
全く休めておらずここに突入だ、やっていられない。
肉体的疲労はペルソナ使いやデミサーヴァントであるがゆえに問題はないが。
精神的疲労は別だ。こればかりは娯楽をさせて時間で解決させるほかない故だ。
最も一時的に凌ぐ方法はあるがどれも依存性が高い。
精神安定剤に酒、煙草、最悪麻薬という手段だ。
無論それは廃人まっしぐらコースなので取れる訳がない。
精々が軽めの精神安定剤くらいなものだった。
酒も依存しないよう程々にとオルガマリーも気を付けている
「それにしてもルイさんの結界ってすごいですね。魔霧を完全にシャットアウトしてます」
「でなけきゃこうして中庭で優雅に昼食なんて取れないわよ」
そんな最中、マシュはぼーっとした様子で言った。
ドーム状に屋敷を囲むように張っている結界は魔霧の一切をシャットアウトしている。
でなきゃハイキング気分でこうして中庭で食事なんか取れやしない。
もっともルイ曰く大した結界ではないらしい。
実際そうだった。オルガマリーも小一時間で覚えられる物だった。
さすがに覚えるのは無理な警戒用、物理防御壁の上に張っているだけだという。
実際ロンドンがこうなる前から張っていたようだ。
この時期のロンドンは工場フル稼働、排気ガスも酷い時期だった故に。
スモッグなどの侵入を防ぐために張っていたのが魔霧に対しても効力を発揮したらしい。
閑話休題。
「ずっと・・・」
「?」
「ずっとこのまま、こういう時があればいいのに・・・」
「・・・マシュそれはないわ。生まれは選べないのよ」
「そう・・・ですね・・・」
そう、人間生まれは誰も選べない。
だが抗う事は出来る。
達哉が来てそれを痛感した二人であったが。
もう遅い、すでに運命という歯車は二人を絡めとった。
後は戦い抜くことだけしかできない激流なのだ。
「もっと早く出会いたかったわね」
「それには所長に同意見です」
そうもっと早く達哉と出会えていればと二人は思う。
だがそうはならなかったし重大な懸念点が抜けている。
達哉がくればニャルラトホテプの介入を許すことになり、人理焼却はどのみち起きるのだという運命。
運命の歯車はすでに動き始めている。故に早く出会おうが起きることは起きるのだ。
「クー・フーリンにも言われたし意識の糸、緩めるから」
「どうやって?」
「昼寝、マシュとクー・フーリンたちは好きにやって頂戴」
そう言ってゴロンとオルガマリーはシートの上に寝転んだ。
そして夜が来る
「お世話になりました」
「ふふ、気にすることはない。君たちの旅路に良きことがあらんことを」
「達哉、次に出会えることを楽しみにしているよ」
世話になったと達哉がルイとシンに頭を下げる。
するとルイは旅路に良きことがあらんことをといい微笑み。
シンは意味深に次に出会えることを確信したかのような言葉を言い。
とりあえず戦力に成れないとしてアンデルセンとシェイクスピアともここでお別れとなり。
カルデア勢を見送った。
地上移動ルートの敵は掃討済み、なら後は地下の敵だけだ。
事前に礼装経由で探査済み&バベッジ大爆発で数分霧が晴れた間にカルデア管制室の面々が必死こいて探査。
入口は地下鉄路線からの進入路を発見。
大聖杯クラス魔力反応がある先に繋がっているとしてそこからのアプローチを掛ける。
「敵がいないな」
だが敵は見当たらない。
するすると道を進める。
だが誰一人として警戒態勢は解かない。
ジキルタイプの敵がいるかもしれないからだ。
「壁も煉瓦造りです・・・記録などにはこのような地下施設はなかった筈ですが」
「魔術協会の地下施設計画にもないはずよ」
マシュが此処まで人の手が入った施設はなかった筈だと言い。
オルガマリーも魔術協会の関与はなかった筈だという。
「なんでマスターはわかるのかね?」
孔明の疑問にオルガマリーは呆れた様子で返した。
「いや時計塔のロードの一人ならわかるはずでしょ? 時計塔の有している地下施設は霊墓アルビオンや橋の底くらいなものなのよ、なんでアンタが知らないのよ」
「借金返済やら悪童たちの指導で天手古舞でね、地下施設に行く機会なんてないからと調べてなかったのだよ」
「あー、その気持ちわかるわ」
一方が忙しいと、余計なことまで気にしてられない。
故に最低限の事だけを抑えていればいいし暇がないという奴である。
「余計なことをしゃべり過ぎだ二人とも、にしても魔霧が酷い。視界注意だ」
話が脱線しそうだったので達哉が会話を遮りつつ目を細める。
魔霧の濃度が上がっている。
どうやら魔霧の生産装置である第四の聖杯に近づいてきているらしいと判断。
「所長、マシュ、サーモグラフィー起動。この煙じゃ何も見えない。あと皆にこれを毒状態になったら使ってくれ」
達哉はそう指示を出しつつ皆に解毒剤を配った。
相変わらず敵の気配がない。
逆に魔霧を外に送り出すための管が見えて魔霧も晴れてきたので進軍速度を速める。
無論、邪魔なサーモグラフィーも切ってだ。
そして大空洞に到達する。
其処は特異点Fの大聖杯が鎮座していた大空洞に酷似しており。
大聖杯が鎮座していた場所にはドーム状の機械が鎮座していた。
「よーしぶっ壊して退散・・・ってわけには行かなさそうね」
意気揚々とオルガマリーが退散と言おうとしたが。
それは突然うんざり気味になった。
置くから深青の髪をオールバック気味にした美丈夫が現れたからである。
「やはり奴の言っていった通りとなった訳だな。カルデア、一筋縄とはいかぬならしい」
美丈夫はそう呟くと同時に結界が起動する物理障壁、魔術障壁の二種だ。
無論、ルイの屋敷に張られた物よりは劣る。
いやあの老人が可笑しいのだがゼットと同じ存在であれば指一本なんだろう。
それはさて置き、それでも結界の完成度は高い。
今の手持ちでも突破に時間はかかる。
此処は時間を潰して合体宝具で一撃で潰すに限る。
「貴様は何者だ」
「マキリ・ゾォルケン、この希望になりえる魔霧計画に於ける最初の主導者の一人である」
「もう一人の主導者は?」
「ガリオン、貴様らも知っているだろうに」
「だったらもう一つ聞くが・・・希望? 何を言っている?」
「魔霧を世界全土に広め、人理定礎を消失させる。それこそが我が王の望みであり、我らが傍観の果てに掴むしかなかった行動でもある」
「まるで意味が分かんないんだが!?」
ああもう言っていることが支離滅裂だと達哉も叫んだ。
こいつは壊れている。ガリオンがねじれさせていない方が不思議なくらいに壊れている。
こういったやつに何を言っても無駄だと。
「クー・フーリン、ブリュンヒルデ、宝具起動して結界を破壊しなさい」
故にオルガマリーは躊躇なく指示を出し結界の破壊を命じた。
二人が宝具を起動させ、威力という名の暴力に結界が粉砕される。
「きさ「五月蠅いのよ」」
マキリが何かを言いかけたが、結界は無効済み。
だったら対サーヴァント用の銃弾が装填されているリペアラー二丁で十分殺傷可能だ。
一瞬でリペアラーによって蜂の巣にされるマキリ。
「どうせ間違った方向に突っ走って。自分の考えを押し付ける気満々だったんでしょう? うんざりなのよそう言うの、だからこういってやるわどっか遠くでやっているか独力で成し遂げてから言いなさい」
そう言って怒りのままに蜂の巣にしたわけだが。
「貴様はあの絶望を知らないからそう言えるのだ」
マキリはまだ生きていた。
それでそうまで言ってくる。頭をぶち抜かったのが失策かと。片手でリペアラーを構えて。
「終わるまで足掻いてみてからそう言う事は言いなさいなってねぇ!!」
マキリの頭部をぶち抜いた。どころかマグナム神経弾直撃したのだ。
頭部がトマトのようにクシャクシャになる。
だが。
「まだだ。破滅の空より来たれ。我らが魔神――――」
それでもまだ生きていたのか。というより生かされていたのか。
マキリの体内に這いずって寄生していたナニカが出現する。
それは天を突くような巨大な塔のように見えたが。
均等に眼が配列された醜悪な何かだった。
「我が名は七十二柱が一柱、魔神バルバトス―――――これが我が悪逆の形である」
醜悪な柱の悪魔はそう名乗るが。
「この程度?」
オルガマリー気は抜かず拍子抜けした様子で言い放った。
「なに?」
「あいつが用意した相手だからと思ったからすっごく緊張していたのにこの程度? 純粋な出力と強度ならジャンヌ・オルタの方が遥かに上よ」
「我を見下すか・・・小娘よ」
「ええ見下すわよ、現に気づいてないみたいだし」
「なにを・・・・」
「「「
オルガマリーが挑発し視線を誘導。
視線がそれた瞬間に合体宝具を叩き込んだ。
成功した要因としてはまず相手に挑発耐性がなかった事。
事前情報はカルデアは強いとしかガリオンに聞かされていなかったこと。
更にずっと此処に引きこもっていた為、外部情報が得られなかったこと。
魔神柱同士の情報共有でも出番がなかったか、向こう側の連中に潰されたなどの理由があり、
正確な情報共有が出来ずに戦力を見誤った。
結果この様である。
魔神柱バルバトスは一撃で消し飛んだ。
ぶっちゃけ現在のカルデアの特異点黒幕最低戦力想定はあのジャンヌ・オルタなのである。
それ以下となれば消し飛ばすなぞ当然な訳で。
現実はこの通り一撃で魔神柱を両断し破壊したわけであった。
「まだだ、きた「いい加減にして」
そして最後まで気を抜かない残った死に体のマキリにオルガマリーがベネリM4を叩き込み、弾切れになった後はすぐさまリペアラーを撃ち込み挽肉に加工した。
英霊にも通用する銃火器があるのだ。相手の何をしようとしたか分からないが悪あがきを見過ごすほどオルガマリーは寝ぼけてはいない。
「これで全部か?」
「ええ全部のはずよ、タツヤ」
「そうはいかぬのだよ、イレギュラー共め」
「「「「「「「「!?」」」」」」」」
誰もが残身を解いていなかった。
故に気づけない方が異様だった。気配察知に優れるクー・フーリンや宗矩に書文すら気づけなかったのはおかしいことである。
「誰だ? 貴様・・・」
「それを聞くかイレギュラーよ、我が名はソロモン、魔術王ソロモンなり」
影が解けて法衣を身に纏った王が出現する。
圧倒的霊基はジャンヌ・オルタですら凌駕していた。
もっとも魔人形態で殺傷を繰り返せば最終的には彼女が上回る程度なのだが。
その魂の異質さがペルソナ使い達には見える。
まるで無数の巨大な縄を結びわせたような感じであり、ここにいるのは間違いなく本体ではない。
本体であったらこっちが消し飛ばされているという圧倒的な物があった。
「人理を焼却したのはお前か?」
「然り、イレギュラーよ、我が名はソロモン、魔術王ソロモンなり、そして我がこの歴史図を焼いた、配下であるソロモン七十二柱を使ってな」
「そうか貴様が黒幕という事か!!」
全員が武器を構える。
此処で止めなければ破滅待ったなしかも知れないからだ。
黒幕の黒幕たるニャルラトホテプの都合の良い操り人形。
それが魔術王ソロモンだと思ったからだ。
だがここにいるのは本体ではない。
此処にいるのは影の様なものだ。
無視しても戦局に大した影響は出ないが。向うがやる気なのである。
生き残るならやるしかないというのは何時もの事だった。
「勝てぬとわかって挑むか。愚かなりカルデアよ」
「やってみなきゃわかねぇだろうが!!」
「温い」
金時の宝具真名解放を指先一つで受ける。
通常なら鬼ですら両断する一撃だけでさえだ。
その余裕は隙だらけ、一気に畳みかけんと宗矩と書文が両脇から奇襲。
だがしかし。
「なぬ!?」
「馬鹿な!?」
二人の攻撃は皮膚すら貫通出来ず不発に終わった。
故に魔術王は無造作に右腕を振るって、三人を弾き飛ばす。
三人は背から諸に衝突、血反吐を吐きながら意識を落とした。
「効かない前提で攻撃続行!!」
だがオルガマリーはあきらめない全てを受け入れながら尚も足掻く。
その指示に真っ先に飛び脱したのは達哉だ。
背にアポロを呼びだしノヴァサイザーを起動。
時が止まる彼だけの時間。
その間に。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!!」
ゴッドハンドのラッシュを見合う。
時が戻ると同時に、無数にタコ殴りにされた魔術王が体の各所に殴打痕を刻まれ吹っ飛んだ。
「・・・俺の攻撃は通じたみたいだが」
「全員、マスター二人とマシュを援護!! ソロモンにはサーヴァントの攻撃が通用しないらしい。マスター二人とマシュを援護するぞ!!」
達哉の言葉に孔明が即応。
何故かサーヴァントの攻撃は通らないらしいがペルソナやマスターの攻撃は通ると理解した孔明が指示を飛ばし。
達哉、オルガマリー、マシュが攻撃に転じる。
今のところ攻撃を通せるのは彼らだけなのだから。
「効かぬからと言って衝撃やらなんやらが・・・ああもうヤケクソだ!! 全員、マスターたちの攻撃を通すために足止めだ!!」
「なめるな下等生物共がぁ!!」
「させないわ!!
「させません!!
キレて地が出た魔術王から無数の火閃が迸るのをマシュとマリー・アントワネットが防ぐ。
その隙に達哉とオルガマリーが疾駆する。
「ヴォイドザッパー!!」
「ゴッドハンド!!」
「二度も気を付けない奴がどこにいるぅ!! 結界式七十二層!!」
魔術王は結界式を回避行動と同時に展開し攻撃から逃げる。
それは正解だった。七十二層程度の結界なんぞヴォイドザッパーで引き裂かれ危うくゴッドハンドをまともに食らう所だったのだから。
「来るがいい、御使いの四柱よ!!」
魔術王が叫ぶ。その瞬間、バルバトスに似た四つの柱が出現し達哉とオルガマリーを妨害する。
「くっそ!!」
「焼き尽くされるが良い召喚式ベレドォ!!」
「先輩!!」
「マシュはこっちに来るな!! 俺で何とかする!!」
炸裂する烈火。だが言わせてもらえればジャンヌ・オルタ程ではない。
アポロで十分防げると判断し防ぐ。
「オルガマリー、貴様もだ!!」
「!?」
そう言って魔術王に睨まれた瞬間、オルガマリーの両足から力が抜け途方もない眠気に襲われる。
「くっなんで?これは呪い!?」
今現在装備しているシュレディンガーには精神耐性が無い。
よって魔術王の呪いも防げるはずもないのだ。
それでも気合と根性で耐えるが、魔神柱の一柱が大きく凪ぐ。
咄嗟に後退し、物理耐性持ちに切り替えるが左腕を骨折し、ふっ飛ばされる。
無論壁に激突。だが受け身が間に合ったのか意識までは何とか途切れていなかった。
「おおおおおおおおおお!!!」
それに対して達哉は何度もサーヴァントたちの開けてくれた隙を活用し突っ込む。
刀を振るったペルソナの最大火力を見舞った。
されど結界が抜けない。焦りばかり募っていく。
『ああ駄目だ焦ってばかりではしくじるぞ』
「黙れ!!」
右腕の入れ墨を通して影が嘲笑う。
それが余計にヒートアップし猛攻を続ける。
魔術王も苛立ち気に達哉を”睨む”いい加減諦めろとばかりに。
だが彼は諦めない、全員が必死になって戦っているのだ。かつての誓いもある。
自分だけが諦めるわけには行かないとペルソナを変更しながら必死になって応戦する。
だが熱した意識は力を与えてくれるものではなく。
攻撃が単調になるという結果のみを与えた。
結果・・・
「ガフッ・・・!?」
死角からの一撃でふっ飛ばされ壁に激突する羽目になった。
「これで終わりだイレギュラー!!」
魔神柱の光線が走る。
今の状況では防ぐも回避も出来はしない。
「先輩ぃぃぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいいい!!」
「タツヤァァァァァァアアアアアアアアアアアアア!!」
オルガマリーとマシュが叫ぶ。
誰も間に合わない、死は確定した。炸裂した光線が土煙を上げる。
魔術王は唇を釣り上げ勝利を確信した。されど・・・
「いいやまだだ。まだ終わりなどしない」
誰の目にも認識されることなく入り口に身を預けていたガリオンが嘲笑って言った。
「・・・フラン?」
「だいじょうぶ? たつや・・・」
「フラン!!」
フランが達哉を寸前の所で庇っていた。
魔術炉心が露出し破壊されている。
咄嗟にフランに回復スキルを掛けようとするが駄目だとわかった。
なにせ前にフランには回復スキルが厳禁であるとわかっているからである。
どうしようもない現実がそこにあった。
「フラン・・・!! なんで俺なんか俺なんかを!!」
フランを抱きかかえながら達哉は叫ぶ。
どうして俺なんかをと。
血が流れる箇所を圧迫止血しながら思う。
「だって大切なひとなんだもん、たつやもおるがまりーもましゅも・・・」
「フランもう喋るな!! 頼む!! 治るから直せるから!!」
「ははは、それはむりだってわかる」
「ならなんで俺をかばった!!」
「・・・だってたつやはわたしのもっともいとしいひとだもん死んでほしくない、幸せになってほしいから」
「だとしても俺は・・・」
「それいじょういっちゃだめ、たつやにはさいあいのひとがいるんでしょう?」
フランの問いに脳裏によぎるのはマシュとオルガマリーだ。
この世は選択肢の連続だ。世界もあやふやで加えて時間制限まで在るという理不尽だ。
だから・・・・
「ほんとうにこのよであわれなおんなのいみががわかった・・・それはひとをしばりつけるおんな・・・。だからおねがいわたしのことなんかわすれて・・・しあわせになって」
そう言ってかつての誰かのようにフランは事切れる。
「フラン? フラン―――――――――――!!」
達哉が叫ぶ嗚咽が漏れる。
その背後で影は嗤っていた。
「また同じことを繰り返したな? 鉄火場に連れてくれば火を見るよりも明らかな結果だろうに」
「ああそうだ俺の決断が彼女を殺した」
「理解できているなら何より、では君はどうするね?」
「力が欲しい」
「クハ、安心したまえよ。力ならとうにある、あの魔術王モドキを殲滅できる力がな!!」
「力が欲しい!!」
「いいとも与えてやるとも!! 力が欲しければな!!」
影はそう言って達哉の背後から消え失せ。
彼の片腕には死したフランの亡骸と、左手には反転した太陽のアルカナカードが握り絞められていた。
確かに彼女を殺したのは自分の判断だろう、だが同時に彼女を殺したのも魔術王なのだ。
故にこそ自分を憎み、他者を憎む矛盾構図が出来上がる。
極限の殺意を宿した心理で自分を憎み、そして両眼で達哉は魔術王を睨んでいた。
「始まりますね、イゴール様」
「そうですね、エリザベス」
ベルベットルーム、二人は机の上のアルカナカードを見ていた。
其処には一枚だけ反転した太陽のアルカナカードが置かれていた。
今荒ぶる神が目覚める。
交流「私の出番は!?」
ニャル「そんなもんない!!」
下乳上「私の出番は!?」
ニャル「そんなもんはない!!」
バルバトス「私が活躍する劇的展開は!?
ニャル「そんなもんはない!!」
マキリ「私のまともな活躍は!?」
ニャル「そんなもんはない!!」
ニャルからは毒にも薬にもならないと判断されましたので出番カットです
というか下乳上なんぞ出てきた日にはアルちゃんブチ切れモードですので。
それでは不味いですし今更魔神柱如きに後れを取る当カルデアではないので。
魔神柱は瞬殺、その後もマキリが交流呼びだそうとしまっしたが悪あがき許さぬオルガマリーの無慈悲な射撃によって死体蹴り&滅殺。
交流と下乳上の出番消失でした。
ニャル「m9(^Д^)wwwwwww同じこと繰り返してやんのwwwwwww」
たっちゃん(血涙)
ニャル「だがそれでいい、その怒りこそ先に行く資格なのだから!!」
魔術王(仮)さん「なんだ何が起きようとしているのだ!?」
ニャル「お前は実に良い舞台装置だよ、都合の良い情報さえ摂取させればここまで都合よく踊ってくれるwww」
フラン死亡、舞耶姉と同じトラウマをたっちゃんに刻み付ける。
たっちゃんついに自分に対しても相手に対してもキレる。反転するアルカナに降臨する神。
という訳で次回、たっちゃん無双(ペルソナ暴走的な意味で)
もう、こじ付けて押さえつけることは第四特異点では無しにします。
魔術王(仮)暴走たっちゃん渾身の右ストレートが炸裂し。
故に今荒ぶる神が降臨する。
次回はちょっと早いと思います、ではノシ。