Fate/Grand Order たっちゃんがグランドオーダーに挑むようです   作:這い寄る影

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甘ったれないでください!

黒白のアヴェスター第八章より抜粋。


無惨終末区域 「巌戸台港区 回答者と復讐者」 異聞深度:D
「答えを出せない者と答えを放棄した者」


ジャンヌ・オルタはため息を吐きつつ瓦礫に腰かけた。

今の彼女の霊基はぐつぐつに煮えている。

冠位霊基。通常七基に送られる王冠の証。

その存在し得ない八基目の王冠。

されど彼女には不足だった。

生前の頃はいくら食おうが吐きはしない体質だったが。

如何に冠位霊基であっても容量は生前と違い存在する。

だから殺しまくり吸収しまくれば死人のジャンヌ・オルタはいつか限界を迎える。

現にそうなっていった。

だが、しかし冠位を使うことによって久々のベルベットルームを通じての手回しがいまだに彼女を破綻させない。

普通の英霊なら一側面だけが切り取られ、ペルソナも一人一つだが。

冠位さえあれば所持していたペルソナやベルベットルームの特別使用権限が用意されていたのは。

ジャンヌ・オルタにとって幸いだった。

故に此処にいる神々と戦った。悉くを勝利して食いつくした。

だが如何に冠位霊基とて複数の神の霊基を丸ごと飲み見込むことは想定されていない。

だからエリザベスに頼み込み、食った霊子を他の神々に分散し取り込んでもらうことによって崩壊は免れていた。

問題はその経由ルートだ。

裏にいる神々に通すのに座を使用している。

重機の駆動系と一緒だ。

容認以上のオイルをパイプや駆動系に回せば破裂する。

座というシステムを使っても限界ギリギリなのだ現状、複数の神に食らった神の力を分散吸収させてもだ。

だから通常の英霊は出来ないししない。

自分の破滅が見える行為に他ならない、あのBBや眷属のアルターエゴだって欠片ですませているのだから。

そのすさまじさが分かるという物。

だがこの世界、自分が作り上げて数多の犠牲の果てに最悪の解の果てに至った世界であり異聞帯を滅ぼすにはこれ位しなければ勝ち目がない。

そうあの不気味な月である全てに死を与えるニュクスには・・・

それを殺しようやく玉座の元に至れる、大本を殺せるという事に他ならない。

創生をなした神は多く、数多の神々を封じた。

されど一柱だけその封印から逃げた。そうニャルラトホテプである。

彼は暗躍し、次々に試練と評して神々を解放していった。

いや正確に言えばニュクスを呼び水として、この世界の達哉が封じ込めた神々が解き放たれた。

それは一度リセットされた認識、この世には神は居ないと思わせることによって無意識化に封じ込めたのである。

されどニュクスが一度復活したことによりダムの堰が崩れ去るように神々が復活した。

神は居ないという認識が崩れたからである。

ニュクスに始まり、イザナミ、ヤルダバオト。そのほかにも色々。

だが人は学ばず結局、奇跡を起こせる個人に縋りこの様だ。

幾らでも叫んできたし思い知ったではないか、やっぱりこうなるのではないかと。

それでもジャンヌ・オルタ自身は敗者だ。逆襲劇、復讐劇が失敗し負けた以上とやかくいう筋はないと思っている。

だがしかしだ。自分の生み出してしまったこの世界が異聞帯としてこの世界に根付こうとしているとなれば話は別だ。

自分たちの物語の幕は下りたのだ。

それを今更になって都合の良い物語に寄生するのは筋が違うだろうと思う。

だから復讐も兼ねて切除自体に躊躇はない。

もう終わっているのに、そうしたのはお前ら自身なのにという奴である。

故に片端から殺し尽した。どうせこの異聞帯とも呼べる中にいる神々は発狂しているか装置に成り果てているかの二択。

後はそいつらを殺し尽くし事象を収束させて玉座を破壊するだけだ。

大方の神々は殺し尽くしシャドウとなった人々も殺しきった。

残るはこの先の港台とタルタロスにいるであろうシャドウの掃討と天に浮かぶ月の様な神「ニュクス」を殺しきるだけである。

問題はどうやって殺しきるかだ。

ニュクスのほかにもまだ悪意はある。

そこまで考え重いため息を吐くと。

 

「・・・なんで達哉がジブリのラピュタしてんのよ」

 

空に穴が開き。衣類からカルデアの達哉と分かる達哉が落っこちてきた。

何やらかの力が働いているのかゆっくりと落下し羽毛のように落ちる。

やることが増えたなとジャンヌ・オルタは再度重い溜息を吐きつつ。

達哉の元へと歩み寄った。

達哉はそのまま瓦礫にもたれ掛かるように意識が飛んでいる。

 

「脈拍、呼吸に異常なし、外傷無し、けれど・・・生身じゃないわね」

 

ジャンヌ・オルタは達哉に歩み寄りメディカルチェック。

脈拍を計り、呼吸を確認、外傷の有無も確認して。同時に生身ではないことに気づく。

英霊や幻霊に近い感じだ。言うなれば精神体である。

何度か精神体になった経験があるのでジャンヌ・オルタは一発で見抜いた。

 

「奴か」

 

そして察する。奴事、ニャルラトホテプの仕業だと。

でなければこの異聞帯にカルデアがやってくるはずもない。

現にジャンヌ・オルタがド派手に暴れていたおかげでカルデアの計器では消えたり現れたりしていて、

優先度は低かったからだ。

ジャンヌ・オルタ自身もカルデアの援軍には期待していなかった。

その前に終わらせる予定だったからだ。

予想以上に反抗されたし、得物がカタルシスエフェクトの剣二本だけという事もあって掃討に時間を食ったのも大きい。

それに何度も言う通り、これは彼らの物語だ。

この達哉にくたばってもらっては、意味がないと判断し、

ジャンヌ・オルタは彼の帰還方法も思考しながら彼を背負って適当に休める場所へと向かった。

 

 

 

達哉は夢を見ていた。

皆が幸せな夢。何も起こらず続く平凡な日々。そこにはかつての親友たちやカルデアの仲間もいる空想の日々。

そんなことはありはしない。

なぜならやらかした今が結果であり、それが無ければカルデアとは出会えては居ないからだ。

在りもしない空想にふける。

それは一種の現実逃避からくるものだった。

しょうがないことではある、人間何事も限度というものが存在する。

カルデアに来て良き出会いはあったがそれ以上につらい出来事が多すぎた。

そしてついに過去を再現されフランを失い。切れて、怒りのままに暴れ仲間ですら傷つけて、

今ここで現実逃避染みた夢を見続ける。

そして、そのツケはやってくる。

突然として夢は漆黒に染まり。

背後には失った大事な者達、自分のエゴで踏みつぶした者たちが居た。

 

「待ってくれ」

 

言い訳もしたかったし謝りたかった自分もそちら側にと複雑な心理が彼の手を伸ばさせる。

だがしかし、手を伸ばすと見えない壁にぶち当たった。

ドンドンと壁を叩く。

向う側には行けないのだと自覚しながらもそちら側に行きたいと思ってしまうほど達哉は自傷の念に駆られていた。

だが彼らはほほ笑むばかり。

なんで自分はと思いながら崩れ落ちる。

そして死者とは逆の方向に光が見える。

ああ自分はと思い達哉は肩を落としつつも光の方向に向かって歩みを進めた。

そして開ける視界。

其処には。

 

「―――――――――♪」

 

達哉の知らぬ悲恋歌を口ずさむジャンヌ・オルタが居た。

第一特異点最後の姿そのままの姿で。

最も臨戦態勢にすぐさま動き出せるようにダーインスレイブを脇に出現させていたが。

 

「ジャンヌ・オルタ?」

「眼が覚めたみたいね、達哉、第一特異点ぶりね」

「お前は死んだはずだ」

「ええ死んだわ。でも噂結界のせいで人類の無意識下で見られていたことと、オリジナルが一向に反省もしないから、人々が思うフランスを憎むジャンヌの代用品として英霊に正式就職よ。ご丁寧に冠位まで与えられてね。まぁそれはどうでもいいわ。何があったの?」

 

ジャンヌ・オルタは何があったのか達哉に尋ねる。

ぽつぽつと達哉は第一特異点後の事を話した。

幾ら強靭な精神力を育てても来るものがあったからだ。

逆に強靭な精神力を育ててしまったからこそ誰にも吐き出せずにいられなかったのか。

恐らく後者だろうとジャンヌ・オルタは思う。

オリジナルはどうであれ強靭な精神力だ。

逆を言えば硬すぎて柔軟性が無いという事の表れであるのだ。

達哉も向こう側の争乱で成長を遂げた故に並大抵のことは処理出来てしまうし抱え込んでしまうという事である。

そしてついに要領を超えた事態が起こってしまった。

 

「はぁ、それは達哉も悪いけど周りも悪い」

 

ジャンヌ・オルタは客観的に見てそう判断する。

当たり前だ。達哉達は所謂生存戦争をやっている状態だ。

もっとわかりやすく言えば殺し合いをしているのである。

当然殺し合いをしている以上、犠牲者が出ないなんて嘘だ。

そこはいくら努力しても出る者は出る。

努力して生きて帰ってこれるなら戦争で犠牲者なんてではしないのだから。

むしろ今まで良くサーヴァントだけの犠牲で済んだなとジャンヌ・オルタは思う。

サーヴァントは死人だから死者にはカウントされない。

故に生者によく犠牲が出なかったと思う。

達哉の腕がすっ飛んだ? ペルソナ使いではその程度の傷、日常茶飯事だ。

すっ飛んだ腕を傷と合わせて回復スキル使えば即座に繋がる、或いはあの銭ゲバ妖精トリッシュに繋いでもらえばいい。

そのあと一晩も寝さえすれば完全治癒する。

故にペルソナ使いとかには腕一本程度どうという事はない。

閑話休題。

そう言う事で犠牲者抜きに勝ち進んできたもんだから、達哉も周りも気が抜けていたのだろうと判断しての辛辣な言葉だった。

誰か止めるべきだったのが事実だからだ。

如何に戦力に成るからと言って現地住人を徴収し戦力に加えた以上そうなることも想定しておくべきことだった。

故に温い判断だともジャンヌ・オルタは言う。

 

「だが俺があの時「甘ったれるんじゃない!!」ガハ!?」

 

だが自分があの時連れていくことを決意しなければノヴァサイザーが間に合っていれば、感情にかまけて暴走さえしなければと言いかけ。

甘ったれるなとジャンヌ・オルタは達哉の頬に右ストレートを叩き込んだ。

さすがに全力で殴ると顎を粉砕し首の骨をへし折り即死させかねないのでこれでも十分に加減した方である。

衝撃で達哉の歯が何本か行くが、ジャンヌ・オルタ的には知ったことではない。

どうせ回復スキルですぐに生やせるからだ。

そのまま蹲った達哉の腹を蹴り上げ、生体反応で立たせて襟首をつかみ壁に押し付けて睨む。

 

「自分の非力さなんて嫌というほど思い知ったでしょ!! アンタも私も!! 救世主気取って全部救えるなんて間違っている!! そしてフランって子が死んだのとシグルドとブリュンヒルデが退場したのも、アンタとアンタの周囲の判断で、暴走も感情に流されるって選択をした結果よ!!」

「そうか・・・そうだったな・・・」

 

達哉がそう言う。

散々、思い知らされてきたではないか、選択の重要性というものを。

そしてそれはジャンヌ・オルタも一緒だ。

 

「ごめんなさい。私も人の事言えないわね」

 

そしてジャンヌ・オルタもふと気づく。

彼女とて人の事は言えない、一時の感情に身を任せた事なんて星の数ほどだ。

下手すりゃ達哉より間違えてここまで来てしまったのだからさもありなんという奴であり。

救えなかった存在の方が多いし、救えた数なんて両手指両足指を合わせた数でしかない。

だから今でも復讐なんてやっている訳で。

そうでもしなければ、この異聞帯を切除しなければ。

嘗ての友人たちが報われず解放もされないがゆえに。この異聞帯の元人類共のシャドウを憎んでいる。

この結果を生んだ一人として自分さえも。

襟首から手が離され壁をずり落ちながら達哉は座った。

 

「それで・・・今度は何をしようとしている、ジャンヌ」

 

ジャンヌ・オルタの言葉で達哉はアムルタートを呼び出しメディラハンを自身に掛け砕けた歯を再生、砕けた歯と口でも切ったのかその際の傷も癒しつつ。血反吐と砕けた歯を吐きながら問うた。

ジャンヌ・オルタは一度やらかしている。

第一の如くやるなら、ここで刈り取ると言わんばかりだ。

だがジャンヌ・オルタはため息を吐きつつ。

 

「そんな気はないわ、私はあの時、再度生まれアンタに殺され敗北した。敗者が出張って勝者の足を引っ張るなんて馬鹿のする事よ。だから人理修復なんてのも好きにすればいい。私は敗者として寝るだけよ」

「ならこの特異点は・・・」

「私の生まれた世界よ、罪と罰の物語の先、平行世界って奴ね、そこで平行世界のアンタが創生した成れの果ての世界、私が生きた世界でもある、だから特異点ってよりは異聞帯、世界を浸食する毒樹」

「じゃぁジャンヌが戦っているのは」

「復讐ついでの過去の清算とアンタらに対する敬意からよ。何度も言う通り勝者の足を引っ張る趣味はないのよ」

 

そう何度も言う通りジャンヌ・オルタ自身の生は終わっているし負けている。

故に少なくともこの世界の勝者に対して足を引っ張るつもりと趣味はない。

だが自分が生きた世界が異聞帯になってこうやって勝者の足を引っ張っているのなら話は別だ。

復讐と逆襲も兼ねた殲滅戦に移行する事を厭わない。

 

「異聞帯は世界ごと来てるようなものだから特異点よりも切除は難しいわ。もっとも何とかチェックまでは持ち込んだんだけれどね」

 

異聞帯は特異点よりも異質だ。原作では空想樹という裏技を使っていたが。

この異聞帯はニャルラトホテプが根付かせたものである。

噂結界による無意識への働きかけにより都合の良い世界があるぞと働きかけて呼び寄せた物だ。

最もニャルラトホテプからすれば都合の良い試練場と”とある準備”の為にやったに過ぎないのだが。

それを達哉とジャンヌ・オルタは知る由もない。

知っているのは獅子王くらいな物だろう。もっとも彼女も利用されている訳だが。

そこでジャンヌ・オルタは創世の顛末を話す。

即ち罪世界の自分が創生すればそうなるような世界の話を。

此処の達哉も納得が行った。もしカルデアに引きずり込まれていなければ自分もそうしただろうと。

つまり無神の世界。神などどこにもおらず、人は人であれという世界だ。

だが、それでも人は神を求めるものである。

この縛られ苦痛に満ちた現実に耐えられる人間はいない。

同時にそれは影を発生させ。創生によって行われた無意識下の各神性は完了したが。

ニャルラトホテプの封印だけは不可能だった。

結果、ニュクスを皮切りとして神性は存在するものと認知され封印されていた神々が解き放たれ。

ついぞ無意識下の信仰心にて偽神まで作り上げる始末となった。

その都度、世界のアルカナに目覚めた者達が討伐していたが。

ついぞ人間に限界が来たらしい、所謂傍観の念だ。

誰かがしてくれるだろう、こっちの方が都合が良いという傍観の念。

それが決壊し英雄は不要となり世界は今現在、他世界を蝕む異聞帯となり。

各種の神は発狂しこの異聞帯が出来たとの事だった。

異聞帯は特異点とは違い発生直後から世界を浸食する。

だがなぜ浸食が起こらなかったのは簡単でジャンヌ・オルタが異聞帯の楔となっているシャドウや神々を殺し尽くし食い尽くして来たからに過ぎない。

 

「それは良いが・・・持つのか? 俺から見ても・・・」

「第一みたく無茶しているっていうんでしょう? ニュクスをぶっ殺すならこれ位の無茶は当然よ。それに爆発する前にベルベットルームと交渉して座経由で飲みきれない力は一時的に世界の裏の神々と契約してそっちに預けているしね」

 

そう何度も言うが神を食うなんてサーヴァントには自殺行為にも等しい、BBでさえ欠片で済ませていることからわかるように。

まず霊基が持たない。水を容量以上に満たした風船のように炸裂する。

だったらどうするかという問題を、冠位特権使ってベルベットルームを使い座を経由し裏世界の神々に分散。

一時的に預かってもらっているという事だった。

利用できるものは何でも利用し現状での最善手を打つ。

それがジャンヌ・オルタの生き方だった。

 

「ベルベットルーム? 英霊になったんじゃ使えないはずだが・・・」

 

達哉の疑問ももっともだ。マリーアントワネットやアマデウスにティーチでさえ生前は使えていたが。

英霊の特性上、使えず。使用ペルソナも限定されていたはずだと。

 

「冠位特権って奴、グランドアヴェンジャーの私は復讐劇、逆襲劇に必要なあらゆる手段が人理的に容認可能なら使用できる特権を持つのよ」

 

そう、それが彼女の特権だ。

人理が許す限りありとあらゆる手段が許容される。

それが普通は発生し得ない、八基目の冠位の機能なのだ。

後ついでに大容量霊基も付属しているとの事だった。

それでもジャンヌ・オルタからすれば足りない。

あの古都と東京が分かれた時にはもっと食えていた。

逆襲の顎で多神連合を事前に片っ端から食い殺せたのが良い例だ。

だが今はそれができない。やったら契約している裏世界の神々の顰蹙買って大爆発だ。

これなら第一で再誕したときの方がマシという奴である。

再誕し己の人生を取り戻したがゆえに。あの時ならそんな容量制限なんて無かったからだ。

これなら生前の方が自由に動ける。

がしかし当たり前の話になるが、いくら冠位とはいえ英霊は英霊だ。

縛っておかねば信用に値するという事ではないのであろう。

 

「それでこれからどうする?」

「巌戸台に入って港区のあの塔を上ってニュクスを倒す、そうすればこの異聞帯の真実の神は一体だけになるから事象が収束して玉座にたどり着けるはずよ、その収束の瞬間を狙ってトラフーリでアンタを元の身体に返す。あとは私に任せておいて。ついでにリバース・イドの練習がてらにニュクス討伐に協力してもらうわ」

 

窓の外からでも見える巨大な塔事タルタロスを指さしながらそう言う。

ついでにニュクスの討伐の手伝いとリバース・イドの制御訓練もとの事だった。

 

「今の私じゃ、ニュクスを倒すのは多分出来るっちゃ出来るけどその後が続かない。アンタのリバース・イドの力を借りるわ」

 

ニュクスを倒すことは出来るが自爆前程の策だ。

運が良くて玉座にたどり着けたとしても玉座に防衛機構が無いとも限らない。

達哉が来るまではそれでも決行していたかもしれないが。

新しい力に目覚めた達哉が居るという分の悪い賭けではなくなった。

 

「わかった。しかしまた暴走したのなら」

「その時は力づくで止めるわよ。同じような力であるオーヴァードーズも使えるしね。伊達にアンタの後続のペルソナ使い達に教練してないのよ」

 

ジャンヌ・オルタや達哉の後続は何故かペルソナ使うのに専用の機材や特別な集中が必要だった。

その後を生きたジャンヌ・オルタはそう言ったものが不要なようにかつ無拍子で使えるように教練したのだ。

教えることには慣れている。

万が一暴走しても今のリソースならアポロ・リバース・イドを張り倒せるくらいにはジャンヌ・オルタは恐ろしい存在だ。

伊達に神々の戦争に参加しその果ての魔人の極地やらなんかと殺し合いをしたわけではないのだ。

本当に第一が特殊だった。

生前且つ一番弱っている状態だから勝てたに過ぎない。

 

「だから安心して暴走しなさい、どうせここは壊れても良いところだしね」

「そうはいうがな」

「使って慣れることが大事なのよ。さぁ雑談はお終い、立てる?」

「ああ」

 

ジャンヌ・オルタに差し出された片手を握りしめ、へたり込んでいた達哉は彼女に手を貸してもらいながら立ち上がる

 

「あっ」

「なんだ?」

 

達哉が立ち上がると同時にジャンヌ・オルタは思い出したかのように声を上げた。

 

「もしかしたら塔を上らなくてもいいかもしれない」

「なに?」

「生前に厄介事が起きた場所があるのよ。たっくあの時はどいつもこいつも・・・本当に・・・」

「なにが起こったかは分からないから、気を沈めろぉ!!」

 

どっかの漫画の超戦士の如くいきなり魔力を迸らせるジャンヌ・オルタを諫める達哉。

あの長大な塔を上らずに済むには越したことはないが。

いま達哉自身がリバース・イドを暴走させるよりもジャンヌ・オルタの方が大暴走しかねなかった。

本当に何があったのだと思う。

 

「はぁ・・・はぁ・・・ごめんなさいね、あの時を思い出すとどうしてもね・・・」

「そう言う事は誰にだってあるから気にしないが、今のジャンヌが暴走したら、俺も相応の手段を取らざるを得ないから勘弁してくれ」

「分かっているわよ」

 

この異聞帯脱出の為にジャンヌ・オルタの協力は必要不可欠だ。

その彼女が暴走したら達哉も暴走覚悟でリバース・イドを起動しなければならない。

今の彼女は第一特異点で序盤の頃のリソースが許す限りの再生能力に終盤の技量を持って、それらを十全に使いこなせる上にペルソナまで使えるのだからそれくらいはしないと勝てない。

それはさて置いて。二人は出発した。

巌戸台に入ればシャドウとマネキンのようなロボットの巣窟だった。

だがしかし、達哉とジャンヌ・オルタは見事な連携で敵を屠っていく。

ジャンヌ・オルタは異聞帯の達哉と共闘した仲であるし。

カルデアの達哉はジャンヌ・オルタと激戦を繰り広げた仲だ。

互いの癖は分かっていたし、成長分も数戦でなれた。そして、

 

「フレンドリィファイアは気にしなくて良いから。思う存分ブッパしなさい」

「良いのか?」

「リソースは吐き出すほどあるもの、首や霊核を1000回以上切り飛ばされようが貫かれようが自己再生できるわ」

 

先ほども述べた通りジャンヌ・オルタは、第一特異点のようにリソースがあれば死ぬ前に再生できるのだ。

ついでにアポロ・リバース・イドも起動してみた。

あの時とは違い暴走はしなかった。

これには二人とも安堵したものである。

暴走しないことに越したことはないからだ。

だがノーリスクで使えるという感じでもなかった。

使用時間が増すごとに自身の暗黒面に引っ張られる感覚を達哉は感じ取った。

これでは長時間の使用はできない。最短で5分程度、最長で10分程度であろうと感じた。

何方にせよジャンヌ・オルタ曰く自分の暗黒面を無理やり引き摺りだす力でありニャルラトホテプの領域から汲み上げる力故にそう言うリスクはあるのだという。

達哉はそれを聞きここぞという時以外は使えないなと思いながら緊急時以外はどのみち使えないなと思う。

なおリバース・イドを使用するときは脳に負荷がかかるため、発動するたびに医務室のロマニや医療班が慌てているのは別の話だ。

道中、拾ったおんぼろの今にも壊れそうなリュックサックにジャンヌ・オルタ曰く友人の簡易量産機である敵のガイノイドを解体し使えそうなパーツを詰めて。

ジャンヌ・オルタの先導に従いつつ休憩や戦闘を挟み進んでいく。

そうやって進んでいくと町の中でもひと際古そうな建物の前にたどり着く。

 

「ここが目的の建物か?」

「ええ月光館学園巌戸台分寮、色々あって一時期住んでいた場所よ、ここで時元牢に閉じ込められるハプニングに合ってね、ええっと此処かしら・・・」

 

ロビーの中央の机を蹴り飛ばし床を露出させ。ダーインスレイブを差し込みこじ開ける。

当然、見えるのは床下のコンクリートだけだ。

 

「ちっ、やっぱこっちの扉はもうないか・・・」

「ジャンヌ・・・いきなりで俺は訳が分からないんだが」

「一時期、ここにあの月への直通ルートが開いていたのよ。通常ならもう閉まっているけれど。こんな滅茶苦茶な状況なら空いてるかなって思っただけ」

「そうか」

「あと戦力、一人確保できそうだから来たってのもあるわね」

「戦力? 英霊になっているかペルソナがなければシャドウになるこの異常空間で? というかジャンヌ自身が言ったじゃないか滅んでいると」

「ええ、彼女は人類じゃないから、さっき解体しまくった人形共がいたでしょう?」

「ああ」

「そのオリジナルの内の一機ね」

「オリジナル?」

「ええ、元も兵器としてはワンオフに近いけれど。どういえばいいかしら? ああもう着いてくれば分かるわよ」

 

説明が面倒くさくなったのかついてこいとジャンヌは言う。

達哉は黙ってそれに従い着いていくと厳重な扉の前にたどり着いた。

 

「私が生きていたころはこんなに大仰じゃなかったんだけれどね」

「どうやって開ける」

「決まってるじゃない」

 

明らかに頑丈そうな扉を前にどう開けると達哉はジャンヌ・オルタに問いただし。

ジャンヌ・オルタは決まっているとばかりに左手にフルンティングを呼び出し。

 

「グライ」

 

短い刀身から重力刃を形成、ビームサーベルのように伸ばして扉のロック部分を破壊。

そして引き戸式になっていたので剛力に身を任せて強引に扉を引く。

力技すぎると達哉は内心思った。

彼女とこうして再会し奇妙な共闘関係になったが。

ジャンヌ・オルタは力でゴリ押し気味ではないかと思うのだった。

部屋の中には椅子に座って様々なチューブに繋がれた美少女と思うようなガイノイドが眠っており。

様々な機材が所せましと並んでいる。

 

「達哉、ちょっと見てくれる? プログラム関係には多少心得があるんだけど、機械関係には疎いのよね私」

「わかった何をすればいい?」

「確か緊急時の為に、この空間でも発電できるように特殊な触媒が使われていたはずでここだけこの世界でも発電できるようになっているはずなのよ。こう金色の羽をしたものが触媒になっているはず。それが組み込まれている装置を見つけて頂戴。あ、工具はそこの棚にあるから」

「了解した」

 

さすがに力技でやるとぶっ壊しかねないとジャンヌ・オルタも分かっているのか。

達哉に装置電源の触媒がやられていないか捜査を依頼する。

達哉は棚から工具を取り出し、当たりを付ける。これはバイク整備知識とカルデアでの施設修繕に携わったれっきとした知識から判別した。

カプセルの鉄板を外し、中身を点検する。

問題はなさそうだった。

 

「こっちは問題はなさそうだぞ」

「OK、起動させるわね」

 

安全に起動させられるとわかった途端のジャンヌ・オルタの行動は早かった。

素早いタイピングで装置を起動させ部屋の明かりを灯す。

 

「ああ、やっぱり駄目ね」

「なにが?」

「彼女の身体の各所の問題よ、経年劣化で起動状態まで持っていけないわ」

「どうするんだ?」

「そのためのジャンクでしょ?」

 

ああ、あのガイノイド軍団は彼女の後継機ともいっていたなと達哉は思い出す。

なら多少の互換性はあるはずだとも。

 

「幸いにも中枢のパピヨンハートはやられてない。各種部位のパーツを交換するだけで済むわね。最も長くはないだろうけれども」

「どういうことだ?」

「パピヨンハートの劣化が激しいのよ・・・人間で言う所の心臓ガン末期と変わらない」

「・・・それでも」

「言わないで。自己満足だから私が決断し私の意思が彼女を殺す。アンタは気にしないで」

「わかった」

「分かったら作業しましょう。プログラム関係はこっちでどうにかする。達哉は私の指示でパーツを交換して」

「分かってはいるが人型ロボのパーツ交換なんてしたことないぞ」

「それでもよ、出来るのはアンタしかいない」

「分かったよ」

 

そう言って二人は黙々と作業に移っていった。

 

 

何年見続けたのだろう。

 

何年戦ったのだろう。

 

何年見送ったのだろう。

 

 

そうやってそして。

 

 

愛した人々も歌も季節も去っていったのだろう。

 

 

突然として復活したアイギスの意識にはそう言った郷愁が芽生えてきた。

体が活力を戻すかのように起きる。

そして瞼を開けると。

見慣れない格好をしたかつての親友、ジャンヌ・オルタの姿と。

見たこともない青年がアイギス自信を覗き込んでいた。

 

「おはようアイギス」

「ジャ・・・ン・・・ヌさ・・・ん?」

「ええそうよ、久しぶりね、何百年ぶりかしら。私からすればたった数年だけどアンタは違うでしょ?」

 

こうして彼女と彼女は再会した。

それは不幸なことなのか幸運なことなのかはわからない。

 

「ジャンヌ! ジャンヌさん!?」

「ちょっ。いきなり飛びつかないでくれる?!」

 

アイギスは跳ね上がるように椅子から飛び起きてジャンヌ・オルタに抱き着く。

 

「帰って来てくれたんですね!?」

「帰ってきたくて帰ってきたわけじゃないんだけどね。この状況じゃ喜べないし」

「この状況?」

「ええ、もう私たちの世界は滅んだのよ」

「え?」

 

衝撃的事実にアイギスは固まり。

ジャンヌ・オルタは無表情でまるで断頭刃を落とす処刑人の如く真実の刃を振り下ろした。

 




当初は死の匂いにつられて師匠が登場してパーティ入りしてたっちゃんの帰還役にする予定でしたが。
よくよく考えると師匠と邪ンヌの相性最悪なんですよね。
死にたがりとか邪ンヌ大っ嫌いだし。
出会ったら即座に殺し合いに発展してどちらかが死ぬまで殺し合いしかねかねませんのでボツに。
なお実現したら師匠は大喜びして邪ンヌは余計にキレる模様。

邪ンヌの冠位特権、生前のようにペルソナ使える、ベルベットルームの使用、大容量霊基 人理が認める限りあらゆる手段が復讐や逆襲劇という形で許容されるといった具合ですか。
と言っても本人的には使い潰す気満々ですけど。

あと理知的に動いているようですが邪ンヌ、自分の世界を異聞帯にした連中による復讐心で動いています。
仮にも勝った世界に寄生浸食してもまだ縋りつきたいかと腸煮えくり返って今すんで。
勝者であるたっちゃんの前だと大人しいですが他の前だと本質は変わっていない模様。

ペルソナシリーズのその後に人類がやらかしたのがこの異聞帯。
邪ンヌが暮らしていた世界です。
つまり平行世界の罪たっちゃんが創生した世界です。
片っ端から神を封印したけれどニャルには逃げられP3が発生。
ニュクスの復活+再封印で人々が無意識に神は居ると思い込んだ為。
片っ端から封印した筈の神であるイザナミやら人々が求める聖杯神が出来たりし。
それでも歴代P主人公がどうにかしてきたが、喉元過ぎれば覚めるといった感じで次々と神が復活。
同じこと繰り返しまくって。遂に誰かがやるだろうの精神で世界が破滅し異聞帯化した世界です
複数体神がいる上にニュクスが完全復活しかけている状態ですねぇー

なおイザナミクラスの神はたっちゃんが来る前に邪ンヌが刈り取りました。
伊達に冠位霊基やら座の機構を自爆やら自壊前程で使い倒しているわけではない。
生きていたころの真4の頃や再誕した第一得点ラストバトル時なら全部単独で出来たんですけど、今はグランド鯖なんでこの程度のことしかできません。
兄貴と一緒で生前の方が強いタイプですねウチの邪ンヌは
種族魔人やってたので。
それに地味に邪ンヌもコトワリ持ちです自覚したのはP5Rでラスボスを口だけで打ち負かした際にアザトースに強制接続された時です。
碌なことにならんからと半ば放棄しいました。
邪ンヌが創生すると全人類本気おじさん化しますからね。

ちなみに邪ンヌのコトワリ。

ムザン。
ジャンヌ・オルタの見出したコトワリ。
全人類が真面目に生きるという世界。
ただし何もかも妥協無く真面目にやる為、そこに加減はなく人の強弱が物を言う。
弱肉強食の理、しかも全員真面目であるため、他者を踏みつぶすことに後悔も恥も無い。
踏みつぶされる側も自分が弱いからと後悔の念も抱かない。
悪魔やら天使も介入し放題な世界が出来上がるので。
P5R以降、半ばジャンヌ・オルタはこのコトワリを放棄していた。
P4まではジャンヌ・オルタ自身は此処まで極端な考えではなくコトワリも得てなかったがP5で感情が爆発。コトワリを開いてしまった。
因みに自覚したのはP5Rでラスボスを中禅寺秋彦ばりの口捌きだけで打ち負かした際にアザトースに強制接続食らった時である。
されど放棄していても着いてくるものなのでメガテン3の受胎に巻き込まれる要因となっている。


あと次回ですが脳味噌が焼け爛れる感じがしてならないので遅れます。
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