Fate/Grand Order たっちゃんがグランドオーダーに挑むようです   作:這い寄る影

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「きょうは世界の終わりになるかもしれんぞ、オースチン」
「はい。それは何時ごろになりましょうか?」

アーサー・コナン・ドイル「毒ガス帯」(永井淳訳)より抜粋。


「終わった世界にて」

ジャンヌ・オルタの人生は砂漠を歩くようなものだった。

昼は灼熱の太陽が自らを焦がし、夜は寒すぎる風に身を打ち合わせ。

そして時々あるオアシスで休憩しながら果てがあるのかないのかわからぬ旅を続けてきた。

ジル・ド・レェにインストールされたオリジナルの半生より、

そっちの方が自らの人生だと胸を張って言える。

故に怒るし怒る。

ジャンヌ・オルタは怒り続けている。

勇者たちは走り抜けた。

それゆえに学習しない愚衆共に鉄槌をと。

そう結論付けたがゆえに第一特異点を利用した。

だが負けた。

完膚なきまでに叩きのめされた。

それが結果であり答えだ。

 

「それじゃ、ジャンヌさんは・・・」

「そう幽霊みたいなもんよ」

 

アイギスは絶句した。

今までの経緯を聞けば絶句もする。

まさか滅びた自分の世界が他世界がどんちゃん騒ぎなのをいい事に浸食侵略しているとか。

行方不明になりつつも様々なところで奮戦していたジャンヌ・オルタの事とか。

そしてジャンヌ・オルタはカルデアの達哉に討ち取られすでに死亡していることとか。

この異聞帯を維持しているのはニュクスではなくこの世界を創世した達哉だとか。

達哉は黙って壁に背を預けて聞き耳を立てている。

親友同士の再開なのだ。水を差したくないという気持ちもあった。

 

「兎に角、この世界は終わっている。もうセカンドチャンスもない、新たに玉座に座る資格者がいない以上、もう限界なのよ」

「そこの達哉さんやジャンヌさんが座れば」

「私のコトワリはそんな甘いもんじゃない、座れば人類滅亡まっしぐら。達哉はコトワリを持っていても色を帯びてはいない。座る資格はない」

 

それでもジャンヌかカルデアの達哉がその玉座とかに座ればとアイギスは言うが、

ジャンヌ・オルタは真向から否定した。

確かに二人ともコトワリ持ちで玉座に座る資格は在るが。

カルデアの達哉はそもそも色を失っている、無色のコトワリでは創世できない。

だったらジャンヌ・オルタはという話になるが。彼女が座れば碌なことにならないのは、アザトースに強制接続された彼女自身が分かっている。

ジャンヌ・オルタのコトワリであるムザン。

それは人類が真面目に生きる世界と言っても過言ではない。

聞けば素晴らしい世界に思えるかもしれないが。全員がクソ真面目になる=どのようなことでも妥協も自重もしない世界の完成だ。

所謂所、弱肉強食の理。

弱きものは淘汰されあらゆる面で強く真面目で根性論が幅を利かせる地獄のような世界である。

更に言えば強者は弱者を踏みつぶすことに躊躇はなく。弱者もまた自分が弱かっただけとそこに後悔の念も何もない。

悍ましき無慙無愧の世界が広がるのだ。

そんな競合社会の極地みたいな世界は即座に滅びる。

なんせ、大量破壊兵器の使用にですら躊躇はないのだ。

だからジャンヌ・オルタは玉座に至る資格を放棄していた。

もっとも今は自分とこの世界の達哉を終わらせる事に悪利用している訳だが。

 

「どうにか・・・ならないんですか・・・」

「どうにもならない、それとも無関係な世界でも乗っ取って、この無様な現状を続ける?」

「それは!! それは・・・」

 

もうアイギスも分かってしまった。

本当にどうにもならないことが世の中にはあるのだと。

例え、この時空を乗っ取ったとしても滅びている事実は変わらないのだと。

どうしようもなく詰んでいる。その上、滅びに抗っている世界をどさくさに紛れて乗っ取ろうとしているという事実。

 

「・・・私もアイツも間違えた答えを出してしまった」

「・・・」

「人生における選択肢は無数にある。その上時間制限までもね。アイツは死を選んだ。私は復讐と逆襲を望んだ。出来る奴が間違えた以上、もう出来ることは幕引きのみよ」

「理さんを殺す気ですか?」

「殺さないわ。もうアイツも限界でしょう。アンタと同じくね・・・だから世界の終わりを二人で過ごしなさい。手は私と達哉で下すわ」

 

そうニュクスの打倒が必須条件な以上、理を封印から解放するのは当たり前で。

これだけの年月が経ったのだ。彼も限界である。

解放されたからと言って常人状態では戻れない。きっと瀕死のはずだ。

そしてアイギスも経年劣化と自死衝動のせいでパピヨンハートが劣化摩耗しており先は長くはないのだ。

だから手向けとして恋人同士を再開させて少しの短い時間を過ごさせてやるという話である。

その言い様にアイギスな懐かしむように言った。

 

「・・・ジャンヌさんは・・・」

「なによ?」

「変わっていませんね苛烈に見えて妙に優しい所とか特に」

「・・・そう? もう昔の私じゃないと思ったけれど悪い意味で」

「まぁスレさが増したのは私も分かるでありますが・・・」

「擦れるわよ、誰だってあんな経験したら特にね・・・東京で心の怪盗団騒ぎがあったでしょう?」

「ええありましたね」

「アレに二、三枚嚙んでるのよ私」

「そうだったんでありますか?。蓮さんからはなにも」

「さっきも話したけど緊急事態で殺し合ったからねぇ。そんであの後から別世界の神々の戦争に参加することになってね。もう散々よ、・・・誰も守れなかった」

「ッ・・・」

 

アイギスも絶句した。

SEESでも飛びぬけて実力のあったジャンヌ・オルタが誰も守れなかった戦場とはいかなるものかと。

現に勘違いとはいえ、アイギスは理との邂逅の時の一回、ジャンヌ・オルタに勘違いで殺されかけている。

それにSEESのメンバーに召喚機無しでのペルソナの使役方を教えたのもジャンヌ・オルタだった。

間違いなくアイギスの知る中で一番の使い手だった。

純粋な殺し合いならユニバースに目覚めた理やワールドに目覚めた悠すら圧倒する。

言っては悪いがそれら二人は純粋な対人戦闘を熟し殺していないが故の差だ。

そんな覚悟で圧倒的差をつけるジャンヌ・オルタがガチの殺しで遅れを取るなんて考えられなかった。

そして多くを失い擦れ切って此処まで来てしまったのだとアイギスは思い息をのむ。

この人はどれだけ自分たちの世界を憎むほどに大衆に絶望するほど戦い続けてきてくれたのだろうかと思って。

その過程で誰も守れなかったと言い切る程、擦り切れさせてしまったのだろうかと。

後悔の念が押し寄せて来る。

更には間違い続けた自分たちの尻拭いまでさせて気を使わせているのだから。

アイギスの良心もかなり傷んだ。

 

「・・・」

 

ジャンヌ・オルタは一瞬黙り。

もう堪え切れないとばかりに吐き出した。

 

「そうよ!!全部誰もかれもが無駄にした!! 達哉の答えも理も悠も蓮の願いも無駄に消耗した!! 挙句、まだしがみ付いてカルデアの足掻きすら無駄にしようとしている連中に何の希望が持てるっていうのよ!! そこの達哉やカルデアの皆は私に示したうえで勝利した!! それを横からか攫らおうとする連中をなぜ許せるか!! 私は敗北し、アイギス、アンタも都合の良い幻想縋って敗北し。わっちゃわっちゃしている世界に寄生にまでしてなぜ生き残ろうとしている!! 嗚呼許せない!! 認めてなるものか!! お前ら敗者なんだ大人しく死んどけ!! そして黙っていろ!! もうお前らの住む世界はないんだと自覚しろ!! 墓場の穴から這いずり出てご都合主義にしがみつくなぁ!! だったらこっちも相応の復讐劇をしてやる。全てを無駄にした貴様らを論理武装で全部否定して、絶望のに叩き落として殺してやる!! 安楽な死など絶対に許さない!!」

 

最早、痛々しすぎる光景だ。

達哉は唯々、この世界の自分の失敗にまるで自分が失敗したかのように心を痛め。

アイギスはあの日、壊れるまで右手を壁に叩きつけていたジャンヌ・オルタがより壊れてしまったことに涙するしかなかった。

一種の地獄である。

誰もが寄って集って奇跡を食い物にしたがゆえにジャンヌ・オルタは悪鬼と化したのだから。

 

「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・ジャンヌさん私は私たちは結局・・・」

「はぁ・・・はぁ・・・気にしないで。もうこっちも一杯一杯でね・・・、ふとした拍子に漏れだすのよ・・・達哉助かったわ」

「冷や汗ものだったぞ・・・ジャンヌ」

 

状況は実際不味いところまで来ていた。

今のジャンヌ・オルタは起爆寸前の世界破壊爆弾の様なものだ。

気合と根性と必死で本音を押し殺しているからこそ原型を保っているだけで。

不要に触れれば爆発してしまう。それではこの異聞帯を完全切除できないため自爆事態ジャンヌ・オルタの本意ではない。

だとすればどうやって止めたかというとリバース・イドを一瞬展開。ノヴァサイザーとユニオギアスによるコンボで強引に達哉が抑え込んだのだ。

もっともリバース・イドを一瞬だけ部分展開するという荒業のせいで起きた頭痛で片手で頭を押さえながら達哉は座り込んでしまったが。

 

「兎に角だ。アイギスだったか・・・どうする?」

「なにをでありますか? 達哉さん・・・」

「こっから先に付いてきて辛い思いをするか、ここで終わらせるかだ」

「・・・着いていくであります」

「・・・」

「此処で放り投げたらそれこそ恥知らずでありますし・・・それにこれは私のエゴなのでありますが・・・最後くらい理さんと迎えたい・・・どうあがいても私は機械でありますから。愛しい人と最後を迎えるという無理な夢が叶うなら本望であります。それにジャンヌさんの言う通りであります。他世界に迷惑かけてまで自分の世界を維持しようとは思いません」

 

世界が滅んだのは確かに悲しい。

だが滅んだというのに滅びに抗っている世界を乗っ取るなんて恥知らずな真似は出来ないし、

アイギスと理は異種族間恋愛だ。

いずれ訪れる寿命差という抗えぬ壁にぶち当たることになる。

であれば一緒に死ねるのは幸福なことだろう。

世界を乗っ取ってはいけない義務感と己のエゴが合致しアイギスもまた覚悟を決めた。

 

「私は私の世界を壊すであります」

「そう、覚悟を決めたようね」

「はい、で? 具体的にはどう行くでありますか?」

「黄昏の間が使えない以上、タルタロスを一日で登頂チャレンジね」

「・・・真田さんから聞きましたが、一日で登頂は無理では?」

「あの時は私でもぶっ壊せない壁があったからやらなかっただけの話で準備さえ整えればやろうとおもえばできたわよ」

 

なにせサトミタダシがなくチューニングソウルの調達ですら困難だった。

あとから聞いた話だが、そういうのは指定薬物にされ病院での診断がくだらないと入手できなくなったらしいのである。

だが今は達哉が居る。

彼のポシェットも無事こっち側に持ってこれた。

潤沢な精神回復方法があるのである。

そういう下準備がジャンヌ・オルタにも出来ていれば一日で攻略可能だ。

問題は。

 

「あの時の様な壁が無ければね。今は達哉でも私でもどうにかできそうだけれど」

 

ジャンヌ・オルタがそう言う。

そう当時のジャンヌ・オルタでも突破できない入り口を塞ぐ壁があったのだ。

壊すこと自体は出来たのだが。即座に再生され突破できなかった。

当時、ジャンヌ・オルタが順調に満月シャドウを倒して登頂を行ったのはそれが理由だ。

上記二つの理由が無ければ一日で攻略している。

 

「それでも戦力は多い方が良い、そうだよな?」

「そうね、ニュクスは外から来た神の一柱だから・・・桐条の爺がクトゥルフを嗜んでいたらニュクスじゃなくてグロースなんて呼ばれていたかもね」

 

ニュクスは外からの神である。その性質が似ているがゆえにグロースと呼ばれていたかもしれないとジャンヌ・オルタは皮肉を飛ばす。

それはさて置いて。

 

「一応確認だが・・・アイギス、君は物を食えるのか?」

「食べれるでありますよ、一応人間社会に溶け込むことも主眼理由にありましたし、精神の維持のため物を食べるための特殊装置が組み込まれているであります」

「なら問題なさそうだな」

 

アイギスももちろん物を飲み食いできる。

出なければ精神維持や人間社会に溶け込むという事が出来ないからだ。

外部補給というのは実に重要なのである。

食ったものは炉で精神エネルギーとパピヨンハートの維持エネルギーに使われるわけだ。

もっとも。

 

「食えない物も存在しているけどね」

「なんでジャンヌが知っているんだ?」

「OK、螺子の入った飯を人間が食えると思って?」

「ああそれは無理だ」

 

食えない物も存在している風花の料理がそれだった。

バナナチャーシューなんぞ生温いレベルでのメシマズだったのだ。

ムドオンカレー作ったP4の女子たちも相当であったが。

風花を超えることは出来なかったのである。

ニコニコ顔の風花に螺子入り飯を出され。ジャンヌ・オルタ、アイギス、理はもうアレな顔をして心を鬼にしつつ叱るほかなかったのはいい思い出(疑問形)だったのである。

故に達哉は螺子入りの飯を食うなんてシチュエーションなんて思い浮かばなかったが。

何でそんなにひどい飯が作れるんだと。ジャンヌ・オルタの友人をけなすことも出来ず。

曖昧な返答をするほかなかった。

 

「ところでジャンヌさん」

「なによ?」

「別世界とはいえ。ジャンヌさんの恋した相手が見れて私ホッとしたであります」

 

ニヨニヨと表情でアイギスが語り。

されどもジャンヌ・オルタは動揺もせず語る。

 

「私の愛したのはこの世界の達哉であって。そこのカルデアの達哉じゃないわよ」

「それでも似ているとは否定しませんでしたなぁ」

「・・・面影を求めていたのは否定しないけど。アンタ、少し性根悪くなってない?」

「私も散々弄られましたので。これ位は許してほしいであります」

「はっこれはやられたわね」

 

そんな微笑ましいやり取りが行われつつ話しが戻される。

 

「兎に角、達哉。持っている物資は?」

「大量にあるぞ。第四ではあれだ、補給線が整っていたし使う暇もなかったからな・・・」

「ならタルタロス一日登頂チャレンジは可能ね」

 

第四で使う予定だったチャクラドロップやらなんやらも大量に持っている。

何故かと問われればルイの屋敷にベルベットルームの扉があったし補給線だけはしっかりとしていたからだ。

加えて電撃戦、速攻戦が多くあまりそう言うの使ってなかったというのもある。

 

「タルタロス一日登頂で思い出しましたが、最終決戦の日に皆の食事に睡眠剤盛って美鶴さんのバイクかっぱらって勝手に一人で突っ走ったことは許してませんからね」

「それなら理にも言えることでしょ。アイツ、私の次に突っ走ったじゃない」

「それはそうでありますが」

「それでお相子ってことでしましょう。もう過去は戻らない」

「・・・そうでありますね」

 

ジャンヌ・オルタのやらかしをアイギスは詰る

なんせ過去の対ニュクス戦でやらかしたのがジャンヌ・オルタだ。

同胞たちの飯にちゃっかり睡眠薬を盛り付けて美鶴のバイクかっぱらってたった一人でニュクスに挑んだのである。

即座に復帰できたのはジャンヌ・オルタならそうやるだろうと薄っすら感じ取っていた理くらいなものだった。

もっともそのおかげでストレガの二人をジャンヌ・オルタが始末したことにより人殺しをせずに済んだわけだが。

という訳で。

 

「とりあえず足が無いし徒歩だな」

「行くなら通常道路を歩いていくしかないわね。アイギス、アンタの量産機からひっぺ剥がした弾薬使えそう?」

「規格は一緒でありますから、大丈夫であります」

「・・・今思うんだが、なぜにグ●みたなフィ●ガーバルカン方式なんだ? よく玉詰まりしないな」

 

アイギスの武装は両手そのものがマシンガン構造になっている所謂グ●重装型みたいな指が銃身になっている。

よく弾詰まりしないなと達哉は不思議に思った。

因みに量産型アイギス軍団は腕そのものを銃にしているか、或いは近接装備担いでいたから違和感なかったが。

やはり指そのものを銃身化するのは無理だと思う今日この頃。

 

「桐条脅威の科学力って言いたいけど。実際はX-02からのデータ流用で出来ているのよねアイギスたちって」

「そうなんでありますか?」

「なんか本人が一番驚愕しているんだが・・・」

「だって私独自の調査結果は伝えていないもの。元の研究所が吹っ飛んだから裏取りが出来なくてね。桐条財団の資料室に影時間利用して忍び込んだりタルタロスに落ちていた資料なんかを見ての推測、ヤツが流していた形跡が見て取れたわ」

 

アイギスたちの基礎研究期間が短すぎることからジャンヌ・オルタは何処からかの技術提供があったと考えていた。

それは当たっていた。どちらも断片的な物でしかなかったが。奴ことニャルラトホテプの介入を匂わせていたのである。

X-02のデータと奴の化身が手を貸していたとすれば納得が行くし、

幾月と桐条のご老体も良い様に誘導されていたに違いあるまいと。

 

「というか怪盗団騒動の裏でも暗躍とセッティングしてた可能性もある。知り合いのお母さんが研究してた分野もオカルティック過ぎて普通なら鼻で笑われてお終いな研究学問のはずなのに多大な予算が大学から出てるわ国が介入して研究結果強奪するわなんだわでアイツの介入が無いと説明できないのよ」

 

一色若葉の研究である認知訶学なんて普通に考えて予算が下りないような研究だった。

双葉とジャンヌ・オルタは黒幕を追ううちに若葉の研究にも目を付けその不自然さに感づいた。

こんな研究に予算降ろすほど大学は甘くはない。専用の研究所もない様子で大学での研究だったみたいのにだ。

それに莫大な予算が掛けられていたとなればこれはおかしいという話になる。

ジャンヌ・オルタはその不自然さに感づいた。ステージを整えるためにニャルラトホテプが介入していたのだと。

後は雪達磨方式という奴だ。某衆議院議員を誘導し研究成果を横取りさせて最悪の結果を整える。

良く使う手口だと。

あの時は大変だったなぁとジャンヌ・オルタは思い。

 

「今は関係ない話だったわね。もう終わった話よ、忘れて」

 

そうもう後の祭りだ。

終わった話なんだからくっちゃべってもしゃぁなしという事でそれぞれ準備を始めた。

 

「待たせたであります!!」

「その装備まだ残っていたのね」

「万が一の為にという事で残しておきました」

 

其処には最新鋭の防弾防刃使用のジャケットと予備弾薬が吊るされていた。

いくら一日登頂チャレンジとはいえ、達哉やジャンヌ・オルタとは違い。

アイギスはオルガマリーと同じく銃弾を消費するタイプだ。

これ位の量があっても不安は残るが。

 

「だが弾薬が持つのか?」

「素手での近接戦闘もできるであります、ジャンヌさんが教えてくれましたので」

「一方に偏ると手札不足でピンチとかあるからね、特化にするにしてもサブの一枚や二枚持っておいて損はないもの」

「そういうジャンヌはペルソナ以外にも武器持っているのか?」

「あの時は使えなかったけど今はこれがあるわ」

 

達哉の疑問にジャンヌ・オルタは自身の太腿に巻き付けたレッグシースをトントンと指叩く。

其処には複数のスローイングナイフが鞘に収まっていた。

 

「ゆきのさん程じゃないにしろ投げれるわ」

「そうか」

 

フルンティングのスキルが揃ってない時期はそれこそジャンヌ・オルタは苦労していた。

仲間とのペルソナ共有ができない。挙句にフルンティングの覚えるのは限定的なスキルばっかり。

幾ら長時間使えるカタルシスエフェクトタイプとはいえこれでは他の技能を身に着けざるを得なかった。

そこで咄嗟には近接戦闘にも使えるスローイングナイフの扱いをゆきのから習ったのである。

もっとも、ダーインスレイブを会得しグライによる重力刃を展開できるようになったフルンティングになってからは本当にサブウェポン&インターセプト的な感じだったが。

 

「無駄話も此処まで・・・、行きましょう達哉にアイギス」

「了解」

「わかりました」

 

そして三人は出発した。

がしかし。

 

「こんなに後続機が量産されていたって何があったんでありますかぁ!?」

「俺が知るわけないだろ!!」

「私も結果的に来ただけで知らないわよ!!」

 

確かに街中ではスニーキングが通る。

だが橋を渡るとなると如何にしても強行突破しかない訳で。

連中との交戦は避けられない訳だ。

人類を守るために生産されたアイギスの簡易量産型と派手に戦っている訳なのだ。

 

「邪魔よ、グライ、グライ、トラフーリ エストマソード 弾け飛べ」

 

その物量を前にジャンヌ・オルタもまたバグ技を遠慮なく使う。

単体で最強の塵殺の牙を態と失敗させ広範囲に拡散させる荒業だ。

はじけ飛んだ斬撃がアイギス量産型たちを蹂躙する。

それに合わせ達哉はサタンを召喚。

 

「食らえ、光子砲!!」

 

射線上にジャンヌ・オルタがいるにも拘らず躊躇なく光子砲を放つ。

ジャンヌには超再生能力があるからだ。

光子砲でも一撃で消し飛ばせはしない。

アイギスはその戦闘にさらに心を痛めた。

ただでさえ身を顧みぬ特攻戦法がジャンヌ・オルタの戦い方だった故にだ。

アイギスが見てたのは何時も血塗れのジャンヌ・オルタだったから。

彼女は圧勝という状況でも油断しない。常に全力を持って殺しにかかる。

逆襲の顎を得たことによってより悪化している。

だが達哉は容赦がない、彼女を知らないというのもあるが、敵として戦った信頼があるからだ。

躊躇なくぶっ放せとはジャンヌ・オルタ本人の弁なのだ。

だから躊躇なく利用する。達哉だって守りたいものがあるがゆえにだ。

歪な信頼関係ではあるが、そこに油断も隙もない。完璧な連携というのはそういうのを言うのであろう。

アイギスは思う。対人経験の有無と覚悟の差でこれ程歴然とした差が出るのかと。

数が減り、達哉はアポロにペルソナチェンジ。

鋼の竜巻となったジャンヌ・オルタと息を合わせる。

普通なら回転攻撃を主軸としつつ対個人、対多数を主眼としたジャンヌ・オルタの武威に合わせるのは無理がある。

だが達哉は別だ。フレンドリィファイアになりそうな攻撃ですらノヴァサイザーで回避し、合わせられるのだ。

アイギスが援護射撃し、その二人が近接攻撃で蹂躙していく。

まさに理想的な一方的殺しと言っても過言ではない。

 

「思ったより消耗はなしね」

「どんだけリソースため込んでるんだ・・・」

「神霊十数体分、さすがに冠位霊基に縛られているから霊基限度超えては飲み込めないから座経由で達哉の世界たちの神々に一時的に預かってもらっているわ」

「ほぼ無限か」

「まぁね」

 

ジャンヌ・オルタは体中の負傷から再生の湯気を立ち昇らせつつ達哉の疑問にそう答えた。

だがしかし消耗が少ないのも有り難いものがあった。

敵は数こそ多いが弱い。

これ位ならグロス単位で押し寄せてこようが達哉たちの敵ではなかった。

それにジャンヌ・オルタのリソースも潤沢だ。

まずリソース不足で押されるという事はまずないし。

第一特異点とは違い彼女は今その潤沢なリソースを使いこなしている。

冠位霊基でこれなのだから魔人として再誕した彼女は霊基の縛りから抜け出ており、

本当に第一の最終決戦では弱っていたんだなと達哉は感じる。

ジャンヌを殺させない判断は間違っていなかった。

もしジャンヌ・オルタがジャンヌを殺していたら、その分回復され。

状況的にもギリギリだったカルデア側が負けていただろう。

 

「にしても英霊ってのは不便ね、最上位の冠位も大したことないわ。昔ならもっと吸収しても支障はなかったのだけど」

「生前どれだけだよ、お前」

「それでも勝てない相手は居たわよ。私、剣術や体術の才能無いから」

 

ジャンヌ・オルタの肉体の基本設計はジャンヌに準じている。

只の村娘であったジャンヌにだ。

故に才能はない。初期ペルソナのフルンティングもスキルカードで調整入れる前は本当に役立たずだった。

だから必死に模索し、必死になって考えた武を磨き上げて今の彼女があるのだ。

才能も能力もなかった。だが戦わねばならなかった。

必死に努力するのは当たり前、血塗れになるのも当たり前という奴である。

才能の差というのは達哉も痛いほど分かる。

もうすでに達哉もマシュやオルガマリーに近接技能で抜かれつつあったからだ。

達哉が数年で会得したものを、この人理焼却が始まってから訓練して初めて覚えることになった二人に抜かれつつある。

宗矩からは我流の剣術の矯正と奥義にして基本技、十文字、合撃を叩き込まれ、

実戦レベルにようやく仕上げた。

後は柳生新陰流の本当の奥義たる魔剣を数本教えてもらっているが。

そこからは境地的な問題であり、上手く行ってはいない。

何方も才能はないのだ。それを実戦経験と執念の鍛錬で埋めているに過ぎない。

 

「敵第三波来るであります」

「またか」

「いい加減しつこいわねぇ」

 

アイギスの声に二人はうんざりした表情で返す。

どんだけ量産されたんだよという話である。

量産型アイギスは戦闘に必要なもの以外はオミットされペルソナ能力さえ使えない。

搭載しているパピヨンハートもこの空間で稼働可能なレベルの疑似的な物しか搭載しておらず。

はっきり言って三人の敵ではなかった。

先ほども描いたがこの程度ならグロス単位で押し寄せてきても問題はない。

 

「グライ、グライ、グライ、トラフーリ!!! 砕け死ね!!!」

「アポロ、コンセレイト!! マハラギダイン!!」

 

亜光速まで加速したジャンヌ・オルタが弾丸となり、

達哉の放った熱波と共に第三波を蹂躙する。

そしてようやく。

 

「たどり着いたであります」

 

マガジンを交換しながらアイギスは懐かしそうにつぶやく。

 

「ここがタルタロスか・・・具体的にはどんなタイプの迷宮なんだ?」

「不思議系ダンジョンゲームから不思議要素を抜いた迷宮ダンジョンね」

「不思議系ダンジョンゲームってなんだ・・・」

「達哉さん・・・せめて風来のシレンくらいは・・・」

「いや、しらん」

「「・・・」」

「どうしたんだ? 二人とも??」

 

ジャンヌ・オルタからアイギスは達哉の事を間接的に聞いている。

まさかここまで青春を犠牲にしているとは思ってもいなかったのである。

もっとも達哉からすればバイク弄りの方が楽しくてバイクに金突っ込んでいたという事実があるわけだが。

今はどうでもいい事だ。

 

「それでも気を引き締めていくわよ風花や美鶴のようなバックアップは今回いないのだから」

「そうでありますね」

「そうだな」

 

今回はバックアップが見込めない戦いだ。

達哉にとっては当たり前。

ジャンヌ・オルタにとっても当たり前であるが。

アイギスは慣れては居まいし。

達哉もジャンヌ・オルタも失敗は許されないのだ。

気を引き締めていくのは当然である。

タルタロスは生半可なダンジョンではないからだ。

三人は開かれた門をくぐる。

 

全てを終わらせるためにだ。

 

 





オーヴァードーズ
邪ンヌが達哉のリバース・イドの暴走状態を鎮圧できるとしていた根拠。
P4のイザナミ戦から使用できるようになった。
所謂、リバース・イドのプロトタイプシステムである。
原理はまんまCaligulaのオーバードーズ。
ただしプロトタイプシステムである為と本人の怒りが行き過ぎて一、二分しか持たない上に。
凄まじい負荷がかかる文字通りの最後の切り札でもある。
故にリソースも余裕もない第一特異点では使用されなかった。
仮に邪ンヌがジャンヌを殺した場合、リソースに余裕が出来るので達哉を殺すべく使用していたかもしれない。
その場合、各個撃破に持ち込みカルデアに勝利していた可能性が高い。



どうでもいい裏設定
邪ンヌはQシリーズには不参加です。
その時期ガチで季節外れのインフルで寝込んでました。
もしくはもう去った後です。

Qこの時空では邪ンヌがリーダーやってたの?
Aやってません、邪ンヌ自身リーダーやってるより戦闘員の方が楽なので理や悠や蓮にぶん投げてました。
もっとも裏を調べるために秘密裏に独断専行や調査はしていましたが。
代わりにメガテン4ではフリン達とのかかわりが薄かったのとか色々紆余曲折あってガイア教聖女派を率いていました。

P3では理によって巻き込まれたアイギスも邪ンヌも風花の殺人料理には引いた模様。
P4では邪ンヌはムドオンメンツにはさすがに切れてラリアットかましそうなのを悠と陽介と完二に羽交い絞めにされて未遂に終わりました。
あと邪ンヌの自炊に磨きが罹ったのはP5で佐倉家に居候していたのとルブランでバイトしていた為です。
故に邪ンヌP5では邪ンヌが双葉のメンタルケアとオカルト調査の為に初期から社会復帰と母を追い詰め殺した相手を邪ンヌと共に探してますので初期からジョーカーたちを接触してますし双葉は邪ンヌにダンジョン攻略と説得され最初期からペルソナ使えたりします。


あと次ですが日中に熱くなったり寒くなったりで鬱病が悪化したのと追撃で家族問題が再燃したのと生活習慣改善の為に遅れます。
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