Fate/Grand Order たっちゃんがグランドオーダーに挑むようです   作:這い寄る影

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過去から学び、今日のために生き、未来に対して希望をもつ。
大切なことは、何も疑問を持たない状態に陥らないことである。

アルバート・アインシュタイン


「過去から今に駆け上がる」

「やはりやり過ぎではないですかな?」

 

言峰がぼやく様にいう。

だがソファに深く腰掛けながらチェスの駒を進めるアルビノの青年の形を取ったニャルラトホテプはほほ笑みながら言う。

 

「難度調整はしっかりしたし大丈夫だよ」

 

ケラケラと嗤いながらだ。

ケイオスはフローレンスに信頼を寄せている。

彼女ならば大丈夫だと思っているがゆえにだ。

第一にだ。

 

「不公平じゃないか。オルガマリー一人だけが己の過去と向き合っていない」

 

達哉はその試練を終了させている。

マシュも突きつけられ見せられた。

その中で一人だけ明確に過去から目を背けている者がいる。

それがオルガマリーだ。

一人だけ二人に依存し過去から目を背けている。

それでは成長は見込めない。

だからニャルラトホテプは誘導し難度を調整した。

人は過去を見ることによって糧とするがゆえに。

否定という試練、試練という否定。

それが成り立つには過去を見なければならない。

故に魔術王と巌窟王がやらかす前提でこの特異点に放り込んだのだ。

 

「君だって過去と向き合って今がある、ちがう?」

「いいや違いませんな」

 

言峰とてニャルラトホテプに過去を見せられ真理を説かれたから今ここにあるのだ。

言峰綺礼という男は、生まれながらの破綻者だ。

最も、現実は生まれなんぞ選べず時代もまた選べない。

この男の不幸なところは。

それを吐き出せる相手も居なければ、理解して導いてくれる存在が居なかったということだろう。

人間、言葉にしなければ理解できない生き物だ。

そう言った意味では「愛している」の一言で済ませてしまった

彼の妻は盛大に間違っていたというべきか。

案の定、自戒に走ってしまった言峰を外面的な目で見れば赤と青を見分けるが如きにあきらかである。

ようは言葉足らずという悲劇に見舞われ、この男は引き返すという選択肢を失ってしまった。

もっと早くに指摘すれば、そこそこ不幸を楽しむ愉快犯的ではあるが人々を導ける聖人にされたには違いない。

傷を切開し効率良く蹂躙するということは、逆を言えば他者の傷を理解し、

適切な処置をできるという才能であるのだから。

 

がしかし先ほども言ったように遅い。

自戒ゆえの自己啓発を怠り、周囲の認識を誤らせたことで手遅れである。

故に影はそれを逃さない。

 

ある日、言峰の前に現れたのは白のYシャツに紺色のスラックス、白のスニーカーと言ったいで立ちのアルビノで両目が黄金色の美青年だった。

当時は本性を現さず「槙島聖護」を名乗っていた存在である。

懺悔室で二人は出会い言葉を交わした。

最初は槙島がごく普通の悩みを言って。

それに在り来たりな神父的返答で返していた言峰であるが。

 

「ふむ、神父様、テンプレーションで返事をされては相談しに来たかいがないのだけれど」

「・・・いえ自分にはそれが精一杯でして・・・」

「聖職者失格だね、アナタは・・・」

「・・・」

 

槙島の苦情にそう返した途端。

言峰は怖気を感じ取った。

聖職者失格と言われる前に獣に捕食されかかる怖気の様な。

あるいは迫りくる津波を前にしたような怖気を感じて。

臨戦態勢を整える。

懐で握り込むのは黒鍵とよばれる。代行者と呼ばれる役職が愛用する概念武装だ。

だが時すでに遅しとはこのことか。

槙島が様々な書物から引用をしつつ巧みに、言峰の心を解体していく。

気付けば懺悔室の構図は逆転していた。

言峰が槙島の懺悔を聞くのではなく。

槙島が言峰の懺悔を聞いているという構図に逆転していたのである。

 

 

「そもそも君は盛大に勘違いをしているよ、憎悪の反対は愛ではない、興味がないのならそも通りすがるだけだろう? 人の愛の形もそれぞれだ。痛めつけることで愛を示す、痛めつけられることで愛を感じるという人は歴史上にたくさん存在する、だから安心すると良い」

 

―君は最後に自分の手で妻を殺してやりたかった。それは妻の死ですら自分のモノにしたいという欲求だ。故に確かに君は最後の最後まで君自身の妻を愛していた。心の奥底から―

 

「だが・・・私は」

 

そう言われても当時の言峰にとっては冒涜そのものだった。

当たり前だ。いくら人格が破たんしているとはいえ。

当時の彼は敬虔な聖職者であるからである。

 

「役職にこだわりすぎだね、だから見える者も見えない。そんな視界では自分自身に問うて自己分析しようとしても大概の人間は自分自身を俯瞰的に見るのは不可能に近い。どこかで絶対に甘える」

「そんなことはない!!」

「では聞くけど、自分は異常者だと自覚しているのに、君はなぜ。病院にいかない? 僕に話すよりも十分に有意義な結果を得られるよ。自分は異常だと思って隠し続けるより専門家に聞いてもらった方が健全だろう?」

「それは・・・」

「まぁ、魔術師とか代行者とか。面倒くさい理由はあるのかもしれないけれど、主の教え的には不健康をそのままにしておく方が背徳行為そのものだろうに・・・」

「ッ・・・」

 

槙島の表情は穏やかな笑みだ。

だが目の奥底では明らかに言峰を嘲笑している。

 

―お前は教えや主が望まぬからと自分自身に言い訳をして逃げているだけの臆病者だ―

 

その時である、言峰の脳裏に紡がれる言葉は。

 

「違う!」

 

その幻聴に拒絶するかのように叫ぶが。

 

「何が違うのかな? ”自分自身の価値観を持って生きるということは嫌われて当然の事だ” 岡本太郎の言葉だったかな?

人は価値観をぶつけ合い共有して生きて進む生き物だ。

当然生きているだけで嫌われるとはごく普通の事で。

君は父に嫌われたくないから、師に軽蔑されたくないから、妻の愛を知るのが怖かったから。

こんなにも自分が慕う者たちが自分が異端者だと知った瞬間に離れていくことに我慢できず、君はその在り様に蓋をして目を背けて無いことにして周りをだまして生きてきた」

 

槙島は表情一つ変えず幻聴の言葉と似たようなニュアンスかつ長文にしたかのように偉人の言葉まで引っ張り出して。

言峰に淡々と事実を突きつけていく。

 

「そして君は人の不幸に愉悦を感じると言ったけれど。それは常人だってそうじゃないかな。

ほら他人の不幸は蜜の味っていうだろう?

こんな言葉が生まれるんだから人間自体は君のように我慢できる高尚な生物じゃないという証明だね?

逃げはしたけれど他者よりはマシじゃないかな?

でもまぁ傷を切開し効率良く蹂躙するということは、逆を言えば他者の傷を理解し、適切な処置をできるという才能であるのだから。

君の場合に逃げに逃げすぎて、救う手立てを失っている」

 

槙島は言う。

人間上等な生物ではない。故に我慢できる君は高尚な部類であると。

しかし逃げに逃げて他人を救える才能から目を背けたのはいただけないと批評する。

 

「メンタリスト、聖職者から教師の誰もが望む才能だ。心の裡を限定的だけれど読めるということだからね・・・、それはそのうちのどれかが望むくらいには・・・」

「・・・私は」

 

―私は人を救えたのか?―

 

言峰は今まで自分は人を救える人間だとは思っていなかった。

代行者なんて仕事をしていれば当然であろう。

だが槙島の言葉の通りなら。

他人の不幸に愉悦を感じ取るというところを我慢すれば。

人の心を救えるこれ以上にない才能であるということになる。

故に言峰は絶望した。

自分は人を救えたのにと。

それなのに規範から逸れた異端者扱いされ。父が師が妻が離れていくことに我慢できずに目を背け続けて。

何もしてこなかったという事実に打ちのめされる。

 

「うん、救えたんじゃないかな」

 

槙島もそれを肯定した。

 

「君が事実に目を背けず。自己を肯定し才能を有意義に使えば、代行者で人殺しをやっていった時よりも多くの人を救えただろうさ。”誰も傷つけず、誰かを救えただろうね”」

 

聖人のように槙島は微笑んで宣託を告げるイエスの如く。

断罪の言葉を言峰に向かって振り下ろした。

 

「はっ・・・」

 

言峰は呆然と佇んで。

 

 

「ハハハハハハハハハハハハハ!!」

 

 

壊れた機械のように嗤った。

嗤うほかなかった。

妻を愛していたという悩みは一般常識からすれば愛していた。むしろ独占欲が強い部類で終わり。

生来の歪みも使いようさえ間違えなければ。妥協するポイントさえ間違わなければ大勢の人の心を癒し救えたというのだ。

宗教の概念に囚われ。親しい誰かに嫌われるのが嫌で。

故に目を背け自分に言い訳をして逃げていたことに気付かされる。

 

 

 

何もかも間違えていたのだと。

 

 

最初の一歩から間違えているというのに道化師の如く踊り狂っていたに過ぎないのだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

故に

 

 

 

 

 

 

「嗚呼・・・」

 

 

 

 

 

星見の戦士たちが足掻く、血反吐を吐き苦悶を口にして尚をも進む彼らが眩しすぎて。

嗚呼、だからこそ

 

 

 

 

 

 

 

 

だからこそ。

武器を持ち換えた。

より相手の手を潰しより確実に脅威になるために。

彼らが自分を乗り越えて行く未来を見て思いたいと思ったのだ。

それが今現在の言峰の在り方である。

そしてチェスの駒を動かそうとして。

 

「ああ?」

 

言峰は自身が既にチェックメイトされることに気づいた。

その時である、言峰の懐のスマートフォンが鳴った。

 

「こっちもどうやら始まったみたいですな」

「いってらっしゃい」

 

全ては同時進行だ。異聞帯、監獄塔、特異点。

そのうちの一つである特異点を言峰は担当している。

言峰は相手をおちょくる気なのか、ウィッグを装着し服装まで普段の神父服とは違う物を着用し部屋を出ていった

その様子をニャルラトホテプはほほ笑みつつ見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オルガマリーの過去はある意味達哉の孤独と一緒だ。

誰にも見て貰えず。

孤独な幼少期を過ごしてきた。

其処から抜け出せば魔術という必死で鍛錬した分野では自分よりも一枚二枚上手を行く人物がいた。

即ち、キリシュタリア・ヴォ―ダイム、オフェリア・ファムルソローネ、デイビット・ゼム・ヴォイドの三人だ。

特にキリシュタリアは父であるマリスビリーに眼を掛けられていた。

直系の子の自分よりもだ。

だから父が死んでカルデアの跡継ぎに自動的になった時に何にもかも嫌になりだしたのはその時期でもある。

レフの爆破で死んだ従業員は陰口も叩く事さえ厭わなかった故にだ。

そこで夢は終わる。

所詮は記憶の一部。シャドウも、もしかしたらというIFの存在でしかない。

だがそうはならなかった。

顔面にノイズが走ってはいるが。誰かが、あの二人が助けてくれたのだと覚えている。

だからそうはならなかった。

あった過去を受け止めて、ただそうある。

これがそうあるべきことにどれほどの難しさがあるのか。

それでもそれであるが故、彼女は立ち上がった。

それと同時に意識が浮上。

フローレンスが唇の端から血が出るほど噛みしめながら祈るようにオルガマリーの右手を握っていた。

そしてエドモンは驚愕した目でオルガマリーを見ている。

 

「フローレンス?」

「ああ、よかった・・・よかったですオルガマリー、一時期死ぬほど体熱が上がったんですよ」

「うっそ・・・」

 

オルガマリーの体温は一時期危険領域にまで達していた。

そりゃフローレンスも心配すると言うものだ。

逆にエドモンは失敗するだろうなと思っていた。

土壌がなく、いきなり過去のきっつい根っこの部分をインストールされて平気な人間はいないと。

だがオルガマリーは乗り越えた。独力で消えたとしても根っこの部分で残っている思い出を頼りに。

何という意思だろうとエドモンは驚愕しつつ内心賛辞を送っていた。

 

「喉がカラカラ・・・飲み物とかない?」

「すまないが此処は監獄塔、そんなものはない」

「あれば体温上昇に対応できたんですがね・・・」

「無茶言うな!」

 

オルガマリーは飲み物を要求する。

当たり前だ。死ぬ寸前まで体温が上昇したのだ。

寝汗も凄まじく水分補給がしたくなるのは当たり前のことである。

案の定、捻れば飲み水が出てくる蛇口なんてものはこの監獄塔にはなく。

それに対し嫌味を漏らすフローレンスに対して無茶を言うなと憤るエドモンであった。

 

「それならしょうがないわね」

 

生唾を数度飲んで無理やり舌と喉の渇きを潤す。

このままだと自分、水分不足で死ぬんじゃないかとオルガマリーは思ったが。

 

「安心しろ、水分不足程度では死なん、なんせ今のオマエは精神体だからな、半受肉した英霊と変わらん」

「体温上昇で死にかけたんだけど?」

「それはどちらかというと精神面の方が大きいらしいですよ、この男に言わせると」

「そうなの?」

 

精神が崩壊しかかり半受肉状態の肉体に異様な負荷がかかったからこそ死にかけたという事である。

朧気な思い出頼りに記憶なしでシャドウを受け入れるというのはそれだけ負担がかかるのだ。

 

「だが今度からはそうはなるまい、お前は試練を乗り越え原初の記憶を取り戻したのだから」

 

愉快気にエドモンは唇を釣り上げながら笑う。

フローレンスは不服そうだが、原初の記憶を取り戻したことによって。

次以降はこういう事はないだろうとの話だった。

そしてオルガマリーは感じる。

この監獄塔、残り六体のシャドウの波動を。

記憶が多少戻ったためか、シャドウの存在を感じ取れるようになった。

 

「じゃ、次行きましょうか・・・」

「そうですね、設備がない以上、進むしかありません」

 

フローレンスはオルガマリーの言葉に同意する。

設備や補給物資があればまだ寝かせて居たかったが。

無い物ねだりは出来ない。

長引かせると碌なことにはならない。

故に精神安定剤なしでの精神的治療が必要になることにフローレンスは臍を噛むような思いだった。

 

「もう裁きの間ではなく試練の間だな、次は色欲の間となるが・・・」

「碌なことにならさなそうですね」

 

聞いただけで女性の敵が控えている。

或いはオルガマリーの秘めた恋心やら欲情の化身が居るという事だ。

 

「次は女の情欲ですよ・・・ある意味生々しい」

「それは俺も承知しているとも」

 

フローレンスの言う通り、次は生々しい話になる。

ぶっちゃけフローレンス的にはエドモンを関わらせたくなかった。

これは女の話だ。

押し負けた男がどうこう言う話ではないし見たって毒だ。

更に言えば余計な口を挟みこまれるとなると余計に事態が拗れかねない。

だが戦力にはなる。

ペルソナ使いとして感じ取れるのだ。

次のシャドウはもっと強力なものになっていると。

オルガマリーの記憶が戻る都度に影は深くなる。

ここに来たときは消えかけていた思い出に縋る余地しかなかったが。

逆に言えば本来のオルガマリーに戻れば戻る程。影の昏さも増大しシャドウはより凶悪になっていくという方式だ。

加えてここは監獄塔。

エドモンの宝具で試練を乗り越えれば精神的に成長するが故に。

反比例して影も濃くなり段階を踏めば踏むほど影も濃くなりシャドウもまた強化されるのだとオルガマリーは今までの情報から推察する。

それを二人に伝えると。

 

「なんでこんな厄介なものを・・・」

「いや、でなければ試練に」

「アナタがこんな余計な物を作らなければこんなことにはならなかったでしょうが!!」

 

フローレンスは額に青筋立ててまくし立てるが。

もしもエドモンが監獄塔仕立て上げなかったらというIFでの話になるが。

それはそれでマシュの方にも飛び火する設計だったのは言うまでもない。

ニャルラトホテプの布陣は万全だ。成功しようが失敗しようがそれはそれで美味しい様に仕込んでいるのである。

もっともそのことを三人は知る由もないわけであるが。

 

「・・・兎に角、次はこうならないように私も頑張ります。ですが・・・」

「どうした? フローレンス」

「いえ、こういう時に私のペルソナに回復スキルが無いのは本当に使えないと我ながらに思ってしまいまして」

 

フローレンスのペルソナであるベリアルは攻撃特化型だ。

状態異常スキルが二つあるだけで後は全て攻撃スキルである。

一見、ベリアルなんてペルソナはフローレンスには合わないような気がしないでもないが。

幼少期の境遇のせいで自分は無価値だったのではないかという影を徹底した性格ゆえに影として生み出しペルソナとして成してしまったという訳である。

 

「まぁ今更の話です、先に進みましょう、でなくば治療も出来ませんし」

 

という訳で第二の裁きの間へと面々は向かった。

案の定扉越しに戦闘音が響いている。

ファントムと違い中には試練として戦闘型のサーヴァントとオルガマリーシャドウが交戦しているのだろう。

 

「行きますよ!!」

 

一応念のため、退路確保の為にフローレンスは短銃を扉の鍵口を破壊。

オルガマリーと共にけ破るとそこには。

 

オルガマリーシャドウと騎乗槍の様な大剣を持った大男が戦っていた。

 

「抱かせろ!!」

「嫌よ、アンタみたいな品のない男に」

 

監獄塔の間の影響か情欲にたっぷり支配された大男はバーサーカーのように暴れ狂うが。

オルガマリーシャドウは心底ウンザリした様子で回避していく。

 

「ああようやく来たようねもう一人の私」

 

そして気づく。オルガマリーが来たことに。

大男もオルガマリー達の方を向いた。

そして・・・

 

「いい女だ」

 

大男の視線がフローレンスをロックオンする。

来ると誰もが身構えそして、

 

「アナタは病気です」

 

俊足の速さでフローレンスに標的を変えるものの、

 

「強制切除を開始します。ベリアル、無価値の炎」

 

黒炎を身に纏ったベリアルの大剣が大男の頭上に振り下ろされ床ごと陥没させた。

 

「がぁあああああああ!? なんだこれは!?」

 

それでも大男は生きてはいたが纏った炎は消えず霊基を腐滅させ問答無用で滅殺する上に。

ベリアルの剛力で振るわれた剣に抑え込まれそのまま消滅させられた。

魂すらも腐食させる炎は当たればその時点でアウトだ。

対抗策はそれこそ英雄王しか持っていないだろう。

 

「今はアナタに構ってる暇は在りませんので・・・それでオルガマリー」

 

フローレンスは横に眼をやった。

オルガマリーへとだ。

彼女は両肩を抱えて震えていた。

 

「ア・・・ア・・・」

「まさか!?」

「そのまさかよフローレンス。私を逆流させたの」

 

オルガマリーシャドウはそう言って嘲笑う。

そう、ニャルラトホテプがカルデアトリオに眼を突けていない筈がないのだ。

シャドウの受け入れはより悪辣な物へと変貌する。

記憶喪失状態なら受け入れられる。

逆に言えば記憶喪失状態で無いなら自我が邪魔をして受け入れられない。

そういう類の悪辣なトラップだった。

今、オルガマリーシャドウは自分が持つ記憶を逆流させ自分を拒絶させる土壌を作ったのだ。

 

「どう思い出した? 心の奥底では二人を抱かれ抱きたがっていることに」

 

色欲とはそう言う物である。

目を背けていたことの一つ。”吊り橋効果だから二人に好意を寄せているだけ”

あるいは”二人に依存したくない荷物を負わせたくない”という思想からくる。

真実、二人が欲しい抱きたい抱かれたいという欲求だ。

 

「あの温かさを一人いじめにしたい」

 

手を握ってくれた達哉。初めて友になってくれたマシュ。

二人を抱きたい抱かれたい。一生自分の傍において愛されたいという欲求。

 

「鳥籠の中に入れて必要な時に抱いて抱かれていたいずっと私を抱きしめて欲しい」

「違う・・・」

「何が違うの? タツヤは交友関係広いわよねぇ、そう言えば英語の勉強、セレシェイラに教えてもらっていたわよね? 彼?」

「・・・」

 

達哉とて全てが終わった後の事を考えていない訳ではない。

今のオルガマリーは覚えていないが。二人をアニムスフィア家で引き取るという約束をしていた。

デザインドチルドレンのマシュは英語くらいぺらぺらであるが達哉はそうではなく。

全てが終わったらイギリス生活だ。

英語を読み喋れるように図書館で自己勉強していた。

それでも我流では喋れるようにならない。

優れた教師が必要である。オルガマリーは所長業で忙しいし。マシュも教えられるほどの知識が無かった。

故に見かねたセレシェイラと孔明が教鞭を振るっていたのだが。

オルガマリーが見た日は孔明も別方面で忙しくセレシェイラとマンツーマンレッスンをしていた日の事だった。

其処に嫉妬と情欲が芽生えないとなれば嘘になる。

だが目をそらした。都合の良い理由付けを並べて己を誤魔化した。

 

「彼女に奪われると思った?」

「違う」

「マシュもそうよね?」

「なにが?」

「男性職員やタツヤとの交友がドンドン広くなってい行くことにね? いずれ自分の手から出て行くのではないかと恐れている」

 

マシュも成長している交友関係を深めている。

故に自分から何れ目を背けてしまうのではないかと思ってしまう。

 

「違う!」

「何が違うのかしら? だって恋愛感情なんて各々の答えだものねぇ? もう一人の私」

 

そう言ってせせら笑うシャドウ。

大人二人は口を挟めなかった。

まずフローレンス、真面な恋愛経験どころかそも経験すらない鉄壁女。

エドモン、恋愛経験はあるがまさかのシャドウによる二股上等&オルガマリー両刀疑惑に困惑中&やっぱ女の情念って怖いと自分で場を作って置いて戦慄していた。

 

「ど、どうしましょう」

「俺に聞くな!!」

 

これにはフローレンスも面を喰らった。先ほども言った通り鉄壁女だったのである。

幼少期だって淑女教育という名のモンペ被害に会っておりこういうことに耐性が無い。

エドモンは過去的に耐性はあるが、二股上等&両刀発現にどうすればいいのか分からない。

これがニャルラトホテプの手段だ。

周囲に周りがいる状況でフォローも出来ないようにシャドウを呼び出すのである。

他人がいるというだけで反論の余地を封じ込めるという誘導だ。

やばいと思っても手が出せない。

此処にクー・フーリン当たりか正気なフェルグス当たりがいてくれれば話は違うのかもしれないが。

いまフェルグスは正気を失いフローレンスに滅殺され、クー・フーリンは医療用ポットの中だ。

最悪の状況である。

 

「二人とも欲しい癖に!!」

「違う!! 私は二人を友人として「そうやってまた逃げる」うるさい!」

 

ここに来て二人の男女関係が純粋であったことに災いが生じた。

 

「お前なんか私じゃない!!」

 

そして言ってしまう。それが当たり前。

自身の化身すらも利用する配役、伊達に本体を気取っている訳ではないのである。

 

「あはははははは!! 我は影、真なる我!! 来たれ、パインズ!!」

 

シャドウは嘲笑い。

姿を変貌させる真紅の衣を身に纏った銃器で構成された幾何学的人型へと変貌を遂げる。

オルガマリーシャドウパインズにだ。

今回は流石にオルガマリーも頭を片手で抑えている。

キッツいのは本人だ。

 

「こうなれば力ずくしかない訳だな」

 

エドモンは呻くように言う。

そうこうなれば力ずくでしかない。

記憶の逆流は今終わっている。

本当にタイミングが悪い。

今の状況であれば大人しく受け入れられたというのに。

 

「大丈夫ですか?」

「まだ完全には思い出せていないけれどね」

 

二人の顔は思い出したし、切っ掛けも思い出した。

だが好意に至る過程をすっ飛ばしている状態である。

故に思考がごちゃついている。まだシャドウを受け止める整理がついていない。

 

「時間を稼ぎます、オルガマリーは下がっていてください」

「でも、フローレンス」

「そんな状態では戦闘どころじゃないでしょう」

 

オルガマリーの状態は万全とは言えない。

前の時ほどではないが頭痛が酷かった。

一瞬の隙が物を言うのが戦闘だ。

頭痛で隙を晒せば世話が無い。

だから先ほどフォローできなかった詫びも込めてフローレンスはオルガマリーを下げる。

エドモンもそれに静かに頷いた。

 

『邪魔するなぁ!! デモリッションショット!!』

 

体を構成する銃器から無数の銃弾が射出される。

それは一見四方八方に適当にバラまかれているようにも思えるが。

 

「うっぐっっ!? ベリアル!!!」

「フローレンス!?」

 

咄嗟に抱え込むようにしてフローレンスがオルガマリーを抱え込み。カバーできない部分をベリアルで補う。

無数の銃弾は壁や床に天井、或いは空中で銃弾同士がかち合い跳弾しオールレンジ攻撃を行う。

狙われたのはエドモンやフローレンスではなくオルガマリーだった。

咄嗟に庇える位置に居たのが偶々フローレンスだけだったのだ。

銃弾が10発程度着弾、耐性あり&サーヴァントの身である為、人間より頑丈だから耐えられた。

だがまだ銃撃は続く。

今度は二人を守るべくエドモンが黒炎を噴射しドーム状の結界を形成し全方位からくる弾幕を防ぎきる。

 

「うっぐ・・・」

「まってフローレンス、今治療するから」

「出来るのですか?」

「なんとかね・・・、ピクシー、ディアラマ!!」

 

初期に抱え込んでいたペルソナは嫉妬のシャドウを受け入れたことで戻ってきている。

逆に言えば今まで調整に調整を重ねてきた選りすぐりのペルソナやシュレディンガーは戻ってきてない訳だが。

最初期にスキルカードで調整したペルソナは戻ってきていた。

故に最初期で精神値的に無理をしてでも使えるようにしておいたピクシーが此処で生きる。

それはフローレンスの弾痕から銃弾を排出させ霊基を癒す。

 

「長くは持たないぞ! もう何千発と撃ち込まれている!!」

 

凄まじい銃撃音。

もう何千発と撃ち込まれ。

エドモンも炎を展開するのに限界が来ていた。

現に弾薬が炎を抜け始めている。

であるなら。

 

「強行突破しかないでしょうよ、エドモンが攪乱してフローレンスが抉じ開けて私が仕留めるわ」

「ですが「もう頭痛は止んだから大丈夫よフローレンス」分かりました」

 

ここは然しものフローレンスもオルガマリーに従う。

フローレンスは自己発現型だ。

英霊云々抜きにしてもペルソナは原則一体。

後期の方は宝具化されているので。英霊でありながら初期型と後期型を使える希少な例だが。

宝具化しているという事は長期展開できないという事だ。

あとが続かない。

故に今切るべき札ではないのだ。というか切るに切れない札だ。

前程が魔力切れの自爆すらあり得るがゆえにだ。

 

「行くわよ」

 

オルガマリーがリペアラーを引き抜き構える。

フローレンスは短銃を、エドモンは炎を身に纏い準備する。

 

「GO!!」

 

その号令と共に一斉に攻撃に転じた。

 

「我が往くは恩讐の彼方――虎よ、煌々と燃え盛れ(アンフェル・シャトー・ディフ)!」

 

エドモンは時止めからの一斉オールレンジ攻撃を叩き込み。

生物のように唸る銃弾の雨霰を薙ぎ払いつつシャドウにも攻撃を叩きこむ。

 

『がぁぁあああ!! 邪魔「失礼します。ベリアル、ブレイブザッパー!!」!?』

 

跳躍したフローレンスが背後からベリアルを呼び出し渾身の一撃を振り下ろす。

それを両腕を交差し防ぐシャドウ。

銃器の間から漏れる瞳の光りがニタリと形成され、銃口を一斉に向ける。

しかし、

 

「ラプラス、コウハザン!!」

 

ラプラスの大鎌による一撃がシャドウの胴を薙ぎ払い、フローレンスのベリアルの一撃が押し込まれ。

再度展開したエドモンの宝具による多角攻撃が叩き込まれて。

シャドウは沈黙した。

 

「なんで・・・私は二人を愛したいだけなのに」

 

倒れたシャドウがそう呟く。

ただ愛されたかった愛したかっただけなのにと。

 

「ええ、私もそう思っていると思う。まだ記憶は完全じゃないけれど、言い訳して自分の欲求から目をそらしていたんだと思う」

「ならアナタはこれからどうするの?」

「答えは決まっている、二人を引き取って静かに暮らすのよ。大好きな二人と一緒に」

「そう・・・」

「だからアナタは私、私はアナタなのね、きっと」

 

約束を思い出した。

それが二人への好意に繋がり、ある意味色欲に塗れている物だったとしても。

その好意は代えられないがゆえに。

 

「だが忘れないで影はずっと見ている。銃口は常に向け淹れられていると知りなさい」

「・・・わかったわ。だから帰って来て私。まだ顔にモザイクかけっぱなしでイラつくから」

 

そう言うとシャドウは漆黒に濡れて四散しオルガマリーに殺到して。

記憶の一つを完全に思い出させた。

相変わらず痛いが耐えられないほどじゃない。

心配したフローレンスとエドモンが駆け寄ってくる。

だがしかし、

 

「大丈夫ですか?! オルガマリー!!」

「大丈夫・・・ 逆流してきた記憶もほんの一部だったのね・・・」

 

そう言いつつオルガマリーは右手でフローレンスを止めて大丈夫という。

冷や汗を拭いながらもその足取りはしっかりとしていた。

前の様な事にはならなかった。

 

「次、行きましょう」

「それには賛同しますが、今は休みましょう」

「でも「でもも糸瓜もありません、重病人であることを自覚してください」分かったわ」

 

そこから少し休憩し。

次の間へと向かう。

記憶が戻ってきた影響かオルガマリーも悪霊程度では動じなくなってきた。

むしろ弾薬の心配までしていた。

次の怠惰の間へと一行は到着する。色欲の間同様に扉を蹴り破るが。

 

「意味なんてあるのでしょうか・・・」

 

其処にはギョロメの男が蹲っていった。

同時に精神汚染系の波動が生じる。

オルガマリーは急いで精神無効のペルソナに切り替えて。

フルーレンスは不快そうに顔を顰めて、エドモンはそもそも忘却補正故に汚染されず。

場の中央を見た。

そこには膝を抱えてぶつぶつとなにかを言っているシャドウがいた。

そこが精神汚染を発生させる霧の発生源となっているらしい。

 

「ああ来たのね。もう一人の私」

「ええ来たわよ。もう一人の私」

 

ギョロメ男は試練の間のサーヴァントだったので。

動けないうちにフローレンスがベリアルの無価値の炎で止めを刺しておいた。

シャドウも動く気もなく殺気もないため。

オルガマリーはシャドウに容易く近づけた。

今度は何があっても良い様にペルソナをスタンバイさせておく。

 

「あのさぁ。なんでアンタ戦ってるの?」

 

シャドウはそんなことを言い出した。

 

「何でって人理を取り戻して三人で穏やかな生活を「でもそれって手段選ばなければ簡単になせるわよね?」なにをいって」

「だって世界はあやふや状態、レイシフト用のコフィンに細工をすればタツヤやマシュの二人くらいなら連れてこの世界から脱出できる」

「ッ」

「一々こんなくっだらないことに付き合ってさぁ、傷ついて血反吐吐いてマラソンなんかしなくてもいいわよね~」

「それは「それには同意です」フローレンス?!」

 

まさかのフローレンスが同意する。

これにはオルガマリーもエドモンも驚愕の視線を送るが、あえてフローレンスは無視して。

両方のオルガマリーを諭すように言う。

 

「正しさや追い込まれた境遇で足掻ききることは辛いことです、ええ普段であれば私の様な極めつけの阿呆がやる事でしょう。だから逃げてもいいと思うのですよ、自ら進んでやることは先ほども言ったとおり極めつけの阿呆の所業ですから」

 

フローレンス自身自覚している。涙を明日の笑顔に変えるのだと決心して突き進んだ鋼の看護師。

光の奴隷、あるいは亡者、あるいは殉教者。

故に精神構造自体が違うのだからそこは一般人と比較すべきではないと。

 

「逃げること自体は悪くはありません、過去を振り返るいい機会です、休むことも悪ではない、でなくば只人は旅路には耐えられない・・・何度も言いますが走り続けられるのは極めつけの阿呆だけです。だからオルガマリー、シャドウの言っていることは極端な反例です。あなた自身逃げたいと思っているのは事実ですが、極端にゆがめられたカリカチュアなのです。レイシフト装置でしたっけ? それを座標なく弄って逃げれるほど便利じゃないと私は思いますが?」

「だったらどうすればいいのよ? もう私は御免なのよ、ひたすら平穏に生きたいという夢さえ潰された私の夢は!!」

「だから進むしかない、ですがアナタは一人じゃない筈です、そしてあなた含めて三人だけでもない」

「大勢いてこの様よ!!」

 

フローレンスはシャドウを諭すように言うが。大勢いてこの様だったんだという。

第四はそれだけ悲惨なことになったのだから。

 

「部外者に言う権利は在りませんがね。ですが治療の為、あえて言わせてもらいます。たとえ奇麗事だとしても、脅しだとしてもです。アナタが戦いをやめても残された人たちはまだ足掻くでしょう。そう言う二人だからこそアナタは救われたのでは?」

「そうだけれど・・・もう二人に戦ってほしくない、カルデアの皆と普遍的な世をすごしたい」

「それでも今は戦わなければなりません、辛いことだと承知しています。だからもっともっと周りを頼りなさい、自分だけではない、先ほどは無様を晒しましたが私も協力しますから」

 

フローレンスの説得に応じ、オルガマリーとシャドウの境界線が揺らぎ、記憶の逆流が引き起ってくる。

カルデアでの穏やかな日常、友に刺された記憶、特異点でどんちゃん騒ぎした記憶など。

 

「・・・うん、そうよもう一人の私、私はアナタを否定しない」

「もう一人の私?」

「初めっからだったもの、魔術師の家系なんて生まれなければって。そうすれば楽しい青春やキャンパスライフ送って普通の企業とかに就職してとかさ、でも辛い状況だったからこそ二人に出会えた。それが辛い旅路であってもね・・・、あっちはこっちとそっちを立てればあっちが立たず。だから行きましょうもう一人の私、平穏な怠惰を手に入れるために今は走りましょう」

「・・・そう決めたのねもう一人の私、なら私は私に帰るわ、でも忘れない事ね。怠惰を求める影は常に見ている」

「わかっているわ」

 

そう言って今度は穏やかにシャドウがオルガマリーの中へと戻っていく。

オルガマリーにも疲弊の様子はなかった。

 

「ありがとうフローレンス、私ともう一人の私を説得してくれて」

「いいえ、お気にせずそれがお役目なので」

「そう」

 

そう言って次の階に進む。

 

「次は憤怒の間だ。そう簡単、まてフローレンスよ、腕をぐりぐりと回すな」

「またやらかしそうだったので」

 

次は憤怒の間であることをご機嫌に紹介しそうだったので。

プロレスのラリアットの前のように片腕をぐるぐると回転させラリアットをかまそうとしていたフローレンスの様子にエドモン冷や汗掻いて制止させる。

まるで奥さんに頭の上がらぬ亭主の様だなぁとオルガマリーは思っていた。

その漫才を横目で流しながらリペアラーの弾薬チェック。

弾数は減っておらず一応、カルデアからの転送術式は生きているみたいであった。

そう言う事で、相も変わらずのブリーチングである。

 

「前々から気になっていたのだが扉に恨みでもあるのかね」

「マシュの言っていた事よ、閉じ込められては溜まったもんじゃないから、戦闘中は扉は基本的に壊してるのよウチじゃ」

「・・・そうか」

 

そんなやり取りをしつつ全員が突入する。

今度はシャドウがおらず。逆に先ほどの男を騎士みたくした男が立っていた。

 

「もう一人の私は狂気と共にあり怠惰に沈んだようですが、この私は聖なる旗に集いし騎士! 聖なる刃の元であなたを断罪しましょう!!」

「・・・」

「おさえろフローレンス頼むから!」

 

何で監獄塔に召喚された連中はこうなのかと今にもキレそうなフローレンスを必死に抑えるエドモン。

 

「アンタに用はないわ。用があるのはもう一人の私よ、邪魔するなら」

 

オルガマリーもいい加減うんざりとしてきたのか、躊躇なくリペアラーとペルソナを構える。

 

「待ってください!!」

 

その時であるジル・ド・レェの影から旗を持った女性が出てくる。

 

「ジャンヌ?」

「そうです! ジャンヌ・ダルクです!! 私はそこの男のたくらみを止めるためここに来ました。あとあなたも救うためです!!」

「クハハハ、そうきたか!! 確かに憤怒の化身としてはこれ以上ないな!! お前は人間達に裏切られ無念の中炎に消えた聖女なのだから、そうだともお前こそこれ以上ないくらい個々の配役に相応しい者は「いいえアヴァンジャー、私には元々憤怒など存在しないのです」・・・はぁ?」

「何度も言う通り、私はアナタを止めるためとオルガマリーを助けるためにここに来ました。決して裁くためではありませんその意思も資格もない」

「ではどうするね?」

「救います、貴方もオルガマリーも」

「三人とも黙りなさい」

 

二人が問答を繰り返している内に遂にフローレンスが動いた。

俊足の足捌きでエドモンの背後から首を狙ってラリアットをかまし地面に叩き伏せさせた。

そのままジャンヌにつかつかとフローレンスは近づいていき。

それを止めに入ろうとしたジル・ド・レェに目つぶし食らわせ。

 

「あの・・・あの・・・なんですか!?」

「・・・彼女はアナタが救えなかった誰かの代用品ではない」

「え?」

 

そしてラリアット。

無論直撃だ。

同時に二人の襟首掴んでオルガマリーの隣まで離脱する。

 

「良いですか? 聖女殿、今アナタがオルガマリーに向ける視線は懇願です」

「え?」

「自覚症状なしですか、今オルガマリーの地雷を踏みましたよ。アナタは・・・ いったい過去に何をしたのですか?」

「なにをって」

 

ジャンヌがオルガマリーに向ける視線は罪人が許しを請うような視線だった。

罪悪感マシマシという奴である。だって彼女は第一特異点で選べず、彼を周防達哉を殺しかけた。

その罪悪感が残っている。普段ならそうはならないが。

ペルソナ使いが居る場合はちゃんと記憶を保持したまま召喚される、試練の一環として。

故に代償行為として救えなかった達哉の代わりにオルガマリーを救おうとしている感が否めなかった。

フローレンスはそう言う目を嫌というほど直視してきたのだから具体的に何かがあったのかは分からずともそう言う行為の為にジャンヌは今ここにいると直感で理解した。

そしてここは憤怒の間である。

居るシャドウの特性は怒りと推察でき。

その代償行為がオルガマリーの何かしらの地雷を踏んだことにもだ。

そしてそのフローレンスの感は当たる。離脱と同時にオルガマリーのシャドウが具現化した。

鬼神もビックリのレベルの鬼の形相だ。

恐らくではあるがジャンヌとジル・ド・レェを引きずって即座に離脱せねば殺しているであろう殺気だ。

先ほどからベリアルが震えている。

だからフローレンスも無駄な問答に付き合わず二人を無力化し余計に煽らないようにエドモンも黙らせたのだ。

具現化したのは憤怒のオルガマリーのシャドウであり記憶である。

当然いの一番にジャンヌを殺しにかかるだろう。

フローレンスは分からなかったが。第一で達哉が死にかけた要因の一人なのだから。

 

「許さない」

「え?」

「お前のせいだ」

 

シャドウの口から呪詛のように怒りが漏らされ殺気がジャンヌに叩きつけられた。

理不尽には怒るのが人間だ。

そう、このオルガマリーのシャドウこそ間の守護者。

憤怒の化身が理不尽にオルガマリーと当事者であった者達への怒りをぶつけるのは当然の事だった。




巻いていきます。
叔父貴ですが普通に正気だったらオルガマリーシャドウ瞬殺してベリアル展開したフローレンスにも勝ててます。
ただし宝具使ったここのフローレンスにはリバース・イド持ち出さなきゃ無理ですけど。
伊達にクーフーリンの叔父やってないしね。
でも悲しいかなここは監獄塔、色で頭一杯になって判断力、感、技の冴え失ってしまったがゆえに逆に返り討ちに。第五特異点で活躍するのでファンの皆様方許して。
あと所長はたっちゃんも愛しますしマシュも同じくらいに愛しています。けれど二人の努力を勘違いしてしまったのが運の尽き。
術ジル毒にも薬にもならんのでオルガマリーシャドウに洗脳され動けないと自己嫌悪に嵌っているところにフローレンスが無上の介錯
コトミーが如何にしてニャルの使徒になったかのかいですた。

きっつい試練ではあるけれど、カルデアトリオの中で過去から意図的に目を背けてたのが所長だからちかたいね。
たっちゃんは一つずつゆっくりだけども過去を整理しているしマシュもなんだかんだで寿命以外の事は折り合いつけ始めてますしですからね。
キッチリ難度調整はされているし記憶も思い出していけば難度自動的に下がるんで。
実際には上に行けば上に行くほど傲慢の間以外は難度がドンドン下がっていく設計です。
もっとも憤怒の間でジャンヌとジルがやらかしたから、オルガマリーシャドウブチ切れ案件ですけどね。
第一で決断できなかったのがジャンヌ、余計なことして暴走したのがジルですからね。
ここからエドモンもフローレンスにド付き回されつつエンジンかかっていきます。
という訳でエドモンもフローレンスも居ますからクリアは可能だと思います。
次回は憤怒、暴食、強欲、傲慢やって監獄塔終われるといいなぁ(白目)


監獄塔終わったらコトミー本格始動、荒耶コスしてマシュとの戦いに赴きます。
荒耶も神取の様な状況ですが、マシュもレスバ強くなってるんで荒耶だとボコボコにされかねないため試練の駒としては使えないので。
かと言って神取出すとマシュがレスバと実力でボコボコにされかねないため。
代打、荒耶コスコトミー出撃ですね。


あと書き忘れていましたがリバース・イドには各々が得意とする属性の貫通スキル持ちです。
描写し忘れたんでここに書いておきます。




あと次回は年を超えると思うので、早いですが皆さん良いお年をー

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