Fate/Grand Order たっちゃんがグランドオーダーに挑むようです   作:這い寄る影

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二人の幸せを願うのは、とても当たり前のことじゃないか。

シルヴァリオ ヴェンデッタより抜粋。


境界螺旋太極 「オガワハイム 人理の盾 根絶の剣」 人理定礎C
「夢は続く」


一組の夫婦が街中をゆったりと歩いていく。

実に幸せそうな光景だ。

世界は不幸で溢れている反面、こういう幸福で溢れている側面もある。

そんな夫婦を遠方から双眼鏡で見ている存在が一人。

 

「わぁ・・・」

 

名を両義織という。

今見ている夫婦の片割れである「両義式」のかつて男性人格であった存在だ。

だが事故から式を庇い織は消滅した筈だったのだ。

暗黒に沈む意識、そんな水中に沈むような感覚の中で黒い腕に捕まれ気づけば必要最低限の知識と共にサーヴァントになり。

煙草を吸いつつ横に立つ男「パオフゥ」のサーヴァントとなっていた。

 

「いいのか? 会わなくて?」

「いいさこれで十分さ」

 

パオフゥの問いに織はそう答えた。

幹也と式、その二人が夫婦になり子供を設けてごく普通の幸せを送っている。

それでいい、それが織の夢だったから。

今更死人が出しゃばって茶々入れることではない。

例えあの輪に入れなくても二人の幸せを願った身としてはこれ以上ないくらい夢が叶ったのだ。

あの占いの婆さんが言った通り夢が続いている。

ならばこれ以上望むものはない、あの三人の平穏を守る。

聖杯戦争なんてもので穢させはしないと誓ったのだ。

 

「それにオレ要る? サーヴァントのほとんどおっさんが倒したじゃん」

「要るよ、フジガミだったか、あの時、軸を殺してくれなきゃ相打ちだったからな」

「そうかなぁ、回りきる前にドタマぶち抜いてたように見えるけど。どんだけ鍛えたら異能やら銃よりも早くコインを指で弾き出せるんだよ・・・」

「特訓だ。人間鍛えれば案外行けるもんだ」

 

なぜに異能とか銃よりも指弾出来るんだという織の疑問に対し。

パオフゥは苦虫を噛み潰したような表情でそう答えた。

元々は趣味だった物を復讐の為に練り上げた物だからだ。

 

「さて・・・終わらせるぞ」

「ああ、残るはアサシンの俺とあの不気味なマンションを不法占拠しているセイバーだもんな、それにこれ以上は式に感づかれる」

 

パオフゥの言葉に織が同意する。

今まで異変が起きているのだ。

式が感づく前に片づけてきたが、何年か前に倒壊したマンションが復活しているという情報が彼女の耳に入れば突入しかねない危うさがある。

そうなる前にマンションにいるセイバーと思わしき存在とそのマスターを倒さねばならない。

ちなみになんでセイバーと分かっているのかというと消去法である。

今まで倒したのがセイバーとアサシン以外だからだ。

アサシンは織なので除外するので残るはセイバーだけとなっている。

後拠点の割り出しだがそれはパオフゥがやった。元盗聴バスターであり現在はマンサーチャーなのだ。

街の噂の流れを洗えば不審点なんていくらでも割り出せる。

 

「では行くか」

「ああ、オガワハイムに」

 

ある意味、織にとっても式にとってもすべての因縁の始まりの地。

復活したオガワハイムへと二人は向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのころカルデア。

士気が下がっていた。

達哉のユニオギアスによってサーヴァント全員に重度の霊基損傷が確認されたのである。

無自覚に緩められていたのだ。つまり危うく結晶に変換されかけていたのである。

戻ってくるなり全員が修復ポット入りさせられた。

そして達哉及びオルガマリーは絶賛意識不明でベットの上である。

二人とも何度か脳波に異常がみられて医療班の気休めすら許さない状況だった。

マシュもメンタル状況がよろしい状況とは言えない。

それに第四を乗り越えてから喪失感に悩まされていた。

達哉やオルガマリーにサーヴァント達が重症で寝ていると言う事もあるが。

もっと根幹的なナニカが抜け落ちたような気がしてならなかったのだ。

 

「マシュ、エンジン回してくれ」

「はっはい!!」

 

そんなマシュを多少強引にだが趣味に付きあわせてメンタル回復を図っているのが保安部の皆だった。

他の部門は今は手が離せないので手が空いている保安部がそのメンタルケアに当たっている。

今はアマネの私物であるランエボ10のカスタムをマシュもツナギを着て手伝わされていた。

 

「やはりばらつくな」

「よくわかりますね・・・」

「まぁな、今回は峠向けのカスタムだから畑が違うし、やはり専門家には適わないよ。それでも機械いじりというのも楽しい物だろう?」

「はい、ですが素人の私なんかが手伝っていい物なんですか?」

「いいのさそれで、私も車が趣味になっての頃というものは自分で勝手やって派手にエンジンブローさせたものさ」

「えっ?!」

 

マシュにとってアマネというのは絶対兵士という印象があったミスをせず淡々と動く銃座のように敵を殺し。

必要とあれば眉一つ動かすことなく子供すら撃ち殺す。

故に自分の精神を機械化させているため趣味を持っていること自体が意外だったし。絶対にミスをしない判断力に優れた女傑だと思っていた。

そんな彼女が趣味でミスしていたなんて思ってもいなかった。

 

「当時の私はチューナーという物を信じていなくてね・・・連中はぼったくり商売の金食い虫だとばかり思い込んでいたからな」

 

苦笑しつつそう答える。当時は若かったなぁと思いながらだ。

 

「だからくだらない所で失敗しておけ、いい糧になるしそれが本番で失敗しない秘訣だ」

「アマネさん」

「今は気負うな、あの二人も何れ目を覚ますさ、それにアレはどうしようもない」

 

そしてアマネが次の言葉を紡ごうとしてアマネのバングルに緊急通信が入る。

 

「全く間が悪い、ああマシュも一緒だ着替えてからすぐに行く・・・なに? わかった・・・」

 

緊急通信にそう答え。アマネが溜息を吐く。

 

「マシュ、緊急事態だ。シャワー浴びて着替えてから管制室に来い」

「特異点ですか?」

「ああそうらしい・・・だがサーヴァントたちの修復は待てなくなった」

「どういう事です?」

「ロマニが精神だけレイシフトしたらしい。通信機能は持たされているのか特異点から救助申請が来た」

「ええ!?」

 

事態は切迫しつつあった。

マシュたちは急いでシャワーと着替えを済ませて管制室に向かう。

 

「ダヴィンチ、状況は?」

 

趣味に走っていた時とは打って変わって鉄仮面に戻ったアマネがダヴィンチに問う。

 

「ちゃんを付けてくれ給えよ。特異点の観測は2時間前、日本の観布子市という地方都市で人理定礎はCそこいら、緊急性はないと当初は思っていたが一時間前にロマニがぶっ倒れた。当初は過労かとも思われていたがそこから30分後に特異点から緊急救命通信が届きロマニだと判明したってわけさ」

「ドクターは無事なんですか?」

「今のところ、存在証明も通信も成り立っている、物陰に隠れてこちらの救援を待てと指示しておいたよ、だけど・・・」

「「だけど?」」

「今回の案件は特異点を解決しないと精神体であろうロマニを回収できない」

「それはなぜだ? 所長の時は・・・」

「アレは達哉君がアルカナカード持っていたから代わりの依り代として偶々回収できただけの話だよ。アルカナカード在庫無いんだろう?」

「あっはい、先輩曰くベルベットルームも仕様が変更になったからという訳で所長のペルソナ調整の為にスキルカードに変えちゃったとか・・・」

 

この特異点を解決しなければならない理由はロマニが精神体でレイシフトしてしまったことにある。

彼のレイシフト適正はカルデアから見れば未知数だ。

下手にレイシフトアウトさせると虚数空間にすっ飛んでいきかねない。

だったら所長の時と同じくアルカナカードに封入して回収するべきだとアマネは主張するが。

そもそも在庫が無い。オルガマリー蘇生後は余裕もなくペルソナ初心者という事もあって全て使って調整に回してしまったのだ。

つまりオルガマリーを回収したときと同じ手段はとれないという事である。

と言っても達哉を責めることはできない。

第一の時はそれだけ余裕が無かったし、あるもん全部使ってないと攻略無理だったのだから。

よってアルカナカードの在庫はなく精神体となったロマニを回収する手立てはない。

第一フールのカードは希少なのだ。

在庫はない。

 

「この状況、アマネならどう見る?」

「十中八九、ニャルラトホテプだろうな。私が仮に魔術王ならもうとっくに爆破の段階でここを解体している」

 

前述のマシュの評の通り、アマネは容赦なかった。

自分が魔術王ならばカルデアを残したりはしない。焼却後の爆破で皆殺しにしているという。

といっても相手はこちらを舐め腐っているのか直接乗り込んできていない時点でアレという事柄が出ている。

所謂、アウト・オブ・眼中という奴だ。

だったら魔術王を操っている真の黒幕、ニャルラトホテプの仕業であることは自明の理という奴である。

奴ならそうするという負の信頼があるからだ。

 

「まぁ話はこのくらいにして、マシュ、君一人での単独レイシフトになる。大丈夫かい?」

 

そう今回は緊急性が高い上に達哉&オルガマリーは意識不明な上に他のサーヴァントはユニオギアスの影響で動きが取れない。

故にマシュ単独のレイシフトと特異点解決となる。

難度は高いがやるしかないしこれ以上カルデアの人材を減らすわけにも行かないからだ。

 

「何とかやってみます」

「ならば良し、こっちもいつも通りサポートするよ。ロマニが拉致られた以上、状況は急務だからね」

 

今のカルデアには余裕は無いのは何度も話した通りだ。

故にここはマシュ単独での任務となる。

達哉の戦闘力はなしオルガマリーのフォローもなしサーヴァントの支援も見込めない。

正真正銘、自らが積み上げた物が物を言う世界に突入するのであった。

 

今度は座標のズレとかはなく。

ロマニがいる直ぐ近くにレイシフトを慣行した。

 

「ドクター、聞こえますか?」

「聞こえているよ・・・」

 

レイシフトした先はタワマンのすぐ近くだった。

その路上の木々にロマニは縮こまって隠れていた。

マシュの声にびくびくしつつも出てきた。

 

「こちら、マシュです。ドクターと合流しました」

『それは良かった・・・』

「レオナルド・・・それで僕はどうなっているんだい?」

『先にも言ったけど精神だけがレイシフトしている状態だ。正規の手段でレイシフトアウトは出来無い、特異点を解決しなければならないよ』

「だけど僕は役に立てない「嘘をいうな」!?」

 

突如、時間が停止したかのように周囲の背景が灰色に染まる。

動けるのはロマニと。

 

「まだ隠すか? いい加減思い出したはずだろう?」

 

その視線の先にいる悪人面に歪んだロマニことニャルラトホテプだけだった。

ニャルラトホテプは言う。思い出したはずだと。

 

「いい加減、認めろ。貴様が既知感を無視したせいでこうなっているとなぁ」

「黙れ・・・黙れよ!!」

 

そうロマニは達哉が特異点Fから戻って来てから既知感に苛悩まされてきた。

そして致命的なズレを自覚したのだ。

そこからは雪崩のように思い出すのは基準世界の事だ。

ロマニはつい最近全てを思い出したのである。

最も後の祭りだったが。

本来試練として思い出すことをかせられていた。

だがロマニは意図的に目をそらしてしまったのである。

分水領は冬木での聖杯戦争の時。

達哉が来る以前かつカルデアが出来る前の話だ。

ニャルラトホテプも鬼(疑問形)ではない。

ロマニに思い出す切っ掛けは彼にしては珍しく何度も与えた。

そう既知感という感覚でだ。

それでも目をそらし続けた。

結果、この様である。

思い出せば何も起こらなかったというのにだ。

 

「早期に話しておけばいい物を、偽りの絆ほど返し風は怖いものはないぞ? ■■■■よ」

 

見下すように嘲笑ないながらニャルラトホテプは言う。

彼の本名を言いながら。

 

「まぁ好きにするが良い、ツケを払うのは貴様自身だ」

「なにを」

「その時を楽しみにしておくが良い」

 

そう言って影が去る。

周囲の景色も元に戻った。

 

「ドクター、どうかしましたか?」

「いいやなんでも「ドクター!!」ッ!?」

 

心配になって声を掛けるマシュに何でもないと言おうとして。

マシュに襟首を捕まれロマニは強引にマシュの背後に移動させられる。

同時に大盾で攻撃を防ぐマシュ。

飛来したのはナイフによる横薙ぎだ。

 

「うん? お前感が良いな」

 

攻撃主は服装は白のYシャツに紺色のデニムパンツ。普通のスニーカーにジャケットといった様相の少女だった。

瞳が青と赤の混合色に染まっていること以外はだ。

 

「アナタは誰ですか」

「通りすがりのアサシン、残ったサーヴァントの二騎のうちの一人だよ。そういうお前はセイバー・・・には見えないなぁ」

「ここで聖杯戦争が行われているのですか?」

「行われているよ、オレは最もぶっ壊す方向で動いているけどな」

「なら協力できると思います」

「どういうことだ?」

 

少女は一旦、下がりナイフを構え警戒しつつもどういうことだと問う。

 

「それは俺も聞きたいな」

「アナタは・・・」

 

物陰から出てきた腰まで伸ばした滑らかなロングヘアーに。

服は鮮やかなゴールドスーツに黒の薄手革手手袋、黒革の靴に無駄にデザインが凝ったアクセサリーといったいで立ち。

そこに金縁で深くスモークが施された丸サングラス。

マシュもロマニも驚愕した。

なんせ知っている人物だったのだから。

 

「パオフゥさん?」

「・・・なんだ? 俺の事を知っているのか?」

「ええはい・・・先輩・・・、こういっては分かりませんよね。周防達哉さんからアナタの事は聞いてます」

「なに? 達哉だと? アイツもこっち来てんのか?」

 

パオフゥからしてみれば意外な人物の登場に驚きを隠せていない様子だった。

それはそうだ。もう二度と出会えないとも思っていた人物の名だから。

 

「はい、先輩や克哉さんからアナタの話はよく聞いてます」

「克哉まで来てんのか・・・」

「克哉さんは元の世界に帰られました・・・ですが先輩は特殊事情で元の世界に帰れなくなってしまいまして。今では私達の組織、カルデアで働いています」

「・・・織、武器を収めろ」

「良いのかよ、おっさん」

「まず認識の齟齬を埋める、そこからでいいだろう」

 

パオフゥの提案に全員が乗っかり。

互いの現状を話し始めた。

これには然しものパオフゥですら頭を抱えた。

 

「向こう側が消し飛んで、こっちの世界の世界滅亡の危機に挑んでいるってことで良いな? 達哉の奴」

「はいそうです、パオフゥさんは打ち上げで克哉さんと傷酒したあと気づいたら此処にいて、織さんのマスターになったと・・・」

「ああ、そう言う認識でかまわねぇよ」

 

パオフゥから見てもマシュたちが嘘をついている様子はない。というかカルデアとの通信が繋げられ。

資料やデータなどを見せられて納得する他なかった。

あと織を嗾けたのは誤解が解ける前だったからである。

なんせ警戒しながらタワマンことオガワハイムに向かっていたのだ。

そしたらマシュが急に現れた上にロマニが出てきたからセイバークラスかと判断するのも道理とも言える。

 

「だったら達哉の奴はどうした? アイツなら下手なサーヴァントより戦力になるだろ?」

「先輩は今、意識不明の重体です」

「なに?」

 

これにはパオフゥも驚愕。

達哉の実力を知るものとして早々遅れは取らないと思っていたのだが。

意識不明の重体になっているとは思っても居なかった。

 

「まぁ状況は分かった。お前たちはこの特異点を消したいが戦力が足りない、俺たちも数があればいい、互いに協力できるわけだ」

「協力してくれるんですか?」

「当たり前だ。話を聞く限り。特異点化したこの状況を解決できれば俺も帰れる、織の願いも叶う、協力しない理由がねぇよ」

「おっさんに同意」

「良いんですか? 織さんは・・・」

「オレはとっくに死人さ。それに俺の願いは叶ったからな」

「その願いというと?」

「まぁ話すと長くなるから端折るぞ。オレは両義式っていう女の男性人格でね、式の幸せを見ることが夢だったんだ。それが見れずにまぁ色々あって消滅したんだが、こうやって仮初の肉体を持って式の幸せを見届けることができたそれで十分なのさ。後は聖杯とかいう余計な事を始末したいそれだけさ」

 

先ほども書いた通り両義織という存在の願いは叶っている。

パオフゥも元の世界に戻りたいという願いも、カルデアからの情報から聖杯を壊せば解決すると知り聖杯に二人にはもう用が無い。

マシュはそもそも用が無いし特異点解決の為に聖杯破壊は急務だ。

ロマニも願う事はないし寧ろ破壊してさっさと自分の身体に戻りたいところである。

 

「なら後はオガワハイムのセイバーを倒せば解決だね」

『そう言いたいんだけどねロマニ、後皆、落ち着いて聞いてくれたまえ、サーチの結果だけど、複数人のサーヴァント反応を検知したよ・・・』

「え?」

「おい織、聖杯戦争は七騎の殺し合いで、残っているのはお前とセイバーのはずだよな?」

「ああそのはずだが・・・」

 

何かおかしい。

織の知識にも七騎の殺し合いとしか今でも表示されず。

オガワハイムに複数騎存在するなんて聞いてもいない。

 

『織、君が生存している間に聖杯戦争なんてものあったのかい?』

「少なくともない、殺人鬼の噂なら流れていたけどな、蘇った真犯人はもう殺した」

『とするとだよ・・・噂結界方式での聖杯戦争なんじゃないかな? これ・・・』

「あーアイツも関わっているだったんだか・・・」

 

人理焼却という未曽有の大災害。

それにニャルラトホテプが黒幕を良い様に扱い達哉を引き込んで良い様にしているとくれば、

噂結界もあるだろうという結論にはたどり着く。

 

「兎に角、行こうぜ。中核を叩かないと如何しようもないんだろう?」

「織さんの言う通りです。事態を収拾させないと」

「俺たちの街みたいになるな」

 

織の意見にマシュも同調しパオフゥはあの事件を思い出しうんざりした様子であった。

噂の具象は加速度的だ。

一度起動すると真実と虚偽に関係なく具象化する。

ここで噂結界が今一起動しなかったのはパオフゥたちが式に感づかれないように事前処理をキッチリしていた為。

噂の拡散前に予防できていたからなのだ。

だから精々、数年前から起きた事件の殺人鬼たちが願いを叶える杯を巡って殺し合っている。

オガワハイムは国の実験場でこっそり立て直されている程度に済んでいる。

マシュもカルデアの面々もそれは骨身に沁みている。

散々振り回され使わざるを得なかったのだ。当たり前の話である。

 

「じゃ行くか」

 

パオフゥはコインを弄りながらそう言う。

 

「僕だけここで待っているのはなし?」

「馬鹿野郎、ニャルラトホテプが関わってんだ一人にしておけるか。オメェさんもなんか抱えているみたいだしな。下手にどつかれて敵に回られたら洒落にならん」

 

ロマニが弱気になりここで待っているの無しと聞くものの。

いの一番にパオフゥが否定する。

彼は見抜いたのだ。彼は自分自身の影と決着をつけていないと。

故に下手にニャルラトホテプに干渉されて錯乱した挙句、敵に回りましたなんてのは洒落になっていないという。

 

『こちらからも確認した。脳波がネガティブ寄りになっている、ここには置いて行けないね』

 

ダヴィンチのいう事も最もだった。

流石に専門医程ではないにしろ精神医学も齧っているダヴィンチからすれば、

脳波計測から今、ロマニの精神がネガティブ寄りになっているのは分かる。

それを放置してニャルラトホテプに突かれたら堪ったものではない。

よってリスクを承知の上で連れて行くのは全員の結論だった。

 

「さて行きますか」

 

マシュの声と共に全員がオガワハイムへと向かった。

 

オガワハイムの内部構造は所謂円形状のタワマンである。

中心に在るエレベーターを利用して各階に移動するのだが。

エレベーターが存在しなかった。

中心には主柱足る巨大な柱がエレベーター代わりに立っているだけである。

各階へのアクセスは内部を螺旋状に走る階段のみとなっていた。

更に織が異常を言う。

 

「おっさん、死が見え辛い」

 

織の目は特別製だ。

直死の魔眼。バロールみたいに見た物を即死させるとかではないが。

物の死が見える。有機物、無機物、概念、それこそ高度な概念的死による防御かペルソナによる闇属性無効を持っていなければ見られて、死の線を突くかなぞられれば即死という理不尽だ。

よってこの状況おかしいという物ではない。

死が見え辛いというのは異常事態である。

まるでこのオガワハイム自体が闇属性耐性及び光属性耐性を持ち合わせているかのようだった。

 

「・・・現世から切り離されているのか? ここは?」

「特異点の中枢核です。そう言う事もあるのかなと」

 

基準世界で式は直死の魔眼を持ってオガワハイムを殺さなかった。

それは崩壊する前のオガワハイム自体が耐性を持っていたという事なのだろう。

直死の魔眼で解体という訳にはいかなさそうである。

 

「アマネさん、C4の在庫は・・・」

『無い、第四で使いすぎた』

 

ならばカルデアから爆破物を持ってくればいいとマシュは通信するが。

C4を管理運用している保安部の長であるアマネは無常に告げる。

そう第四までC4による爆破解体まで在庫が尽きつつあった。

ブリーチングにも使用されるので当たり前の話であったが。

よってオガワハイムを爆破解体する量はない。

加えてパオフゥもここではコネが無いだから急いでチマチマ、サーヴァント狩りなんてしていた訳だ。

 

「真っ当に攻略していくしかなさそうだな」

 

パオフゥのボヤキに皆が同意する。

此処まで来て安易な手段はとれなかった。

全員が階段を上っていく。

階段は二階までであり、三階に行くには外周部の階段を使わなくてはならなかった。

 

「二流ホラーかよ・・・」

 

そして二階に付くと同時に織はうんざりした様子で呟いた。

目の前にはゾンビと幽霊の群れである。視界に映る悉くが死の線が濃くうんざりするのも当たり前だ。

これが別の主要時間軸の名前が似た男子が見れば脳に頭痛が入るが織も片割れである式と同じく特別製脳味噌である。

さらに焦点をずらせば能力との折り合いも付けられる高性能っぷりだ。

そんな事をぼやく間にパオフゥはすでに動いていた。

数体の頭蓋にコインを射出し叩き込んだのである。

織には無論、デミサーヴァントであるマシュにですら見えない手捌きである。

達哉曰くペルソナよりあり得ないと言っていたのだから人力宝具級の早打ち速度は在るという事だ。

だがしかし、

 

「ち、死人共には効果が薄いか」

 

だが相手が悪かった。そもそも肉体の欠損を気にしないゾンビ。

神秘が無ければ傷さえつかない幽霊相手では如何に人外染みた魔技も意味がない。

パオフゥはペルソナをミカエルにチェンジ。

 

「ミカエル、マハンマオン」

 

マハハマオンで敵の掃討に掛かる。

通路を埋め尽くしていた敵の大半が浄化され消滅、あるいは肉塊に戻る。

 

「まるで死の塊みたいだな」

 

残った敵も織が死線を斬り即死させる。

相手はゾンビや幽霊なのだ。よって死の塊みたいなもので死線を見切ることは実に容易い。

 

「嬢ちゃんたちは下がっていろ、相性が悪すぎる。ロマニを守ることに集中しろ」

 

パオフゥはマシュたちに下がっていろという。

当たり前だ。第一特異点の時に述べたが死者は殺し辛い。

それこそペルソナの火力かハマ系スキルを持ち出すか死を見る直死の魔眼持ちとかが特攻として入るくらいだ。

マシュは体術こそこの中で一番優れている。

もう書文からの免許皆伝も近い実力ではあるが物理攻撃しかないため相性は最悪だ。

 

「分かりました!!」

「・・・相性わるかねぇのか?」

 

そんなことはマシュも分かっている。

だからロマニの護衛に集中することに意義はない。

と言っても、如何にゾンビとはいえマシュの大盾で思いっきりぶん殴られればバラバラになって強制退場だ。

実は相性悪くはないのではとパオフゥは自分の判断に疑いを持ったが。

それはあくまでマシュが思う存分盾をぶん回せるという前程がある。

場所の狭さや間合い的に、そんな事をすればフレンドリィファイアになりかねないから。

ここはパオフゥの判断が正しい。

 

「おっさん、二階通路の掃討はこれで終わったけど。どうする?」

 

二階通路の様相は死屍累々とした有様になっていった。

時間としては数分もたっていないであろう。

バラバラにされたゾンビ、体は無事でもマハハマオンで浄化され消え去った幽霊に浄化され肉塊に戻ったゾンビ。

マシュの手によって壁にめり込むほどの衝撃と質量の一撃で強引に倒されたゾンビなどが死んでいた。

もうスプラッター映画のような光景にロマニは戦慄している。

そしてナイフを手で弄びつつどうするかを織が問う。

 

「とりあえず部屋を開けるのは無しだ。開けてモンスターハウスなんてのは御免被「たすけてー」・・・」

 

下手に開けてモンスターハウスなんてのは御免被るとパオフゥは言おうとして。

部屋の一角から救援要請の声がした。

 

「あのー一応知り合いの声なんですけど・・・」

『声紋照合も一致、エリザベートだ』

 

声の主はエリザベートだった。

声紋照合までしているのだから本人に違いはないだろう。

 

「一応念の為だ次の階に行けるかどうか確認してからでも遅くはないだろう」

 

パオフゥの言葉に一旦エリザベートはスルーするとして。

次の階に行けるかどうか確認してからでも遅くはないという事になり、

全員が階段に向かった。

案の定、障壁が張られていて次の階には上がれない様になっていった。

 

「織、見えるか?」

「いや見えることには見えるんだが」

 

障壁自体に耐性はなく織が障壁を一閃で殺しきるものの、再び新しい障壁が張られる。

殺されるのなら、また新しい物を張りなおせばいいじゃないとばかりに新しい物が張りなおされる。

 

「安々と次にはいかせてくれないか・・・」

「部屋を確認する必要があるみたいだね・・・」

「ドクターの言う通りです、ここは一旦戻って部屋の中を探してみましょう」

 

ニャルラトホテプは悪辣であるがクリアできないものは用意していない。

前提条件として初動が全員正しく行動できるという無理ゲーが前程にあるが。

故に障壁解除できるというのは当たり前の話なのだ。

 

「まずはエリザベートを解放だよね」

「ですねドクター」

 

ほぼ味方確定なエリザベートの部屋を初手で漁るのは当然と言えよう。

一行は引き返し先ほど声が聞こえた部屋の前に集まる。

今では啜り泣きが聞こえてきた。

 

「織、鍵を殺してくれ」

「りょーかい」

 

パオフゥの指示と共に間延びした返事と共に織が扉と壁の間にナイフを差し込みカギを殺す。

そして扉を開けてみれば。

入り口で、紅色の髪の毛に白いメッシュが入り、

衣類も大きく変わり黒を基調とした落ち着いた軍服を模様したゴシックドレスに、

角は若干小さくなり、されど翼は大きく広がる、犬歯は吸血種の様により鋭くなり、

瞳の色は蒼色と金色の色が混濁した物となった。

少女から女性になりつつあるエリザベートが存在していた。

 

「マシュ~!!」

「うわ!? 何があったんですか?エリザベートさん!?」

「知らないわよ~!! 執務室で作業してたら眠くなって、いきなりこのマンションの一室に閉じ込められるわ。私のシャドウは出て来るわで大変だったのよぉ~!」

 

マシュに抱きつつ涙流しながらそう言った。

部屋に入ったパオフゥと織は警戒してエリザベートシャドウに警戒したが、

自分たち以外誰も居なかった。

 

「嬢ちゃん、自分のシャドウはどうした?」

「どうしたって・・・前にも言ってきた事だったし、ぶちのめして受け入れたわよ、おっさん」

 

第一特異点と同じこと言ってきたので、早々にぶちのめして受け入れたらしいのだ。

それよりもおっさん呼びにショックを受けいているパオフゥだった。

 

「そ、そうか、それにしてもおっさんって・・・」

「な? もうおっさんだよ、パオフゥは」

 

織が呆れたように言う。

もうとっくにパオフゥは三十台前半である。

残念ながら現代基準でいえば十分におっさんだ。

後ファッションセンスもアレである。

 

「それより部屋の探索をしないかい?」

 

ロマニは他人事のように言うが。

ロマニも十分におっさんである。

そこを突っ込まない優しさがマシュにもあった。

その後、部屋を虱潰しに入ったが居るのはゾンビと幽霊だけだ。

先ほどのように掃討し一行は障壁が解除されたのを確認し次の階へと向かったのだった。

 




織は式と同じ経緯であることとニャルが両義の肉体を完全再現しているため直死の魔眼を使えます。
あとパオフゥによってドタマぶち抜かれたのは過去の残影から再生された鯖ふじのんでこの時間軸のふじのんは事件に無関係に生きてます。
因みに式と織が再開するルートでは聖杯戦争が終わるまでパオフゥと織は両義邸で居候する予定でした。
そうなった場合、発進しようとする式をパオフゥと織と幹也が三人で止めるみたいなコメディもあったかもしれません。
それと将来未那ちゃんがパオフゥから触りだけ教えられた指弾を特訓して実戦レベルで使い始めたかもしれません。
最もそうはならず再開はならず、式に悟られないように先回りして他のサーヴァントを二人で始末したわけですが。
よって残るサーヴァントはオガワハイム占拠しているセイバーだけとなり。
マシュとロマニがパオフゥと織と合流できたわけですね。
因みになんでロマニがネムネムで巻き込まれたかというとまぁ人質とこの特異点が終わった後の永夢ゥへの布石です。
なお聖杯戦争の中身ですが結構パオフゥ無双でした。
基本指弾で人力フラガラッハ、物理が通用しない相手にはペルソナとかいうチート。
もっとも里緒は式や幹也にした所業をクチャべったせいで織に瞬殺されています。
流石にふじのん相手には連携しましたけど。



そしてまたしても何も知らないエリザベート・バートリーちゃん(肉体年齢19歳)



原作でも彼女巻き込まれていましたからねしかたないね。
そしてロマニと某騎士を見ているニャルは・・・

ニャル「まだだ・・・まだ笑うな・・・・wwwwwww」


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