日記
なあ、人の強さって何だと思う?
肉体?もちろんそれもそうだ。鍛えぬいたパイロットの筋肉、すごいよな。あれに殴られちゃあ、歩兵はただの温いタンパク質に還っちまう。
権力?それとも人脈?ああそうとももちろんさ。
数の暴力ってのを用意するにはこの二つが一番手っ取り早い。正義感、大義名分、友人への優しさ......
そのベクトルをちょっと弄るだけでいい。
そうすりゃスペクター並みに妄信的な兵士の完成さ。
でもよ、そんなの虚しくないか?
肉体は弱いやつだっているし、なんならずっと虐められている人間だっている。
なにもしてないのに正義に殴られる側の人間もいる。
価値観の押し付け、上塗り、排斥............
俺はそれもいいと思うぜ?でもさ、いつかされる側に回ったとき、言い訳できるくらいには寛容になっといた方がいいぞ?
強さってのは後からどうにでもなるんだ。全て投げ出す「覚悟」さえあれば、な。
「だからさ、俺が今ここでお前をぶっ壊してもなにも問題ないのさ。それが俺の価値観で、立場だったからだ。
な?賢いあんたならわかるだろ?シャノン。」
今の時刻は、まあ必要ない。
この日記は、俺の脳に直接残される絶対的なデータ。別に紙に書いてもいいが、そもそもこのご時世に使わない。めんどくさいしな。
俺の目の前に居る、シャノン。
シャノンだけじゃわかんねえか、俺はカテゴライズするのは好きじゃないが、今だけ見返したときに分かりやすいよう分類してやる。感謝してくれよ?
名前は先に延べた通りだ。
性別はわからん、シミュラクラムのパイロットで、そして自由な傭兵。
そして今は、ARES師団管轄の施設へ不法侵入中につき俺の的だ。誤字かって?いやいや笑わせんなよ、俺に敵はいない。全部邪魔な的程度さ。
「あー、わかるさ。オレ様は天才だからな。
でもそれと、従うかどうかは関係ない。オレ様もお前を殺す。いいだろ?単純明快で直ぐヤれる。」
あーっと、追加でこいつはとても生意気、と記録しておかなきゃな。
「へぇー、そうかい。やっぱあんたは物分かりが良いねぇ。学者としても教えやすいよ。
でも、態度で減点は入るかな。」
「あんたもセクハラで訴えられないようにしろよ?今のオレ様は「かわいい女」だぜ?」
「............俺はそういうのが苦手だって言わなかったかなぁ......皮がついてちゃ、肝心の中身が見透かせねえよ。」
全くそうだ。俺は、とても邪魔におもう。
執着する気持ちはすきだぜ?俺好みの狂信、扱いやすい。
「ハッ!皮のあるなし気にしてるとか童貞かよォ!?」
_______来る。
シミュラクラムを止めたのが響いてる。
腕の筋肉の盛り上がり、それで次の手が読める。
これがもしかりに機械の体だったならば、俺にだってばれなかっただろうに。
あわれな......
_______そこまで思ったところで、突然動きが変わる。
ブラフだ!ナイフの軌道予測を修正しなければ!
力の集中する位置の移動は、反動をつけるためでしかなく、一度向きを変えるつもりだったのだ。
「おもしれーじゃねえか!流石独立傭兵!あんた最高だよ!ちなみに俺はもう皮すら無いぜ?」
咄嗟に腕でナイフを防ぐ。外装に傷はつくが、仕方ない。
「お褒めに預かり光栄だぜっ、と。でもよぉ、精神性が童貞なら関係なくねーか?中身が大切なんだろぉっ!?」
「ははっ、そうだな?だから経験のひとつやふたつより中身が大切なんだよ、ヤった回数でマウント取るのはおさるさんのやることだぜ?」
すかさず足を蹴り飛ばす。
無慈悲に、無遠慮に。
パイロットは傍若無人だからな、相手がどうだろうが関係ねぇ。死ね。
「あぶねーな!?」
しかし、逃す。
だが予測の範囲内だ。まだだ、まだ。
この手は殺すための布石にすぎない。きっといつか殺す。
「おいおい、あんた色んな武器使うのが売りじゃなかったのか?なぁんの刺激にもならねーそんな短いナイフなんか止めてよ、もっと弾けれるオモチャ使って遊ぼうぜ?」
オルタネーターを抜く。当てれば三発。負ける気がしない。
「言われなくとも勿論さ!もしかして童貞だから我慢出来なかったのか?急かすともてねぇぜ?」
するとどうだろうか。
奴は俺の構えを見て弾道を予測したらしい。
ひょ、ひょいと身軽に弾丸を避ける。
ハッ、出鱈目じみた戦術だ。
「ほぅら!待ちに待ったキモチイイオモチャだぜ?全部吹っ飛ばしちまえよ......!」
丸い玉がピンを抜かれ、放物線を描き飛んでくる。
マガジンを引っこ抜いてるから、反撃は......
出来るんだなぁ!これが!!!
「なッ!?消え____」
そう、消えるのである!
俺はフェーズシフト義体だからな、勿論こういうことも出来るのだ!
生身の奴等にら出来ない、高尚な技術......
なんてね。リロード終わらせて殺すだけだ。
「さァッ!栄養補給は終わりだぜ!
まだまだ楽しめるよな............?」
こっち側に戻ってきた瞬間、奴を狙う。
既に引き金は引いている。
お前に逃げ場はないさ。
「____しょうがねぇなぁ!生身でキメる興奮剤ってのも悪くねぇ!」
そうだ、向かってこい。
俺はこんな、生き方がなりふり構わない奴が大好きなんだ。