今日は、姫石さんに勝負を指定された日、当日。ひびきさんは、才能やセンスがあれば、練習は必要ないと言っていたが、やっぱり私は、天才であろうとなかろうと、努力すれば、その分何かを得られると思っている。だから、私はこのしばらくの間、改めて音程を確認して調整したり、ダンスの細かいところを注意して練習してきた。
しかし、問題はあの、エアリーチェンジだ。ひびきさんが見せてくれたあのパフォーマンスは、とても素敵だった。後で調べてみたところ、あれは元々、昨年のドリームパレードのシステムで使われていた、サイリウムチェンジの延長線上にあるものらしく、ひびきさん含む何人かのアイドルは、普通のライブでもそれをすることが出来たらしい。特に、グランプリの最初こそ普通のサイリウムエアリーだったらしいが、ゴールドエアリー、プラチナエアリー、ついにはファイナルエアリーを出した者もいたという。そんなものを、私が出せるのだろうか。でも、本物のアイドルである姫石さんとの対決に見出せる勝機は、そういう部分なのかもしれない。
「花音、ついに今日だね! プリパラだって、遊びだけじゃないって教えてやってよ!」
「私達も応援してるから、頑張るにゃー!」
「プロのアイドルとか言ってるけど、プリパラは初心者なんだから、勝ってよね!」
「花音ちゃんはずっと頑張って練習してたし、きっと大丈夫だよ!」
かなめちゃん、凛ちゃん、真姫ちゃん、花陽ちゃんが、応援してくれた。りんねちゃんもルビィちゃんも花丸ちゃんも、応援してくれている。頑張らなくちゃ……。
「花音さん、そろそろ準備をお願いしまーす!」
『は、はい! みんなありがとう! 行ってくるね』
●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●
会場の裏へ行くと、姫石さんが立っていた。この間はゲスト用の服装だったが、今日はちゃんとした衣装を身に着けている。ロック系のコーデで、PrismSkullというクールタイプのブランドだ。
「あら、来たわね。こんなに遅くなってしまってごめんなさい。タイミングが悪くて、仕事が詰まってたの」
『あ、いえ、大丈夫です……』
「じゃあ、まずは私の番ね」
そういって、ステージに出て行った。
「こんにちは。プリパラをお楽しみのみなさん。今日は、みなさんに本物のアイドルのライブを見せてあげるわ。ミュージック、スタート!」
♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪
「♪覚悟を決めて、昨日までの私を超える。負けられないわ。♪」
歌が始まった瞬間、迫力があって、観客の心を一気に掴む歌声で会場の空気が変わる。
「♪偶然出会ったチャンス? そんなものより、つかみ取った結果。茨の道、ケモノ道、無傷で進む。最高最強を手に入れるの。♪」
♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪
どうしよう……。私、この後にライブをするのか……。
緊張と恐怖がどんどん出てくる。無意識に、目を《逸らし》て…………。
「花音」
『……! り、りんねちゃん。』
赤い目、見られちゃった……?
「緊張、してるね」
『う、うん……』
良かった、見られてはいないみたい……。今はみんな、客席に居るはずなのに、どうしてここに居るんだろう。
「花音は、プリパラ好きだよね」
『うん。プリパラは好きだよ。でも……』
「じゃあ、大丈夫。思いを込めた歌は、みんなに届くんだよ。プリズムボイス……」
『プリズム、ボイス……?』
♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪
「メイキングドラマ、スイッチオーン! みんな、私に付いてきて! ロックに行くわよー! 目指せ!頂点を! ……サイリウムチェーンジ! ♪夢をつかむ♪」
♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪
「とてもたくさんのいいねが集まっています! 藍寧さん、ちゅうもくのアイドルにランクアップです!」
流石、プロのアイドル。いきなり大きくランクアップするなんて……。期間は参考にならないかもしれないが、私が4ヶ月間かけてなったランクに、たった1回のライブで追いつかれてしまった。
でも。
『りんねちゃん、ありがとう。私も、プリパラ好きだし、頑張ってくるね!』
「……うん!」
いつも3人で歌ってる曲の、ソロバージョン……。みんなの心に、届け!
♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪
『♪怖がらないで、弱気な僕。明日は未完成だから。苦しさだって未来になる。何もかもこれからだ。まっすぐな心で、明日は開く。ぶつかったとしても、夢は見れる。君とどこまでも、広がれる!♪……メイキングドラマ、スイッチオン! 世界には、こんなに楽しいことがあふれてる! プリパラファンタジー!』
エアリーチェンジ……成功させる!!
『エアリーチェーンジ! ゴールドエアリー!! ♪とびきりの笑顔で、進もう!♪』
♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪
ゴールドエアリーを、出すことが出来た。正直、上手くいくかは全然分からなかったし、とても驚いている。でも、ライブ会場を飛び回って見た、いつもとは違う景色は、とてもすごくて、ライブをしている最中は、全力で、楽しんで、気持ちを伝える! という気持ちしか無くて、何かそういう領域に入っていたような気がする。そんな高揚感でふわふわしたまま、裏に戻ると、姫石さんが詰め寄って来た。
「ゴ、ゴールドエアリーって何よ!? あなた一体何をしたの!?」
『え、えっと……』
私が上手く答えられないでいると、めが姉ぇが来てしまった。
「結果を発表するので、お2人ともステージにお願いしまーす!」
『は、はい!』
「……分かったわ」
説明をしそこない、少し気まずい空気を感じながら、ステージへと移動する。そこには、2つの円形の台が置いてあった。基本的にライブ対決はいいねの数で決まり、そのいいねによって台が高くなり、最終的に高い方が勝利するらしい。
「では、結果発表です!」
それぞれの台の上に立つと、いいねが集計され、上昇し始める。そしてしばらくすると、重い音がして、台が止まった。隣を見ると、私と姫石さんの台の高さは、そこまで差が無いように見えた。
「レーザー判定です! 勝者は……花音さん!!」
そうして、たくさんの歓声が響いた。
『私の……勝ち……』
それが分かった瞬間、胸に浮かんだのは喜びよりも安堵だった。ひびきさんの期待を、みんなの応援を、裏切ることにならなくて、本当に良かった……。そうして、このライブ対決は幕を閉じた。
●○●^・ω・^●○●^・ω・^●○●
Black☆STARsの楽屋に戻ると、みんなが待ってくれていて、お祝いをしてくれた。研究生クラスの共同楽屋よりデビュークラスの個別楽屋の方が広いとはいえ、3人用の部屋に8人集まると流石に狭かった。何人かはドレッサーの方の椅子に座らなけらば行けなかったし、小さなテーブルにジュースやお菓子を頑張って乗せなければいけなかった。しかし、そんな中でワイワイするのもそれはそれで楽しかった。
そうしてしばらく過ごしていると、突然ノックが聞こえ、ドアが開いた。隙間からは、緑色の髪が覗いていた。やって来たのは姫石さんだった。
『あ、姫石さん……』
「……まず、今日は対決ありがとう。突然言って悪かったわね……」
と、意外にもちゃんとした挨拶をしてくれた。やっぱりそこは、プロのルールのようなものなのだろうか。
「まさか、ま、負けるとは思ってなかったわ……」
『……あの、姫石さん。プリパラのアイドルだって努力してます。確かに、デビューは手軽かもしれません。でも、プリパラのアイドルだってファンの子のことを考えて、練習も頑張って、アイドルをしているんです』
そういうと、姫石さんは部屋を出て行こうとした。しかし、そこで立ち止まって背を向けたまま、
「次は負けないわ」
と言い、今度こそ去っていった。
「次……ってことは、またプリパラに来るってこと……?」
「じゃ、じゃあ少しはわかってくれたってことにゃ?」
『そういうこと、なのかな……?』
「花音、やっぱりすごいよ! あんなにプリパラを否定してたプロのアイドルに認めさせちゃうなんて!!」
『でも、今日ああやって全力を出せたのは、応援してくれたみんなと……励ましてくれたりんねちゃんのおかげだよ』
いきなり勝負を仕掛けられて、緊張して、大変だったけど、結局そこからも学ぶものがあった。ここ最近の体験も、悪いものじゃなかった……かな。
なんか、書き終わるのに時間かかるなーと思ったら、文字数がいつもより多いだけでした(((