「あ!そこの君!オールマイトが雄英高校にいるというのは本当ですか?」
「・・・?」
初の戦闘訓練から一夜明け、登校中、姫花はマスコミの大群の一人に話しかけられる。普通の高校生ならテレビに出れるかもしれないと思って色々と話すだろうが、生憎彼女はテレビはあまり見ない方だし、そもそも心を許した人以外に囲まれるのが嫌いだ。更に鋭華から教わったことを忠実に守っている節もある。
「知らない人とは喋っちゃいけませんってママが言ってました!さよなら!」
子供のように、純粋な応え方だった。だが、それがかえってマスコミの興味をひいてしまう。
「そこをなんとか!お菓子あげるから!」
そういいつつマスコミの一人が姫花に手を伸ばし、頭に咲いた花に触れる。狙ってやったかそうでないかは別として。しかし、この後彼らは大きく後悔することになる。
「ひゃ!?あ❤︎ああん❤︎」
まさか、花に触れただけで少女がビクビクと身体を震わせ、力が抜けたのかその場に座り込んでしまうとは誰が予想しただろうか。目には羞恥心からか涙が浮かべられ、スカート越しから扇情的な匂いが漂ってくる。
(((あ。やっちまった)))
静まり返る現場。犯罪臭溢れる絵面。聞こえてくるのは微かな風の吹く音と、姫花の荒い息の音だけだった。だが彼らにとって最も不幸だったのは、その場に1年A組の男子数名と女子全員、おまけにその場に立ち尽くす小柄な女性がいたことだろう。
「ああいや君達!違うんだこれは!こ、これは事故というかなんt」
「脚色はいらん。事実を話せ」
突如、地獄の底から轟くような、この世のものとは思えない程恐ろしい声が発せられる。
「ヒッ!?こ、これは我々が彼女に取材しようとしたところ嫌がったので、そ、その・・・引き止めようとして、頭の咲いた花に触れたr」
「よしわかった。貴様ら二度と来るな。もしもう一度来たら・・・
全員人生ドン底に突き落としてやる」
「「「申し訳ありませんでしたァァァァァ!!!」」」
マスコミの集団は奇跡的に声を揃え、足を途轍もない同じペースで動かして帰っていった。場合によっては撮影器具をほっぽらかして逃げる者や、空中に逃げる者もいた。正に、蜂の巣をつついたような騒乱となった。そして、その場にいた雄英生や関係者全員が思った。
(((この人キレさせたら死ぬ!!))
と。
「よしよし。怖かったね姫花。一緒に学校行こうね」
「ぐす・・・うん」
同時に(((泣き止ますの早っ!?)))とも思った。
そして十数分後。時間厳守の相澤に言われなくとも席に付いている時間。
「お前ら昨日はおつかれ。Vと結果見させて貰ったが・・・聡」
「どうしましたか?」
「お前もうダミーの死体は作るな。お前の親フリーズしてたぞ。親にとっちゃ子供が大怪我するのは自分が大怪我するより苦痛なんだよ。だから絶対にアレはやらないように。あと身体は大事にしろ。マジで」
「は〜い!」
意外にも優しい相澤。しかし、彼がそこまでしてやめさせるのは、その光景を見た鋭華がパニックに陥り、オールマイトが必死のそれを止めていたのもある。後にオールマイトは「本っ当に怖い・・・」とガタガタ言いながら答えていた。
「あと緑谷」
「はっ、はい!」
「お前の個性・・・コントロール自体は出来てるが、咄嗟の判断に弱いな。いつまでも大怪我してばかりの状態なら除籍だ。焦れよ」
「はい!」
彼なりに気にかかる部分はあったのだろう。出久にも(独特な)激励を飛ばすと、主題に移る。
「相当話が逸れたが今回のホームルームで委員長を決める」
(((学校っぽいのキターーーー!!)))
相澤の性格をわかっている全員は心の中で叫ぶ。そして我先にと挙手が乱立するが、一人の声がそれを止める。
「“多”を牽引する大切な仕事だぞ!やりたい者がやれるものではないだろう!周囲の信頼があってこそ務まる聖務だ!・・・ここは民主主義に則り、投票で決めるべき議案!」
「そびえ立ってんじゃねえか!何故発案した!?」
その飯田の挙手、最早芸術品の如し。一切無駄のない挙手だった。
「先生!よろしいでしょうか!」
「時間内に終わるならなんでもいいよー」
そして自分に投票する者もいたり、他に投票する者もいたりしたが、姫花は完全に夢の世界へ誘われていた。
「結果を発表する!緑谷君3票、八百万さん2票で緑谷君に委員長を、八百万さんに副委員長を務めて頂く!よろしく頼むぞ二人共!」
そんなこんなでホームルームが終わり、午前の授業を先日とほぼ同じ方式で過ごして昼食の時間。姫花は出久、麗日、飯田の三人と喋りながらランチラッシュ特製ハンバーグ定食(お子様用)を食べていた。
「もぐもぐ・・・んー!」
「姫花ちゃんおいしい?」
「うん!お茶子おねーちゃんにもあげる!」
「ありがとー!」
なんとも和む風景であろうか。しかし、それを無礼にも盛大にブチ壊す警報音。
『セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんは速やかに屋外へ避難して下さい。繰り返します。セキュリティ3が突破されました・・・』
「僕達も避難しよう!」
そう言って人の波に飲まれる姫花達。外で何が起こっているとも知らずに・・・
雄英バリア。日本一強固なセキュリティシステムの俗称だ。発動した際には巨大な壁が出入り口等から展開され、侵入者を絶対に作り出さないシステムとなっている。しかし、それが何者かの手によって壊され、恐れを知らないマスコミ達が攻めてきたのだ。
「オイ!こりゃどうなっt」
「・・・・・す」
「聡?何か言ったか?」
「・・・ろす」
それが聞こえてしまった相澤は、自然と侵入者の冥福を祈って手を合わせた。それとほぼ同じタイミングで、無数のマスコミと職員室に紛れ込んでいたヴィラン風の男が盛大に殴り飛ばされる音が聞こえたという。彼は改めて知った。鋭華の『悪魔側面(デビルズ・サイド)』を。因みに緑谷は飯田に委員長の座を渡していた。理由は避難時に皆を適切に誘導したからだ。それが原因か否かはわからないが、『非常口』というあだ名がつけられたそうな。
「只のマスコミにこんなことができると思うかい鋭華?そそのかした者がいると思うのだが・・・」
「心当たりならある。職員室にいたヴィラン風の男・・・まぁ後で監視カメラの映像を確認してもらうしかないが、兎に角其奴が怪しい。カリキュラム表を漁っていたところを殴り飛ばしたらワープゲートか何かで逃げていったよ」
雄英で一番知能が高い二人が、犯人の目星を着々とつけていく。それを見ていた相澤は、目の前にある気絶したマスコミの山を目にして溜息をつく。
「そうか。んで・・・このマスコミ達はどうする?」
「そりゃ焼却処分だ。姫花に辱めを与えた罰は重い」
「ヴィランかお前は。既にボコボコだろうが。警察に引き渡すぞ」
「あぁ。住居侵入と公然わいせつと名誉毀損と侮辱罪と殺人未遂t」
「殺人未遂はお前だ。鎮圧する為に全身の骨を粉砕する奴がいるか」
「其奴は特に駄目だ。私が見た時一番狼狽えていたからな。間違いなく姫花に恥辱をかかせた張本人だ。極刑だ極刑」
この時相澤は思った。もし自分が結婚して子供が出来たら此奴みたいな親バカにはなるまいと。
同日、とあるヴィラン達のアジトで顔面を死ぬほど殴られた主犯格が帰ってきたのでモブ達はこれまでにない程戦慄した。
こんな状態でUSJ編行って大丈夫なんだろうか・・・