雄英体育祭当日。姫花はいつもより早い時間に起床し、初めての体験を前に心躍らせていた。
「ママ!ヒメね?絶対優勝するから!」
「そっか。姫花なら出来る。頑張って」
「うん!」
鋭華も少しばかりテンションが上がっているようで、いつもより若干声色が高い。無理もないだろう。大切な自分の娘が体育祭に出るのだから。しかし、完全に気を抜いている訳ではない。ヴィランというのはいつどこで襲ってきてもおかしくない存在だ。それはかつてヴィラン紛いの行動をとっていた自分が一番よく知っている。更に、以前の襲撃事件は世間に公表されているので、当然のように『ヴィラン連合』と名乗った者達の情報は知れ渡ってしまっている。幸いなことに、主犯であろう死柄木という男は死んだ事になっているが、『徒党を組めば雄英とやりあえるかもしれない』などという思想が当然出てくる訳で、そこに自分より強い個性を持った人間がいるかもしれない。そうなったら自分は、大事なものを守れるのだろうか。答えはyesとも、noとも言えない。その中でも『万が一noとなってしまったら』という思考が頭から離れなくなる。だからこそ鋭華は、不確定要素を何より嫌う。出来る限り可能性を潰し、自分にとって最適な選択肢だけを残す。それ故、昨日の“ヒーロー殺し”との対峙はもっとも彼女を苛立たせた。しかし今は娘を応援する一人の母親である。無邪気に笑う姫花の頰を撫でると、彼女と共に家を出た。
数十分後。雄英体育祭会場にて。鋭華は教師陣と警備の最終確認を、姫花は女子達と体操服に着替えを終えていた。可憐な少女達はきゃっきゃと騒ぐ中、対する教師陣は・・・
「では私はこの範囲を担当する」
「俺はそこから600m北か。毎度思うけど広いよな」
「だからこそトップヒーローの貴方達が呼ばれたのです。期待していますよ」
「「「了解」」」
完全に緊迫状態だった。
「じゃあ私はそろそろ出番だから行ってくるわ」
「え?」
その時、事情を知らないヒーロー達が一斉に注目する。その先には、18禁ヒーローと名高いミッドナイトが、なんといつものコスチュームで会場へ向かっていた。
「・・・相澤君」
「なんだ?」
「私の見間違いでなければ、あの人は先p・・・ミッドナイトで合っているよな?」
「合ってるが」
「そして今日は一年の部だったよな?」
「そうだが」
「あの人を司会にした奴は頭がおかしいと思う」
その頃どこかで、根津が偶然紅茶を吹いたという。もう一度言おう。偶然紅茶を吹いたという。
その一方で生徒達は大興奮していた。無理もない。小さい頃からテレビで見ていた憧れの舞台に、自分達が立つのだから。当然、それは姫花にも言えることだった。更に彼女は精神年齢が幼いのもあり、周りの生徒より興奮を隠しきれずにいた。その証拠に、特に意味もなくぴょんぴょんと飛び跳ねていた。
「三奈おねーちゃん!ヒメ達テレビにでれるかなー?」
「絶対出れるよ!優勝とっちゃおうぜ!」
「うん!とっちゃおーぜ!」
そんな和む一面はすぐに喧騒の中に消え去る。何故なら、件のミッドナイトが現れたからだ。男子の中には鼻血を出している者もいるが、気にしている余裕はあまりない。
「選手宣誓!代表、聡さん!」
「は〜い!」
何故なら、いつしか1年A組のアイドル(主に女子達の)となりつつある姫花が選手宣誓をするのだから。
「せんせー!私達は、スポーツマンシップにのっとり、正々堂々と戦い、有意義な時間にすることを誓います!」
覚えた言葉を懸命に思い出しながら宣誓するその姿は、観客達を和ませた。そして、鋭華のストレスを霧散させた。
そーいや本日二回目の投稿ですね