雄英体育祭。それは最も多くの人々が注目する、雄英高校で年に一回開催される催しである。それは今年も例外ではなく、割れんばかりの歓声が響いていた。
「さぁ!ここで多くの者がティアドリンク!第一種目は・・・」
ミッドナイトの声を合図に背後にあったモニターに映されたスロットが暫く回転し、止まる。
「障害物競走!ざっくり言って学年別総当たりよ!」
更にその言葉を合図に合わせ、スピーカーからとんでもない声量が轟く。
『ハローエヴィバディ!ここから先は実況のプレゼント・マイクがルール説明をするぜ!会場の外回り約4kmを一周!個性あり、妨害あり、関門あり、勿論笑いあり涙ありドラマありだ!コースさえ外れなきゃ何してもOK!誰よりも速く会場内に辿り着け!』
「さぁ!選手は位置につきまくりなさい!」
それを聞いた生徒達は、それぞれ会場の出入り口へと移動する。その間、轟が緑谷に詰め寄る。
「おい。緑谷」
「えっ・・・どうしたの、轟君?」
突然声をかけられて一瞬焦るも、なんとか平常を保った緑谷に、更なる不幸が襲う。
「お前、オールマイトに目ぇかけられてるよな」
瞬間、緑谷は凍りついた。自分の個性のことが頭に過ぎる。彼の個性である『ワン・フォー・オール』はオールマイトから引き継いだものであり、そのことはくれぐれも人に話さぬようにと念を押されていたのだ。勿論それは重々承知していたし、なるべくその話題は出さないようにしていた。ならば、何処で知られたのか。パニックに近い状態の緑谷の思考回路が狂ったように回り始め、ひとまず轟の言い分を聞くことにした。
「なんで、そう思ったの?」
「ハッキリ言って・・・妙にオールマイトとお前が一緒にいる機会が多い」
たったそれだけの理由。本来であればなんの根拠にもならないが、その言葉は半ばパニックに陥っていた緑谷を大きく混乱させた。それ故、彼は何も話すことはなかった。しかし、その静寂を切り裂くようにアナウンスが響き渡る。
「皆位置についたわね!それでは・・・スタート!」
その言葉と共に、三重の衝撃が走った。
一つ目は幼い少女により、猛烈な突風が引き起こされる音。未だにサイズが若干合わない体操服がたなびき、幻想的な雰囲気を纏っている。二つ目は緑色の髪をした少年に引き起こされた。前傾姿勢となって空高く跳んだ彼は、少女の起こした突風に勝るとも劣らない衝撃波を周囲に与える。しかしそこに三つ目の衝撃。地面が瞬く間に凍りつき、その場で立っていた者達は殆ど身動きが取れなくなってしまった。だが三人は後方に目もくれず、一気に前に進んでいく。
『こいつはシヴィー!いきなり三人の手によって他の選手が追い込まれたァ!』
雄英体育祭は、まだまだ始まったばかりである。