午前7時35分。国立雄英高等学校1年A組にて、聡 姫花は自分の席に座り、鼻歌を歌い上機嫌になっていた。姫花にとっては初めての学校生活なのだ。もう心の中ではピョンピョンと飛び跳ねたい気持ちでいっぱいだったが、育ての親である鋭華に「高校生なんだからおとなしく」と言われたので仕方がない。しかし想定より早く目的地の到着したばかりか、勘が恐ろしく鋭い彼女は、誰よりも早く自身の教室に辿り着いてしまったのだ。つまり、暇である。あまりにも暇なので彼女が家から持参した本(因みに六法全書である)でも読もうかと考えていたその時、カラカラと控えめな音量で丁寧にドアが開けられ、そこから眼鏡に七三分けのthe真面目と言ったような風貌の少年が入ってきたのを見て、姫花は目を輝かせる。
「おはよーございます!」
「お!?おはよう!聡明(そうめい)中学校出身、飯田(いいだ)天哉(てんや)だ!よろしくな!」
the真面目そうな少年・・・天哉は一瞬姫花の幼い子供のような容姿に戸惑ったが、しっかりと採寸された自身と同じ雄英の制服を着ていると認識した瞬間挨拶をする。
「柊(ひいらぎ)中学校出身、聡 姫花です!よろしくね!」
二人は自己紹介を終え、軽く握手をすると、仲良く喋り始める。因みに柊なんて名前の中学校は存在しない。鋭華が適当に履歴書を作っている最中に「受検当日は2月・・・節分か」と呟き、節分と言えば柊だなと思いながら適当に作った架空の中学校だ。しかしその真実を知る者は姫花と鋭華の二人だけなのであった。
「そう言えば頭の上に咲いてる花はなんなんだ?」
「ハイビスカス!きれいでしょ!」
そんな話をしていると、突然乱暴にドアが開けられ、薄い金髪にtheてぐしといったような髪型の赤い三白眼の、性格の悪そうな少年が入ってきたかと思えば、ズカズカと自分の席まで歩き、机に足を乗せて座るというヤンキーの典型的な態度でthe真面目の天哉とthe純真の姫花を困惑させた。しかし、純粋無垢で恐れを知らない姫花は、直ぐに声をあげる。
「あー!そんな風にすわっちゃいけないんだー!」
「そうだぞ君!聡君の言う通りだ!机の製作者の方や以前ここを使っていた先輩方に申し訳なく思わないのか!」
「あァ!?テメェどこ中だよ!端役が!」
姫花に続く形で天哉も抗議するが、残念ながら無駄に終わった・・・訳もなく。
「うう・・・ぐすっ・・・ふええええん」
姫花が泣きだし、いつのまにかクラスに入ってきていた1年A組の生徒(特に女子)のヘイトを大きく買う不良風の少年。流石にこれには少年も黙り込む。その空気、一触即発。そこに救いの一石が投じられる。
「オイお前ら。五分前着席って知ってるか?」
どこからともなく、寝袋に入った相澤が教卓に立ったのだ。
(((誰?)))
「ハイ。お前らが静かになるまでに34秒かかりまs」
「ぐすっ、・・・ううう・・・」
相沢が話している途中でも、未だぐずっている姫花。相澤は非常に困惑していた。
(なんでよりによって俺が担任のクラスなんだよ・・・)
しかし、彼はあくまで合理性を尊ぶ者。さっさと姫花を泣き止ませたいが、方法がわからない。それ故、思い切って寝袋から身体を出し、姫花の頭を撫でてやる。すると、彼女は直ぐに泣き止み、疲れたのか眠ってしまった。
「・・・ハイ。取り敢えずお前らはコレ着て外出ろ。体力テストだ。時間が押してんだ。詳しいことは後で頼む。あと今寝た奴は適当に起こして女子がパパッと着替えさせとけ」
相澤はそう言いながら生徒達に雄英の体操服を渡すとひどく疲れた様子で教室を出た。その時、相澤は思ったのである。『前途多難(ハードモード)』だと。
どんどん相澤先生がキャラ崩壊していく・・・