女尊男卑思想が世界に浸透するのは、たった6年の歳月しかかからなかった。
ただ1つの兵器の存在が、何十億という人間の価値観を変えてしまう。そのようなことがなぜ起きたのか? 「ISを扱える女性の方が偉い」などという一文でこの結果になることはない。女尊男卑にも必然性はあった。
これまでの兵器と隔絶した性能であり、戦いは戦闘という域まで拮抗することなく
“白騎士事件”以降、世界は揺れに揺れていた。兵器を始めとする機械関連の株価は軒並み下落し、大国の国債は買われず逆に売りさばかれ、高利率を掛けた新型国債を発行し旧国債を買い上げる事態にさえなった。旧国債と新国債では利率が実に10%も違うという異常事態であったのだから、もはや戦時国債、愛国債権と言ってもいい。必然として戦敗国の貨幣価値が常識外れに乱高下し、逆に戦勝国である日本の円は急激に高まった。早すぎる円高に日本政府は次々に紙幣を発行し、インフレもやむなしと覚悟を決めていたが、安定したのは輸出関連企業が利益を上げることができない段階になってからである。日本国内には物が溢れ、海外より帰投した日本人が溢れていく。その過程で日本に定住していた外国人追い出され、帰化した人々のみが残っていった。この時、いささか以上に乱暴な手段も使われたと記録には残っている。
アメリカ、ロシア、中国を始めとするアジア諸国はその力を大きく割かれ、EU圏でこの流れに乗る経済力を持っていたのはドイツ、イギリスだけであった。しかしドイツ、イギリスの経済発展はEUの経済回復に吸収され、そこまで大きな経済発展を得ていない。日本は大量の貨幣を持っており、世界的にみても突出し過ぎてしまった。
日本の主要産業であった輸出業は形を変えて金融業、あるいは利益を生まない地域発展を目的とした産業形態へと急速に移行していく。
経済力のみが突出した状態では、世界から日本が孤立してしまうためだ。
あまりに深刻な世界脅威となった日本は第三次世界大戦の危機を乗り切るべく、ひたすら消費を行うしかなかったのである。
日本以外の諸外国からしてみれば、“白騎士”のような軍事力が他にもあれば日本は世界の覇者として君臨しようとするに違いない、という懸念があった。だが日本からしてみれば世界大戦を乗り切るだけの経済力はあるが、軍事力、生産力がとてもではないが足りない。各国が懸念している“白騎士”など、日本は知らないのだから当然であるのだが。
この行動には諸外国各首脳部も舌を巻いた。軍事行動ならば意志統一はたやすく、外圧もかけやすい。だがこのばら撒きで日本は何一つ得をしていない。他国の国民は作れば作るほど物が売れ、さらに新しい技術なども提供されているだから感謝こそすれ恨むことなど在るはずがなかった。無論、嫉妬や誤解から生まれる諍いは絶えないが、それは少数派である。
各国首脳部としては、独裁国家でもない限りこの流れに「NO」を突きつけることはできなかった。そんなことをすれば自分の首を絞めるようなものだから。独裁国家であっても、国が発展し自分の懐が潤うのだから推奨こそすれ、拒みはしなかった。反日政策を第一に国内をまとめていた国々さえ、この流れには乗らざるをえなかった。彼らは「支援されて当然、感謝は不要」と
こうして世界が急速に日本色に染まっていく中、裏で対日包囲網も着実に構築されていた。白騎士事件以降、日本には白騎士に関する情報の催促が引っ切り無しに来ていた。この要求には日本も全力を上げて取り組むしかない。幸いなことに白騎士がISであるという情報はすぐに見つかる。白騎士事件の僅か1ヶ月前に発表されたばかりの新技術。その時には机上の空論だと多くの科学者が笑い、あまりの制作費用に各企業が匙を投げたシロモノであった。開発者が篠ノ之束という18歳の少女であったことも災いしたと言える。 国家の調査は詳細におよび、4年前にはISの基礎理論が発表されていたことが分かった。篠ノ之束という天才は、わずか14歳で世界の軍事バランスを崩壊させるほどの兵器を開発していたのだと諜報員から調査資料を受け取った国家首脳部は戦慄した。
日本は即座に重要人保護プログラムを発動し、篠ノ之束本人以外の家族を保護することに成功する。
このことが天災を呼び寄せる切っ掛けとなった。
† †
日本からISが世界に関しての資料、スタンスが世界に向けて発表された後、世界は『ISを動かせるのは女性だけ』という事実を知った。
この事実を知った各国の政治家がとった反応は主に4つに分かれる。
1つ目は“女性に国防を任せることなどできない”という反応。女性は護るべきものである、という考えの人々も同調した。
2つ目は“国防はISさえあれば良い”という反応。国防費を大幅に削減できるので、兵器産業以外の経済畑の人間が主に同調した。
3つ目は“ISなんてあっても困る”という反応。国内が混乱し開発費も出せない。貧困に喘ぐ国家はコアを売り渡すことで
4つ目は“大義名分を手に入れた”という反応。ISと“白騎士事件”を根拠として、男性は戦いを好む危険な思想の証拠である、と主張し女性の権利拡大のチャンスとした。
1つ目は多くの男性が主張したが、内部で対立が発生した。純粋に女性を守ろうとする派閥。国防を女性に任せるなんてありえないという派閥。ISは信用できない兵器であり危険だと主張する派閥。女性の権利拡大を阻もうとする派閥。最大勢力であっても幾つもの派閥に分裂した以上その力は小さくなってしまう。
2つ目は率先して3つ目の主張を取る国と繋がりを持った。さすがに危険過ぎて個人所有は認められなかったが、後にISコアのやりとりを禁止する『アラスカ条約』が制定されるまでに総数の1/3以上のコアが売買されたと言われている。日本はこの時期に勢力圏にある国々から数多くのISコアを買い取っていた。あまりに他国よりも多くの数を集めたがゆえに、IS学園が開校する際に学園で使用するISのほぼ全てを日本からの持ち出しで準備させられるほどである。
そして4つ目は2つ目と手を組んだ。そして最大勢力に踊り出ることに成功する。明確に対抗する勢力が1つ目の1派閥しか無かったことも影響していた。
マスコミは新たな流行としてISを取り上げ、それを扱える女性を