信じて   作:木工用ボンドルド

4 / 7
降下

『ミラン、作戦開始三十分前です。準備はどうですか?』

 

「待ってくれ、今装備の確認中だ」

 

 急かしてくる相棒に短く返し、自らの自室にある予備ロードアウトが収まっているガンロッカーにカードキーを通してロックを解除すると中に収まっていたパイロットスーツを着用し灰色の複合強化プラスチックで覆われ、フルカスタマイズされた自動小銃と予備の40連マガジンを十五本ほど引っ張り出しスーツのマガジンポケットに挿入。

 入り切らなかった分はバックパックとサイドバックに放り込む。

 次いでスーツの腰回りに取り付けられたグレネードポーチに十枚ほど銀色に輝く二種類の手裏剣を捻じ込み、余ったスペースに手榴弾を三つ押し込み、レッグホルスターには黒光りする少々大きな回転拳銃といくつかのシリンダを差し込んだ。

 

「……それにしても私たちの世界と異なる過去の地球か。それに加え第三次世界大戦による核使用による土壌汚染にAIの反乱、おまけに見たこともない怪物ときたもんだ。まるでできの悪いB級映画だな」

 

 装備のチェック中、ふと先ほど召集を受けた時のことを思いだした。

 

 

 

 

 

 

「過去の地球……ですか?」

 

 ドラコニスの会議室に集められた面々がアンダーソンから伝えられた現在の状況に思わず狼狽する。この場に集められた一部のSRSパイロットたちと士官以上の階級を持つ部隊長や技術者は皆優秀な人員を多数保有する本艦でもアンダーソンが選出した選りすぐりのエリートだ。そんな彼らでも流石にすぐ飲み込める状況ではなかったが。エレベーターから脱出した直後にミランもまた呼び出された。

 

「……ああ、それもどうやら俺たちが居た世界の物と異なるな。その証拠に先ほど先遣隊として送り込んだクーパーが率いる飛行型タイタン部隊から情報が送られてきた」

 

 既に調査隊を送り込んでいたことに驚いたがそれを気にすることもなくアンダーソンは淡々と話をすすめていく。

 そう告げると会議室の中央に存在する大型デスクに備わるホログラムを起動し、映像を投射させる。そこに映し出された映像はさらに彼らの困惑を深めるものになった。

 

 雑多な銃火器で武装した少女たちとそれとは反対に紫と黒の戦闘服で統一された光学兵器で武装した集団との戦闘を映したものや荒廃した都市と大地、そしてタイタンに匹敵しうる大きさの未知の怪物たちと壮絶な生存戦争を繰り広げる見たこともない兵器を扱う軍隊の映像だった。

 

「……あー、訳がわからんだろうからまずさっきの映像について1つずつ説明する。先ほどの映像で、最初に出てきた少女たちはこの世界で戦術人形と呼ばれるアンドロイドだ。……驚くことに人間の女性に瓜二つだが、彼女たちはロボットだ。そして彼女たちが戦ってた相手は鉄血工造と呼ばれる会社が作り出した戦術人形のようだ」

 

「……同じ戦術人形同士が争うんですか?」

 

 パイロットの一人が質問する。

 

「いや、どうやら事情があるようでな。紫色の方はなんらかの事故で統率AIが暴走し鉄血全ての戦術人形を支配下に置いて鉄血本社の社屋にいる従業員を一人残らず皆殺しにした後、この世界の人類に牙を向いているようだ。そして2つ目は見たことのない装備を扱う軍隊がこちらもまた見たことのない化け物共を相手にしていた映像だが、これについては今のところ詳しい情報が得れていない。ある程度は集められてはいるが正確性に欠ける、より詳しく調査する必要があるだろう。詳細が分かり次第通達する」

 

 会議室のドリンクサーバーからコーヒーを汲み口を付け、一拍置いてアンダーソンが再び話し始める。

 

「そして3つ目だか、ここからが本題だ」

 

 声のトーンを一段落としてアンダーソンが重苦しく口を開く。普段冷静沈着な作戦コーディネーターである彼の声からは珍しく焦燥が感じ取れた。

 

「……第三次世界大戦が、この世界の地球では起こったようだ。我々の世界の地球の歴史では世界大戦など起こっていない。どうやら領土や食料を巡って核兵器をふんだんに使って互いを攻撃し合い、航空、及び海上戦力を使い果たし、最後は泥沼の地上戦を行ったようだ。その後国家は大きく疲弊し、統治能力の大半を失った。現在は重要都市などの拠点を除きかつて自らの領土だった土地をオークション形式で売りに出し、PMCなどの民間企業が統治している有様だ。……ここまで説明すれば後は分かるな? 存在しない兵器や化け物に世界大戦、戦術人形などこの時代において俺たちの地球の歴史と大きく食い違っている。以上の事から我々の地球とは大きく違った歴史を辿る謂わば平行世界の地球に我々は辿り着いてしまった……様だ」

 

 アンダーソンの口から告げられた現在の状況にこの場の誰一人としてついていけなかった。ミランもまた何を馬鹿なと思ったが、アンダーソンはつまらない嘘をつく男ではないのはこの場にいる全員が理解している。

 

「つまり私たちは次元断層からの脱出後、不慮の事故で並行世界の、それも過去の地球に来てしまったと?」

 

「簡単に言うとそうなるな。それに加えて帰還の目処は立ってなく、おまけに先ほどの転移で燃料も心もとない現状だ。技術開発班が現在帰還方法について必死で調べているが当分は帰れないだろう。燃料については既にどの国やPMCにも属さない領域に採掘ポイントの存在を確認できた為後に採掘用の部隊を派遣する予定だ」

 

 

 未だに納得できないが一旦は情報を呑み込みそれらを念頭に入れる。

 それからは現地勢力との衝突する可能性や対応、採掘の為の降下部隊の行動方針を綿密に話し合い、いらぬ混乱を避ける為この情報は後日他の船員に伝えられることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 右腕に取り付けられたグラップリングアンカーと太腿に着用するナイフホルダーに収まっているクナイ状のパルスブレード、そしてスーツ本体に内蔵された光学迷彩がしっかりと動作する事を確認し、自らのタイタンが待つハンガーに足を踏み入れる。

 

「……まさか新型の初運用がこんな形になるとはな」

 

 改めて自らに割り当てられたタイタンを眺めてみる。全長10mほどの灰色をメインカラーとして塗装された複合装甲を纏った人型の機動兵器がメインカメラである翡翠色のデータコアをこちらに向け一瞥する。

 

『仕方ありません。先ずは採掘任務を無事に完了することを念頭に動きましょう』

 

 MBがコックピットハッチを展開し返答する。

 コックピットに飛び乗りハッチを閉めてタイタンフォールシークエンスの準備に取り掛かる。……パイロットである自分が呼び出された時点で何かしら任務に就くとは思っていたがその任務地が並行世界の地球だと誰が想像しただろうか。

 

『もし現地の勢力と遭遇した場合、こちらから絶対に攻撃行動を起こしてはいけませんよ』

 

 

「……分かってるさ。相手がこちらに攻撃してきた場合は警告を入れ、それでも敵対するなら穏当に無力化する、回線などで連絡を入れてきた場合はこれにある程度応答し最低限の必要な受け答えをする、その際下手な受け答えはしない。だろう?」

 

『はい、その通りです。アンダーソン大佐は必要が有れば武装の使用を許可しています』

 

 MBと作戦開始五分前に作戦内容の再確認を行っていると友人である偵察任務を終えて帰投したクーパーが小隊回線を開き通信を入れてきた。

 

『そっちは準備できたか?』

 

「ああ、問題ない」

 

『それは良かった。……偵察任務後に採掘任務を押し付けてきたアンダーソンには後で文句を言わないとな』

 

 偵察任務遂行後、彼もまた採掘任務に捻じ込まれたようだ。ご愁傷様である。

 

『降下後周囲の安全を確保し採掘用ハーベスターを設置後、採掘終了まで防衛を行なってください。この際現地勢力に攻撃された場合武装の使用許可が下りています』

 

 相棒が任務の最終確認をする。それに頷くとタイタンフォールシークエンスを実行に移す。それに伴いハンガーにアナウンスが流れた。

 

『タイタンフォールシークエンス開始三十秒前、ハッチ展開に伴い適正タイタンパイロットを除く人員はハンガーから速やかに退去してください。繰り返します……』

 

 聞き慣れた警告アナウンスを聞き流しているとタイタンが接続されたハンガーユニットの足場が開放される。

 

『カウントダウン開始、5.4.3.2.1タイタンフォールスタンバイ』

 

 アナウンスが終了すると同時にユニットの接続部が切り離され、重力に従い降下地点に向け二機のタイタンが落下を開始した。

 

 

 

 

 

 

 




タイタンフォール用語解説
エリ・アンダーソン少佐
タイタンフォール2において登場するSRSパイロットの一人。タイタンフォールにおいてはあるステージで天井に埋まりアンダー/ソンとなり死亡した彼を見つけることとなる。本作品に於いては存命しており大佐にまで上り詰めた模様。因みに初代タイタンフォールにて同名のアンダーソン司令官が存在するが彼とは別人である。

新型ヴァンガード級タイタン
本作品一話にて登場したオリジナル機体。飛行ユニットの追加と装甲の大幅強化、タイタン武器の規格を大型化し一部コアアビリティが大幅にカスタマイズされている。外見は通常ヴァンガードに追加装甲と四基のフライトユニットが増設された形となっている。

SRS
ミリシアが誇る特殊偵察中隊。ミリシアでもトップクラスのパイロットと歴戦の兵士で構成されている。因みにヴァンガードタイタンは現在彼らのみが扱っている様だ。
敵地最深部へ侵入し陽動や工作、威力偵察に情報の奪取など非常に危険な任務を担当する。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。