…はい、また遅刻です。
一緒に寄り道カラオケデートするお話です。久々にサノバのCG見返したけど……ええな。:thumbsup:
「おーい、和奏ー」
「なぁにー? 柊史ー」
名前を呼ぶと和奏はとてとてと俺のそばまで近寄ってきた。そんな様子もやはり可愛らしい。
「え、急にニヤけたりして何考えてるのさ……」
「えっ、い、いや別に」
「?、変な柊史。で、どしたの?」
「そうそう、今日和奏バイト無かったろ?」
「うん、実はアタシもそのことで柊史に用があったんだー」
「お、じゃあ考えてることは同じかもしれないな」
「うひひ、そうかもしれないね」
「「じゃあ、一緒に帰ろっか!」」
伸ばした左手から間もなくほんのりと温かく柔らかい触感が伝わってくる。クラスの奴らからの視線も付き合いたての頃こそチクチクとした"痛み"もあったが今となっては何やら生暖かいものを感じる。だがそんなことは気にならない。左手から伝わる温もりと、甘酸っぱい"味"で俺の頭の中はいっぱいいっぱいだった。
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「ねぇ柊史、折角今日は授業も早く終わったんだしたまには寄り道してかない?」
「お、いいな。どこ行こうか、俺は特に思い当たらないから……。和奏と一緒ならどこでもいいぞ」
「も、もー……。すぐそういうこと言う……、じゃあ……こっち来て!」
繋がれていた手がとある交差点でいつもとは違う方向へと引かれる。
和奏に手を引かれるままやってきたのはよくCMで見かけるチェーン店のカラオケボックスだった。
「カラオケボックスか、俺来るの初めてなんだよな……」
「え、海道とかとも来たことないの?」
「あいつと寄り道するときは大抵ゲーセンとかだからな」
「ふーん……じゃあ柊史の初めて、アタシが貰っちゃいまーす」
「言い方言い方……」
「うひひ、だって本当のことなんだもん。アタシは柊史の初めて奪えて嬉しいよ? ほら早く入ろ入ろ!」
店の中に入ると和奏はスムーズに受付を済ませ、俺を部屋へと案内してくれた。
「へぇ、こんな感じなのか…。うわ、スクリーンとかある」
「本当に初めてなんだね柊史……。アタシが使い方とか教えたげるからどんどん曲入れてこ!」
元々音楽が好きだからだろうか、いつもよりテンションが少し高めな和奏から端末の操作方法などを教えてもらいながら、お互い交互に歌いたい曲を入れていった。
有名な曲でデュエットしたり、俺が普段何気なく聴いてるバンドの曲を歌ったら和奏が食い付いてきたり。俺は濃密なひとときを過ごしていた。何より好きな女の子の歌声は聴いていてとても心地がいい――
楽しい時間は早く過ぎるもので、気付けば退室15分前になっていた。
「じゃあそろそろ時間だから最後にこれ、アタシが柊史に向けて歌いたい曲だから。ちゃんと聴いててくれると嬉しいな、なんて……」
言った後に羞恥心からか顔をほんのり朱に染めて俯いた彼女に愛おしさを覚えながら、"言われなくても"という気持ちを込めて俺は頷いた。
スピーカーから流れ出したのは、俺も耳にしたことのあるイントロだった。
「すぅ、――こんなにあたたかな幸せに、身体ごと包まれて……」
よくテレビなどで耳にするラブソング、普段は聞き流していたが一語一語大人びた表情でフレーズを刻む彼女に俺は思わず息を呑んだ。
曲が進行すればするほど、俺の彼女への愛おしさが溢れんばかりにこみ上げてくる。目も耳も、ずっと彼女に釘付けだった。
「……時をかけ辿り着いた 想いを噛み締めている――」
「んぎゅ、、しゅ、柊史……?」
アウトロが流れ続けるなか、俺は思わず和奏の小さな身体を抱きしめていた。
「…ありがとな、和奏。俺のことを好きになってくれて」
「……こちらこそ。アタシのこと、好きになってくれてありがとね」
和奏は仔猫のように頬を俺の胸に擦りつけながら柔らかく微笑んだ。
退室5分前を知らせるフロントからの電話が鳴り響くまで、俺たちはしばらくお互いの温もりを感じていたのであった。