TRIGUN×Cowboy Bebop The dead men's funeral song【死んだ男たちの挽歌】 作:すいませんorz
以下の条件にご不満がない方のみ、読み進めください。
① 一部、独自解釈を含みます。
② 一部、キャラの性格が異なることがあります。
③ 一部、設定に矛盾があります。
④ オリジナルのキャラクターが登場します。
⑤ 誤記、設定や武器など勘違いしている部分があるかもしれません(修正箇所を教えてくださる方大歓迎!)
※ この作品は理想郷にも投稿しています。
俺、スパイク・スピーゲルが目を覚ますと目の前には何も無かった。
何も無い、全く持って何も無い。目の前は真っ白で、まるで白一色に塗られた部屋にいるかのように思える。
「めんどくせえ」俺は思わずそう口に出していた、
どこまで続いているのか分からない真っ白な空間。どっちが上で、どっちが下か。右も左も分からない場所で俺は胸ポケットに入っているタバコに手を伸ばす――。
「空を飛ぶ魚よ……」
どこからともなく聞こえる声に俺の身体は反応し、タバコの箱に伸ばしていた手は腰にぶら下がっている銃へと向かう。
「なにが欲しい……」
「欲しい?」俺は銃を抜き、グリップを握り安全装置をはずして声がするほうへと銃口を向ける。
「欲しい」と言われれば金が欲しいし、酒も欲しい。本当に欲しいものはもう手に入らないが、気休めのお遊び程度のものならあって困るものじゃない。
とりあえず身体を隠す場所のないまっさらな場所で敵の居場所がわからない以上、声の主の出方を探るしかない。
「とりあえず肉がたっぷり入ったチンジャオロースが欲しいね!」
俺は銃を構えたまま、神経を尖らせる。もしも、どこからか声がすれば偉そうな奴の居場所が分かるはずだ。
「それでいいのか……?」
また声がする。今度の声は心なしか不満気に聞こえた。だとすれば目的は何だ?
俺はその声の方へと銃口を向けると、不思議と天井を指している。俺は不思議に思い首を捻って考えた。もしかすると、俺はどこか真っ白な部屋に放り込まれ、そしてスピーカーと話しているんじゃないのか、と。
突然、うまそうな匂いを感じて俺は振り返る。そこには肉が山盛り乗ったチンジャオロースが出来たてそのまま湯気を立てていた。
「なっ……!」
俺は思わずチンジャオロースの側に駆け寄りつつ、銃口を右へ左へと向け姿の見えない敵を探す。
肉がたっぷりのったチンジャオロースは近づくにつれそのうまそうな香りによだれをたらしそうになるのを堪えながら、チンジャオロースの周りに目を配る。
何かの仕掛けでチンジャオロースが出てきたのだろう、そう疑いつつ回りに目を凝らしてみるが仕掛けがあるような痕跡は全く無い。
俺は自分の周囲の気配を探りつつ、うまそうな肉たっぷりのチンジャオロースに目だけは釘付けになっている。
焼けた牛肉のこうばしい匂いとにんにく独特の食欲をそそらせる香りは、普段ジェットが作る肉が入っているのかいないのか分からないチンジャオロースとは比べ物にならないほどうまそうに見える、というか確実にうまいだろう。
「欲しいのう――」
「箸よこせ!」
俺は思わず叫ぶ。目の前に美味そうな飯があるのに食わないのは失礼だろう。据え膳食わぬは男の恥。いつの間にか銃の変わりに握っている箸で肉を食らう。
弾力のある牛肉としゃきしゃきのピーマンが肉汁に絡んで深いうまみが口内に広がっていく。
うまい、うますぎる!
これは俺が食いたかったチンジャオロースだ。口いっぱいに頬張る幸せを噛み締めながら俺はチンジャオロースに夢中になっていく。
しかし、不思議なことに食べ続けているチンジャオロースは一向に減る気配を見せない。というか、食べているのに最初に出された量と変わらない。俺はそれを疑問に抱きつつも箸をとめず、考えることにした。自分が置かれていえる状況を。
何も無い真っ白な空間で眼が覚めて、訳の分からない声を聞いて。チンジャオロースが食べたいと言ったら肉たっぷりのうまいチンジャオロースが出てきた。
不思議だ。俺は歯ごたえのいいピーマンを咀嚼しながら考えを巡らせる――。
「あっ」
不意に俺の脳裏に光の中に包まれていく瞬間が思い浮かんだ。
そういえば俺たちはあいつらを追っている途中にゲートの中で……。
映画の画面が切り替わるように俺の目の前の景色が一瞬にして変わる。箸に挟んだ肉とピーマン、そしてチンジャオロースそのものも消えた。
まるで、別々の映画のフィルムが切り貼りされていたかの用に目の前の光景は真っ白な何も無い空間からいつもの見慣れたビバップ号の船内へと変わった。
「ねえ、ちょっとゲートの中まで追ってきて大丈夫なの!」
オンボロ漁船を改造したわれらが母なる船「ビバップ号」は光がいくつもの束になって流れる空間と空間の境目「位相差空間」にいる。
惑星と惑星の間を行き来するために作られた超大型のリング「ゲート」はそのリングの湾曲した空間の中を通ることにより、その物体をもう一方のゲートへと転送することができる装置の名称だ。
人類はこのゲートを作るために月を破壊し、地球を住み難くした。しかし、その代償として人類全体は他の惑星へと生活圏を広げ。今や惑星同士の行き来は当たり前の時代になっている。そして、急激に発展し治安が悪くなったおかげで、俺たち賞金稼ぎがのさばることが出来るようになったのだった。
今回、俺たちは宝石など金目のものを中心に輸送宇宙船から強奪して回っている三千万ウーロンの賞金首〈スクーズ海賊団〉の縄張りで奴等を待ち伏せしているところだった。
ビバップ号の中で相棒のジェットとハッカーのエドと駄犬のアインが付近の探索を行い、お目当ての船を見つけたら俺とフェイがそれぞれ乗っている宇宙船でその場に急行、挟み撃ちにする、という完璧な手はずだった。
なぜ、完璧か?
それは確実にやつらスクーズ海賊団が俺たちが待ち伏せしているこの宙域にやってくるからだ。
やつらの目当ては月の半分近くを吹き飛ばしたときに発見された「太陽石」だった。
奴等はその太陽関の密輸をやっている船がこの宙域で商品の受け渡しをするという船を襲うらしい、ということは分かっていた。
なぜ「らしい」というのか。それはスクーズ海賊団の情報を調べ、やつらの情報を情報屋から買ったからだ。
空を飛ぶ自動車が一般的になり、人々が宇宙旅行できるまでに文明が発達しても、昔から続くアナログな方法がハイテクをしのぐ。
所詮は人間同士。どんなにハイテク装置が発達しても最後にやり取りするのは人間だ。それに普段から行いが良くない悪人がブツのやり取りをしたりしたら、その情報はいとも簡単に漏れる。
俺たちがしでかすドタバタが悪名として広がっているのも、アナログが好みだからかもしれない。
俺はタバコの根の部分を噛みながら、ガラにも無くそんなことを考えていた。
所詮、俺たち賞金稼ぎは悪党とさして変わらない。追う側が追われる側に回るのは紙一重だ。
俺はたまたま運良く追われる側から追う側に回ることができただけだ。
人間的には普通のサラリーマン生活が送れるような平凡な生活は期待しちゃいない。
大事なのはどう自分のポリシーにそって生きるかだ――。
俺はほとんど灰になったタバコを灰皿に押し付けて、消した。
「いつまでこんなところで待ちぼうけしてるつもり? いつになったら来るのよ、あいつ等!」
キーキーとヒステリックにラジオの雑音みたいな声を出してフェイが俺の船の画面に現われる。
「んなこといっても、しょーがねーだろ」
俺は頬杖を付いて「お前の話を聞く気はない」という態度を取る。
フェイも俺の船のカメラを通じて俺がどんな顔しているのか見えているはずだが、それを気にする様子はない。
さすが性悪女。
「なんか言った?」
聞こえるはずのない俺の心の声に反応できるあたり、さすがギャンブラーといったところか。まあ、勝ち知らずだが……。
「何よ、なんか文句あんのアンタ?」
フェイは眉間に深い縦しわを刻み画面いっぱいに機嫌の悪い顔を押し付け、俺を睨む。
俺は「悪かった」という風に肩をすかして返事をしてから「あー通信機の様子が――」と言いながらフェイが写っている画面を消した。
コレでやっと静かになる。
俺は静かになった船内で新しいタバコに火をつけて、煙を肺の中へと誘う。肺の中に紫煙がたっぷりと充満するのを感じながら一気に吐き出し、その煙を味わう。
緊張の中のカンフル剤、ストレスの緩和。こういった仕事をしている人間にタバコを吸う奴が多いのは、緊張の中で吸うタバコの味ほどうまいものはないと知っているからかもしれない。それと、一仕事終えた後の酒の味もたまらない。
まあ、健康に気を使う悪党は少ないし、こういう仕事をしている人間の喫煙率は高いからコミュニケーションツールとしても、利用価値化があるからという理由が無いわけでもないが。
「ジェット。フェイじゃないが本当に奴等くるのかよ?」
「釣りっていうのは待つものだ。しかも、相手が大物なら尚更な」
ジェットが画面の中で目をつぶったまま腕組みをして銅像のように動かない。
「それに俺の勘じゃ、そろそろ奴等が来ると言っている」
「イッテル、イッテルー」ジェットの後ろで気の抜けるエドの声が聞こえた。
「そーろそろそーろそろ、来ると思うよー?」
まだ幼さが残る顔をしたエドが妙な調子の鼻歌を歌いながらジェットが写っている画面の中ににょきっと姿を現わすと、俺の船にデータファイルが転送された。俺はそのデータファイルを開くとそこには子供のラクガキのような船と船が線でつながっている。
「これがー輸送船でー」
エドの声に合わせて画面が船の画面に切り替わり。「これがー海賊船」ラクガキのような輸送船にどくろマークが近づいて交わると「BOMM」と画面が爆発した。
「なるほど、輸送船の航路から割り出したってわけか……」
俺はエドが表示した画面を見ながら頭をかく。
「おい、スパイクきたぞ」
ジェットがつぶっていた片方の目を開けて顎をしゃくる。俺の画面に二つの緑色の光が点滅し、この宙域に俺たち以外の宇宙船が来たことを告げていた。
「役者はそろったんだ。後は主役が来るのを待つだけさ……」
ジェットがつまらなそうに腕組みをしたまま言った。
俺は空になったタバコの箱をダストシュートに投げ入れて、船の中に隠していたタバコのカートンの封を開ける。
「来るとしたらそろそろだな……」
太陽石の取引はなかなかうまく行っていないらしく、二隻の宇宙船が横並びになってからすでに三十分も立っていた。
「しっかし、スクーズ海賊団の奴等も強欲よねー。取引する金とそのブツを横取りするなんて……」
「お前に言われたくねえだろ」小声でつぶやく俺に画面越しに伝わるフェイの冷たい視線。「アンタねえ――」とフェイの怒号を遮るように警告を伝えるけたたましい機会音が鳴り響く。
「おいでなすったか!」
俺はハンドルを握り、アクセルに足をかける。
俺たちが監視していた宙域に大型の高速宇宙船が高速で現れた。
大型の宇宙船はその船体からアームを伸ばしながら取引をしている二隻の宇宙船に近づくと、そのアームでガッチリと二隻を捕まえたままこの宙域から離れていく。
その様子はなれているのか、とてもスムーズだ。
アームで掴まれた船員達は蜘蛛の子を散らすように大急ぎでそれぞれの船から逃げていくのが映像で確認できた。
俺はレーシング用の船を改造した宇宙船「ソードフィッシュ」のアクセルを思いっきり踏み込んでハンドルを回す。
ソードフィッシュの赤い船体とその鋭いエッジの効いたボディから推進剤がほうき星の尾のように噴出し、ソードフィッシュを最高速度まで加速させる。
その姿はきっと赤い彗星のように見えただろう。
俺は自分の身体にかかる鉛のように重たいGに耐えながら、ソードフィッシュに備えつけているビーム砲をチャージしつつ、二隻の宇宙船をアームで掴んだスクーズ海賊団の船に近づく。
海賊船は俺たちに気づいたのかアームに掴んだ二隻の宇宙船を船内に収納して、その船体から砲塔を出した。
「ちょっとヤバイんじゃないの!」
フェイの乗る戦闘機に銃弾が飛ぶと悲鳴のような叫び声をあげながら、その射線から逃れるように右へ左へとジグザグに避ける。
俺は飛び交う銃弾の間を縫うように飛び、海賊船との距離を一気に縮める。
海賊船の船体から吹き出る水のようにミサイルが煙をあげて何本もその姿を現した。ソードフィッシュのモニターにはミサイルの接近を告げる緊急を意味するアラームがうるさいほどに鳴り響く。
「ちょっと、ちょっと!」
通信機からフェイの叫び声が聞こえると俺の船内に味方が被弾したという表示が出た。
「ジェット!」
「わかってる!」
俺は舌打ちして、目の前に見えたミサイルにソードフィッシュ備え付けのマシンガンを食らわせ、目前で爆発させる。
目標手前で爆発したことにより、その威力を殺された爆煙の中を切り裂くように突っ切り、さらに向けられる砲塔の射線上から逃げるためにソードフィッシュの船体を傾ける。
ソードフィッシュの真下を砲弾が通り、その船体をかすめたのかコックピットが細かく揺れた。
さらなる砲撃をほとんどスレスレでかわしながら俺はソードフィッシュのビーム砲を海賊船へと向ける。安全装置をはずし、照準を定める。
「倍返し、と行こうじゃないか!」
俺はビーム砲のスイッチを海賊船とソードフィッシュがかすめるような瞬間に合わせた。
一瞬のタイムラグ。ソードフィッシュが揺れ、閃光が走る。
海賊船のエンジン部分をかすめるように狙ったビームはピンク色の光を一瞬輝かせた。
俺は小さく息を吐く。
当たったか?
ビームの光が消えると、そこには熱で溶かされたバターのようになった海賊船の装甲が爛れ、船内の機械部分が見えるように装甲をえぐられていた。
「よくやったスパイク。フェイはこっちで回収した」
エンジンを傷つけられたのか、海賊船は煙を上げている。
宇宙では、慣性の法則で動き出したものは永遠にそのスピードを維持するが、船体の姿勢制御のためまっすぐにだけ進むわけではない。そこでスピードを殺されたり、突如現われたりする隕石群の間を進むには大きければ大きいほど他の部分に使う力も使われる。さらに、エンジン部分に被弾し本来の性能をフルに出せない場合にはさらにそのスピードは殺される。海賊船は徐々にそのスピードを落としていった。
「おい、スパイクまずいぞ!」
突然、ジェットのほとんど怒号のような声が船内に響く。
「どうした!」俺はチラリと画面に映るジェットに視線を向けつつ、船体から煙を上げつつもなお砲撃の手を緩めない海賊船の砲弾から避けるためソードフィッシュを上へ下へ右へ左へ走らせる。
「あいつら、このコースだとこのままゲートに突っ込むぞ!」
「やれやれ、往生際の悪いことで」
俺は諦めたようにため息を吐いて、ソードフィッシュを海賊船の射程距離内から離脱させる。
「ジェット、回収してくれ」
俺はビバップ号と相対速度を合わせた。
スピードが速かろうが、遅かろうが相対速度が同じで並走する場合はお互い止まっているのと同じになる。
俺は止まって見えるビバップ号にソードフィッシュを収納させた。
それから俺たちは海賊船の後を追ってゲートをくぐった。もちろん料金を精算している暇なんて無いから無断進入だったがそれぐらいの罰金は海賊達にかけられている賞金に比べればスズメの涙にも等しい。
俺はゲートの流れる光を見ながら、海賊達に掛かっている三千万ウーロンの分け前をどう使うかを考えているところだった。
そんな時に海賊船が爆発したら驚くだろう。
俺は追っていた海賊船の一部が爆発したのを見てぞっとした。
なんてったって、賞金首が死んじまったら賞金がパーだ。
俺はどうか誘爆して海賊船が木っ端微塵にならないことを願った。
しかし、俺の願いはどうやら叶わなかったようで、海賊船は更なる大きな爆発を起こした。
そして、俺たちはゲートの中で眼がつぶれそうなほどのまぶしい光に包まれたのだった。
「で、今に至ると……」
消えてしまったチンジャオロースの皿を掴んでいた手が名残惜しい。
俺は三千万ウーロンも無くし、肉たっぷりのチンジャオロースも消えた。
まさに絶望だ。
俺はがっくりと肩を落とす。
「生まれ変わるか……」
すべてを思い出した後も妙な声は止まらない。それに今度は「生まれ変わる」ときた。いよいよ俺の生死が危うくなってきた……。
すでに死んでいるのか、或いは死にかけの夢の中か。
「生まれ変わるなんてごめんだね、俺は」
俺は胸のポケットからタバコの箱を取り出してタバコを一本取り出して口へと運び、火をつける。
「生まれ変わらないのか……?」
俺は大きくタバコの紫煙を肺に充満させる。
この味を味わえる、ということは死んでないんじゃないかもしれない……。
「あいにく俺は一度死んでるんでね。これ以上、甦るわけにはいかないのさ」
俺は肺から吐き出したタバコの煙で輪を作りながら言った。
「理解不能だ……」
神様にもわからないことがあるとはお笑いだ。
「そいつはよかった」俺は口の端に笑みを浮かべてやった。
突然、俺の体がサウナの中にいるように熱くなる。
ひどく蒸し暑い。
もしかして、俺は火葬でもされているのか?
それに、ひどく獣くさい。
獣くさい?
一体なんの臭いだ?
俺は恐る恐る目を開きながら祈る。
どうか夢から覚めた先にあるのが、燃えさかるビバップ号の中でないことを。
俺が目を覚ますとそこには犬の、アインの顔があった。
そして、俺は俺の顔がひどく獣くさいことに気がつくのと同時に、ねっとりとした鼻水を顔に吹き付けられたような不快感を覚えてシャツの袖で顔を拭った。
「あら、やっとお目覚め?」
フェイが遅かったと不満そうな声をあげて俺を見ていた。
「……どうやら死んじゃないようだな」
「お互いにな」
後ろからジェットの声がして、俺はゆっくりと身体を起こして伸びをする。
最高の寝覚めとはずいぶんと程遠いが、永遠に眼が覚めないよりはマシだ。
「なあ、ジェット」
「あん?」
ジェットがパソコンのモニターと睨めっこしながら生返事をした。
「俺、変な夢みちまったぜ……」
「生まれ変わったらってやつ?」
フェイがあっけらかんと言い放つ。
「ってことは、お前たちも見たのか?」
「見た見たー。なんかわけわかんなかったよー」
ジェット、エドと続き最後にアインが話を締め括るように「ワン」と一声鳴いた。
「私、永遠の若さと使い切れないほどの大金と、色々頼んだのに目が覚めたら何一つ鳴くって、腹たったわ」
「……お前、遠慮ってモンを知らねえな」
俺はフェイの発言に呆れてため息を吐いた。
コレだから女ってやつは……。
「コレだから女って奴は……」ジェットは鼻で笑って俺が思ったことと同じことを言った。
「俺はアレコレ悩んでいるうちに目が覚めちまった……」
「なんか祈っときゃあよかったかな」とジェットが名残惜しそうに言う。
「エドはアインと遊んでたよー」
全員同じ夢を見るとは……。
これが神の思し召しだとしたらとんだお門違いもいいところだ。
聞いた相手が悪かったな、俺は心の中でそう笑った。
「ところで、俺たちは今どこにいるんだ?」
フェイが不満たっぷりに「そうよ、そうよ。ここどこなのよ」と俺の後に続いた。
「それがなあ……」
ジェットが禿げ上がった頭をパシリと叩いて申し訳なさそうにつぶやくとパソコンを操作する。
ビバップ号の操縦室兼、遊戯室のモニターに外の風景と思しき景色が浮かび上がる。
「嘘でしょ……」
フェイが引きつった笑い顔をした。
「これって……」
俺もモニターに映し出された光景に絶句する。
「残念ながら現実だ」
ジェットがため息混じりにしぼりだすように、押しつぶされたような声を出す。
「わーい、わーい。お砂がいっぱい!」
エドが楽しげに笑い声を上げている。
「そうだ、ココは砂漠のど真ん中さ。しかも、俺たちの知らない宇宙のどこかのな……」
俺は自分が想像しなかったぶっ飛んだ状況に驚愕した。言葉をなくすとはこういう事をいうのだな、と思いながら自然とでた言葉は「……マジかよ」だった。
夢だと思いたいが、どうやら夢ではないようだ。
現実はいつも非常だ。
外を映すカメラは正常に写っているようだし、自分たちの居場所を告げる装置も故障した様子は残念ながら見られない。
「ありえないでしょ……」
全員がほとんど同時に大きなため息を吐いた。
ただ、犬のアインだけががいつものように元気良く吠えた