ほんの少しだけ、不思議なお話たち   作:開屋

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 あなたが面と向かって話している相手というのは本当に『その人』なのでしょうか?



イヴちゃん

 よく晴れた日、彩が学校に着くと体育館から威勢のいい声が聞こえた。それと同時にバシィン!と竹刀と竹刀のぶつかる音が響き渡る。その中に聞き覚えのある声も聞こえてきた。

 

「この声は....イヴちゃんだ!こんな朝早くから頑張ってるなんてやっぱすごいなぁ....」

 

 感心しながら体育館の方を見ながら歩いていると、うっかり別の生徒にぶつかってしまった。彩は『あっ、すみません!』と小さく謝り、下駄箱の方へ駆けていった。

 

 その日昼休み、彩が廊下を歩いていると偶然イヴに出会った。

 

「あれっ、イヴちゃんここで会うなんて珍しいね。どうしたの?」

 

 彩が声をかける。

 

「あっ彩さん!実は今日茶道部で向こうの教室で集まることになってるんです。そこで少しこれからの活動などについて話し合うことになってるんですけど、他の人の意見も少し聞きたいという話になったんです。それで、あの....」

 

 そう言って少し決まり悪そうにする。その後少し間を開けて

 

「彩さんからの意見を聞きたいんです。私たちの部ではいろんな人にしっかりとしたおもてなしをすることが大切なので、私たちの部の人たち以外の意見がほしいんです。どうか来てくださいませんか?」

 

 イヴは彩を誘う。

 

「あー、えっと実は....ちょっと今先生から頼み事されてて...だから今はちょっと時間ないかも....ごめんね!」

 

「そうだったんですね、残念です」

 

 少し落ち込んだ様子のイヴを見て

 

「ご、ごめんね!何か他の機会にあったら力になるから!」

 

 そう言ってそこを去った。

 

 その日の放課後、彩が帰ろうと下駄箱へ向かうと見慣れた後ろ姿があった。

 

「あれ....?イヴちゃんだ」

 

 カバンを持ったまま少しだけふらついたような足取りでイヴは歩いている。

 

「(どうしよう....なんか少しだけ疲れてるみたいだけど、さっきのことも気になるし声かけてみた方がいいかな....?でもどうしよう....)」

 

 悶々とした気持ちで彩はしばらく声をかけずイヴの後をつける。しばらくついていくと、やがてある教室の前に立ち止まっておもむろにドアを開けた。

 

「ここは....華道部の教室?」

 

 彩が気づかれないような小さな声で独り言つ。そんな彩に気づくことなくイヴは部室へ入っていく。

 

「....」

 

 何も言わずイヴはそのままドアを閉めて行ってしまった。

 

「(どうしたんだろう、何かいつもと様子が違うような気がする....ちょっとだけ覗いてみてもいいかな....)」

 

 そう思い、音を立てないようにそっとドアを少し開けた。

 

 部室の中ではイヴが歩き回っていた。何かを探しているようにも思えたが、やはりその足取りはふらついている。

 

 気のせいか一瞬だけ視線がこちらに向いたような気がした。その目は普段のイヴのそれとは少し違って、少しくすんで見えた。

 

「!」

 

 焦りの気持ちと、普段とイヴの様子が異なることとで合わせて僅かながら恐怖を覚えた彩は、ドアを開けたまま急いでその場を去った。結局その日はそれ以降イヴと会うことはなかった。

 

 

 

 次の日の放課後、彩が帰ろうとしていると、偶然廊下を歩いているイヴを見つけた。昨日のこともあり、声をかけるかほんの少し躊躇った。

 

「あっイヴちゃん偶然だね。今から帰るの?」

 

 できるだけ自然に声をかけた。

 

「あっ、アヤさん!そうです。アヤさんも今から帰りですか?」

 

 と、返事をするイヴの様子は昨日のそれとは違いいつも通りのものに見えた。

 

「う、うん。せっかくだし途中まで帰らない?」

 

「そうですね。一緒に帰りましょう!」

 

 イヴの屈託のない返事に彩はちょっとした安心感を覚える。少し歩いてから彩は恐る恐る尋ねる。

 

「そういえば昨日の帰りにたまたまイヴちゃん見たんだけど、その....なんか足元少しふらふらしてたし、何かあったの?」

 

 それを聞いたイヴは少しハッとした様子を見せる。

 

「アヤさん、あの時見てたんですか....」

 

「えっ?」

 

 何か後ろめたそうな表情のイヴを見て彩は思わず聞き返す。

 

「も、もしかしてイヴちゃん、何か話せないような—」

 

「実はここ最近、今までよりしっかり部活に顔を出すようにしていて少し疲れてたんです....」

 

「....え?」

 

 イヴの返答を身構えていた彩はつい素っ頓狂な声を上げる。

 

「最近モデルの仕事やパスパレの活動もあってあまり部活にショウジンできていたなかったので、しっかりと部活に顔を出していこうと決めていたのですが....思ったより大変だったので、少し疲れてたんです。ちょうどアヤさんはその時の私を見つけたのでしょう」

 

「そうだったんだ....何か人には言えないような悩みとかがあるのかと思ったよー....でも疲れてるのならしっかりと休んだ方が良いよ、イヴちゃん」

 

 少し安心した表情で彩はイヴに笑顔を見せた。しばらく歩いて2人は帰り道が分かれる。

 

「アヤさん、きょうはありがとうございました。また明日会いましょう!」

 

「うん!じゃあね、イヴちゃん」

 

 そう笑顔で交わして2人は別れた。

 

 

 

 また次の日、彩は学校の廊下で偶然よく顔を知った女子と遭った。

 

「あっ!花音ちゃん」

 

「彩ちゃん、偶然だね」

 

 そのまま2人は色々話しながら廊下を歩く。そしてちょうど別れ際の時にふと彩は気になることを思い出した。

 

「あ、そういえば花音ちゃん。実は謝らなきゃいけないことがあるんだ」

 

「え?な、何かあったっけ?」

 

「えっと、花音ちゃんって確か茶道部だったよね?」

 

「う、うん。そうだけど....それがどうしたの?」

 

「実は昨日の昼休みにイヴちゃんに茶道部の活動について何か意見がないかって聞かれたんだけど....その時私時間なくて手伝えなかったんだ。確かその時茶道部のみんなで集まってたって言ってたから、多分その時花音ちゃんもいたってことだろうし....だから昨日はごめん!役に立てなくって....」

 

 そう言って彩は小さく頭を上げる。顔を上げるとキョトンとした花音の顔が見えた。そして、こう言った

 

「え、えっと....昨日の昼休み、だよね?その時間は特に茶道部では活動はなかったけど....」

 

 

 

 

 

「え?」

 

 花音の言っていることがよく分からず、彩もキョトンとした顔を見せる。

 

「多分何らかの活動があったら私の所にも連絡来てると思うし....でもそういう連絡なかったから、きっと昨日は....何もなかったと思うよ?」

 

 階段を降りようとしていた彩はその足を止めて突っ立った。

 

「あ、彩ちゃん?」

 

 花音の呼びかけに彩は応じられなかった。頭が真っ白になった彩はふと昨日の昼休みに言われたことを思い出した。

 

 

 

 

 

 

「どうか来てくださいませんか?」

 

 

 




 疲れた時には寝るのが一番ですね。こんな時間に上げてていうのもアレでしょうけれど....
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