この話は過去に作者が見た、とある話に大いにインスパイアを受けている作品です。もしかすると見覚えのある話かもしれませんが、ご了承ください。
「深夜のパステル*散歩!....最恐心霊スポットを....えっと....」
「(『夜の心霊スポットを踏破せよ』よ、彩ちゃん)」
「し、深夜の心霊スポットをてょうはせよ~!」
「あっはは!二段階でやっちゃったね~彩ちゃん」
「うぅ、だって怖いんだもん....」
この日は深夜ロケで、パスパレのメンバー全員が心霊スポットへ行き、心霊写真の撮影を目指すコーナーの撮影であった。
この日は名高いと言われる霊媒師である人も付いており、一昔前の心霊ロケを彷彿とさせるような雰囲気であった。その人の話曰く
「この家は2年ほど前に一家心中が起きた場所でして、それ以来誰も棲んでおらず未だに成仏していない幽霊が彷徨っています。ここからでも強い怨みの気を感じますね」
....とのことである。話を聞いた彩やイヴは顔を真っ青にして震えている。その様子を見た日菜は
「だーいじょうぶだって!それじゃあ早速皆でパパっと行っちゃおっか!」
と、言って先陣を切ろうとする。それを見た番組のスタッフが慌てて日菜を止める。
「あっ、ちょっと待って下さい。今回のロケなんですけど....」
そう言って日菜に何かを手渡す。
「何これ?」
「クジです。今回はこれでチーム分けをした上でこちらの廃墟の方へ行く感じになります」
それを聞いたメンバーが全員ピクリと反応する。続けてスタッフは
「ちなみにチーム分けは2人が2組、そして余った方は一人で行ってもらうことになります」
と、補足する。
「ひ、一人....ですか?」
怯えた表情でイヴが小さく言う。
「ええ、と言うわけでぐいっと引いちゃって下さい」
「そんなお酒みたいに....だ、誰かと一緒になれますように!」
彩がそう掛け声を出してみんなが一斉に引いた。
「うぅ....千聖ちゃん出来るだけ離れないでね....」
「分かったから彩ちゃん少し離れなさい」
「うぅ、そんなこと言われてもぉ....怖いものは怖いんだってば!」
「まったくもう、それにしても確かに真っ暗で雰囲気はあるわね」
「千聖ちゃんまで怖いこと言わないで~!」
「大丈夫よ、全く心配性なんだから....」
ドスン!
「うわぁぁぁ!?」
「きゃっ!?」
いきなりの物音に彩だけでなく千聖も声を上げる。
「なになに!?今の音なに!?」
「お、落ち着いて彩ちゃん。多分何かが落ちた音よ。だ、だから心配しないで」
「うぅ~....そう言われてもぉ....もうやだよぉ....」
半泣きになって彩は千聖にひっついたまま進んでいく。この後は特に不思議なことが起こることもなく、何枚か写真を撮って戻ることができた。
「イヴちゃんホントに大丈夫なの?最初は大分怖がってたみたいだけど」
「だ、大丈夫です!物の怪に怯えるほど私のブシドーはそう簡単に揺るぎません....!」
「ならいいけど、無理しちゃダメだよ?あたしはこういうの平気だからよくわかんないけど」
「日菜さんはゴウタンでかっこいいです。私も....」
ガタッ!ドン....!
「うわっ!?」
「きゃあっ!?」
暗闇の中の突然の物音に二人は驚いた様子である。
「急に音がしてびっくりしちゃった。もしかしたらこの辺にいるのかな?」
「ヒ、ヒナさん!そんなことある訳ないですよ....きっと古い建物ですから何かが揺れただけです....」
「そうかな~?それならこの辺特に集中して撮っちゃおう!何かいるかもしれないし!」
「ええっ!?私は....」
「イヴちゃんは無理しなくてもいいって。あたしがパシャパシャッとやっちゃうから!」
「....ここで諦めるのはブシの名折れです!私も撮ります!」
好奇心と、恐怖への克己心とで温度差はあったが二人とも多く写真を撮ってその後は何事もなく戻って来た。
「しかしジブンが一人になるとは....さすがにこの暗さで一人は心細いですね....」
運悪くソロパートを任されてしまった麻弥はそう言いつつも道中道中でしっかりとシャッターを切っていく。
「確かに過去に幽霊騒ぎってことは学校でもありましたが....今回は正直別格ですよ、あの時と比べてあまりにもロケーションが....」
ガタン....!ギシッ....
「うわぁっ!?何ですか今の音!?」
そう言って麻弥は身をブルっと震わせる。おそるおそる音のした方を向くが、何も視えない。
「ま、まぁ古い建物ですしこんなこともありますよね....ラップ音とかではないですしきっとそういったものの類じゃないですよね.....一応ここも撮っとかないと....にしても意識したらホントに何かがいるような気配がしてきましたよ....」
怯えつつも麻弥は無事に生還した。
「おかえり麻弥ちゃん!」
「うわわっ!?彩さん!どうしたんですか!?いきなり抱き着いてきて!?」
「だって、麻弥ちゃん一人だし大変だったと思ったから....あんなところ一人でなんて私には無理だったと思うもん!」
「私もマヤさんには頭が上がりません!」
「そうね。あの様子だと彩ちゃんは一人だったら途中で引き返してたかもしれないわね」
「あたしは一人だったらどうだっただろう?でも確かに不気味かもねー」
状況が状況だったため特に彩とイヴからの麻弥への賛辞が惜しまれない。
「さて、この状況に水を差すのは少し気が引けるかも知れませんが本番はここからですよ」
少ししてスタッフが間に入る。
「えっ!?もうロケは終わったんじゃないですか?」
「ええ、捜索は終わりですが今回の目的は『心霊写真』を撮ることです。なので皆さんの撮った写真をこれから確認することになります」
「そういえばそうだったね。あたしはたくさん撮って来たから何か写ってるの取れてるかも!」
「....その日菜ちゃんの前向きさは時として本当に羨ましいわ」
翌日、ロケで撮られた写真の確認がパスパレの立ち合いで行われた。とはいえ心霊写真などそうそう撮れるわけでもなく、ただただ不気味な廃墟の写真だけが写っているだけである。その間五人は昨日のロケについて談笑している。
「昨日はどうだった?私と千聖ちゃんが行ったときは何か物が倒れてきたような音がしたんだよ....」
「あっ、アヤさんもですか?私とヒナさんが行ったときも途中で何か物音がしました。えっと、確か布団が敷かれてあった部屋だったような....」
「えっ!?皆さんもですか!?ジブンも寝室らしき部屋で物音と床が軋むような音がしました。そこ確かテレビとかクローゼットとかが置いてあって部屋ですよね?」
「麻弥ちゃんの時も物音がしたの?」
「ええ、一人だったせいか妙に気配っぽいものを感じた気もしました....それにしてもみんなが同じ部屋で物音を経験してるって何かブキミですね....」
「ま、麻弥ちゃん!そんな怖いこと言わないでよ~....」
「す,スミマセン....つい思ってしまったもので....」
「すみません、五人とも少しこちらに来て頂いてよろしいですか?」
話しているところ、急にスタッフに呼ばれた。
「どうしました?」
「えっと、日菜さんが撮ったこの写真なんですけど....」
「なになに!?何か写ってた!?」
興味津々と言った様子で日菜が尋ねる。
「いえ....あとこの麻弥さんが撮った写真と、千聖さんの撮った写真の三枚見ていただいてよろしいでしょうか?」
そう言われた五人は、三枚の写真を見比べる。特に何かが写っているようには....
「あれ?」
イヴが何かを見つけたようだ。
「どうしたんですかイヴさん?」
「えっと....この麻弥さんが撮った写真なんですけど....何か影のようなものが写っているように見えるんです....」
「えっ!?」
驚いた四人は一斉にその写真に視線を向ける。確かに言われた通りよく見ると暗い中に薄ーく影が見える。
「ほんとだ....で、でも多分撮った麻弥ちゃんだよきっと....」
「いやこれ....ジブンだけじゃなくてもう一つうっすら見えますね」
「で、でも光の当たり方で複数見えることもあるから....」
「でも影の形が全然ちがうよー?」
「....」
冷やっこい空気が流れる。
「そ、そういえばさっき日菜ちゃんの写真と千聖ちゃんの写真もって言ってましたが、何かあったんですか?」
空気を打開すべく彩が切り出す。
「えっと、先程の麻弥さんの写真と同じところで撮られたらしきものなんですけど....ここ見てください」
スタッフに促され、そちらを見る。
「ここ、クローゼット。千聖さんの写真は閉まってるけど、日菜さんの写真は開いてるんですよ」
「それって....もしかして本物の....」
「やだやだ!そんなことあるわけないよ!た、たまたま風かなにかで開いたんだよきっと!日菜ちゃんたちの方が後で撮ったからそういう風になったんだよ―」
「さすがにそれは無理あるんじゃない?確かに涼しかったっちゃ涼しかったけどスキマ風とかはなさそうだったし。 」
「ひ、日菜ちゃん!そういうことは分かってても言っちゃダメ!」
彩が小パニックになって言う。もう万事休すと言った感じである。
「でも、この写真多分心霊写真じゃないですよ」
急に昨日いた霊媒師が口を挟む。
「わっ!?」
いきなり出てきて五人とも思わず声をあげる。
「ど、どういうことですか?」
千聖が尋ねる。
「この写真は霊の気配を感じません。オーブが飛んでいるわけでも無いですし、この写真をはじめとして、昨日撮られた写真にはどれにもそのような気配を感じませんでした。」
霊媒師がそう説明する。
「な、なんだぁ....よかったぁ....」
脱力しきった彩が心底安心したように言った。他のメンバーもそれを聞きホッとした様子である。
昨日心なしか背後に気配を感じたことを思い出し、『ある仮説』を立てた麻弥を除いては―