ほんの少しだけ、不思議なお話たち   作:開屋

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 私自身もあまりの方向音痴に、友人から匙を投げらました。


地図アプリ

「ふえぇ....ごめんね千聖ちゃん。送ってもらっちゃって....」

 

「大丈夫よ。連絡を聞いた時は心配だったけど、すぐに場所が分かってよかったわ」

 

「うん、よく行く場所でもいつもと違う時間に普段来ない場所に行ったら、どうしても全然来たことのない場所に感じちゃって....」

 

「まぁ気持ちはわからなくもないけど....そうだ、それならスマホの地図機能を使えばいいんじゃないかしら?」

 

「地図....確かに迷ったらどうしても慌てちゃってどうしたらいいか分からなくなっちゃうこともよくあるし、今度もし迷っちゃったら地図アプリ開いてみたらいいかも」

 

「先に『ここからなら家に帰れる』っていう場所に目処を立てておけば、そこからは大丈夫だと思うわ。駅だとかどこかの店を選んで、そこまで地図を使って行けたらあとは慣れた道を進むだけだから」

 

「なるほど!それならよく行くコンビニとかだったら家からも近いし、やってみようかなぁ。あっ、話してたらお家着いちゃった。ありがとう千聖ちゃん。参考にさせてもらうね」

 

「ええ、まぁ迷わないのが一番いいのだろうけど....」

 

 そう言って二人は分かれた。

 

 

 

 数日後、花音と千聖は少し離れたカフェに向かった。

 

「それにしてもなかなか大変だったね。やっぱり電車に乗り継がないといけないのは色々後のこと考えなきゃだからどうしたらいいか分からなくなっちゃうよね」

 

「ええ、私もこれに関してはどうしても克服できないわね....駅のホームとかも場合によっては変わってくるから気が抜けないわ....」

 

「でもこうやって今千聖ちゃんとお茶が出来てるのはやっぱり嬉しいな」

 

「ふふっ、それは私もよ花音。付き合ってくれてありがとう」

 

「いやいや、千聖ちゃんだって誘ってくれてこちらこそお礼を言わなくっちゃ....」

 

 優雅なカフェタイムは二人が思っていたよりも長く続いた。

 

 

 

「あら、もうこんな時間....明日もあるしそろそろ帰らないと」

 

「ホントだ....楽しい時間はあっという間だね。帰りの電車大丈夫かな....」

 

「だ、大丈夫よ。一度行った所だから。花音も心配しすぎよ。もう少し自信を持てばきっと克服のきっかけになるわ」

 

「そ、そうだね。私自身が弱気じゃダメだよね」

 

「まぁその辺りはゆっくりでいいのよ。無理に直そうとしても良くないわ」

 

「うん、ありがとう千聖ちゃん」

 

 

 

 

「何とか帰ってこれたね....」

 

「そうね....一回乗り遅れた時はどうなるかと思ったけど、何とかいつもの駅まで来れたわ。思ったよりも遅くなってしまったけど....」

 

「うん、でも駅の人に聞いたら何とか分かったから安心したよ」

 

「あの時の花音は頼りになったわ。まさか直接聞きに行くなんて驚いたわ」

 

「えへへ、....あっ、ここでお別れかな」

 

「みたいね。一人で大丈夫かしら?」

 

「うん、いざとなったら前に教えてもらった地図で道を確かめるから大丈夫!....出来ればお世話になりたくないけど....」

 

「そう、ね。それじゃあ気を付けてね」

 

 いつもと同じところで二人は別れた。

 

 

 

「地図アプリ、かぁ。今のうちに目印になるところを決めとこうかな....あの店なら載ってるかな....あっ、あった。とりあえずここを経由してから今日は真っ直ぐ帰ろう」

 

 手近なお店を見つけたので、花音は後のことを考えていつもとは少し違う帰り道を行くことにした。

 

 それにしても普段行く道とはいえ、最初に花音の言った通り街灯や車のヘッドライトなどといった局地的な灯りだけでは日の出ている時間ほどに十分な地の利が得られない。

 

 とりあえずこの暗闇ではスマホが一番の頼りである。

 

 

 

 

「えっと地図では....ここかぁ、....あれ?」

 

 

 花音はすぐに異変に気づいた。目印にしたはずの店が地図上では示されているが、目の前にあるのは空き地である。座標にズレでも生じただろうか?

 

 というよりもこうなってしまった以上、帰宅手段がない。いつも通りに真っ直ぐ帰ればよかった....と、公開したところでもはや後の祭りである。

 

「ふえぇ、どうしよう....そうだ、別の場所でもまだ家の近くで分かるところがあるはず....コンビニとかなら....」

 

 花音は地図に示されている、家の近くのコンビニに向かうことにした。

 

 

 

「え....」

 

 確かに地図はコンビニを示している。それならばなぜ眼の前には墓地が広がっているというのか。何を言うにもまず、よりによって目の前が墓地だと言うのが嫌に縁起が悪い。

 

 加えて深夜の墓地となればそういう感じのオーラも半端でない。急いで花音は踵を返して何処かへ走り始めた。

 

 

 

 その後も何度か花音の知る施設などを地図に従って行ったが、その悉くが見たこともない『謎の場所』であった。

 

「どうしよう....ここってどこなの....?」

 

 花音は携帯をしまって無我夢中に走った。こうなれば信じられるのは自分しかいない。とりあえず灯りのある方へ向かった。ヒトに残された野性的な本能だろうか。

 

 

 

「はぁ、はぁ....あれ?ここって?」

 

 気がつくと花音は最初にいた駅まで戻ってきていた。ここは本当に駅なのだろうか?もう一度携帯を確認して....いや、やめておこう。

 

「とりあえず....夜でもいつもと同じ帰り道なら大丈夫、だよね?」

 

 おそるおそる、慣れているはずの道を確かめるように進んでいく。ゆっくり、ゆっくりと。

 

 

 

 いつもよりも倍近くの時間をかけて花音は何とか家に辿り着いた。どっと疲れた花音は家の床にへたり込む。ホントに何だったんだろうか?

 

 何時になったんだろう....そう思い部屋の時計を見る。普通ならば大体7時半くらいのはずだが、色々彷徨う羽目になった訳だし今は何時になっているのか皆目検討もつかない。

 

「あれ?」

 

 壁掛けのアナログ時計は7時42分を指している。色々大変な経験をしたせいで体感の時間とズレが出たのだろうか。いや....それとも

 

 

「うん、多分夢か幻だったんだよね。私疲れてたのかな....今日は早く寝ないと....」

 

 

 小さなあくびをして伸びをする。あんな非現実なことが起こるはずもない。そう思い小さく笑って見た地図の移動履歴は同じ箇所を何周もグルグルとなぞっていた。

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