「お…い、ユキノ…ちょっと休もうぜ」
「気安く呼ばないで貰えるかしら。仲間だと思われたら不愉快だわ」
旅にでたはいいものの常に歩き通しでもうへとへとだ。
「ユキノさん、お兄ちゃんは今まで引きこもっていたので足腰が弱いんです」
いや引きこもってないから、たまに散歩とかしてたから。
「お願いします、ユキノさん」
コマチのうわめづかいが決まった、効果は抜群だ!
「仕方ないわね…、いったん休みましょうか」
俺達は木の根本に腰をおろして休憩する。
「シャー、シャー」
「ああ、その辺の木のみでも食べてこい」
勝手にボールから出てくるアーボが俺にまとわりついてくる。蛇の鱗はひんやりとしていて少し気持ちいい。
「貴方、ポケモンの言葉がわかるの?」
「わかるわけねぇだろ、何となくだよ」
日頃から人の裏をよんでいたらいつのまにかちょっとした仕草でポケモンの気持ちがわかるようになった、たぶん。
パシュウ。
隣でコマチも手持ちのポケモンをボールから出す。
「ィッブイ」
「イーブイも遊んできな、あんまり遠くに行っちゃだめだからねー」
あのイーブイがコマチのパートナーだ。俺はアーボだというのに格差が酷い。
「シャー」
そんなことを考えていたのを知ってか知らずかいったん離れたアーボが再びじゃれついてくる。
「よしよし」
「シャー 」
撫でてやると気持ち良さそうに鳴いた。
「以外ね、貴方がそこまでコミュニケーションをとるなんて」
「そうか?別にポケモンは嫌いじゃねぇぞ俺は、人間の方が明らかにおぞましいからな」
人間の言葉は理解するくせに話せはしない。その微妙な距離感が何となく心地いいと感じる。
「お前は手持ちを出さないのか?」
「そんなことを言って、私の手持ちを確認するつもりなのでしょう?」
ちっ、ばれてたか。
自分からエリートをなのるこいつだ。手持ちが育て始めのユキワラシだけということはないだろう。
手持ちを知っていれば対策もたてやすいがそう簡単にはいかないようだ。
ユキノは歩いて離れると草むらに隠れて見えなくなった。きっと離れたところでポケモンを出す気なのだろう。
それから少したってユキノが帰ってきた時だった。
「あっ、貴方達!わ、私とポケモンバトルし…てください!」
いきなりおかしなトレーナーが現れた。
「いやだけど」
「何で!?目と目があったらバトルするのがルールなんだよ!?」
「そんなもんくそくらえだ」
「えー、そんなー!?」
おかしなトレーナーはその場にへたりこんでしまう。
「もうお金が…、このままじゃのたれ死んじゃうよー」
どうやら俺たちから金を巻き上げるつもりだったらしい。
「良いわ、そういうことなら勝負してあげましょう」
「ほっ、ほんと?」
「おい、良いのかよ」
「ええ、その代わり、…負けたらきっちり貴方が払うのよ」
「ひっ」
完全に身ぐるみをはぐきだ。背後から恐ろしいオーラが立ち上っていた。
「行きなさい、ユキワラシ」
ユキノが出したのは俺と戦った時と同じユキワラシ。新しい奴がみれるかと少し期待したが見事に裏切られた。
「よーし」
金欠のトレーナーもボールを取り出す。俺達をたおすきだったようだが、以外と強いのだろうか。
「行け!」
ヘンテコなフォームでボールを投げる。
そして放たれたモンスターを俺は一瞬理解できなかった。
そいつの胸で揺れる二つのボールに気をとられたからではない、断じてない。
出てきたのは金色に輝く体、神々しい王冠をかぶり、堂々とした髭をはやしたポケモン。
そう、鯉の王様、コイキングである。しかも色違い。
あまりの衝撃に俺もユキノも開いた口が塞がらなかったが、いや待てと頭をふる。
ぴちぴちと力なく跳ねるあの姿に騙されてはいけない。
もしかしたら物凄い能力を秘めているかもしれないではないか。
「へっへーん、どう?びっくりしたでしょ?」
いやもうびっくりしすぎるぐらいしたよ。
「そ、そうね。コイキングの色違いは始めて見るわ。どこで手に入れたのかしら?」
「ショップで売ってもらったの!しかも特別価格の5万円、私で最後の一体だったんだよ!」
いくらコイキングとはいえ色違いを5万で売るか?しかも普通の売店で?
「最初は500万円だったんだけどまけてくれたんだよ!それで殆どお金使っちゃったんだけど」
あれ?なんだか目からオイルが…。
「ユキノ、もう負けてやったらどうだ?」
「嫌よ、勝負する以上は全力で叩き潰すわ」
ですよねー。
「いくわよ、こおりのつぶて!」
「え、ええっと、みずてっぽう!」
しかしコイキングははねるだけでなにも起きない。
そのままこおりのつぶてが直撃した。
「コイキングー!」
白煙が消えるとそこには所々塗装の剥げたコイキングが倒れていた。
「え?…」
場には重苦しい沈黙が訪れる。
ユキノがユキワラシを戻す音だけがその場にこだました。
しばらくして謎の金欠トレーナーがコイキングにゆっくりと近づいていく。その場につくと崩れるように膝をついた。
「そっか、私、騙されてたんだね」
そういうと傷ついたコイキングを優しく撫でる。
「ごめんね、嫌だったよね。ごめんね、気づいてあげられなくて」
そしてボールに戻すと鞄にしまった。
「つれてくのか?そいつ」
「うん、私のポケモンだもん」
「それはそうと、バトルに負けたのだからお金は払ってもらうわよ」
まじかこいつ、このタイミングでそれを言うか、普通。
「お金、持ってない…」
「そう、なら別のもので払ってもらうしかないわね」
別のものって、まさか薄い本的展開か!?これは胸が熱くなりますね。
「とりあえずまずは荷物持ちからやってもらおうかしら」
「うう…、はい」
「それじゃあ、直ぐに次の町に向かうわよ。コイキングも回復しなくてはだし」
「え?」
「え、ではないでしょう。傷ついたポケモンをケアするのはトレーナーとして当然のことよ」
「……ありがとう、ユキノーン!」
すると金欠トレーナーがユキノに抱きついた。
「なっ、離れなさい!」
「ユキノーン、あ、私の名前はユイ!」
「うむ、ユイユキか、ありだな」
「何言ってんの、お兄ちゃん…」
こうして俺達の旅にまた新たな同行者が増えたのだった。