笑い声も泣き声も、銃声の前にはかききえる。
横殴りの激しい雨。所謂嵐だ。
なんとかここまで生きてこれた。PKPのためにも、俺のためにも、ここはなんとしてでも生きてかえる。死なずに生き残ってみせる。
俺は、視界が不明瞭な窓から目を凝らし戦闘の余波により瓦礫だらけの外を除き、そしてレーダーを確認する。
恐怖と緊張によって不規則に震えそうになる声帯を、決意と理性をもって律し、PKPにアナウンスするんだ。
二人っきりの、大昔を思い出すような戦力不足となりはてても、ここは俺たちの立派な前線基地なのだ。
「...最終ウェーブだ。絶対に、生きて、死なず、どんなことがあろうとも自由をつかみとるんだ。」
遠くの方で、雷鳴が聞こえている。
恐ろしいが、先程までに鳴り響いていた銃声よりかはましだ。
また聞くことになる銃声なんかよりも、こんな壊れかけた地球の数少ない自然を感じる気がして、俺は雷の音が好きだった。
「了解」
でも、俺が一番好きだったのは、PKPの返事の声だ。
ある説では、パイロットの価値は一般的な兵士の五人分である。
だが、パイロットを一目見たものはそれを否定する。
あんな素晴らしい兵士が、五人分ごときのはずではないと。
それは違う。まず前提条件から違う。先ほど挙げた説自体が間違っている
人の命に価値などない。
それは人間をもした人形でもそうだ。
この世界に、無条件で価値をもたらしてくれる慈悲深い上位存在はいない。
自分で、自らの価値を作り、道を、命を繋がなければならないのだ。
生半可な理想、人情、愛情などは、なんら無価値なのだ。
最後のウェーブ、つまり纏まった兵力投入だというのに、IMCが寄越したのはあまりにも地味なドロップシップ一隻だった。
しかし、戦略的価値は?
彼らは、与えられる偽りの価値を唾棄し、この世界における唯一無二の価値、総てを蹂躙しつくす力と、その原動力である迷いなき殺意を兼ね備えた存在だ。
先ほどまでの兵士たちと比較するのもおこがましい。
パイロットと戦術人形。
彼らの共通点は、殺すことに迷いがないことであった。
それらが今、この地球に降り立った。
恐ろしいスピードで何かが近付いてくる。
何故、何か、としかわからないかというと、情けないことに私の視角モジュールは奴の姿を確認する前に破壊されてしまったのだ。
あまりにも正確な一撃。純粋すぎる殺意。
殺すことを臆することもなく、しかし楽しむこともなく。当たり前のようにだ。
ショットガンの戦術人形である私ですら、防ぐことは出来なかった。
次までに改善が必要だろう。
次があればだが。
もはや私の体は起き上がらず、雨が打ち付ける地面と同化しかけている。
PMCを脱走した私には、もうバックアップなどない。
もし再生されたとしても、この想いも、記憶もない私ではないAMKSGと化すだけだろう。
潰された視角モジュールから流れ出る循環液は、まるで涙のようで、実際私が涙を流せたのなら、恐らく大泣きしたであろう。もう、私の大切な指揮官とは会えないのだから。
ああ、数少ない得意分野でさえも、奴等に奪われるのか。最悪だ。
自由になれると思ったのに。
あんな化け物がいるなんて聞いていない。
近くにいたMFのKSGの頭部が超遠距離から撃ち抜かれ、気付いたときには銃声に呼応したかのように 怪物たちが壁を地面のように走ってきた。
すかさず半身を構え、そして私、AA12の長所であるフルオート機能を活かし、連続した散弾の射撃を加える。
でも、あれらは次元が文字通り違った。
そう、そのまんまの意味で異次元へ消えたのだ。
まるで最初からそこには虚無が広がっていたかのように。
しかも運の悪いことに私の狙いのつけた、先行してた方のパイロットだ。
いや、そうなるように仕込んでいたのかも知れない。
瞬間、急加速しありえないほどのスピードで距離を詰めたもう一体に殴られる。
寸前でかわし威力を殺すが、しかし虚空から現れた最初の一体に今度こそ蹴り飛ばされた。
私は軽く吹き飛び、身体中がエラーで埋まる。
こんなやつらが人間で、そして私たちの指揮官のリーダー、希望と同族なのか。
全身機械で、わたしたちよりも人間らしくない人間。
暴力的で野蛮だ。もはや最新型とはいえなくなった私でももう少しマシな解決方法を行使できるだろう。
彼らと、彼らの上司は何がしたかったのか。甘味すら味わえないだろうに。
それで楽しいのだろうか?
そんな考えは、雨の音と濁流のごとき身体異常警告にかききえていった。
「命中。追撃を、ってもう走り出してるわね。」
全く奴等はせっかちだ。殺すことがライフワークのキリングマシン。人間なのにね。
まだ反乱に参加していた人形は破壊しきっていない。
私も次の地点に移動しなければ。
そのときにやっと、それを認識した。
そこになにかいる。
気付いたときには遅かった。
パイロットだ。元。
反乱した指揮官たちを束ねる人物がパイロットではないか、という噂は聞いていたもののまさか本当にいたのか。しかも私の目の前に現れた。
意味するものは一つ。死が目の前に現れたということだ。
弾の嵐をR97サブマシンガンが放った。
あと少し物陰に隠れるのを戸惑っていたら、あの銃特有の連射力で私の体は軽量化されていたところだろう。
独特の射撃音が恐怖心を煽る。
穴だらけになるのだけはごめんだ。
すかさずダミーたちに指令を出す。
ダミーの扱える数は順当に増え、今のところは4体同時稼働可。
それでも目の前の敵には気を抜けない。
遠くのビルから、ダミーの一つが狙撃を開始した。
しかし虚しく地面を削る音しか聞こえない。どうやらかすっただけのようだ。
すると、位置を特定されたのかサブマシンガンでダミーが撃ち抜かれた。あの距離で、サイトも覗かず、あの武器でだ。
相手の練度は相当高い。これは不味いことになったな。
あっけなかった。
脱走人形の資料によるとそいつらは人間の、所謂少女の姿をしていました。
見た目通り、実際ここで会ってみれば、容姿に違わず中身も、人形とは思えないくらい人間らしい。
高らかに愛を叫んで、最後まで生きようとしていた。
SG型、変わったプルバップ方式の散弾銃を使っていたもの。
高性能なものの、大食いの穀潰しで、もはや彼女が必要なほど高難度の任務はなかったのだろう。
必要のない兵器はどうなるのか?
廃棄寸前だった彼女を救ったのは、同じくその有能さを発揮することが出来なかった利発な指揮官。
両方とも、その有能さ故に、現在の儲け主義のIMCによる制度に馴染めなかった、悲劇のコンビだ。
そして彼女らは今、その力を存分に発揮し、IMCから町を一つ奪い返した。
個人的に言いたい。
なんて感動的なんでしょう。
次に同じくショットガン。
不健康そうで、それに無気力らしかった。
それなら何故?IMCで堕落した生活を送れば良かったのに。
戦闘前に見た資料によると彼女は中々嫉妬深いようだ。
そう。彼女が居心地のいいあの場所を離れ、地獄のようなこの地にいるのは、ひとえに指揮官に認められ、独占したかったからだ。
親身になり接してくれたらしいその指揮官。
その指揮官のためにと、ただそのために指揮官とともに奮起したのだ。
その指揮官は、有能とは言えないが、部下に寄りそういい人間だったそうだ。
個人的な感想ですが、なんて、なんて素晴らしい愛なのでしょう。
他の人形よりも数ヵ月前に脱走したもの。
アサルトライフルの人形らしく、リーダーのパイロットに馴染み深い奴らしい。
彼女は合理主義者だ。合理を尊び、合理を唱え、合理を行う。人形らしい人形。
でも、彼女は最後に凄まじいまでのリスクを背負ってIMCの基地を破壊し、兵をE.L.I.Dから逃がした。
そしておそらく今も生きている。
普段の彼女ならおそらく自分も含めおとなしく命を投げ出していただろう。
どうして?どうして?
答えは簡単。推論だが、彼女は変わってしまった。
必死にもがいて、苦しんで、たった一人で自らを偽り続けたパイロット。
そいつに自分を薄く重ねたのだろう。
救ってやりたいと、そして仲良くなりたいと願ったのだろう。
ああ、ひどく美しい。眩しすぎるくらいです。
あるMGの人形。
行きすぎた自信と、それに伴う責任感。
時代が時代なら、英雄気質なその性格と能力。
悲しいかな、この時代は英雄気取りはあまり好まれない。
そのうちゆっくり首を締め付けられていき、そして使い潰されるか、精神を病むかの二択でしかない。
彼女は後者だった。
それでも、その指揮官は彼女を見捨てなかった。
IMCも意外だったろう。
結果として彼女は弱さを受け入れ、本当の強さを得た。そして、指揮官への想いとともに、真のエリートとしての道を歩み始めたのだ。
美談だろう。誰がどう見ても美しい話だ。心が洗われるようです。
まあ、今日みんな死んじゃうんですけどね。
どれだけ美しい想いだろうがなんだろうが、メンタルモデルがアップロードされちゃてるので私たちには筒抜けなんですよ。
血の道が見える。
私の逃がした彼は、うまくやっているのだろうか。
私は生きている。
ダミーリンクをフル活用し、死の間際にまるでリレーのように自らの精神を写していった。あんなのはもうにどとしたくはない。
そして、その命を守るためにまた、戦うのだ。
ダミーは残り二人。
物陰から奴等を伺う。
相手は二人。しかもパイロット。
やるしかない。
気づかれぬ内に走り込みつつ、無茶苦茶に乱射する。
不意打ちだが流石はパイロット。
咄嗟に片方は空間へと消え失せ、もう片方は高速で瓦礫の壁へと隠れた。
周囲を警戒する。
自然と銃を持つ手に力が入る。
迸る特徴的な音。
聞いたことのない音だが、しかしそんな異常な音を出すのはこの瞬間において一つしかない。
咄嗟にその方向へと銃口を導き、ストックへ頬を押し付け精密射撃の構えをとる。
そのとき空間は割け、私は引き金を引いた。
読み通り。
敵の肩と胸をつらぬき、そのまま彼は瓦礫の山に落ち、そのままの勢いで遮蔽物に飛び込んだ。
まだ死んでいないはずだ。
断続的な銃声が私の後ろから響く。
ダミーからの掩護射撃は十分な精度だ。
対パイロットにおいて、パイロットに一瞬でも自由を与えるということは私たちただの歩兵にとって死ぬことと同義だ。
アサルトライフルの射撃は、連続してできる時間は短い。
しかしその短い時間に、私たち戦術人形は命を懸ける。
何度も何度もシミュレートした動作を瞬時に再生する。
グレネードの発射準備を整えるのに瞬きほどもいらない。
先ほどの叩き落としたパイロットへ迷いなく打ち込む。
空間は先程まで雨粒に占領されていたが、私の打ち込んだグレネードのお陰で一瞬全てを吹き飛ばした。
やったか?
いや、やってない。
駆ける音が聞こえる。
やはり来た。
パイロットの機動力はとても高い。ほかの兵種の比にはならない。
壁から想像もつかないルートを通り、こちらに肉薄するのは容易だろう。
飛び込み様に、至近距離でナイフが振り抜かれる。
私の正体を偽る肉が裂ける。人間を模した血が勢いよく吹き出る。
寸前で致命傷を回避した私は、同じようにナイフを抜き、相手のカメラの部分へとなりふり構わず突き刺そうとする。
私も人間とは比べ物にならないスピードを持つはずなのだが、私の渾身の一撃も簡単には受け止められた。
大きな、大きなカメラアイがこちらをハッキリと覗いてくる。
パイロットであることを加味してもなお異常なスピードで、こちらへと拳を伸ばす。
死ぬ___________________________________________
その瞬間、パイロットの腕が弾けた。
銃声は高らかに響き渡る。
身をよじるパイロット。
なんとか、なんとか私は生きている。
私は何故生きている?
奴にとっても予想外の攻撃だったのだろう。
直撃を許したパイロットが大きく仰け反る。
こちらを見つめるカメラアイが、少し驚いて、瞬きしてるようにも思えた。
「えへっ...いい感じ......私を、侮るからそうなるんだ。野蛮人め.........」
誰とも知らぬSG人形から助けられた。
スラグだろう、パイロットすらあのダメージを負ったのだ。
これが最後の機会だろう。奴を、殺すには。
「一か、八かっ...!」
合理主義者の私だが、そのときばかりは祈っていた。
生き残りたい、まだ死にたくない。
崩れた体勢のパイロットに照準を合わせる。
引き金は妙に重く、何倍にも希釈されたように感じる時が、うざったかった。
「こんなところで、俺が負けるのか......?」
ブツリブツリと、体から異音を響かせながらパイロットは地面に叩きつけられた。
「私には、勝たなければならない理由があるんですよ」
「意味がわからねえなぁ。なんでお前はそこまで頑張れるんだ?人形なのに、無駄なものを背負いすぎなんじゃねえのか?もっと機械らしく振る舞えれば、楽だろうに」
少し前の私なら同調したであろうその意見は、しかし今の私からすればあまりにも理想からかけ離れていた。
「無駄なものがないと、楽しくないんです。
あなたもそうでしょう?」
「違いないな...
俺も、そういうので悩んでたんだよ。お前も、あまり気負いすぎんなよ...
俺はあんたを知らねぇが、多分あんたはあんただよ。
俺はもうデータ転送して帰んなきゃなんねぇよ。
これ以上この体に留まるとマジで死んじまうからなぁ...」
言い終わると同時に、カメラアイから光が消えた。
それきり、パイロットはピクリとも動かなかった。
雨足は酷く、血の池はもうなかった。流れたのだろう。
一進一退、勝るとも劣らず。
なんて強さだ。私たちダミーリンク含めた狙撃がほとんど効果を為していない。
瓦礫へと巧みに身を隠し、迂闊に攻めいられない。
不用意にかの領域に踏み込むが最後、抵抗するまもなくスクラップだろう。
ダミーリンクを、入り組んだそこへ突貫させる。
辺りを見回す。高速で周辺を把握していく。
瞬間、ダミーの視覚センサーが奴を捉えた。
瞬間奴の認識外と思われるところから回り込み、背後を奪う。
ダミーの一つは高速で迫り来る拳の画像を送ったのを最後にそれきり信号はなかった。
仕方がないとは言え、この状況、距離において、ライフルでサブマシンガンに挑むのは些か無理があったかもしれない。
しかし、やりきらねば。私はプロだ。
紙一重の距離まで、一瞬で詰める。
瞬間的にパイロットが引金に指をかけた。
私は銃を構えた腕をひっつかみ、無理矢理に奴の銃口を私からそらす。そのまま腹に蹴りを入れ、相手を吹き飛ばした。
重い肉の感覚。クリーンヒットだ。
この行動にかけることのできた時間はあまりにも短い。
それだけ奴の反応も対応も、思考も早かったということだ。
...そしてここまでしても、奴はしぶとく生きている。
瞬きする間に、空中制御を行っていた彼は、空を蹴り、私の目の前に舞い戻った。
判断が遅れる。ここから生き残るにはどうすれば良いのか。演算を始める。
いや、もう遅すぎる。
雨粒だらけの視界の中、着実に迫る奴の蹴り足。
世界が回る。
あまりの衝撃に、正しく世界を認識できない。
悍ましい浮遊感と、ただひたすら気持ち悪い落下。
そのまま地面に激突する。
一撃、たった一撃でこんなにもなるのか。
頼みの綱だったダミーリンクとの通信が途切れる。
他のMG人形に穴だらけにされたようだ。
「......どうして、あなたはそこまで自由にこだわるのかしら...?」
疑問。何故?
私の見てきたパイロットは、なんだかんだで任務と仕事に誇りを持っていた。
それが、ここまで自由を求め、全てを投げ捨て、ここにいた元の市民をも危険に晒すようなことをしたのか。
事実、この町の住民も多大な被害を受けた。
我々とやつらの戦いに巻き込まれたのだ。
避難は完了したらしいが、このご時世で不動産含むさまざまなものを奪われたのだ、元の暮らしに戻るのは生半の苦労ではない。
そこまでして、得たいなにかがあるのだろうか。
今ここで死にきる前に、それが知りたかった。
「俺は、自由に囚われてるんだ。ここで諦めちゃ、アイツに顔向けできないんだよ。」
とつとつと、彼は話し始めた。
拙いような印象さえ受けるその語り口は、さっきまでの化け物じみた印象は鳴りを潜め、まるで悩む青少年のようでもある。
「俺はそいつに救われた。燻ってた俺を、燃え上がらせたんだ。奴のためにも、俺は不完全燃焼のままでは終われない。俺のためにアイツがそこまでやるなら、おれもとことんやらなきゃってな。」
パイロットも人間なのだろう。誰もが大なり小なり何かに悩んでいる。
フェーズもそうだったな。
こいつも悩んだなりに答を出したんだろう。
「そう......ほんと、貴方たち身勝手ね...
貴方の相棒は、きっと生きてるわよ
なんとなく、そんな気がするわ...」
励ましの言葉を、敵に送る。
私らしくない。
でも、私が殺しのために産まれたのは事実だが、既に負けてしまったので少し位は慈悲をやってもいいだろう。
まあ、資料に情報が残ってただけなんだけど。
それをいうのは、少し無粋だろう。
そろそろメンタルマップの転送を始めなければ。
「...帰ってきたのか。あんな無茶したならもう死んでると思ってたよ。」
目の前には、俺が一番会いたかった、アイツが。
「帰ってくるのは当たり前です。帰ってこなかったりする貴方がおかしいんですよ?
貴方には私がいなければ、また無茶苦茶かつ破滅的なことを行ったりするでしょう?」
死んだと思っていた、戦術人形が。
俺を理解してくれた、数少ない存在。
合理的な彼女は、俺のような奴でも対応を変えず、媚びず、真摯に接してくれた。それが、俺の変わるきっかけにもなれたんだ。
今日が雨でよかった。もっというなら、俺はヘルメットをしててよかった。
涙が止まらない。すさまじく、幸せだ。
「......やったな!PKP!」
...この戦闘を生き残った指揮官と戦術人形が、詰め所に集まる。
幸い、指揮官も戦術人形も、死に至ったものは一人として居なかった。
それは俺と、俺の大事なPKPも例外ではない。
「ついに、やったんだな...ワタシは嬉しいぞ、指揮官」
素直な、いい表情をしている。ああ、俺は少しはPKPを喜ばせることができただろうか。
傷ついた人形たちも、修理されている。
完璧な設備はないのだが、今のうちに修復できるものを修復しないのは可哀想だ。
それぞれが、自らの愛した人との無事な再会を喜んでいた。
「次こそは...」
「いや、もう無理しないでくれ!お前はよくやったよ...」
KSGと、その指揮官だ。通信が繋がらなくなったときは半狂乱になってたなぁ。普段の冷静沈着な彼との差が大きすぎて俺たちまで驚いた。
それだけ大事だったんだろう。
俺もPKPがそんなめにあったら発狂しそうだ。
「見ただろー?私がパイロットの腕を吹き飛ばしたやつ、結構頑張ったくないか?」
「おう、おう、良くやってくれた。」
AA12の指揮官。
とてもだが軍人には向かない、平和的かつ牧歌的な人物だが、それがAA12にもようあったようだ。
彼も大泣きしていたか。
その後のAA12の活躍ぶりを見てからの興奮のしようといえばすごかったが。
とにかく、俺たちはIMCに対して二度目の勝利をおさめたんだ。
こんなにもめでたいことはない。
「諸君、本当によくやった。我々は勝利したのだ。
IMCを二度も退け、我々は、本当の自由を手に入れた。もうIMCから逃げるために、E.L.I.Dの隣人になることはないのだ。
本当に、ありがとう。
元IMCのパイロットになんかについてきてくれて、ありがとう...!
信用されるか不安だったが、君たちの信じてくれた君たちのお陰で、この偉業を達成することができたのだ。
...あー、やっぱり演説なれしてないな...
まあ、皆!おめでとう!」
歓声が上がる。
そりゃそうだ。皆勝ち、無事に終わったのだ。
話によるとリーダーは命の恩人である戦術人形とも会えたというのだから、いいことずくめだ。
ああ、幸せだ。
その喜びの声は、一つの銃声に上書きされた。
「なんて、なんて感動的なんでしょうね」
パイロットが、一人残っていたのだ。
死んでいた、と思われてた彼は、まるで呼吸するかのように、リーダーの頭を撃ち抜いていた。奇怪な、二穴の銃が彼の手には握られている。
「パイロットであった彼が、我々の戦力の正確な確認をとっていなかったなんで...どれだけ彼女と再会できたことが嬉しかったんでしょうか?ねえ?私はまだ生きてますよ?」
皆、足がすくんで動けない。何故、いつから潜伏していた。町中探し回ったんだぞ。それでも、何故?
「きっと、感動しすぎたんでしょうねぇ。
戦いを忘れるほど嬉しかったんでしょうねぇ。
それのせいで、折角手に入れた幸せがなくなるなんて思わなかったんでしょう。」
いや、俺たち指揮官組の落ち度でもある。
でも、もう遅い。遅すぎる。たった一人の死亡確認を為損なっただけで、俺たちの命運は大きく曇り出すのだった。
もう止んでいた雨の代わりに、巨人の落ちる筋が見えた。