人間らしくない人間と、人間らしい人形   作:pilot

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生存者

俺達は生きている。その定義は?

 

 

 

 

人間の順応性というのは素晴らしいものだ。

もう、我々はこの旅人じみた生活に適応し始めていた。

 

途中でリーダーのタイタンとも合流し、俺達はタイタン一機、人形、人間合わせて八人の大所帯となっている。

 

リーダーの元同僚たちは、非汚染地域で自給自足する集落を作ったらしい。

 

俺達は負けて、色々失ったが、それでも新しく得たものもあった。

あのあとIMCはあの地域のPMCの苦情を聞き入れ、治安維持のための予算を追加すると約束したらしい。

俺達のような反乱者をもう出さないための、見え透いた餌だったが、しかしもう俺達のような苦労を後輩たちに味会わせることがないのならそれでいい。

 

 

PKPとも、立ち直れた。

 

あれは本当につらかった。

 

あのあと、彼女の指輪は結局見つからなかった。

でも俺達は幸せだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「指揮......官...」

眠りこけていたPKPが目を覚ます。

普段ならそれだけで俺は嬉しい。

だが今は違う。その目が、俺を見ることが怖い。

 

俺は、彼女と生き残るためとはいえ、あまりにも惨い仕打ちを彼女に強要したのだ。

 

彼女のことを守ろうとしながら、結局は何一つも守れなかった。

 

だが、俺がもっと、もっと哀しいのは、そんなことをされた、怒って当然でもあるPKPが、しかし慈悲深い、穏やかな瞳を俺に向けていることだ。

 

いっそ、俺に怒って、泣きわめいてくれ。

それで気が晴れるなら俺を殴り倒してもいいんだ。

 

そうおもっても、そしてそれを口にしても、かたくなに彼女は俺を責めない。

 

「すまない、許してくれとも言えないほどの間違いを俺は犯してしまったんだ、言うことはなんだって聞くし、なんだって成し遂げてみせる。

本当にすまない......申し訳ない......ごめんなさい......」

 

口を衝くのは謝罪の言葉。

我ながらなんて薄っぺらいんだ。

 

すまないなどと、俺が言えたことではないだろうに。

 

それでも俺の口は衝動的に謝罪を繰り返す。

 

すまない、すまない。

 

「いいや......いいんだ、ワタシは、指揮官がいてくれたらそれでいいんだ。」

 

あまりにも優しく甘い言葉。

 

「ワタシは、考えたんだ。指輪がなくなったら、ワタシは指揮官が嫌いになるかって」

 

芯を感じる、強い言葉。

 

「結論から言えば......そんなことはありえない。

ワタシのこれは、そんなシステムに縛られている感情ではないんだ」

 

いつしか話し手は彼女となり、また励まされるのは俺となっている。

 

「先程なんでも成し遂げるといっていたな。

じゃあ一つだけ。

ワタシはあなたを信頼している。ワタシの全てを見せてもいいと思うくらいにはな。

......だから、ワタシのことも信じてくれ。

きっと大丈夫だから。指輪なんかなくても、ワタシは指揮官と共にいる。」

 

支えてあげなければいけないのは俺の方なのに。

 

でも、その言葉で俺はもう泣いていた。

 

「フフッ、ワタシの指揮官がそんなに弱虫でどうするんだ。

......これからは、それを我慢する必要なんかないんだぞ。ワタシも我慢しないから、指揮官もワタシをもっと頼ってくれ。」

 

「......おう......!......おう......!」

 

形はどこかに消えたとしても、俺とPKPは確かに愛し合っているんだ。

今までもありがとう、PKP

 

そして、これからも共に生きよう、愛する人よ。

 

 

 

 

 

 

俺の人形が目を覚ます。

 

俺は自慢じゃないが賢い方だ。

少なくとも私情で作戦を台無しにしようとするような奴や、さっきから自分の人形の前で延々泣いてるやつとは違う。

 

だから俺は、俺の人形がこうやって起きるのをクレバーにまっていたんだ。

 

 

人形は限りなく人間に近い。

どちらかというと人間のサイボーグに構造は似ている。

非常に高度なレベルで、有機的さと無機的さが融合している。

 

だから、代謝を促進するスティムパックで回復するし、傷もいくらかはふさがる。

 

しかしあくまでもそれはいくらか、だ。

 

KSGは血まみれかつ穴だらけだった。

 

そもそも対人の武器ではないものに撃ち抜かれたのだ。

あの屈強なパイロットですらボロボロになる。

 

幸い射撃精度の低いオートタイタンだったから九死に一生を得たが、それでも傷は酷い。

滑らかだった肌には無数の大きな傷痕が残り、透き通るような色だった肌は不健康な赤黒い色と化している。

 

そしてKSGが開口一番開いたのは、やはり彼女らしいものだった。

 

「指揮官...無事ですか?」

 

自分がこうなろうとも、それでも俺を気遣うのだ。

 

「......安静にしておけ、体に障るぞ。」

 

だから寝かせておく。俺は合理主義者だ。

だから無理させることはしない。非効率的だからだ。

 

「......なぜ、先程から目を合わせてくれないのですか

?」

 

突然妙なことを言う。

そうだろうかと思い直せば、たしかに彼女が起きてから彼女の顔をキチンと見ていない。

 

それに気づき、俺は正面から彼女の顔を見ようとするが、見れない。戸惑ってしまう。

どうしてだ。

なぜ。

 

「......いいえ、いいんです。

私はもうとても醜い。誰から見ても異常な体です。

......なんなら、もういっそのことここで___」

 

その言葉の先が紡がれることは無かった。

俺が口を塞いだからだ。

俺の口で。

普段はここまで感情的ではないんだ。

たまたまそういうかんじだったんだ。

 

 

一般的にキス、といわれるそれをした後、落ち着いて俺は話し始める。

 

「違うんだ、お前が醜いんじゃない。」

 

先程俺は賢いといったが、かといってあのガンギマリパイロットと違って人間性を捨てたわけでもない。

だから本音を言う。そして謝る。

 

「俺は、正直お前に負い目を感じているんだ。

俺はエリートを気取るが、結局動くのはお前だ。

俺は......なにもしていないし、なにもできない。

そんな俺が、その傷を作ったも同然の俺が、お前の顔を見るのを怖れたんだ。」

 

嘘偽りのない、本音。

普段はいつも合理を傘にきる。

が、今日のこいつを見ているとそんなものは消えてしまった。

キザな俺だが、今のこいつにだけは本心から謝りたかった。

 

「ぷっ...ふふっ、そんなことで私の顔から目をそらしていたのですか?」

 

空気の抜ける音。それが彼女の笑いだと理解するのに少し時間がかかった。

 

「あなたも頑張ったじゃないですか。

大体、いまさらそんなことを気にしていただなんて......

てっきり、私の顔が恐ろしすぎるのかと。」

 

そんなわけ、あるか。

 

「俺は感情に振り回されない冷静な指揮官だぞ!?

見た目で判断はしないんだ。

お前がお前である限り、俺はどんな姿になろうがお前の全てが好きなんだよ!!」

 

「どこが冷静なんですか」

 

言われてふと我に返る。

しまった。やってしまった。

突然のキスってなんだよ。突然の告白ってなんだよ。

自分でもすさまじく恥ずかしいことをしたのが分かる。

あたふたしている俺を尻目に、彼女は笑っていた。

 

その笑顔は、傷つく前と今も、なにも変わっていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺のAA12。

なんてかわいそうなのだろうか。

 

俺は少し指揮官には向かない人種なのかもしれない。

感情移入しすぎる質だ。

この前もそれで揉めたのだ。

 

でも、俺達は生き残った。

このAA12も一緒に。

 

だが、意識が戻ってから様子がおかしい。

何かにつけて怯えている。

 

それが気になって、気になって。

そして今、それを尋ねた。

 

「は...話したくない!」

 

怯えきっている。いったい何がそこまで怖いのか。

 

「何でもいってごらん。

俺は何でも受け入れるよ。」

 

事実そのつもりだ。俺はコイツが好きだ。他の何に代えてもいいくらいには。

 

そんな俺の熱意が伝わってくれたのか、彼女はゆっくり口を開く。

 

「軽蔑したり、失望したりしないよな......?」

 

「もちろんだよ」

 

そして、ゆっくり口を開く。

 

「色んな記憶が......飛び飛びになってるんだ。」

 

へ?

 

「どういうことだ?」

 

「文字通りなんだ......全部の記憶がなくなった訳じゃないんだけど、その......指揮官との記憶が飛び飛びなんだ......」

 

なんで。

 

わからない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

よくよく考えてみろ。普通記憶を忘れることなんて良くあることじゃないのか?

 

「それの何がいけないんだ?」

 

「え?そりゃ......大事な大事な記憶なのは確かだし......」

 

いや、まて。その記憶が大事なものの可能性もある。ためしに聞いてみるか。

 

「大体どこまで覚えてたんだ?」

 

「前は......指揮官と食べたご飯の種類と味だろ、毎日の会話のログだろ、あと着ていた服だろ......前はそれらを全部記録していたんだ......」

 

「いやまてまてまて普通はそこまで覚えてねえよ」

 

やばい。コイツここまで俺のこと見ていたのかよ。

 

「え?そうなのか?」

 

「そもそもが記憶媒体に突っ込みすぎだよお前は」

 

まあ今はそんなことはどうでもいい。

悩んでいたら悩みをなくすために手伝う。

何より俺が手伝いたい。

 

「それに、もし仮に大事なことを忘れたとしても、また好きにさせて見せるさ

記憶がいじられても、無くなっても、お前はお前だ。」

 

 

 

「ほんとか!?」

 

 

「当たり前だろ!」

 

 

そうだ。そうなのだ。こいつはどうなったとしても、俺の、俺だけのAA12で。

そして俺は、こいつのためだけにいる指揮官なのだから。

 

「指揮官......!」

 

「AA12!」

 

お互いの名を呼び合い、抱き合う。うん、シンプルに幸せだ。

やばい、目から汗が......

お互い感情的になりやすいが、でもそれも愛おしいほど彼女が好きだ。

 

 

 

でももしかしなくてもこれヤンデレとかの部類なのでは?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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