人間らしくない人間と、人間らしい人形   作:pilot

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少し説明パート


商品カタログと、出荷前調整

人間の命は消耗品だ。

だが、これは悪い意味にのみに捉えられやすいが、実際のところは真実なのだ。

私は、意義のない理解は求めない。が、理解により効率が上がるのならば説明は厭わない。

私を血も涙もないものと思う人間もミリシアのテロリストにはいるだろうが、感情と同情により止められるフェーズは、この戦争はとっくの昔に通りすぎている。彼らは、それを理解していない。

人間は脆く、ありふれている。壊れない人間などどこにもいない。機械ですらすぐに破壊されるこの戦争を、どれだけ人間からはなれていても、98%の訓練による死を乗り越えていたとしても、最強の陸上兵器のタイタンとリンクし、そして本人が強かったとしても、人間の延長線上のパイロットが永遠に戦い続けるのは無理と言うものだ。

だが、それは何のバックアップも無かったときの話だ。人間は消耗品だが、使い捨てにするのにはもったいない。なにより、効率的ではない。

再生、という技術は肉体面の問題を完璧に解消する。彼らの潜在的な技術と、そして精神の深いところに刻み込まれた戦いの経験値を残しつつ、健康かつ新しい体を得ることができる。

しかし、精神は?再生は精神を、文字通りすり減らす。

表層の記憶は消えていき、そのままでは人格崩壊への秒読みを始める。

金銭上の問題や、本人の意思で、シミュラクラム、俗に言う体の機械化をするパイロットもいる。メンテナンスが楽だからだ。が、それも人間から離れていく。

それら全てが、いい方向に進むのならまあいいが、大体は精神的な死か、逆に精神の大きな反発による多数の死傷者を出すことになる。前者はもちろん使い物にならなくなるし、後者も、いつ破裂するかわからない人間コンプレックスの爆弾を抱え続けることになる。人間性を失えば、大体待っているのは破滅することだった。

そこで、私はこのパイロット達の中に、人間性を投入することにした。人間らしいものとの、自然な交流で、彼らの人間性を繋ぎ止めるのが目的だ。

ところが、皮肉なことに、私の所属する会社、IMCは人間が人間離れしている。精神的なものもあれば、肉体的なものもだ。

私は、自らが人間的に優れてるとは自信をもって言えないし、立場上彼らとあまり関わることもできない。現場にでる兵士ではない人間に生半に同情されても彼らには嫌みになるだろう。

一般の兵士でもだめだ。確かに人間らしいが、やつらはパイロットに憧れている。憧れは理解からもっとも遠い。すぐにパイロット側がやるせなくなるだけだ。

そこで矛盾するようだが、私は人間らしさを与えるために、人間以外を投入することにした。

自立人形。自ら考え、人に寄り添う、IMCにはないもの。我々とはまた違ったアプローチでシェアを獲得した老舗ロボット制作企業、I.O.Pの製品。その戦闘モデルを外注したのだ。

主にあれらは、我々の生産、運用する自立兵器と違い、とても人間らしい。下手をすれば、IMCの人間よりも人間らしい。パイロットからみてもおそらくそうだ。

そして、戦術人形とよばれる、それらの戦闘用カスタムは、強い。シンプルな言葉だが、強いのだ。完全な統率システムが完成した人形は、同型機を5体同時に、完璧に制御し、パイロットとはまた違った戦闘力の高さを発揮する。

腕力や出力も、華奢で綺麗な外見からは想像できないほど強力だ。我々の標準な機械歩兵スペクターに、勝るとも劣らないだろう。

そしてそれらを、数百年続くロングセラー商品へと押し上げたのは、やはりASSTシステムだろう。

我々の設計思想が、どんな銃も扱える汎用性を求めたものだとすれば、あれらの設計思想は、銃一つ一つへの、究極の合致。運用するのは、もはや骨董品とも言える古い銃だが、それらをほんの少し改良、改修するのみで、現代に通用してしまうレベルの、凄まじい技術だ。

しかもそれは、たった一人の研究者が作り出したというのも驚きだ。

つまり戦術人形は、とても人間らしく、そして戦闘力も高くパイロットに気後れせずにコミュニケーションをとれるであろうと、私は考えた。

そして、I.O.Pのカタログを片手に頭を悩ませ、どうせならプロ意識のあるタイプの方が彼らとは馬が合うのでは、などと考え、基本メンタルにプロ意識を持つとされる、WA2000型を注文したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

注文された。

私は、I.O.Pで生産された、自立人形。型はWA2000。現在では珍しく、今回のユーザーは、オプションで戦闘力を求めたそうだ。つまり、私の真骨頂。見てくれがいいので、戦争の少なくなった現在では、私達のような大昔の戦闘用に作られた筈のモデルも、戦闘機能を外して、しばしば一般向けに販売されている。

彼らの元に配属されたときのための情報が、電脳の中に流れ込んでくる。

注文元は、企業だった。

しかも、おそらくこの地球上では知らない人のいないだろうIMCからだ。生まれたての私の電脳にすら、基本的な常識としてインプットされているほどの企業。

星間製造業株式会社。この文字からも分かる通り、彼らは星を跨いで事業をしている。

その大きさは尋常ではなく、おそらく食品から始まり、軍事まで、考えうる全ての事業を圧巻している。

そんな大企業が、何故?しかも、顧客の事務所の位置は、今ではテロリストだらけだと言うフロンティア星系。入植者の反乱により、あまり船は行き来できなくなっている。大量の荷物を運ぶ輸送船をワープさせようとすれば、船内蔵では収まりきらないほどのワープ航行装置が必要になる。ゲートウェイといわれるそれらのうちのフロンティア側...いわゆるデメテルゲートウェイが破壊されてしまっていた。つまり、私は少人数用の、およそ物資を運ぶには向かないであろうドロップシップと言われるものに乗って行くしかない。そこまでして、何故?戦力なら、彼らの企業内で十分に得られるはずなのに。

私は好奇心と、そして自分の真価を示すことへの期待と、ちょっぴりそのユーザーにあって仲良くしたい気持ちをもちながら、手続きが終わるのを待ち、そして迎えのドロップシップに乗り込むのだった。

地球から飛び出せば、星がよく見えた。この状態だと時間がわからなくなるが、事務所につくのは宇宙時間では夜だそうだ。

 

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