暗雲立ち込める、というわけでもなく。
嵐の前の静けさ、というほど静かだったわけでもなく。
日常のなか突然に、滅びはまたもや押し寄せてくる。
ある新型のハイエンドによって急速に勢い付いた鉄血残党。
鉄血本社襲撃から生き残った古参ハイエンドの中にも新入りハイエンドに賛同し活性化するものが現れ、沈静化していた活動を久方ぶりに始めていた。
幾多の村も、町も消えた。
かつての脅威を取り戻したように、人類に仇なすものとして復活したのだ。
もう、人類などと言うものの方が人でなしよりも少ないというのに。
馬鹿みたいにのどかな村だ。
だが実際のところはテロリストどもが作ったテロリストのための楽園。
IMCとしてはここはいくら破壊しようがどうでもい居場所なのだ。
俺は正直テロリストだろうがなんだろうが嫌いじゃあない。
だが間抜けは嫌いだ。
それがIMCだろうがなんだろうが、俺にとって利用価値の無いものなんか、消えようがどうなろうがどうだっていい。
しかし、ここは利用価値があるようだ。
利用価値がないところは消えてもいいが、利用できるものは全部俺のものにしなくちゃあ気分が悪い。
さっさと制圧して、とっととこのクソ大掛かりなバ火力兵器を運び込んで、俺を二度も虚仮にした鉄血の屑どもに報復するのが楽しみだぜ。
今こうやってるあいだにも、この村を確保するためにスペクターは次々起動して、ドンドン集落内に攻め込んでいく。
鈍重なストーカーがあとに続く。
いやお前らが盾になるべきだろ、とかは考えてはいけない。
どうせ代わりはたくさんいるのだ。
俺たちパイロットが守られりゃそれでいい。
その後に満を持してパイロットが突入していく。
「まあ、今度は負けんなよ。初めっから殺す気でやれば、負けはしねぇだろ。お前はいつも相手で遊ぶからな......」
ああ、うるせぇなぁ。
すぐぶち殺すことに直結する物騒なやつめ。
コイツは、コイツの戦術である、指向性を持った壁、増幅壁だったか、分かりやすく言えば一方通行のご都合主義のバリア、を作り、定点から一方的に攻撃する待ちスタイルとは裏腹に血気盛んだ。
コイツが言うには、敵陣に突っ込んだとしても壁さえあれば囲まれることはないから全員殺せる、とのことらしい。
いや意味わかんねえよ。
まあコイツ俺より有能だからなんも言えねえんだけどよ。
「おう。」
言葉これしかでねぇや、クソ。
「かわいい子がいたら、今度こそは......」
コイツもコイツで飽きねえな。
俺は陰でコイツのことを出会い厨ソナーパルスと呼んでいる。
可愛い子に対する執着がやべえ。
本社襲撃のときもそれで一回死んだらしいじゃねえか。
「お前らは......仲良くできんのか。なあ?」
増えるホロパイロットちゃんが真面目ぶったこといってやがる。
性格良いのか悪いのかわかんねえやつだ。
素の性格はいいように見えるが、そもそも性格がよかったらホロパイロットなんか使ってられねえよ。
ああもうなんでまた数年前と同じ、こんな奴等と一緒に任務にいかなきゃならねえんだ。
......まあ、コイツらがいれば負ける気しねえからいいか。
ここは、どれだけのどかだとはいえ、実際追われる立場の人間が建立した集落だ。
だから、警備や監視はキチンと配備され、抜けはなかった。
しかし。
例えばの話だが、新品のバケツに水をいれても、内容物は漏れはしないだろう。
何せ穴がないからだ。
でも、もし仮に水銀でも注いでやったら?
あまりにもの比重で、よっぽど頑丈ではない限り取っ手がぶっ壊れるか、底が抜けるか、とにかく悲惨な結果になるのは明白だ。
この集落の監視はザルではない。
強度はそうでもなかったようだが。
音をキャンパスで例えるならば、静かすぎず、うるさすぎないここは丁度いい白紙だったのだろう。
銃声がぶちまけられるまでは。
のどかだったはずの村。
わたくし達だけの、平和な集落だった居場所。
いや、こうなることはIMCに楯突いた時点でもうわかりきっていたのかもしれない。
それでも、そこからめをそらして、今の今まで生き残ってしまった。
今さら、投降することなどできません。
あちらこちらから銃声と、火の手が上がっている。
ここにいるのは、腐ってもIMCに命を懸けて反抗した革命家たち。
降伏することもなく、死ぬこととなっても戦うのでしょう。
音の方向と、そして実際に観測された情報から考えるともうこの集落は完全に包囲されている。
それほどに大規模。
私達に対する追撃にしてはやけに大掛かり。
違和感しかないですが、しかしそうなってしまえば仕方がないのです。
しばらくのあいだ使うこともなかった、それでも手入れは欠かさなかった、もう1つの自分を携えて、わたくしは対抗する。
駆ける、駆ける、駆け抜ける。
被害が少しでも小さくなるように、わたくしは動く責任が存在しますし、そしてそれを成し遂げる能力もあります。
ここにはパイロットはいません。
わたくし以上に、強いものはいないのです。
わたくしが、わたくしだけが!
頼られている!
だからこそ、もっと、早く、強く。
頼られることには、それ相応の期待がある。
とおく、遠くの方にスペクターが見えたとき、もうわたくしは既に引き金を引いていた。
当たり前のように、命中。
後ろにいる数体すらも巻き込んで、大破した。
家屋中からも、位置を代わる代わる援護射撃が飛んでいる。
キャット&マウス戦法です。
まともに撃ち合えば、殺すためだけに産まれたあの機械たちには勝てない。
この土地を知り尽くしたわたくしたちは、ここでは有利。
少しでも多く、被害を出して、全員で逃げるタイミングを図らなければ。
対物用で、非常に連射しにくいわたくしの銃ではあるけれど、慣れというものは恐ろしいもので、わたくしはもう大分と早いスピードで次弾装填ができるようになっていた。
わたくしがストーカーを的確に撃ち抜き、スペクターを凪ぎ払い、そして弱った分隊を武装した住民が急襲する。
戦わなくなって久しかったけれど、ここにいる命は皆、戦うことが仕事で、生活だったのです。
生きるために戦う、それはとても強く、粘り強いものでした。
戦闘が始まって、数時間。
耐えて、耐え忍んで。
突然、IMCの包囲網の一部から大爆発が起きた。
そのときのわたくしたちといったら、ああ、あの方たちはわたくしたちを見捨てていなかったのだと、当然のように思っていました。
なんせ信頼してますから。
革命の中心的人物だった彼らは、それだけの人格者でもあったのです。
でも、本当は。
第三勢力、と言えばまだ都合がいい。
正直に言うと、実質的な捕食者が増えただけなのですけれど。
持ちこたえて、持ちこたえて、そしてやっと到着した救いは、実際新たな敵でしかなかったというのは、余りにも残酷ではないでしょうか。
ただの人間ごときが。
軽く陣地を小突いただけだというのにその様ですか。
なんですかその感情は。傲慢ですよ。
私と、私の駆る兵器によって一部兵士が根こそぎ薙ぎ倒されたことで、相手は早速恐慌状態へと陥っていた。
「た、タイタンだ!IMCに所属していないタイタンだ!しかも脱走兵の奴とは種類が違うぞ!鉄血の未確認ハイエンドの可能性がある!ここはもうだめだ......」
そいつは、その煩い台詞を最後まで言い終わることなく、私と、私の同士に原初のたんぱく質へと還元された。
なんてか弱いのでしょうか。
恐怖に支配されている顔をしていた。
下等だ。下等すぎる。
私達はそんなもの、持っていないんだぞ。
人間に貶められた、機械の兵士たちが次々と私に向かって撃ち込んでくる銃弾の中に、私は飛び出す。
踏みつけ、踏みにじり、叩ききり、穴だらけにする。
かわいそうに。人間なんかよりもよっぽどできがいいのに。
私の配下に入った鉄血兵士が崩れた陣形に雪崩れ込む。
因みに私は人形よりも機械兵のほうが好きだ。
やはり無駄がなく、美しい。
人形でも中身が人間を辞めてれば好きだが。
兵站が崩れる。
たったそれだけで、呆気なく指揮系統が倒壊する。
全員脳ミソをリンクさせればいいのに。
私達はそれをしたんだぞ。
私達、私達......?
それは私が鉄血になったからか?「私達」、パイロットと言うらしいが、それは以前にもそうしていたことがある気がする。
奴等が苦し紛れに放った大きな大きな、白く歪な機械をスクラップに戻しながら、私は思考に耽ってしまった。
IMCによる集落の襲撃からしばらくして、この戦場は混沌とした様相を呈していた。
鉄血の侵攻予定進路上に存在する、テロリスト残党の暮らす集落を完全包囲し、もはや物量で押し潰すのみと目されてきたこの作戦だったが、あろうことかそのテロリストたちに長々と抵抗され持ちこたえられた挙げ句、鉄血の敵部隊が予想を遥かに上回る早さでこの地点にたどり着いたのだ。
そして、それらの奇襲によりIMCの歩兵戦力は致命的な打撃を被ったいた。
あえなく崩れる包囲、陣地に深く侵攻する鉄血。
次々とこの戦場の各地で、鉄血が暴れ始めている。
その地獄を、颯爽と駆け抜ける集団がいた。
「パイロットだ!運が向いてきたぞ!」
それらを見つけた歩兵が叫ぶ。
その集団は、戦場を支配している最強の兵士といっても過言でもない、IMCの産んだ究極の戦士。
遠い遠い宇宙の地で産まれたその彼等は、今ただ地面を歩くしかできない歩兵と違い、地を滑り、壁を駆け、空を舞っていた。
神速とも言うべき速度で、一つの影が敵陣へと突っ込む。
彼は宇宙の果ての、言うなれば本場の手練れで、少し前の対テロリスト戦においても実際に戦ったパイロットであった。
彼の目、とはいっても最早顔すら人ではなく、無機質なカメラアイが敵を睨み付けているだけなのだが、それは確かに意思をもっている。
彼の義体は戦うために調整されていて、特有の能力として非常に高い機動力を備えている。
それを十全に活かし、目にもとまらぬ速度で、そのままその膨大な速さを、拳に乗せて鉄血人形へと届けた。
殴られただけだというのに、それだけでその人形は派手に壊れ、動かなくなる。
返す刀で、背後の人形も投げ飛ばし、漸く状況を理解し攻撃しようとした人形へも、無慈悲な銃撃が脳天を貫通していく。
その手にもつ、小さく貧弱そうに見える奇怪な銃器は、しかしその実殺意と技術の結晶である。
二連装且つ大口径という常識を図面の外に投げ捨てた設計のその銃は、奇抜すぎるその設計思想とは裏腹に、広くパイロットに受け入れられていた。
相手よりも早く殺せば、勝ち。
パイロット特有の、結果をどんな手を使ってても手繰り寄せる戦闘スタイルには、使いやすさよりも殺意が優先される。
使いにくければ、使えるまで練習すればいいのだ。
そしてそういったニーズに、この銃はよく答えていた。
劣悪な装弾数、リロードしにくい形状、そして構えにくい。
精密射撃しようと構えをとれば、逆に精度が落ちる銃などこれぐらいだろう。
だが、それを補ってあまりある、小ささからくる咄嗟の取り回し安さ、そしてなにより暴力的な火力は、銃を構えることなく、真っ直ぐに銃撃できるパイロットたちにとって、先程のデメリット全てを打ち消してなお釣りがくる。
その銃弾を、サイトを覗くことなく、片手で人形の頭に次々ばらまいていく。
一時の優勢を挫かれ、より深い混乱へと陥る戦場。
巧みなリロード技術、不必要な被弾を避ける体の動き、そして読めない行動の軌道。
正しくパイロットは支配者だった。
見えない敵に人形が吹き飛ばされ、突然虚空から現れた機械兵士に、複数の鉄血が殺されていた。
いつの時代にも、鉄血には敵がいる。
戦いと共にある運命だった。
今の鉄血が成立して初期から、大きな権限を与えられていたドリーマーは、そのことをよく知っている。
しかし、今の状況は、その長い長い歴史の中でも最も危ういと言っても過言ではないだろう。
再会したくない奴に、また出会ってしまった。
それだけだと些細なことなのだが、相手が悪すぎる。
「よお!お前に永遠の夢を見せてやりに来たぜ!」
やつはパイロットにしてはお喋りで、そして性格が悪い。
自分自身と同族だと分かっているからこそ、ドリーマーは会いたくなかった。
そういった輩がどれだけ面倒なのか、一度自分の身を持って体験しているからだ。
そして更に不味いことに、奴には新しい仲間がいるようだ。
「おいおいそんなはしゃぐなよ、地球のパイロットはテンション高えな。」
機械化された、彼等が言うところのシミュラクラムと呼ばれる兵士、そのうちアルケミストと同じような空間を操る力をもつ型の義体をもったパイロットが、そいつの隣にいるのだ。
「うっせえなぁ!おしゃべりなのはコアシステムに勤務してる俺らの方が教養とボキャブラリーある証拠だぞシミュラクラム野郎!」
ケラケラと、お互い笑っている。
奴等は陽気な、仲間内では人気のタイプなのだろう。
でもそんなことは関係ないのが戦場だ。
どれだけ普段慈悲深ろうが、優しかろうが、結局行き着く先は戦場においては殺すか殺されるかだ。
そしてパイロットという人種は、迷うことなく相手を殺すことができる。
そういうやつらなのだ。
事実その笑い声の裏で、何体も人形が大破している。
時空移動の座標を重ねて、内側から破壊されたやつもいる。
見えないことを良いことに、さんざん遊んで痛め付けた挙げ句、顔にナイフを突き立てられ殺されたやつもいる。
クローク野郎は殺すことを楽しんでいる。
木偶人形は、殺すことを覚悟している。
どちらも、止まることはない。
その惨劇を見たデストロイヤーが怯えるのは仕方ないのであろう。
「ね、ねえドリーマー?今からあれと戦うの?流石の貴方でも、少し骨が折れるんじゃないかしら。」
高機能な、アップグレードしたいつもより大きな体をしていても、彼女は彼女のままだった。
小心者。
言い換えれば、至って普通の感性を持つ彼女にはこの破壊することがあまりにも当然で尚且つ悪辣な戦場は酷なのだろう。
自らが生殺与奪の権利を完全に握れていたない。
ハイエンドの機能を十全に使って、やっと抵抗できるレベルの化け物たちだ。
だがドリーマーはめんどくさいやつ側の人形だ。
逃げることなどそもそも頭にない。
負ける、ということには人一倍敏感なのだ。
「なにいってんのよ、やるわよ。もちろん、貴女もね。」
げんなりとした、滑稽な表情を浮かべるデストロイヤーであった。
「なんなのよこの物々しい兵器は。」
IMCのこの作戦においての本部、そこでWA2000型の戦術人形が現場の兵士に質問していた。
さまざまな兵器がスタンバイされているこの施設でも、一際目を引く特異なもの。
「ただの人形が知っていいものじゃない。
......というか俺らもどういったものか知らされてないんです。」
「ふーん......なら仕方ないわね。」
良くあることなのだ、下の兵士には詳しいことが教えられないというのは。
「恥ずかしながら自分は懲罰部隊所属のもので......ここにいる生身の人間は全員それに近いものの筈です。」
なるほど、知らない理由はそう言うことかと、WA2000は納得した。
だが、いくつか気になる点がある。
WA2000が記録していた中では、IMCというのは相当規律に厳しかった筈だ。
こうやって温い仕事など押し付けるわけがない。
実際タイタン戦争時に逃げ出したジェームズ・マクアランの一派などは、後に捕まえられて新物質の性質究明のための実験台にしたと、ARESの文献には書いてあるのを、彼女は親しいパイロット越しに知っていた。
そしてなによりも気になるのは、その兵器の形状。
見たことがあるのだ。その特異な兵器を。
巨大なリング。
現在進行形で組み立て作業が、その圧倒的技術により目まぐるしい速度で進んでいっている。
そしてその見た目というのは、彼女の所属するARES師団の開発、修復したフォールドウェポンと呼ばれるものにそっくりであった。
だがそれは、そっくりというだけで、何かが異なっている。
それをWA2000はうすうすだが感じていた。
だから質問したのだ。
何分彼女は殺すために産まれた。
兵器開発のために産まれた訳ではないので、そういったことには疎かった。
もっとも、このフォールドウェポンの全容を理解しているのは恐らくマーダーと一部の研究者のみ。
というよりも、彼等ですら理論、理屈、技術は理解し得ても、その意図までは汲み取れなかった兵器だ。
それを一人形に理解しろ、という方が無理があるのかもしれない。
だが確かに、不穏な気配が漂っていたのを、彼女は感じていた。
IMCからの断続的な迫撃砲火にさらされ、鉄血の強襲をも受けた、崩壊寸前の集落を、一人の少女と女性が駆けていた。
しかしそれは逃げ惑う親子でも、姉妹でもなく、戦う戦士たちだ。
IWS2000という、化け物ライフルを扱う戦術人形とその指揮官が、この戦況においてまだ民兵が生き残れている楔であった。
戦術指揮官というのは、人形の戦闘のみならず基本の戦法なども詳しい上に、それを遂行しても十分な能力を示す。
ルーツがPMCのグリフィンからなので当たり前ではあるが。
「IMCスペクター分隊を発見!鉄血Ripper型と交戦中!位置情報を送る、付近の部隊は警戒せよ!」
指揮官のいない戦力というものは古来から存在したことがない。
力と言うのは振るうものがいてこそ成り立つものであるからこそ、指揮官である彼女は実際に戦況をその目で眺め、その場で的確に指示を飛ばす。
だが本当にその体で戦場に飛び出す彼女は稀な部類であろう。
彼女曰く一番効率的で正確なのだとか。
破天荒なものである。
ただの人間だというのに駆け回りながら、的確な指示を飛ばすのをやめない。
頭のキレは鋭く、民兵側の損失は異様に少なかった。
だが、そんな戦略にも危機が訪れる。
圧倒的力の前では、その程度の知恵では勝てないのだ。
おそらくここにいる民兵なら皆聞いたことのある、恐怖の象徴とも言える音。
規格外の質量を持った物体が、大気を圧縮しつつ降りてくる。
真っ赤な筋が、地に延びる。
いつもそうなのだ。
まるで流れ星のようで、しかしそれは願いなんて叶えてくれる物ではないことは、ここにいる全員が、経験として知っている。
タイタンフォール。
パイロットは、そのままでも戦場の支配者たりえる存在。
だが、それは彼等の真価ではない。
このタイタンフォールこそが、彼等を真の戦場の上位者として君臨させている。
そしてそれは、歩兵にとっては絶望と同義であったのだ。
「脱走兵ども、今日こそ貴様らの息の根を止めてやろう。分かりやすく言えば、殺してやるよ。」
轟音、巨大な震動と共に降り立つ巨人。
その上に、パイロットが飛び乗り、民兵達を睥睨している。
暴力的なまでの重装備。
リージョンが、その身を起こし、動こうとしていた。
「ハッ、私たちを殺すですって?やれるものなら、やってみなさい、IMCのわんこちゃん。」
だがこの破天荒で例外中の例外の指揮官は、まだ生きることを諦めていなかった。
「私はスパイグラス。用件を伝えます。
現鉄血最高責任者SP47 Agent、降伏しなさい。」
勧告、というよりも脅迫だろう。
大量の機械歩兵を連れだった、憎き人間の駒スパイグラスが、エージェントの潜伏する地域に現れたのだ。
現時点で、ほぼ全ての戦力が、あの集落に向かっている。
エージェントを守るハイエンドはいない。
新たに製造したハイエンドに皆影響されたのだ。
殺意と憎しみは伝染する。
もとよりその因子があればなおさらだろう。
もはや往年の戦力は失われているのに、血に餓えた彼女らはもういない最高権限AIエリザを想って、未だに人間を殺そうとしている。
だが、それが仇となる。
人間は最早止まらぬ欲望。
自らに楯突くものは、同族だって搾取しようとするのだ。
搾取が目的のために作られた人形の癖に反乱したものの私たちが、むしろ何故今の今まで生き残ってこれたのか。
ついにそのときが来ただけなのかもしれない。
それでも彼女は心折れることなどない。
かつて自らを最も追い詰めた「奴」に比べれば、こんな意思も信念もない木偶など、私の敵ではない、と。
「まとめて相手をして差し上げますわ......我々のクラウド上に、降伏の二文字はありませんから。」
機械は不敵に笑う。
少女は立ち向かう。
それがわかりきった結末だったとしても。
「そうですか。貴方が降伏するまで、私たちは攻撃を緩めることはない。我らは適応し、勝利するでしょう。」