人間らしくない人間と、人間らしい人形   作:pilot

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私らしい私、貴方らしい貴方

「ちょこまかと鬱陶しいな......おい!パルス投げろ!」

 

至るところから発砲され、だが一度も反撃のできていないリージョン乗りのパイロットが苛ついた様子で怒号を飛ばす。

 

堅牢で、すこしの衝撃にはびくともしないその圧倒的質量という長所は、しかしこういったゲリラ戦術の前では一転して短所に変わってしまう。

 

普段ならばそれも持ち前の技量と、リージョン自身の火力で擂り潰しているのだが、今回のみは民兵側の練度が異様に高い。

 

そこで、パイロットは仲間に頼ることにした。

パルスブレードを覚えているだろうか?

あれの真の能力とは、その常軌を逸した高い攻撃力、ではない。

あれはあれでなんと補助兵装で、実際の運用は、タイタンやパイロット達に情報的有利をもたらすためのものだ。

 

「あのかわいい女の子たちは殺さないでよね......!」

 

パルスブレードを手に持ったパイロットが、ゲリラ部隊の大まかな動きを読み、そしてそれが潜んでいるであろう家屋に狙いをつけ、真っ直ぐに投合した。

驚くほどにシャープな軌道で突き刺さったそのブレードが、オレンジ色の波を発する。

 

それらは無遠慮に、兵士達の姿を写し出した。

 

「あぶない!撃つな!顔を出してはいけない!逃げろ!」

 

別の家屋から観測していた指揮官が、咄嗟に注意を促す。

考えうる限り最速に近い、反射的に繰り出されたその命令だったが、残念なことに間に合うことはなかった。

少し体を出した瞬間、リージョンから打ち出された一筋の、一際大きな弾丸が、家屋の中に吸い込まれていく。

瞬間、窓を全て割り、凄まじい爆発が室内を蹂躙した。

 

肉片すら、骨すら残らず、そこには人が辛うじていたことを主張する焦げ付いた血痕が残るだけであった。

 

「気を付けろォ!奴等こちらの位置を割り出すぞォ!」

 

無線の間で怒号が飛び交う。

パイロットでもない彼らには、どういったプロセスでパルスブレードが索敵しているのかを知る由はない。

 

そしてそれが、ついに指揮官の隠れている家屋にも、

飛んできた。

 

もう、終わりだ。

 

何も無かったのならば。

 

 

 

 

 

突然迸る雷光。

青い光がリージョンを包み込んだ。

「なんだ!?アークグレネードか!」

 

高圧のエネルギーを一瞬の内に放出するアークグレネードは、タイタンやパイロットのヘルメットに多大な影響をもたらす。

タイタン等は特に酷く、前が何も見えなくなり、稼働全てに支障を来す。

その一瞬の隙は、それだけでも非常に大きく、そして致命的だ。

 

異音に気づく頃には、既に人形は喉元に牙を突き立てていたような物だった。

 

バッテリーが引っこ抜かれ、付近の装甲を巻き込んで連鎖爆発を起こす。

弱点付近が崩壊し、そのダメージは到底無視できるものではない大きさだ。

 

「今度はやったぞ!見てるか指揮官~!」

巨人の背から飛び降りたAA-12は、すかさず家屋に飛び込み置き土産にまたアークグレネードをぶん投げる。

 

「一体なんだ!テロリストの増援か!?」

 

パイロットを翻弄している内に、また別の、KSGの指揮官が女性指揮官に対して武器を手渡していた。

 

「これならあの巨人をぶっ壊せる。

やってやるぞ、またな。」

 

「ふふっ、あんたらはほんとにいいタイミングで来るね。」

 

彼らがその手に持つのは、小型のグレネードランチャー。

 

AA-12がダミーを走らせる。

「こっちだこっち!」

 

高度に訓練したAA-12は、ダミー人形に自然に喋らせることも、そして自分の行動を同時に起こすことも容易であった。

 

「砕け散れぇ!」

 

無論それを見逃すパイロットではない。

その優れた反射神経は視界の端に一瞬でも映れば執拗に、無意識に獲物を追い詰め、そして殺す。

 

巨人の持つ巨大なガトリングガンがまたはち切れんばかりに赤熱し、弾の壁を打ち出した。

 

見るも無惨な、すさまじく悍ましい肉片の嵐に変貌するダミー人形。

 

それだけだ。

 

ダミーをたった一つ破壊するのに、また隙を作ったこととなったのだ。

 

特徴的な音とともに降り注ぐグレネード。

対タイタン兵装MGLが、夥しい数リージョンに張り付き、そして爆発した。

黒い煙と、真っ赤な火の手が至るところから上がり、その巨人の命が短いことを回りに示す。

危険状態なのは誰の目に見ても明らかであった。

 

「やったわ!見てたシュタイアー?私だってまだ戦えるわ!」

 

「あっ!またわたくしの指揮官に武器渡しましたね!?ただでさえ突っ込みがちなのにこれ以上理由を与えてしまうとほんとに戦術人形と同じところで戦っちゃいますよこの人!」

 

ケラケラ笑う女性指揮官と、狼狽えるIWS2000。

そしてそれを見て居心地悪そうにしているAA-12の指揮官。

 

「馬鹿にしてるんじゃねえぞ!この木偶人形どもが!」

 

それに加えて、パイロットが空高く、生身で舞っていた。

見ればリージョンは爆散し、そして緊急脱出の暴力的な推進力により空へ向け、重力を無視し飛び上がったパイロットは地を這うしかない戦術人形たちを睨み付けているようにも見える。

 

彼は苛立っているのだろう。

まさか自らがなにもできずにリージョンを破壊されるとは夢にも思わなかった。

そうであるにも関わらず、パイロットである自分よりも格下であると、そう認識していた戦術人形と指揮官に出し抜かれまんまとタイタンを破壊されたという事実は、彼にはとっては許しがたいことなのだ。

 

パイロットの体は遂に運動エネルギーを使いきり、その放物線運動の頂点へと到達した。

 

基本的に銃撃戦というのは高い方が有利だ。

もしかしたらそれ以外の争いでもそうかもしれない。

まあそれは様々な要因が重なるので一概には言えないが、だがパイロットに上を取られるというのはそれすなわち片足あの世に突っ込んでいるのと同義である。

 

「砕け散れぇっ!!」

 

上空からけたたましい銃声を轟かせうち下ろすパイロット。

すさまじく大きなスピットファイア軽機関銃は他の追随を許さぬ単発火力を持ちながら圧倒的な装弾数をも持ち合わせ、攻勢に出れば相手を釘付けにする能力はピカ一であった。

 

それを、圧倒的有利位置から撃ちまくるのだ。

彼は今、腰うちでばらまいているので精度は低めだが、それでも絶対に当たらないわけではないしまともに当たれば一巻の終わりである。

 

そこで戦術人形の出番なのだ。

 

指揮官たちを突飛ばす人影。

それはなんとAA-12だった。

 

「!?

......やってやれ!AA-12!!」

 

「言われなくとも、勝利は数少ない私の得意分野さ!」

 

弾丸飛び交う死線に一人、彼女は躍り出る。

盾を巧みに使い、一撃、また一撃と加えられる恐ろしい銃撃をものともせず、真っ直ぐにパイロットへ相対する。

 

パイロットはジャンプキットの力を借りて、しばらくは空の王者として上空に陣取るだろう。

 

その距離はおおよそ並みのショットガンが交戦していい間合いではない。

 

だが彼女はAA-12だ。

かつての最新型なのだ。

今は昔の話ではあるが、確かにその銃はその時代の最高の手間をかけられていたし、そして優秀であった。

改修され、ASSTも使っているのならば、やれる。

 

(私が、勝つ!)

 

火を吐き続けるその戦場の支配者へ向けて、AA-12が弾頭を発射する。

 

撃ち放たれたそれは、散弾ではなく一つの塊であった。

 

着弾まで、数十メートル。

パイロットは余裕だ。

最強である自分の相手は、旧式人形、しかもショットガン。

この距離では、自分の脳天を正確にぶち抜かれようが生き残れる自信がある。

 

着弾まで、数メートル。

AA-12は本気だ。

圧倒的不利、未だ死と隣り合わせのこの状況で、それでも諦めの顔ではなく、その表情は闘志に満ちていた。

彼女には、勝利への矜持がある。

勝ちの目を演算し、それを成すことへの。

 

着弾まで、数十センチ。

突然、状況がひっくり返る。

一つの塊であった筈のその銃弾は、しかし直前で爆発、内部構造へ押し止められていた夥しい数のペレットを押上へ上へと押し上げた。

急加速したそれらは、発射されたばかりのような殺傷力を取り戻し、パイロットへと襲いかかる。

 

「なんだ!?なんなんだこの機構!?

クソっ、バランスがっ!!」

 

AA-12が開発され、その後付けで追うように研究されたAA-12専用の弾薬。

空中で炸裂し、どの距離のどんな敵であろうとも最高最大の効率でダメージを与える、かつての最新技術で、そして彼女の自慢でもある機能。

 

古き技術者達の熱意と執念が、今を統べるパイロットに食らい付いたのだ。

 

思い切り体勢を崩したパイロットは、重力に抗うことなく地へと落ちていった。

ジャンプキットがまともに働いてない状態でああもなれば、いくらパイロットと言えど見るも無惨な状態で死体とかしているだろう。

 

「私は......私はやったんだぁ~!!!」

 

狂喜乱舞するAA-12。

 

「すごい!すごいぞAA-12!パイロットを落とした!やったぜ!」

 

そしてそれに釣られる指揮官。

実際フロンティアでもパイロットを倒す、というのは歩兵の間では伝説的な活躍であり、尚且つそれが単騎で成し遂げられたとあればこうなるのも無理はない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私達の中で一番強いアイツがやられるなんてね......取り敢えず逃げて体勢を建て直さなきゃ......」

 

壁と壁の間を高速で飛び回り、本拠である新兵器発射施設へと蜻蛉返りするパイロット。

彼女は特別仕事に熱心なタイプではないので、いき残ることを優先したのだ。

 

けれども、年貢の納め時というのは、最強の存在であるパイロットにも、容赦なく訪れる。

 

ドン、と言うような。

ダァン、とも言うような間延びした、しかし大きな空気を引き裂く音が、確かに銃弾が放たれたことをこの場に知らしめる。

 

余程いい風に当たったのだろう。

事実あのパイロットが空中で怯み、叩き落とされたのだから。

肉体に吸い込まれた無数のペレットは、深い傷跡を残しているはずだ。

 

だがそこまで緊迫した状態でもパイロットは何処か楽観的だった。

不意を突かれようが、いや不意打ちというのは正しくない。

そもそもが夥しい数の命がお互いに殺し会う戦場においては、パルスブレードやその他さまざまな観測器具をもってしても完全な予測準備というのは不可能だ。

それでも何故彼らは強く、そして生き残るのか。

事後対応でも、言わば後の先を出すことができるほどの基礎能力があるからだ。

だから彼女は、冷静にパルスを放って敵を把握し、各個撃破に持ち込み悠々と体力回復にも務め、基地に逃げようと考えていた。

 

そして彼女はとうとうパルスブレードを地面に投げつけ、そして自らのHUDに写った周りの敵対者の配置を見た。見てしまった。見たがなにも解決しなかった。

その後どこか諦めたように「死んだほうがマシじゃないか。」と吐き捨て、静かに拳銃、P2016を自らの脳天に突き付けていた。

 

そのHUDには、赤い五つの点が彼女の周りを余すことなく包囲していた。

所謂詰みの状態であり、それらは逃げることは許さないといった風にこちらを睨み付けているようにも感じられる。

 

相手と実力が拮抗している、あるいは人員も含め戦力が同じならば結局は運と機転のあったもの勝ち。

 

今回のパイロットは、たまに歩兵に殺される彼らと同じくただただ運が悪かったのだ。

 

淀みない二発の発砲音が戦場へと響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「αE.L.I.D撃破!次に備えなさい!」

 

この異常な戦場では、人が人形の上に立たず、むしろ命令される側であるはずの戦術人形が必死に指令を飛ばしている。

 

兵器構造の内部へ近いところから次から次へと湧き出てくる初期症状のE.L.I.Dを休むことなく処理させられているのだ。

スパイグラスはそいつらを防御に転用するとのたまっていたが、生き残りのWA2000やIMCの一般兵士にはいい迷惑だ。

身の安全を保証されていないならば、自らが自己を守るしか生き抜く方法はない。

 

よって、先程まで同僚であったはずのIMC兵士のなれ果てを彼女らは刈り取っているのだ。

見覚えのあるドッグタグをつけてるものもいたし、破けた服装が生前の姿を克明に思い起こさせるような奴もいた。

皆崩壊液にまみれ暴れ狂っていたが。

生き残りも一人、また一人と恐慌を起こす。

仲間を殺すのだ。

仲間に殺されるのだ。

まともでいられる方が一種の異常者だろう。

 

「俺はもう嫌だ!どうしてこんなことになったんだ!」

 

「こんなの事前に説明なんかなかった!」

 

「俺たちはなにも知らなかったんだ!」

 

人間はここまでくると泣き言しか言えなくなるのかもしれない。

 

「諦めちゃダメよ!ここで大人しく死んだって、あんたらの家族に死亡保険は下りないわ!」

 

それでもまだ全滅していないのは、ひとえに彼女の激励と指揮が、IMCの懲罰部隊である彼等にとって少なからず救いとなっていたからだ。

 

迫り来るE.L.I.Dを欺き、殺し、どんなことをしようとも生き抜こうとしている。

彼女は、殺すために産まれたその能力を遺憾なく発揮し守るべきものを守り通そうとしていた。

 

だが古来から言われている通り、悪いことは重なって訪れる傾向がある。

泣きっ面に蜂、二度あることは三度ある、様々なことわざにもそれはみてとれる。

 

そして事実、新たな敵が彼女らを脅かすことになる。

 

「脱出ゲートだ!俺たち助かるぞ!」

 

生き残りのIMC兵士が歓喜の声を上げる。

遂に希望の灯火が見えた。

ゲート操作盤から放たれている光は、そのまま彼等にとっては道しるべのように見えたことだろう。

 

しかしタイミングが悪い。

 

突然固く閉じられていた筈のゲートウェイが開け放たれた。

 

その場に居た、WA2000以外の全員が涙ながらに駆け出し、救いへと我先に群がろうとする。

 

だが何かがおかしい。

スパイグラスのあの様子ならば、ここにいる私達は見捨てられたも同然。

どうして今さら助けを寄越すことがあるだろうか。

ならば答えはひとつ。

 

「構えて!上層部から救援なんてこないわ!そいつらはテロリストよ!」

 

「何だって......!?」

 

だが時間切れだ。

答案の提出期限はとうに過ぎている。

ゲートウェイが完全に開くか開かないかの時には既に、コーラの蓋を開けたときのような、文字通り気の抜けた音とともに、黒い塊が通路内部へ投射されていた。

 

「グレネードだ!避け_____」

 

どうやらIMC兵士の遺言は、なんとも間抜けな通達になってしまったようだ。

爆音と悲鳴との嵐がやっと過ぎ去った頃には、ほとんどのIMC兵士はぐちゃぐちゃのよく焼けた人肉100%ハンバーグと化しており、幸か不幸か生きて残ってしまった者も、放心状態となっていた。

 

「付近に居たIMC兵士の掃討は完了したわ。

残りをやりましょう、45。」

 

光が差し込むゲートウェイから現れた、大量の人影。

 

「金払いのいい客でよかったわ。

この任務を終わらせれば暫くはゆっくりできそうね。」

 

「んふふ......早寝遅起きの夢の生活のため......」

 

「45姉!私観光に行きたい!」

 

目の前に自らが手を下した肉塊の山があるというのに、仲良さげに登場した彼女らは、だが警戒体制を崩してはいない。

付け入る隙もなく、皆を殺しに来ている。

 

「......なあコイツらほんとに信用できるのか?Zas。」

 

「ここの情報を探り当てたのも彼女らです。

使うことの無かった無駄にいい給料をやっと有意義に消化できる。

少しでも戦力を大きくした方が効率的でしょう?」

 

「お、おっかね~......

俺はサポートしか出来んが......

PKP、頼めるか?」

 

「もちろん。指揮官の予想以上に活躍してやろう。」

 

更にその後ろから現れたのは、パイロットと指揮官、そして二つの人形だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「引けぇ!戻れぇ!奴等をE.L.I.Dとかち合わせるのよ!」

 

今や風前の灯火となった残留兵を率いてもと来た道を引き返すWA2000。

もう彼等が助かることはほぼないだろう。

自殺したものが居た。

醜悪な化け物になることを拒んだのか、それともただひたすらに絶望したのか。

あるいは、突然現れた悪魔たちに恐れをなしたか。

だが、そんな中でも、それこそ命を捨ててでもここを守ろうとするものも居た。

 

両手で数えることが出来るほどの少人数のみだが。

 

「行くぞ!早いとここの兵器を止めて我々の土地を取り戻すんだ!遅くなれば遅くなるほど除染が面倒だからな!」

 

「ええ、効率的でもなくなります。」

 

ポンッ、ポンッ、と榴弾の放たれる音が断続的に響く。

 

ダダダダダダダ、とマシンガンの制圧射撃が長々と続く。

 

「釘付けになったらだめだ!動かないと!」

口でいうのは簡単だ。

とはいうものの、ここで動く勇気を出すことができるものは少ない。

さっきも無理矢理飛び出した仲間が高速三連バーストで即死させられているのを見てしまった彼等は萎縮している。

 

その内ジャンプキットの噴射音も聞こえてくるだろう。

ここに存在する音や物全てがIMC兵士にとっては命を奪われる危険のあるものに感じられた。

 

そのときだった。

 

「誘導に成功!多数のE.L.I.Dがこのセクションへ到達したわ!」

 

WA2000が叫ぶ。

もうその顔は必死の形相だ。

ダミーを消耗せずE.L.I.Dの気を引くのは非常に繊細な操作を要求されたらしい。

 

そしてこれは彼等の起死回生の秘策でもある。

もう多数のE.L.I.Dがこの戦場へ解き放たれた。

 

それを既に予測していたIMC兵士は既に息を潜め、隠れるだとか物理的に届かないところへ複数人で登ったり、とにかくここの施設内の知識を総動員して生き残ろうとする。

 

E.L.I.Dとまともに、少人数でやりあえるものなどいない。

高度に統率された集団が、各個撃破を徹底してやっとなんとかなる存在だ。

それほどまでの驚異である筈だったのだ。

 

勢いよく飛び出してくるE.L.I.D達。

先程までは知的生命体の特権である会話のために発達した口は今や噛み砕くためだけの物へと変質しており、知性の感じられない動きで猛然とテロリストに襲いかかる。

なるほど、確かに防衛するのに適した戦闘力だろう。

 

そのまま勝てていれば、生前の彼等も浮かばれただろうに。

 

 

壁にアンカーを打ち込み、巻き取りのエネルギーを利用しそのまま振り子の要領で加速したパイロットが突然E.L.I.Dの前へと躍り出る。

 

そのまま顔面に着地し押し倒した後、的確に急所を拳で抉る。

あれほど殺すのが面倒だったE.L.I.Dが、素手の人間に瞬く間にケイ素の塊に変えられてしまった。

 

次から次に襲いかかるかつてのIMC歩兵達。

しかしそれらは全てパイロットに打撃を与えることすらできない。

壁を、空を、神速で駆け回り、魔弾といっていいほどの正確さで無慈悲に彼等を撃ち抜く。

 

次に動いたのはZasM21だ。

E.L.I.Dに追い付くように、ゾロゾロと続けて現れた機械歩兵の軍勢。

それらもまた防衛のために配置されていたのだろう。

純粋に戦闘に特化した彼等、スペクターは、遥か彼方の過酷な戦場でも十分に稼働し、疲れを知らず高い機動力と強固な装甲を併せ持つ。

人間性を持ち合わせた人形が、通常相手をしていい物ではない。

 

だが、ここにいる彼女らは違う。

 

ZasM21は目にもとまらぬ速度で、尚且つ針の穴を通すような射撃を行う。

ヘッドショット、などと言うものではない。

駆動部を寸分の狂いもなく撃ち抜き、的確に機能停止へと追い込んでいく。

スペクターが面白いようにこけ、倒れ、這いずり回る。

 

ASSTだけではこんなことはできない。

純粋な技術のみでも、実現はほぼ不可能だ。

そのどちらも兼ね備えた戦術人形だからこそ、こういった一芸に特化できた。

 

WA2000の奮戦虚しく、彼女らの部隊は押しやられていく。

 

顔を少しだしては撃ち、あるいはダミーに観測させて盲撃ちしたりだとか、戦況を経験で分析して命令をくだしたりだとか。

慣れないことだらけだっただろう。

彼女は使命感で動いていたのだろう。

それでも、ただ勝てなかった。

 

「E.L.I.Dをずっと相手にしていた私たちにとっては、こんなもの敵ではないですね。」

 

「もちろん、俺たちは無事に勝って帰らなきゃいけないからな。

こんなとこで手間取る訳にはいかないさ。」

 

テロリストがよく言う、そうWA2000は思った。

切り札であったE.L.I.Dをあらかた蹴散らされ、密かな頼みの綱でもあったスペクターは意図も容易く機能不全に追い込み、結局残ったのは自分達だけ。

逃げた方がいい。

なんなら降参して土下座すれば、万に一つはなんとかなるかもしれない。

 

だが、それはそもそも選択肢にない。

 

何故なら彼女は、殺しのために産まれたからだ。

 

「さっさと降参することを推奨するわ。大人しくするのであれば、少しは考えてあげてもいいかもね。」

 

攻撃的な笑顔を浮かべながら勧告する45。

確かにそうだろう。

それが合理的だ。

勝ち目など、ない。

 

「いいえ、そんなことするわけないわ。私を何だと思っているの?」

 

瓦礫の影から、ゆっくりIMC兵士と、WA2000が姿を現す。

 

「どうせ皆どこかで死ぬのさ。でも死にかたは選べる。」

 

「自殺したアイツらと違って、俺は懲罰部隊だとしても、忠誠心はしっかりある。」

 

「俺は......給料分仕事するだけだ。命を削って金をもらうのは慣れてる。」

 

次々と現れる兵士達も、その目に未だ闘志を宿している。

 

「私は......殺しのためだけに産まれてきた!

それは何故かわかるかしら?

私はこういう対テロリストの過酷な任務をこなすために殺しを宿命付けられたの!貴方たちに下るのなら、ぶっ壊れた方がマシなのよ!」

 

そう言うが否や、皆銃器を構えて思い思い突撃したり、狙撃したり、乱射したりと破れかぶれに攻撃を行う。

 

突然の行動に呆気にとられるテロリスト達だが、しかしそこは戦いに生きるもの、そんなものでは戦況は覆ることはない。

 

 

 

「全く途中参戦は毎回負担が大きいな......待たせたね、皆」

 

だが、突然スモークグレネードがテロリスト達に打ち込まれ、新たな何か、来るはずのなかった増援がIMC兵士達のもとに訪れた。

 

「......!パイロットだ!」

 

声のする方を見上げれば、そこにはホロパイロット装備に身を包んだ女性が佇んでいる。

 

「救援は基本的にない。兵士は使い捨てる。

スパイグラスはいつもそうだからな。

私はそれが認められないから、今回もまた騙させてもらったよ。

アイツも案外馬鹿なのかもな?

もしかしたらわかっててこっちに回してくれたのかもしれないけど。」

 

そう言いつつもカスタムされたウィングマンを的確にテロリスト達のダミー人形へぶち当てている。

 

「警戒!パイロットよ!少しでも隙を見せれば全滅するわ!」

 

416が注意を呼び掛けた。

既に数台のダミー人形が頭を撃ち抜かれて破壊されている。

こいつは、手練れだ。

そう瞬時に判断した404小隊は、先程までの余裕のあった動きから一転、緻密な連携行動へとシフトしていく。

 

「私は一人に見えるかも知れないが......

まあ、真実がどうなのかはその目で見てくれ。

見破れるかは、わからんがな。」

 

すると彼女はまた、その手から煙をばら蒔いた。

 

視界を封じる。

それは404もよくやる手法だ。

過去に戦ったクローク使いのパイロットもそうだろう。

だが彼女の真骨頂と言うのは、その情報のコントロール力だ。

情報面で封殺するクローク使いなどとは異なり、彼女自身は相手をがんじがらめになどしない。

柔らかに、まるで師の如く相手を導き、緩やかに逃れ得ぬ死へと誘い込む。

そのためのホロパイロットでもある。

 

相手の視覚を奪うのではなく、むしろ利用してやる、まるで詐欺師のような戦いかたなのだ。

 

煙から一つ、二つと幻が駆け出してくる。

ここで咄嗟に判断のつくものなどこの世に居ないか、それとも高度に訓練された同装備のパイロット位だろう。

経験を積めば積むほど、反復学習の効果により見て、撃つの判断が早くなるからだ。

珍しくやる気を出していたG11等は、運の悪いことにたまたま引っ掛かってしまった。

 

基本的にパイロットでもなければ、銃で狙撃をするときなどは体を固定する。

撃っては場所をとっかえひっかえする、などは支援射撃の基礎とも言われるが、撃ちながらそれを行うのはむしろ馬鹿だろう。

それをパイロットである彼女は知っていた。

どれだけ訓練された歩兵でも、私達とは異なってるのだと。

だからホログラムを撃っている最中なのであれば、その飛んでくる銃弾の方向と地形から位置を正確に割り出すことができる。

 

彼女は軽くウィングマンを回し、そのまま煙の向こうを狙って引き金を引いた。

銃口から素直な軌道を描いて放たれたそれは、確かな赤いヒットマークをHUDに示した。

 

それはすなわち、脳天に高威力の銃弾が吸い込まれ、死んだ、ということだ。

 

だが体の死はイコール人形全ての死ではない。

 

残基は最大で、五つもあるのだから。

 

突如煙の向こう側から、先程殺した人形の位置からはまた別の地点から銃撃の嵐が襲いかかる。

ヘムロックも顔負けの連射速度は、しかし確かに殺した筈のG11のそれであった。

彼女はあの府抜けた顔に反して冷静なのだろう。

 

本体は様子見に徹し、人形が人形を操ってこちらを殺しに来るのだ。

 

流石のASSTとも言うべきか、こちらが直接見えていないのにも関わらず、また圧倒的な連射速度というのもお構い無しに無茶苦茶なバースト射撃を繰り返しながらも命中率は低くない。

 

視界を操るのみではダメだ、動かなければ。

そう結論付けた彼女は駆ける。

パイロットが壁を一度走れば誰も追い付くことはできない。

広いスペースが有るとはいえ曲がりなりにも室内であるこの施設内では、パイロットに壁を走ってくださいと言っているようなものだ。

 

だがそれでも、G11は当ててきた。

流石に最新鋭の装備に身を固めていて、そして相手が旧式もいいところな装備をしていたとしても、ここまで好き放題に撃たれまくっては流石に不味い。

 

衝撃が蓄積し、ダメージとして表層に現れる。

 

何かがおかしい。

こちらを見ている何者かがいる。

I.O.Pの戦術人形どもは皆規格が同じで、そいつらの間で視覚を共有することも下準備無しで可能だという。

全く便利で都合のいいものだ。

彼女としては、自らの流儀である相手に真実を見せず、相手にとって喜ばしい戦況を常にちらつかせながら戦場をコントロールする手法を早々に突破されかけているこの状況は気分の悪いものらしい。

 

聴力を研ぎ澄ませる。

足音は聞こえるはずだ。

どれだけ丁寧に姿を隠そうが、音だけは逃れ得ない。

自分が常に動いている以上、相手もそれに追従しているはずだというのが彼女の考えだった。

 

果たしてそれは正しかったようだ。

 

彼女自身の足音に重ねるように動いていたのか、しかしウォールランには対応できなかったらしい。

やっとのことで聞き取ったその音の発生源へと特殊なグレネードを投げ込む。

帯電させた粒子を広範囲にばらまくそれは、毒ガス等よりも余程早く、そして正確に敵の命を奪い取る。

 

しばらくもがき苦しむ声が聞こえたのち、こちらを常に狙って追い込んできたG11の銃声が止んだ。

どうやら何者かのダミーがこちらを監視していたという推測は当たっていたらしい。

 

数的有利というのは、攻め手の連続性に直結する。

パイロットはその身体改造により、細かな傷など直ぐに回復させ、そして装備品の補助もあり戦線復帰が異常に早い。

それを防ぐには、たとえ一秒足りとも休む時間を与えないことが重要だ。

そしてそれを、404は理解している。

だが、視界が完全に奪われ、大まかな位置しかわからぬ状況で銃撃するのは愚の骨頂だ。

先程始めに殺されたG11のダミーから、それは皆が学習している。

そもそも、当たらかすらわからない弾を運任せで撃つことができるのは、相当運のいい奴か、漫画や小説の主人公のみであろう。

ならばどうするか。

それは簡単なことで、当てる選択肢を選べばよい。

点の銃撃ではなく、面の爆撃。

416は既に投射用意を済ませていた。

 

発射され、美しい放物線を描いた流弾は、確かにパイロットへと致命傷を与えた。

 

風前の灯火。

つい先日のクロークパイロットとの戦いを経験した404の隊員たちは、パイロットの脅威に対抗するために持ち前の情報力を活かし彼らを調べ尽くした。

それがここで効いてきている。

 

とどめを刺すべく距離を詰める少女たち。

殺意と冷徹さでできているであろう射撃管制装置が熱を帯びる。

ついに、パイロットを殺すのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パイロットとE.L.I.Dをそれぞれ404とZasM21たちに任せたPKPは施設備え付けの機械歩兵どもをなぎ倒す。

「ワタシを骨董品などと侮らぬ方がいいぞ......!」

 

この編成の中では唯一のマシンガン、その圧倒的な制圧力は筆舌に尽くしがたい。

 

もはや化石とも言えるようなその銃だが、戦術人形のアップデートに合わせASSTを通じ進化してきたそれは十全な性能を発揮する。

 

劣化ウラン装甲をも無理矢理に破壊し、スペクターを次々と鉄屑へと変換する。

 

次、次、次。

壊すだけ壊し尽くす。

なぜなら彼女は指揮官だけのエリートだから。

彼のためならば何でもするし、事実できると信じている。

 

そんな順風満帆な戦況を、一つの凶弾が穿つ。

 

ダミー人形の射撃管制装置が配置された部位を寸分たがわず撃ち抜くそれ。

 

パイロットでさえ、コアの関係ない弱点である頭を撃ち抜いたのだ。

弱点ではあるが、それは最適解ではない。

しかし仕方がないのだ。

戦術人形はメジャーな兵器ではあるが、内部を詳しく知るのはI.O.P.のみ。

IMCは子会社のグリフィンをルーツに持つ、あるいは憧れとしているPMCに、伝統を重んじる意味でそれらを使わせてはいるけども、自社内では殆どの場合スペクターを使い、稀に戦術人形を使うとしても整備はI.O.P.持ちだ。

 

つまり、そんなもののコアの正確な所在を知るものなど、普通IMC側の人間にはいないはずなのだ。

 

なのに、コアの位置を完全に把握し、ヘッドショットに逃げず、正確無比にその位置を貫ける射手、それはイコール戦術人形なのだ。

そして敵にいた戦術人形と言えば。

 

WA2000型、それ以外にいるはずがない。

 

そう考えていた時間すら惜しかったようだ。

もう一機のダミーが撃ち抜かれる。

次は自分か、あるいは。

隠れなければ、犬死になどできない。

一度分かれば、そこからの行動は迅速だった。

 

戦術人形特有の脚力を活かし一息に遮蔽物の影へと突っ込むPKP。

体を壁や地面に強く打ち付けるのも構わず生き残ることを選んだ。

彼女は戦術人形だが、その前にPKPであって、そしてそれ以上に彼女だけの人格をもっている。

殺すためだけ、とはいかないのだ。

囮に使ったダミーが直ぐさま撃ち抜かれ、もはや数的有利は消え失せた。

スペクターなどはあらかた片付けたので、もう大丈夫であろう。

そう結論付けたPKPは、ひとまず少し後退するのであった。

 

 

 

 

 

「無様な姿ね。これが真実かしら?

馬鹿みたいにあっさり負けちゃって、それともまだ何か隠してるの?」

 

ヘルメットを足蹴にされ、地面に固く押さえつけられたパイロットに対して罵倒を飛ばす45。

 

「返す言葉もないね。

そうさ、これが真実さ。

まあ経験値が違うとでも言い訳しておこうか、私は君たちほど婆さんじゃないんでね。

君らも、過去の経験自体はあるんだろうけど、今の見落としに気を付けることだね。」

 

それに対してパイロットはあっけらかんとしている。

別に起死回生の手段を隠し持ってる訳ではない。

彼女らは死ぬことになれている、いつものことなのだ。

 

「じゃあね、増えるパイロットさん。」

 

いつもの乾いた銃声に、真っ赤な血液とピンクの綺麗な脳漿、そして幾分か機械化されていたのか黒いパーツのようなものがパイロットから飛び散った。

これも、もう慣れたことだ。

 

「......そういえばWA2000はどうしたの?スペクターが全滅した辺りから見かけていないわ。」

 

416が疑問を問う。

確かにそうだ。

だがここから先の、深層のエリアには、今殺したパイロットを確保したときと同時にZasM21とパイロットが突入していった。

その後連絡がないということは、つまりその先にはなにもいないということだ。

 

ここまで考えて嫌な予感を覚えた45だが、それはもう遅いということも同時に分かってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こいつの脳ミソが見たくないのなら、大人しく私たちをここから出しなさい!」

 

「なああんた殺しのためだけに産まれたみたいなこと言ってなかったか?バリバリ殺しに来てたじゃないか、どうして逃げようとしてるんだよ。」

 

「馬鹿野郎!もうあれは負けよ負け!パイロットがやられたのよ、確かに殺すために生まれたけれど、それは部下を殺すためにという意味じゃないわ。それに、生まれた目的や理由がなんだろうと、どう生きるかは私たちの自由よ!」

 

凄まじいダブルスタンダード。

だがそれはあながち間違いではない。

そう、戦術人形らしさでもなく、WA2000らしさでもなく、周囲のため、そして自分自身のために最善を尽くす、らしさ。

 

それはつまるところ人間に近づきすぎた人形でありながらも、人間の持つ悩み、自らの存在意義の模索から解放された在りかたでもある。

私がいれば、そう思えばそれは私なのだ、と。

 

「ワタシたちには貴様らが道を阻まないのならば別に殺す必要性も感じない。さっさと去れ。あとワタシの指揮官を返せ。」

 

 

黙って指揮官を盾にしつつ、IMC兵士たちは外へと向かい、その後WA2000も指揮官を解放し、野へと消えていった。

どうやら外の本隊と合流するらしい。

 

「ワタシの知っているWA2000型とは大きく変わっていたな。」

 

「まあ、個体差はやっぱりでるんじゃないか?俺も、お前以外のPKPとお前自身はやっぱり違うと思うしな。」

 

「かな。」

 

無線が入り、無事施設の停止に成功したという報告を受けると、指揮官とPKPは物思いに耽るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさかこれ程までとは......不利要素が増加、これ以上の侵攻は不要と判断、コマンドキャンセル、撤退。」

 

もはやほぼ骨格のみと化したエージェント。

しかしその場はしのぎきった。

守り抜けたと、いってもいいだろう。

この状況は、昨日の敵は今日の友という言葉がぴったりだろう。

 

ジリ貧だった戦況は、新兵器運用施設の昨日停止により崩壊した。

スペクターを破壊しつくしたエージェントを押さえる理由が無くなったのだ。

他の基地を破壊できず、生産ラインが確保されたままならば、ハイエンドクラスを延々と相手することになる。

それは流石に、鉄血のみの対策として予算を割くにしては、費用がかかりすぎると判断したのであろう。

集落でも民兵による多大な被害を受けたIMCは、もう撤退を始めていた。

小手先のみで終わるかと思われていた戦闘が予想外に長引き、甘く見積もられていた兵站の維持もおぼつかず、メインのパイロットも油断と度重なるアクシデントにより複数撃破され、結局のところ生き残ったのは客将とも言うべきARES師団のもののみであった。

 

そして一番の目的でもある、実物によるによる発射試験を終了させたのだ。

 

それにより既にIMCは興味が別のところに移ってしまった、ということであろう。

 

フォールド・コーラップス・ウェポンは破壊され、その姿は消えてしまった。

また、ここでは新たな生活が営まれるのである。

 

「また、借りが出来てしまいましたね......グリフィンの意思はいつも私たちの先を行く......」

 

エージェントは、そんな集落より遠く離れた鉄血の仮本拠地、今や鉄屑だらけの荒野の上でそう呟いた。

その顔は表情の判別がつかないほど恐ろしい様子であったが、声色は確かに面白そうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「報告は以上になります、現在彼らは我々に対して積極的に危害を加える意思はないですし、十全に予算を掛ければ排除は十分に可能ですが、その必要性は薄いかと。

フロンティア系の制圧が先決と思われます。」

 

数日後、スパイグラスはが上層部へと報告をしていた。

基本的にIMCの上層部は行き当たりばったりかつ判断が遅い。

スパイグラスが言えばじゃあそれで、というほどには自堕落だ。

この後しばらくは彼らの集落の平穏は保証されるであろう。

 

 

 

 

「おいパイロット!早く運搬を終わらせなさい!あんたが一番移動が早いのよ、野性動物やらE.L.I.Dもその装備でなんとか撒けるしね!」

ウッキウキのデストロイヤー。

すぐ調子にのるのも彼女のかわいさの一つ、かもしれない。

 

「これが伝説の配達人とかいうあれか......クソ......いつか殺してやるからな......」

 

年貢の納め時とはこういうことだろうが、戦いから離れた彼は少し穏やかなのかもしれない。

 

 

 

 

 

「やっぱりタイタン使って畑仕事するのは楽でいいな!」

 

「冷房も完備しています。」

 

「効率的でいいですけど......羨ましいな、私もタイタン欲しいですね。」

 

ちょっと変わった会話を続けるのもいつものこと。

「サトウキビ栽培しないか?」

 

「いいなそれ!」

 

甘いものが好きなのも相変わらずだ。

「それならば、更なる品種改良に取り組みましょう。

たくさんとれるようになれば、生活は改善されます。」

 

「流石俺のKSG、クレバーだ。」

 

努力家コンビもブレを知らない。

 

「PKP!俺たちで先に料理でも作っとかないか?奴等いつも腹へったらうるさいからな。」

 

「言われなくとも、むしろワタシもスムーズに飯は食いたいものだからな。」

 

案外気遣い上手コンビ。

指揮官の手綱の握りかたが上手いのかもしれない。

 

「狩りはいいね、肉は旨い。」

 

「ちょっと指揮官!危なかったんですからね!次からわたくしにお任せください!」

 

やんちゃ指揮官と、IWS2000はなんだか役割が逆転してしまっている。

 

彼ららしい、日常だ。

 

 

 

 

 

 

「彼女らが生き残れたのなら、私の死も無駄じゃなかったかな。」

 

不思議なパイロットだろう。

人形の命を優先するなど。

 

「かわいいものは守りたくなるものよねー!」

 

すかさず食いつく他のパイロット。

彼女はかわいいものが好きだ。

 

「結局あんときはほとんど殺せなかったからな......」

 

純粋な戦闘狂。

そういう生き方も、楽しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーきーろー!」

 

416がキレるが、鉄壁の防御体制で起きないG11。

 

「別に良いじゃない、しばらく休みよ、休み。

あんな任務したのだもの、私も働きたくないわ。老体だし。」

 

45も加勢する。

というのもこの前出し抜かれたので相当腹が立ったようで、今現在新しい情報処理ソフトの研究をしているらしい。

軽いものでないと彼女は使えないので研究には手間も時間もかかるが。

 

「やっぱりこういうの見てると思うんだ、私たちはほんとの家族!ってね!」

 

底抜けに明るい9が叫ぶ。

朝にしてはめちゃくちゃにうるさい特殊部隊だが、ほほえましいものであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺たちは増援として地球に向かってやってんのに艦隊はまだ来ねえのかよ!?」

 

喚く機械のパイロット。

すぐに感情的になるのは彼のいいところでも悪いところでもある。

 

「そうですねぇ......彼らにも興奮剤渡しておいたら少しは早く行動してくれたりするのでしょうか......」

 

ずれにずれた、でも彼なりの冗談を飛ばす別の機械のパイロット。

彼は悩んでいたが、吹っ切ることが出来たようだ。

 

「あんたねぇ、片足どころか両足違法薬物に突っ込んでるそれ大っぴらに撒き散らしたら軍法会議にかけられて即死よ、即死。」

 

真面目な突っ込みを飛ばすWA2000型戦術人形。

しかし彼女もそのなかでは変わり者で、だがそれを誇りに思っている。

 

それぞれが、一人一人替えの効かない存在で、だからこそ人間の命に価値はないのかもしれない。

 




めちゃくちゃ長くなりましたが、これにて終了になります!
拙い作品でしたが、予想よりもたくさんの方々に読んで頂けてとても喜んでおります!
ありがとうございました!

追記
まだちょっと続きます
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