今日も今日とて俺たちパイロット達は訓練にいそしむ。
次こそは負けぬために。
訓練はシムポッドと呼ばれる、まあVRと言うやつだな。
仮想空間はいい。
何度死のうが再生費用がかからんからだ。
いくらでも殺しあえる。
俺が一番腹が立つのは、たかが民兵に負けたという事実ではない。
もっと、もっと楽しめた筈の戦いをあんなところで終わらせてしまったということが、俺を怒らせた。
遥か彼方、パイロットという職業の本場フロンティアでの主な仮想空間サーバーは何やら大規模なデータエラーを出したまま使用してるらしくすさまじく不自然な景観の町で戦うらしいが、地球産のここではそんな心配はいらない。
さあ、今日はどんなマップで、どんなシチュエーションで戦えるのだろうか。
楽しみでしかたがない。
目の前がみどりの光に包まれて、非現実に沈むこの感覚。
いつも、素晴らしい期待度だ。
わからん。
ここがどこなのか、どの時代なのかわからん。
どう見ても旧い。
今視界に見える疎らな建物などは、少なくともIMC規格じゃない。
いつのものだろうか?これらは。
何故か上手く映らないHUDから微かな情報を読み取ろうと努力する。
かろうじて読み取れた情報だが、生憎俺にはなにもわからなかった。
歴史から殺しは学べないと勝手に決めつけサボっていたツケが回り回ってきたか。
「なあ、S06地区ってどういうことだ?今の今までみたことも聞いたこともない。」
こういうときは、素直に聞くに限る。
パルス装備の女、名前はエマと言うやつだが。
エマは勉強熱心、というか普通に優等生タイプの人間だ。
ちょっとかわいい女の子を見るとなりふり構わなくなるという点を除けばだが。
それでも、期待通りにいかないこともある。
「わからない......みたこともないわ。
S06、という名前だけじゃあありふれすぎてる。
でも景色で判断するんじゃ、ちょっと珍しすぎて、私にもわからない。」
なんとエマでもわからなかった。
なんということだ。
というか右往左往しているというのに一向に敵役パイロットが出てこない。
大体は二チームに別れて殺し会うはずなんだが。
そうこうしているうちに、突然エンジニアから連絡の合図がHUDに入る。
が、酷いノイズだ。
......なんだか嫌な予感がしてきたな。
「聞こえるか!正体不明のアクセスを検知してほとんどのシムポッドが止まった!だがお前らだけは停止が間に合わなかったらしい!復旧するまでそちらでなんとか持ちこたえてくれ!データの書き換えが起きているはずだ!近くに犯人がいる!気を付けろ!」
うそだろ?
ちょっとまてほんとの殺し合いでもないというのに死に瀕してないか俺たち。
エマは黙っているし、ホロ装備の女......アンナはさっきからずーっと考え事してて全く話にも乗ってこねえ。
動じてねえのか?
まあパイロットならそっちの方がいいんだろうが......
「うおおおおおお!死ねええええ!グリフィンゥゥゥウウ!」
そのとき、凄まじい機銃射撃とミサイルの雨が俺たちに降りかかった。
さっきまで困惑の渦中にいた俺だが、そこはパイロットだ。
冷静に増幅壁を設置し、第一波を難なくかわす。
ついでに俺以外も守ってやった。
あとで奢ってもらうかな。
「本当に時代錯誤のセーラー服がいた......!」
さっきまでまったくしゃべってなかったアンナが口を開く。
アンナのその視線の先には確かに戦場には似つかわしくないセーラー服少女がえげつない形相でこちらを睨んできた。
「グリフィンども......今の今まで見つけるのに苦労したぞ......なにやら凄まじい時間が過ぎていたようだが私は忘れん......忘れんぞ......散々私を虚仮にした報いをくらえええええええ!!!」
いや俺らIMCなんだが。