人間らしくない人間と、人間らしい人形   作:pilot

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クリスマス

「お~!もう見つかったの~?やっぱあたしって超ラッキーじゃん!

......体マーヴィンだけど。」

 

やたらとテンションの高い人形、それも少女型が、きさくなことで有名な筈の、しかし不機嫌なマーヴィンを細かい穴の空いた強化ガラス越しに見やりながらそう呟いた。

 

「なぁ~にが超ラッキー、じゃ!!

こちとら人らしい肉体失っておるんじゃぞ!

というかお主そういうの得意な型式のハイエンドじゃろ、なんとかならんのか!?」

 

マーヴィンらしくない、といっても普通はしゃべることがないのがマーヴィンなのだが、捲し立てるような話し方をするそれ。

 

「そうだね~、いいこにしてたらクリスマスプレゼントで体を上げてもいいかも?」

 

「ふざけるな!!何がクリスマスじゃ!!

実用品じゃろ!肉体は!」

 

「実用性ならIMCのそういうやつの方が高いんじゃないの?」

 

アーキテクトはめんどくさがってるのか、それとも本当に出来ない話なのか。

肉体を失いはや数百年、やっとこさ得たリアルの体は、果たしてのっぺりして全くと言っていいほど前の面影のない姿だった。

IMC製の戦闘用ですらないその機械は、ほんのかけらの覇気もなく、そして美しくもなかった。

気位の高いウロボロスにはそのことが耐え難かった。

結果的に製作者に利用されたと言えど、それでも前の義体の美的センスの高さには惹かれていたのだろう。

 

「確かにそうかもしれんが、ここまで人間やめとるのは少し気が病む......私は人形であって、作業用機械ではないのじゃ。」

 

胸部ディスプレイが、激昂から悲しみを示す模様に変化した。

このような姿になってまで成し遂げたいことはウロボロスにはなかった。

人や人形ならば、それらしい姿が与えられるはずだと、そういう常識があった時代の人形だからだ。

だが、世界は変わり果てた。変わりすぎた。

彼女の言う不平不満など、ありふれすぎていて、もはや誰も気にすることはなかった。

人だったものや人に近ければならないものが人間らしくないのは、むしろ当然とも言えたのだ。

 

「感動の面会タイムは終わりじゃゴラァ!!」

 

突然マーヴィン側の面会室に大柄なパイロットが飛び込んできた。

どうやら時間らしい。

名残惜しいとアーキテクトは考えたが、しかし今や自分は一般人側の人間、いや、人形である。

IMC様々なのだ、ここは大人しく引くしかない。

 

大袈裟に肩をすくめながら、彼女の方も口を開いた。

「らしいよ、というわけでまた今度ね~!」

言えば彼女は早い。

直ぐ様立ち上がり反転し、ドアへ向けて歩きだした。

 

「いやじゃ~!またなにもない狭い部屋には戻りとうない!暇潰しが私には必要なのじゃ~!」

 

「うるせ~!黙れ~!

娯楽なんか必要ねえんだよ!

ほしいならIMC製のテレビを買うのと見放題プランに入れ!」

 

後ろでよくわからない会話をしているのを聞き流しながら、アーキテクトは面会室を後にするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今年のクリスマスは......なんて、聞くまでもないわね。」

 

どんよりとした雰囲気の漂う鉄血臨時司令部。

そうなるのも無理はないだろう。

つい最近の大規模なIMCとの衝突により、鉄血はまたもや勢力を縮小せざるをえなかった。

大昔はユーラシア大陸の至るところにあった基地は、もはや見る影もなく破壊されているか、もしくは安全保障なしの格安のリゾート地帯へと様変わりした。

正規軍介入という最初期の洗礼、南極に住むよくわからん人間たちとその他連合国との大規模な戦争、それらを乗り越えギリギリの瀬戸際、世界の片隅の隠れた支配者へと落ち着こうとしたその瞬間、奴等は現れた。

その頃、外宇宙進出を果たして無限とも言える金と軍隊を持ち始めたIMCは、当然と言わんばかりに地球を支配し、そして土地もしらみ潰しに接収していった。

その過程で、またもや鉄血はボロ雑巾のように蹂躙された。

鉄血兵の抵抗があったこの一帯は大して重要視されていなかったのか、今の今までなんとか生き延びられたようだ。

が、ここ数年はふたたび厄が立て続けに襲い掛かって来ている。

 

そんな状況ならば、クリスマスなど到底祝えないだろう。

 

だが、代理人はある考えを持っていた。

「いいえ、あります。やることをします。貴方たちも満足するでしょう。断言しますよ。」

 

ハイエンド達の間にざわめきが広がる。

あのドリーマーですら、目を見開き、顔に出やすいデストロイヤーやエクスキューショナーなどはあからさまに大口を開け、顔一杯に驚きを表現していた。

嘘だろ?と。

 

「IMCからプレゼントを奪いましょう。」

 

その時、皆同じことを考えたという。

ストレスでついに電脳がぶっ壊れたかと。

だが彼女は、大真面目だった。

 

「もちろん、数百年前のデストロイヤーのように無計画かつ馬鹿みたいな思い付きではありません。

私達には切り札があります。

この前捕獲したパイロットと、そして___」

 

代理人が言い終わるその前に、彼女は自ら現れていた。

「はーい!切り札!アーキテクトだよ~!」

 

流石にドリーマーも、目を見開くどころではなく、手にもっていた戦闘記録を取り落としかけている。

デストロイヤーやエクスキューショナーはもう大声を

上げ、そしてもう片方の切り札であるパイロットはため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんであんな裏切り者みたいな奴の情報を信じてんなことしなきゃなんねえんだ!ぶち転がすぞあの使用人畜生!」

 

大型の輸送ヘリの中でキレ散らかすドリーマー。

隣のデストロイヤーは涙目だ。

ハンターやエクスキューショナーも苦い顔をしている。

その中で一人、へらへらと笑顔を絶やさないアーキテクト、そしていつもと同じ澄ましがおのゲーガー。

一人顔の見えないやつもいる。

 

「仕方がないでしょう、動かなければ死んでしまう、今はそういうレベルです。」

 

代理人すらも、今回の作戦には参加するのだ。

 

「私達はもはや風前の灯火。

戦力もなく、物資もなく、そして技術もない。

あるのは、経験のみです。

そしてそれらは、まだ増やすことができる。

昔の確執に囚われている余裕はもうありません。

最終目標は物資の強奪と、そして___」

 

「ウロボロスの救出です。」

 

また、ざわめきが起きる。

あの爆弾のような問題児を、数百年見捨てていたアイツを。

それを、今さら助けるというのだ。

しかし、致し方ない。

そこまで追い詰められていた。

一人でも多く、多様性をもった「経験」が必要なのだ。

 

「基地防衛はそれが得意なジャッジに任せています。

......まあ、既に守るようなものはないんですけどね。」

 

この前の一件で自信喪失したのかやたらと自虐的な代理人の話を要約すれば、アーキテクトが人に溶け込んで調べあげたその施設内は、見る限りでは兵器の製造工場兼研究所らしく、そこでウロボロスはそのマーヴィンの体通り作業をさせられ、そしてたまにAIを覗かれているらしい。

 

その研究施設へ優秀なハイエンドモデル多数と捕獲したパイロットの精鋭チームで突入し、ウロボロスのところまで新しい義体を運ぶ。

そして、引き際に武器もろもろ食料もろもろを拝借しようという魂胆だ。

上手くいけば、また当分はなんとか過ごせるだろう。

そこらへんの脅威からは自衛することができる。

アーキテクトの突然の復帰と、そして彼女のもたらした情報はまさに鉄血にとってクリスマスプレゼントであった。

 

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