幾度再生しても、記憶が欠落しても。
一度仲良くなれたのだから、もう一度仲良くなれるだろう。
俺はパイロットだ。
俺たちは皆強い。
そして、強さのために払った犠牲も、また一様に大きい。
再生技術は俺からさまざまな物を奪い、そして色褪せない強さを与えた。
一般的な人間には居るらしい親の顔は思い出せないし、あった筈の幼少期はフェーズシフトしたみたいに溶けてしまっている。
俺はこうなることをわかっていた。
何時からパイロットをやっていたか定かではないが、恐らく俺は、比較的新入りだったんだろう。
それでも、自分でいうのもなんだが俺は優秀すぎた。
常にコア星系の小競り合いに駆り出され、治安維持のために単身でテロリストを叩き潰したりしたんだろう。
どれもこれも身に覚えがないが。
ただ一つ、俺は縁を見つけた。
日記だ。
俺は日記を見つけたのだ。
そしてこれは、俺のだ。
自分で書いていたであろう物なのに、まるで他人の記録を覗き見ているかのようで、パイロットらしくない緊張をした。
そして、大事な、忘れるべきではないことを思い出したのだ。
何処かにいるはずだ、探さなければ。
ここに書いていることが真実なのならば、俺は絶対に繋がりを絶ってはいけない。
過去の居なくなった自分に託された気がして、俺はすぐに行動へ出た。
全く彼と会わなくなって、私はまた逆戻りした。
戦術人形は、先を指し示されなければCPU効率が著しく落ちるらしい。
だから大昔も、今もまともに運用している部署には指揮官がいる。
生憎私は、はなから戦力を期待されていなかったから指揮官なんて居なかった。
言い訳になるが、どうあがいたって私一人では完璧になどなれなかったのだ。
そして、彼は私の中で指揮官に近しい存在になっていたのだ。
初めて名前を呼ばれ、親しく話され、お互いを個として見ていられる関係は、ここでは彼のみであった。
他のパイロットは皆同じだ。
誰と話しても、帰ってくるのは定型句ばかり。
元々ここはそういうところだった。
戦術人形になぞ誰も興味なかったのだ。
完璧には程遠い。
奴等の代わりにはなれない。
一体誰が私とこの銃をリンクさせたのだ。
第一線にて戦うことを夢見、そして親のような物に邪魔され、最終的には銃のみならず戦術人形としての矜持すら時代の流れに呑み込まれる。
優秀だった筈の負け組、それがHK416という銃には宿命付けられているように私は感じる。
IMCもI.O.Pも嫌いだ。
何故ここまで生きづらい世の中にしてしまったのか。
私のCPUを自殺しか弾き出せないようにでもしたいのか。
訓練所の隅で座っていてもなにも言われることはない。
これは悲しいことだ。
ここの管理者も、パイロットも、MRVNすらも私のことをあってもなくてもかわりないものとしてみていた。
それがどうにも、辛く感じる。
「416!」
ふと思考から現実へと帰ると、そこにいたのは、紛れもない彼その人だった。
「名前......覚えて......」
「いいや、おぼえてない。なんなら何を話していたかも覚えていない。」
「なら......どうして......?」
残酷だ。覚えていないという事実を改めて私に突きつけに来たのか。
いや、でも、彼が。
記憶を喪ったとしても彼がそんなことをする筈がない。
「俺は俺に託されたんだ。お前の事をな。日記があった。まるで他人の記憶に思えたが、どうにも俺はお人好しらしい。今も昔も。他人のために必死にならざるを得ないみたいだ。」
「昔の俺は、お前の事を気に入ってた。」
「だから、きっと今の俺だって気に入るって、だから......」
「また仲良くしてくれるか?」
パイロットはここまで焦っても良いものなのだろうか。
完璧には程遠い。
表情も言葉遣いもたどたどしい。
兵器ならばもっと無慈悲に、お人好しとは真逆にならなければならないだろう。
でも私はその欠点を、完璧に変えることができる。
根拠のない自信だったけれど、私と彼ならば本当の意味での完璧になれる気がした。
人間らしく、そして強く。
「......ええ、きっと仲良くなれますよ。
HK416、ちゃんと覚えていてくださいね、パイロット。」
「自信ないなぁ。」
「......ちょっと!締まり悪いでしょ!決して忘れない位いってもいいんじゃないの?」
「なんで前の俺はこんな奴気に入ったんだろうな......」
「え?ひどくないですか?」
「冗談だって冗談......」
「洒落にならない冗談怖いわよ......」