友人のオリキャラの狂気を再現するにはこうするしかなかった......
キャラに対しても悲惨な表現なので注意
「この星は陰鬱だなぁ」
とある星、ARES師団の施設。
シミュラクラムらしき男性が椅子に座りながら、一面ガラス張りのテラスらしきところで外を眺めていた。
外は雨だ。
荒れ狂っている。
とてもではないが、外に出られる状況ではない。
「俺は今が楽しければいいんだが、逆に今が楽しくないと死にそうになる。」
大雨は彼には似合わない。
彼に似合うのは晴れだ。
少なくとも、彼自身はそう思っている。
実際には、彼の楽しみと言うのは血の雨らしきものを降らせることなのだが。
しかし、残念なことに彼は楽しむ天才だ。
楽しんでいるのは自分だけという注釈が付くが、彼はいつどの瞬間を切り取っても満足できるように行動する。
究極のポジティブとも言うべきパイロットだった。
「......よし!外に行くか!」
「あんた何言ってんのよ......」
そこに現れたのは、数ヵ月前にここへ来た戦術人形のWA2000だ。
ある種常識はずれな人でなししか居ないこの世界において唯一と言っていいほどの真人間な彼女は、こういった輩のストッパーとしての仕事に疲れきっていた。
それでもついついこうして面倒を見てしまうのが彼女の性格なのであろう。
だがこの相手はシミュラクラムの間でも興奮剤漬けの奴と双璧をなす危険な奴だ。
あのこいつと同じフェーズシフト義体の知り合いに曰く「ナチュラルハイ、天然物、起爆操作されたサッチェル、脳ミソだけ虚空に置いてきた、常識軽量級、非常識イージスタイタン、CPU使用済みスマートピストル」などと散々な人物。
それに加え、悪い癖がある。
「いやあ丁度いいところに来たねわーちゃん、俺と一緒に雨の中楽しい狩りにでも出かけないかい?
もちろん美味しさは保証するよ!ここらへんのプラウラーはうめえからなぁ。
ま、俺の料理の技術も期待してくれよな!
あ、ついでに水も滴るいい男的な?そういうサービス_____」
またこれだと、WA2000はうんざりしていた。
そう、この人物、やたらと女好きなのだ。
まともな女の居なかったこの世界で女好きなのだ。
凄まじい欲求不満の中投入されたこの戦術人形という獲物を狩ることが、彼の中で一番の目標となっていた。
それだけならまだしも彼の感性は少々個性的だ。
というのも、一言で言えば過剰な猟奇趣味の彼は、戦場で人の死体を弄るのもしょっちゅうで、いくら殺しのためだけに生まれた人形だと自負する彼女にとってもあまりわかり会いたくない相手となっていた。
「うるさいぞプレザント......」
そこへ、救いの手が差し伸べられる。
彼と同じチームのパルス装備を身に纏った男性だった。
特徴的な、背負った巨大なパルスブレードに目を引かれる。
「ぐっ......コイツに絡まれちゃ分が悪いぞ......わーちゃん、待っていてくれよ!俺は諦めねえからよ......」
そそくさとフェーズシフトを起動し逃走するプレザント。
先程までの剣幕はどこえやら、パルスブレードの人物はそれを追うでもなく、突然WA2000に話しかけてきた。
「気を付けられよ......虫がこの星には居るようだ......今日は自室で大人しくなされるがよい。」
意味深な言葉を残して、また彼も颯爽と消えてしまった。
どいつもこいつも人の話を聞かず、それでいて能力が優秀なのが彼らの特徴であった。
「いったいなんなのよ虫って......確かに彼は頭のネジ穴ぶっ壊れてるけどそこまでじゃあ......」
WA2000は振り回されっぱなしなのは、結局どこでも同じらしい。
「よう、虫さん。」
大雨の中。
施設の中から一歩でも外に出れば、大きな作られた自然が広がっている。
元々IMCはさまざまな星にプラウラー、フライヤー、リヴァイアサンを移し、植生を作り替えたりしていた。
実際フライヤーを上手く操るリパルサー技術は発展を極め、繁殖力の高い彼らを放ちテラフォーミングする手法はとてもメジャーとなった。
この星は異物に溢れている。
その中でも、彼は目敏く、本物の異物を見つけ出した。
特徴的なヘルメット、単身乗り込んできたその能力。
間違えるはずなどない、どう考えても仲間ではないし、そしてはぐれ傭兵でもない。
つまりはミリシアだ。
おそらく、タイフォンやその前のタイムガントレットの研究施設の件と同じくARESの内情を探りに来たのだろう。
「どうだ?あんたが女なら、俺と一緒に狩りにでも出かけないかい?」
プレザントはそこまでわかっていて、はぐらかす。
彼にとってこの星の施設がどうなろうと関係ない。
今ここで楽しければそれでいいのだ。
「......残念ながら、俺は男だ。でも、まあ狩りには出掛けてやろう。
だが、獲物はお前だがな。」
素早く構え射撃を加えるミリシアのパイロット。
フラットラインの銃声が、森の中に響き渡る。
雨音と木々の擦れ会う音と重なりあい、銃声と薬莢の跳ね回る音が美麗なハーモニーを奏でる。
しかしながら、そのフラットラインの誇る高度な精度は、彼の幻惑の前では全く効果を為さなかった。
ハーモニーに終止符を打つように大きな音を立て虚空から帰還した彼は、八の字に並ぶ死を放った。
ミリシアのパイロットの首もとを物の見事に通過したその弾丸たち。
中身の入ったまま勢いよく飛び上がったヘルメットを、彼はさも平然と片手で受け止めた。
そのままヘルメットを蹴り飛ばし、足音に釣られ出てきたプラウラーの脳天へと直撃させ、瞬く間に命を二つ奪う。
「いい収穫だなぁ、待ってろよ!わーちゃん!」
そそくさと血生臭い戦果を回収すると、彼は急いで施設に戻るのだった。
「いよう!わーちゃん!これを食ってくれ!社員専用キッチンを借りて、腕に寄りを書けて作ったんだぜ!」
彼の持つ大量の肉料理。
それは誰が見ても美味しそうであった。
「......貴方そんな才能あったんですか?」
「しょうがねえなぁ異名に料理のデータで倫理を追い出した男って追加してやるわ。」
「悔しいけど見た目と香りがいいのが腹立つわね......
作ったものはしょうがないから食べてあげるわ。」
WA2000、そして彼女とよくつるむシミュラクラム二人が感嘆し、そして食べ始めるWA2000。匂いに釣られて人が集まってくるが、それらに対してもニコニコと料理を振る舞うプレザント。
その横に座り満足そうに見つめるプレザント。
「な、中々いけるじゃないの......癪だけど誉めてあげるわ。
ところでこれがプラウラー?」
口では強く当たるが、顔は綻びそして食べるペースも中々良い。
事実彼の腕はとても良かった。
「ああ、プラウラーだ。」
「そして実はもう一種類肉が手に入ったんだ。」
ニヤリ。
そうプレザントは笑った気がした。
興奮剤義体のシミュラクラムは何かに気づいたのか、挙動不審になる。
フェーズシフト義体の奴は、諦めたかのように席にもたれかかった。
他の集まってきた職員も、パイロットは一様に固まっている。
何時もの悪い癖だ。
もう一種類の肉だって?
しかもあんな性格の悪い声を出して。
嫌な予感しかしない。
そしてこの星にはつい数時間前にミリシアが侵入したという警告がパイロットに出されていた。
秘密裏に処理しろと。
ただつい先ほど、丁度プレザントが調理室に大きな荷物二つを持って入る直前に見失ったというのだ。
大まかな位置は着陸予想地点から数キロに絞れていたが、痕跡がピタリと消え、EVAオートとフラットラインの薬莢が落ちているだけであった。
誰も報告はしていなかったが、ここにいるパイロットの全員が、誰が下手人かわかっていた。
「ほうらすごいだろう?」
考え事を彼らがしているうちに、大きなワゴンを押し、そして大皿に被せられた銀のボウルを取り払った。
大きな、玉ねぎやら何やらを、混ぜ込まれたハンバーグ、煮た肉の入ったサラダ、ミートソースの良く絡んだパスタ。
そしてど真ん中には。
大きなヘルメットの形をした物が鎮座していた。
「凝った入れ物ねぇ。自作?」
「んまあ、自作かな。そういうことにしといて。
そんなことより、開けてみてくれよわーちゃん。
きっと凄さに卒倒間違いなしだぜ?」
早く、早くしてくれ。
そう言わんばかりにプレザントの声は跳ねている。
この先何が起きるかを心待ちにしている。
「ヘルメットの機能まで再現したの!?凄いわねぇこれ。じゃあ遠慮なく。」
彼女は促されるまま耳元にあるヘルメットの開閉ボタンを押した。
押してしまった。
空気の抜けるような音とともに目の前へ出てきたのは、どう見ても人の頭で、そして無惨にもレンチンされてしまったのか鼻から脳漿が垂れ流しになり、目は破裂し、至るところが目も当てられないほど焦げ付いた「何か」だった。
「何......これ......?」
「何って、お頭にそのまま火を通した贅沢な料理さ。」
みるみる顔が強ばる職員たち。
それはWA2000も例外ではなかった。
「そうじゃなくて......これは、何肉......?」
まってました!彼はそう言わんばかりに大きく体を伸ばして、はち切れんばかりに腕を広げ高らかに宣言する。
「よくぞ聞いてくれました!これぞ珍味中の珍味!ありふれてるのにも関わらず誰も食べたことのない最高の食材!お前らはいいよなぁ!俺は食べられないんだぜ!?
まあ、ホモサピエンス、分かりやすく言えば、人間の肉さ。食わず嫌いは良くないぞ?」
悲鳴が沸き上がった。
あまりにもの衝撃に胃の内容物をはく職員。
WA2000もみるみるうちに青ざめ、そしてえずいていた。
「うぅ......アンタ......質の悪い冗談はよしてよね......」
まだだ、まだコイツのことだ。
冗談かもしれない。
だがWA2000は見積もりが甘かった。
彼はこれを冗談だと思って出したのだ。
つまりは人が死んでようが死んでいまいが関係はない。
「疑うのは良くないぞ!これは人間だ!証明して見せよう!」
彼は特別仕様のウィングマンを抜き放つと直ぐ様その頭部に発砲。
鮮やかな脳ミソが、テラスの中を舞い踊った。
誰もが声をあげられない。
シミュラクラムの二人は目を背けていた。
職員は皆泣き叫んでいた。
パイロット達は呆れていた。
ただ一人WA2000は、恐怖していた。
人の生き死にはギャグではないと。
殺しのために生まれたからこそ、死に厳格に接していた。
その価値観を揺らがしに来ている。
知らぬものを恐れるのはごくごく当然のことだ。
だから、吐いた。
「伝染病の可能性があるからな。職員は直ちに精密検査をうけたまえ。
シミュラクラムは清掃だ。というか厨房を作り直せ。
その場に居合わせなかった職員と私でミリシア兵士の検死と同定、そしてできるなら記憶領域の再生だ。
プレザントは後で始末書と反省文。そう伝えておいてくれ。」
部下に通信を入れたマーダー大将は、またもや頭を抱えることになるのであった。