「我々が発掘、調査、複製したフォールドウェポンはこれからのフロンティア、ひいてはIMCを変える。」
一人の壮年の男性が、ホログラムで夥しい量の資料を空間に写し出しながら、壇上でハキハキと、雄弁に語っている。
「IMC傘下の君たちにもこの兵器の究極的な存在意義を理解していただけるだろうか?」
彼の名はマーダー。
たった彼一人が率いるの私兵のみで師団を編成し、ミリシアの主力艦隊と痛み分けに持ち込むほどの手腕を持つ将軍、つまり大将でありながらまた彼は優秀且つ好奇心旺盛な学者でもある。
彼の率いるARESの名に込められた意味は、彼等の研究団体という本質を何よりも物語っているだろう。
彼は今、フロンティアにおけるIMC傘下組織におけるそれぞれの方針説明会において、その弁舌をふるっているのだ。
「私達はなにも考えずタイフォンの前文明から遺産を譲り受けたわけではない。
ARES師団はこれらの遺跡郡から技術を得、そして私達が元々持っていた技術と高度なレベルで融合させることができた。
アークの自力精製と、そのケーシングがそうだ。
アークの調整も我々は可能とした。
これがなにを意味するかは、聡明な諸君らなら周知の通りだろう。」
キビキビと、効率的に素早く自らの立ち位置を変え、客員全てを引き込む演説を続けるマーダー。
「つまりタイフォンで失ったものは、全て取り戻すことができる、可逆的な損失でしかないということだ。
そして我々はフォールドウェポンの更なる有効な利用法をも模索している_______」
だが、それを眺めながらつまらなさそうにする人影がひとつ、ポツンと席に座っていた。
連れてきてもらった例の興奮剤義体のパイロットからも数列離れて。
彼女は兵器だ。
元が人間などではない。
生まれも育ちも仕事も何もかもが、人のために生まれた機械だ。
生まれた理由を奉仕のみに見出だす人間は稀であろう。
だが彼女はそうだった。
彼女は、こういった小難しく、そして専門的で、極めつけに「銃」というアイデンティティを持つ自分を脅かすような新たな兵器の話を聞くのは、筆舌に尽くしがたいほどに退屈だった。
そして、いつのまにかシャットダウンしていたらしい。
「_____どうした、人形。調子でも悪いのか。」
彼女が次に目を覚まして見たのは、至近距離のマーダーの顔だった。
「使用方法を間違えて過負荷でもかけていたのかと心配したぞ、WA2000。まさかただつまらんかっただけで寝ていたとはな。」
巨大な星間航行用の輸送船、一連のそれらの一つの更に一角、マーダーとWA2000、そしてARES所属のパイロット数人が集まっていた。
WA2000はむすっとした、しかしその中に申し訳なさそうな表情が見え隠れした複雑な表情をしている。
「別に君を責めている訳でもない。
IMCと一口に言っても、わが社は些か大きすぎる。
我々のように秩序取り戻すことを目指す団体もあれば、私利私欲のため裏からミリシアへ兵器提供を涼しい顔でしでかす企業もいる。
あの集会など、そんな馬鹿げた愚か者たちに、我々の権威と力を示すためのくだらんスピーチでしかなかったのだからな。」
マーダーは一気に、そして吐き捨てるかの如く言った。
嫌悪感を露にしたそれは、彼にしては珍しく感情的であった。