戦争だ。
ミリシアとIMCの戦争は、私が来る前も来た後も激化の一途を辿っていた。
私たちは、ドロップポッドに乗り込む。これは、高空から30秒くらいで、直接戦場に兵力を送り込むことができる発明品なのだが、私はドロップシップの方が好みだ。
理由はすぐに分かる。
「私これ苦手なのよね......」
「黙ってください、ドロップシークエンスを開始します!」
この哲学薬中はあとでシップにのって悠々と来るのだろう。
正直に言うと、私ものせてほしい。
今は私とダミー2、むさ苦しい男2だが、この前までは周り全員がコミュ障IMC人形(やつら定型文しか返してくれない)だったり、逆にうるさ過ぎる人間ばかりだったり(なんで興奮剤の話をここで聞かなきゃならないのよ)で、戦場につく前から疲れたぐらいだった。
ドロップポッド特有の浮遊感が私を襲った。
がたがた。ゆらゆら。何が音の原因なのか、想像するだけで恐ろしい。
私はこの不安定さが大嫌いだった。
同僚のぼやきも聞き流し、私は必死に揺れと浮遊感に耐えた。
しばらくして、無機質なアナウンスと、凄まじい衝撃が、地表への到達を私たちに知らせた。
「隊列を乱すな!前方に注意!」
IMCの分隊長が号令をかける。私たちは四人(その内の半分は私だが)一組で、余程のことがない限り、私たち四人は一緒に生き延びるし、もしくは四人一緒に死ぬ。
まあ、私たちがいるからには余程のことがない限り全滅なぞさせない。
私たちはいわゆる選抜射手で、そこそこの距離から相手の重要な攻撃部隊に被害を与えるのが役割だ。
彼ら二人は最新式の、Lastimosaarmory製品のロングボウ-DMRを携行している。一般の兵士程度ならば、胴体の適当なところを撃ち抜くだけで戦闘不能、あるいは死に追い込む。それほどまでに殺戮の技術は進歩していた。
それにたいして私たちは、改修や補強は施しているものの、骨董品もいいところの、半身とも言えるWA2000を得物としていた。
おそらく彼らの銃に純粋性能で勝るところは少ないだろう。
「おい、いくら人形とは言え、そんな武器で俺たちの足を引っ張らないのか?」
だから、彼らのこういった言動も、仕方ないと言えば仕方ない。
「ふん、見くびらないことね、私は殺しの為だけに生まれてきたのよ、アンタらとは格が違うところを見せてやるわ。」
しかし、それでも尋常の兵士ではないのが我々戦術人形であり、そしてそれを支えるのがASSTだった。
私たちは、建物と建物の合間を縫い、できるだけ見つからぬように、しかし迅速に行動していた。
行軍中のあるとき、私のダミーが敵を認識した。
瞬間、ダミーではない私の銃は、既に火を吹いていた。
彼らの驚いた顔といったらもう面白いくらいだ。私はただ、ダミーの視覚情報と、戦術人形のみが持つであろう銃を自らの身体と同じ用に扱うことを可能とする超感覚を利用し、顔を出すこともなく敵の分隊長の脳天を撃ち抜いただけだった。
そう、この程度のことは造作もないのだ。
「やっぱお前らやべえな、人間じゃなきゃここまでできるのか。」
分隊長が感嘆する。
ふふん、この人は、みる目あるんじゃない?まあ当然だけど。
それよりもだ。
「どうだか。スペクターだって似たようなことは出来るんじゃないのか、マーダーの考えることはよくわからん。無駄じゃないのか。」
......こいつは許さん。絶対にだ。
私たちはそのあともすこぶる順調だった。
ここら辺はもともとミリシアの居住区で、様々な間取りの乱雑な住宅でごったがえしていた。
その地形を存分に利用して、私たちは撃ち殺しまくった。
アイツらも、中々やる。
......癪なのは、私の性能を頑なに認めず、価格不相応だと常に文句を言ってきたやつの戦果が、私といい勝負をしていると言うことだ。
「ふーん、やっぱり骨董品は骨董品だったな、俺たちとそんなに殺した数はかわりない。」
カチンと来た。私の型の悪い癖は、すぐに感情的になることだと言われているが、今回ばかりは私じゃなくても怒ってたと思う。
「なんですって!?負けてる癖によく言うわね!」
売り言葉に買い言葉。一触即発の危機。
「おい!お前ら喧嘩してる場合じゃないだろ!まだ戦いは終わっていないぞ!」
......私は許した訳ではないが、その前に私はプロなので、そして他ならない分隊長の命令なので素直に従うことにした。アイツは不服そうだ。プロ意識が足りないんじゃないのかしら?なんてあとでからかおうと思ったところで、戦場にあの音が響き渡った。
腹の底に響くような、恐ろしい音。戦場の隅々にまでその存在を主張する。私は急いで電脳の友軍反応を確認する。
ない。ない。ない。タイタンフォールの要請は、どこにもなかった。つまり、あれは。
「敵のタイタンフォールを確認!ここはもうだめだ!行けぇ!行けぇ!」
味方からの通信が入る。
始まった。戦場におけるIMCの有利は変わらないが、しかし私達普通歩兵にしてみれば、あれは死の音だった。