どんな困難が行く手を阻もうが、俺はアイツらに破滅をもたらしてやる。絶対にだ。
パイロットに誘われるがまま、俺たちは彼等のアジトらしき場所に来ていた。
俺の隣には、護衛として連れてきた、保有する人形の中で俺が一番信頼できるPKPがいる。
コイツは、俺が指揮官業を始めたころ、最初期に製造され俺の元へと来たこの上ない程の高級人形だった。その頃の舞い上がっていた俺は、PKPとともに大昔の巨大PMC、グリフィンに居たとされる鉄血を大きく衰退させた大英雄のあとを継いでやる、皆の平和を守るヒーローにコイツとなるんだ!などと呑気に考えていた。俺の憧れていたその大英雄は、指揮官を志すものならば知らぬものはいないだろう有名な存在であった。
が、結局の所は俺達は大英雄ではなく鉄血の残党や、もはや本腰をいれればとっくに滅ぼせたであろうE.L.I.Dとまるで互角の戦いを演出するような名演出家と名女優たちに成らされていた。結局人間の敵は人間なのだ。人間以外など敵にもならない。
こんなのは、俺が思い描いていた理想の指揮官ではなかった。
不満を持っていたのは俺だけじゃない。
だからこそコイツ、PKPも連れてきた。コイツは、いわば同志だ。PKP型はエリートを自称する。もちろん、それだけの実力を伴ってだ。しかし、俺のところに任された仕事は誰でもできるような残党処理や書類仕事、IMCのイメージアップのための様々な雑用でしかなかった。おそらくコイツは、想像もつかないほどつらかっただろう。
あの話を副官として聞いていた彼女が、今の今まで、恐ろしく単調な書類仕事と、ルーチンワークで終わらせられるようなくだらない防衛任務ばかりで精気を失って久しかった瞳を、少しばかり輝かせていたのを、俺は見逃していなかった。
俺たちを連れてきたパイロットは、皆のリーダー的な存在のようだ。今もここで、集まった奴等を鼓舞する演説をしている。
「今も宇宙の向こう側では、我々の同志が自らをも惜しまず戦っています。彼らは、我々とすむ場所や、人種も違う。しかし、志すものと、境遇は同一であります。
彼らは、我々と同じく、IMCに搾取される側でした。
我々は労働力と誇りを、あのIMCに奪われました。しかし今日、同胞と同じようにそれらを奪い返すのです!」
言葉自体はシンプルだが、しかし心を突き動かすその演説により、ここにいる人間の気持ちは一つになっていた気がした。できる気がする。
「我々は、デモ行為を行います。」
今演説していたコイツが、俺達がやるべきことを説明している。
「我々は、あくまでも平和的に彼等に抗議するのです。」
彼自身は、穏やか且つ理知的な言葉を選んでるが、その実まったく穏やかではない。つまりこいつは何が言いたいかというと、自分達からは襲わず、IMCから攻撃された、ということにし、大義名分を得たいようだ。確かに、そちらの方が協力は得やすい。IMC側から襲ってきたとなれば、普段日和っている奴等も自己防衛のために戦わざるをえなくなる。
ここにいたのは、俺とPKPのような指揮官とペアの人形、というような構成ばかりだった。
ある種のPMCの伝統なのだろう、戦術人形と共に戦うというのは。無機質なロボットでは、人間はまいってしまうのだろうか。それともただの好みの問題なのか。確かなのは、とにかく人間は、人間らしいものを好むようだ。
「やっと...ワタシの価値を...指揮官に示せるのだな...!」
話を聞いていた俺の相棒は、俄然やる気のようだ。
作戦は大々的に行う。
数ヵ月後、俺は指揮官をやめていた。だが、PKPは連れたままだ。こいつの所有権は、俺がPMCから雀の涙程度にもらっていた給料を、また気の遠くなるような期間貯めた貯金をはたいて、会社から買い取ったのだ。こいつだけは、俺と来てほしかった。
そしてなんのためにやめたのか。そりゃ、今から俺達は革命の狼煙を上げるためだ。
ここら辺は中々に安全で、その平和を俺達が守っていた。いや、守ったように見せかけていた。IMCは安全の対価として手に入れた金を、好き勝手に中抜きして俺達PMC、そして指揮官に渡す。自らの兵力は十分なのに、それを守るためには使おうとはしない。経費削減のため、また純粋な戦闘機械を居住区の近くで使うのはイメージを悪くするからだろうか。とにかく、やつらが兵士を動かすのは、どこまでいっても自らの成長のためのみなのだ。
しかしここ自体は、さっきも言った通り平和なので、兵力は手薄のはずだ。
それにつけこみ、俺達は今から変える。この世界を。社会を。
俺は他の元指揮官達と道を練り歩き始めた。そこの人員の中には、ダミーリンクにフードを被せた人形も入れ、まるで大規模な労働者運動にみせかけていた。その様子たるや、一瞬だけだったが、まだ資本主義が正常に機能し、労働者たちがまだ声を失う前の世界を想起させるくらいで。
「こちらはIMC警備担当者です。このデモ行為は許可されてはいません。今すぐに中止し、はやく撤退しなさい。」
案の定、これをとめにIMCがやってきた。そりゃ元の自らの末端社員が、自社のことをこき下ろして回るのだ、放っておけばどれだけの風評被害がでるかわからない。
ちょっと前までは俺達がデモを止める役だったのを思い出すと、少し滑稽だった。
IMCは強引だから、すこしこちらがごねればすぐにボロをだす。
「我々には発砲許可が与えられています。可及的速やかにこのデモ行為を停止し、解散してください。さもなければ発砲します。」
なんどか立ち退きの拒否をすれば、徐々にやつらの脅しが強くなる。狙い通りだ。
だから俺達は退かない。
じれったくなったのか、それとも威圧なのか、やつらが銃を構える。
挑発、警告、宣言、宣告。
長いようで短い時間をすごしたあと、やつらのリーダーがしびれをきらしたのか、ついにそのときは来た。
彼らの人差し指により引き金がひかれ、雷鳴のような銃声が、連続して響き渡っていた。
しかし、俺達にはたいした被害はない。
何故なら、
ショットガンの人形達が俺達の前に立ちはだかり、奴等の銃撃を防いでくれたからだ。
用意周到な指揮官たちの下準備はこれだけではない。
その後ろでは、火力支援のための人形達が、一斉に構えをとっていた。完璧な布陣だ。俺はこういう真面目な戦いがしたいと常々おもっていたんだ。
まさか人形までもが敵になるとは思わなかったIMCの警備担当者たちと、俺達革命家との戦いが火蓋を切った。