―大東洋諸国会議
これは、大きな出来事が起きた場合に臨時的に開かれる会議である。参加国は文明圏外の国々で構成される。
元々会議の提唱国が文明圏外の国であったため、列強のパーパルディア皇国や、第3文明圏の国々は「会議は必要が無く、無意味」として不参加となった。
会議に文明圏の国々はいないため、過去に開かれた会議では、国同士の会議としては珍しく、比較的に本音を交わすオープンな会議が行われてきた。
今まで行われた会議では、パーパルディア皇国の動向等が会議の主題となることが多かったが、今回は違う。
今回の大東洋諸国会議の目玉は急遽現れた新興国家、「日本」についてである。
「これより大東洋諸国会議を開催します」
各国の代表には、いままでに日本が起こした代表的な出来事が記されていた。
ここで、ロデニウス大陸での日本のありえないほどの武勇伝が誇張でないということを、諸々の国が認識し始める。
「今回の参加国は日本と国交を開いている国が多くを占めるが、共通認識としては、日本がとてつもない力を持った国だということじゃ」
「各国の認識をお願いしたい」
マオ王国の代表が挙手し、話始める。
「我が国は日本とは国交が無いが、かの国をとても危険な存在とみなしている。何故ならば、気に食わないロウリア王国を滅した。しかも、圧倒的な戦力で、たったの1回の戦いでロウリア王国ほどの大国の陸軍主力が叩き潰されている。いつこの力が自分達に降りかかってくるかが不明である。この国はとても危険だ。」
次に、トーパ王国が話し始める。
「トーパ王国です。我々は、日本を危険とは思っていない。彼らは自分に対して危害が加えられない限り、決して自分からは襲ってこない。しかも、超技術の書かれた本が、彼らの国では普通に書店に売っており、それを他国が買う事を妨げない。日本がいるだけで、その国と関わった国は、技術水準が上がる。日本はパーパルディア皇国以上の技術を持っている。」
「シオス王国です。我々も、トーパ王国と同じ考えです。こちらから攻撃しない限り、彼らは何もしてこない。
パーパルディア皇国のように貿易、技術供与のために奴隷の差し出しを言ってくる訳でもない。
ロウリア王国の案件は、クワトイネ公国からの食料輸入が途絶えたら、餓死者が出るという、特殊な状況下だったようだ。彼らは文明が進みすぎているだけなのだ。」
「先日うちの外交官が日本からの本屋で、「武器の歴史」という本を見つけましてな。参考までに紹介したいのですが、パーパルディア皇国の歩兵に配備されている、プリントロック式のマスケット銃と呼ばれる最新兵器ですが、その本に載ってましたよ。300年以上前の兵器であり、今では骨董品としての価値があるそうな。日本軍の規模は知らないが、少なくとも技術においては、列強の最新兵器が彼らの300年以上前の骨董品、そう、彼らは進みすぎているのだよ」
話は続く
「それに……はっきり言って、列強のワイバーンロードをあっさりと叩き落とす彼らが、もし攻めてきたら、はっきり言って手のうちようが無いよ。我々全てが集まっても、ロウリア王国の全軍よりも弱く、そしてそのロウリア王国は日本の兵を1人も倒せなかった。
日本とどう付き合うかを考えたほうが良い」
「クワ・トイネ公国です。我々は彼らの国から様々なインフラを輸入し、生活水準が劇的に向上しつつあります。我々も彼らを友好国として歓迎すべきと考えます。」
「アワン王国です。我々大東洋諸国は、日本をうまく活用し、パーパルディア皇国の脅威と暴走をいかに避けるのかに力を注ぐべきです。ここ10年くらい、皇国はやりすぎだ。」
会議は、日本とは敵対せず、パーパルディア皇国に対しては、事態の推移を慎重に見守る
方向で声明を出す事となった。
「……違う、そんなに楽観的に構えていい相手ではない……」
どこかで誰かが、そんなことを呟いていた。
パーパルディア皇国、皇国監査軍東洋艦隊所属、特A級竜騎士のレクマイア。彼は困惑していた。
レクマイアは、フェン王国への懲罰的攻撃の際、不運、否、幸運にも航空機の至近通過によって乗騎から落下し、客船に収容された。その後取調べを受ける。
敵はどうやったのかは知らないが、自分は打ち落とされた。仲間は皆死んだ。
取り調べ室には誰もやって来ず、無機質な音声が淡々と応対してくる。蛮族め。人が出向くことすらしないとは、コケにしているのか。
皇国の技術のすばらしさを説き、文明圏の国々よりも皇国が遥かに進んでいる事を告げる。
まして、文明圏外の国からすると、比べ物にならないほどの技術と大きな規模の軍を有しており、それを余裕で支えることの出来るとてつもない国力も伝えた。
新興国の軍は時として、世界を知らないため、伝えるだけで効果があり、自分への扱いもより丁重なものになるだろうと思った。
しかし、日本なる国の取調べ官らしき声は動じる事無く、淡々としたままで、何の感情も見せなかった。
私の日本への認識は、彼らの国に近づくにつれて変わっていく。
最初に驚いたのが、周囲に存在した海魔や黒い鉄竜。あれは日本の兵器らしい。凄まじい力を持っているあれらが。
私は日本の首都、東京に移送された。
ここで、私は信じられない物を目にする。
天を貫かんとする巨大な建造物群、鉄の地竜が町には溢れ、空にはワイバーンロードよりも遥かに速く、そして大きい鉄竜が飛び回る。
その規模、技術はパーパルディア皇国の首都、皇都エストシラントよりも遥かにすごいものだ。
そしてあの取り調べの声やその他、様々なところに見える、コンピュータという物たちの存在。街中の市民の、奔放な様子。
「この国は……危険だ。」
私は日本への認識を180度転換する。
何故このような国が突然現れたのかは極めて謎だが、このままだと外務局がいつものように、「蛮族を滅する」といって日本に戦争を仕掛けるだろう。
監査軍の竜騎士部隊を全滅させたのだから、プライドの高い皇国が黙っているはずが無い。
外務局の人間が極めて高飛車な態度で日本の外務省職員を怒鳴りつける姿が目に浮かぶ。
皇国がこの国に戦争を仕掛けた場合、皇国の被害は相当なものとなろう。
もしかすると、列強の地位を失いかねない壊滅的なものとなるかもしれない。
竜騎士レクマイアは皇国の未来を憂うのだった。
―第2文明圏 列強国 ム―
晴天、雲は遠くに少し浮かんでいるのが見えるのみであり、視界は極めて良好である。
気候はあたたかくなってきており、鳥たちはのんびりと歌い、蝶の舞う季節。
技術士官マイラスは軍を通じて伝えられた外務省からの急な呼び出しに困惑していた。
呼び出しに応じて空港にやってきたマイラスに対して、 外交官がゆっくりと口を開く。
「何と説明しようか……。
今回君を呼び出したのは、正体不明の国の技術レベルを探ってほしいのだよ」
マイラスは第八帝国の事かと思い、
「グラ・バルカス帝国の事ですか?」
すると、思わぬ答えが返ってくる。
「いや、違う。新興国家だ。本日ムーの東側海上に白い船が1隻現れた。海軍が臨検すると、日本という国の特使がおり、我が国と新たに国交を開きたいと言ってきたのだ。
我が国と国交を開きたいと言ってくる国は珍しい事では無いが、問題は、彼らの乗ってきた乗物だ。……帆船では無いのだよ。」
「まさか……」
「そして魔力感知器にも反応が無いので、魔導船でもない。機械による動力船であると思われる」
「やはり、そうですか……」
「そして、さらに問題なのが、我が国の技術的優位を見せるために、会談場所をアイナンク空港に指定したら、飛行許可を願い出て来たのだよ」
「当初は、外交官がワイバーンで来るのか、なんて現場主義な国かと話題になった。飛行許可を出してみたら、飛行機械を使用して飛んで来たのだよ」
「っ!」
「先導した空軍機によれば、相手は時速250km程度の飛行速度であったと言っていた。
試しに、空戦したら、勝てそうか聞いてみたが、絶対に負けないと空軍パイロットは答えておったよ。ただ、パイロットには見栄を張る癖のある者も居る。彼がどうだかは知らないが。まぁ、我が国の最新鋭戦闘機よりも遅いから問題ないとは思うがね。
まあ、飛行機械を持っているというだけでも、十分警戒すべき相手ではある」
「しかし、飛行原理が我々の知っている航空機とはちょっと違うようなのだよ。見たことが無い飛行機械だった。そこで、マイラス君、君の出番となった訳だ」
「彼らの言い分によれば、日本は第3文明圏フィルアデス大陸のさらに東に位置する文明圏外国家だ。しかし、持ってきた飛行機械の技術はパーパルディア皇国を超えているようだ。我が国との会談は1週間後に行われるが、その間に彼らを観光案内し、我が国の技術の高さを知らしめると共に、相手の技術レベルを探ってくれ」
「解りました」
技術士官のマイラスは、久々に技術者魂の震えを感じた。未知の飛行機械とはいかなるものだろうか?
立ち去ろうとした外交官が足を止め、振り返る。
「あ! そうそう、日本の使用した飛行機械は、今空港東側に駐機してあるので、まずは見ておいてくれたまえ」
外交官は立ち去った。
―5分後
マイラスは駐機場にある日本という国外交使節の乗ってきた飛行機械を眺め、唖然としていた。
……プロペラが上についている。2つ、上下に重なっているような状態だ。これを回転させて飛んできたらしいが……
良く見ると、プロペラ自体が翼の断面を持っている。
翼前部で翼に当たった空気は上下に別れ、翼後部で再び一緒になる。翼は上部が下部に比べ、膨らんでいるので、下部に比べ、同一時間での空気が通る距離が長く、結果空気の流速も速くなる。
ここにおいて、翼上部と下部で気圧差が生じ、上に向かう力が発生する。
ただ。これを回転させて飛ぶとなると、超強力なエンジンが必要だ。
さらに、プロペラを回すと、その回転方向と逆方向にモーメントがかかり、そのままだと機体がプロペラと逆回転をし始める。
恐らく上下に積み重なっているプロペラを逆回転させて打ち消しているのだろうが、その技術的難易度は測り知れない。
それに、超強力なエンジンを積んでいるにしては、機体が小さいように見える。エンジンに付き物の吸気口や排気口といったものも見当たらない。液冷なのだろうか?
ただ一つ言えることは、これを造るのは非常に難しいということだった。
応接室へ向かうマイラスの足取りは重い。
日本国のヘリコプターと呼ばれる飛行機械は、おそらく我が国では、エンジン出力不足で作る事が出来ないだろう。
少なくとも、エンジンについては彼らは我々よりも優位である可能性が高い。
しかし、我が国には高さ100メートルクラスの超高層ビルや、時速が380kmも出る日本の航空機よりも速い戦闘機、そして技量の高いパイロット。そして最新鋭戦艦ラ・カサミがある。
「どうなる事やら……」
マイラスは日本国の使者が滞在する部屋の扉をノックした。
「どうぞ」
扉をゆっくりと開ける。
中には、二人の男がソファーに座っていた。
「こんにちは、今回会議までの一週間ムーの事をご紹介させていただきます、マイラスと申します」
日本国の使者は立ち上がり、挨拶をする
「外務省の御園です。今回ムー国をご紹介いただけるとのことで、ありがとうございます。感謝いたします。
こちらにいるのが、補佐の佐伯です。」
丁重な言葉使いだ。日本の使者は、すでに出発準備を整えていた。
「では、具体的にご案内するのは、明日からとします。長旅でお疲れでしょうから、今日はこの空港のご案内の後に、都内のホテルにお連れします」
マイラスは、空港出口へ行く前に、空港格納庫内に使者を連れて行く。
格納庫に入ると、白く塗られた機体に青のストライプが入り、前部にプロペラが付き、その横に機銃が2機配置され、車輪は固定式であるが、空気抵抗を減らすためにカバーが付いている複葉機が1機、駐機してあった。
ピカピカに磨かれており、整備が行き届いた機体だと推測される。
マイラスは説明を始めた。
「この鉄龍は、我が国では航空機と呼んでいる飛行機械です。
これは我が国最新鋭戦闘機「マリン」です。最大速度は、ワイバーンロードよりも速い380km/h、前部に機銃……ええと、火薬の爆発力で金属を飛ばす武器ですね。を、付け1人で操縦出来ます。メリットとしては、ワイバーンロードみたいに、ストレスで飛べなくなる事も無く、大量の糞の処理や未稼働時に食料をとらせ続ける必要も事もありません。空戦能力もワイバーンロードよりも上です。」
自信満々に説明する。
日本人とやらは、口をあけて、「はー」とか、間抜けな言葉を発している。
「は―……複葉機なのですね―」
御園とかいう外交官が驚いて見ている。
「プロペラで飛ぶんですねー。やっぱり電動かな?」
「いや、これは、多分レシプロエンジンだろう。」
「そうか……このレトロな感じが良いですねー……」
佐伯とかいう人間は、我が国の最新鋭戦闘機を見て「レトロ」という言葉を発した。
それに、電動かとも。
いったいどういう意味で言ってるんだ?
「内燃式レシプロエンジン以外にどういった選択肢がありますか?蒸気機関もレシプロといいますよね?まあ、蒸気機関は重くて出力が弱く飛行には適さないのですが」
マイラスの問いに、佐伯という人間が答える。
「日本には、ジェットエンジンと呼ばれる航空機に適した小型高出力エンジンがありますので……。それから、電気モーターで動くのも。
レシプロエンジンは……現役機では無かったかな?」
ほほう、日本は、やはり、高性能エンジンを所有しているようだ。探りを入れた甲斐があった。
「ほう……日本にも航空機に適したエンジンがあるのですね。是非構造を教えてもらいたいものです」
「簡単な設計図や原理であれば、日本と国交を結んでいただけたら、書店でいくらでも購入できます。しかし、高出力化や、エンジンの燃焼温度に耐えうる素材の具体的造り方については、私からは何とも言えませんが……」
「簡単な設計図が手に入るのですね。それは面白い。個人的には是非日本と国交を結べる事を願いますよ」
もしかしたら、日本は航空機技術についても我が国を凌駕しているかもしれない。
マイラスは、確認のため、探りを入れる。
「日本の航空機はどのくらい速度が出るのですか?」
航空機は速度が重要だ。速度が上がれば、一撃離脱戦法により、速い方が圧倒的に有利である。
御園と佐伯は目を合わせる。
ヒソヒソと話をしている。
(今の最新鋭機のナンバとスペック、知ってるか?)
(資料を読んでおいた。)
(ナイス! ……で、言ってもいいものだろうか。)
(どうせ国交を結べば知れるだろうし…… お、一応聞いてみたけど、NDCはいいってさ。)
(そうか。)
「……戦闘機であれば、我が軍の主力戦闘機であるCP-237が最高速度マッハ3.3くらいです。音速の3.3倍程度ですね。旅客機であれば、対気速度で時速900kmくらいが巡航速度です」
「っ……!!!!」
マイラス、絶句。
音速超えだと!?そそそ、そんな馬鹿な!
「ははは……是非見てみたいものです……では、こちらへ……」
マイラスは、日本の使者を、空港外へ案内する。ムーの誇る自動車に乗せてホテルへ向かおうとしたが、もう嫌な予感しかしない。
空港外には、日本の使者を乗せる車が待機していた。馬を使わず、油を使用した内燃機関を車に積むまでに小型化した列強ムーの技術の結晶。
日本の使者は、驚く事無く、車に乗車する。
車は出発し、動き始める。特に驚いた様子はない。やはりそうか……
「日本にも、車は存在するのですか?」
マイラスは尋ねる。
「はい、乗用車であれば、3年前のデータですが、日本で約6131万台が走っています」
「そ……そんなに走っていると、道が車で一杯になってしまいますね……」
「コンピュータがばっちり制御してくれていますからね。安心ですよ。」
コンピュータ?マイラスは精神的に疲れてきた。
整地された道をホテルへ向かう。
やがて、高級ホテルが見えてきた。
車はホテルに横付けされ、皆はホテルへ入る。
「明日は、我が国の歴史と、我が国の海軍の一部をご案内いたします。今日はごゆっくりとお休み下さい」
マイラスは、日本の使者にこう伝え、ホテルを後にした。
翌日、日本の使者は、ムー歴史資料館にいた。簡単にマイラスは説明を始める。
「では、我々の歴史について簡単に説明いたします。まず、各国にはなかなか信じてもらえませんが、我々のご先祖様は、この星の住人ではありません」
「へ!?」
日本の使者は驚きのあまりポカーンとした顔をしている。
マイラスは話を続ける。
「時は1万2千年前、大陸大転移と呼ばれる現象が起こりました。これにより、ムー大陸のほとんどはこの世界へ転移してしまいました。これは、当時王政だったムーの正式な記録によって残されています。
これが前世界の惑星になります」
マイラスは、地球儀を取り出す。外務省の御園は、見覚えのある地理配置に驚愕する。
「な……な……な……これは!」
ふふん、日本人め、前世界が丸い事に驚いているな。
「前世界は丸かったのです。この世界も、水平線の位置からして前世界の2倍強はありますが、丸いはずです」
「地球だ!!!!」
「はい?」
「これは……地軸の位置が少し違うのか?しかし、この配置は紛れも無く地球だ。む?南極大陸がこの位置にあるということは、氷に覆われてはいなかったということか・・・」
なんだか、日本人が大陸を指差して驚いている。説明してやるか。
マイラスは、南極大陸を指示し、説明を始める。
「ちなみに、この大陸はアトランティスといいまして、前世界では、ムーと共に、世界を2分するほどの力を持った国家でした。ムーがいなくなった今、おそらく世界を支配しているでしょうね」
「ちなみに……」
と言って、マイラスはユーラシア大陸の横にある4つの大きな島が集まっている場所を指示する。
「この国は、ヤムートといって、我が国一の友好国だったそうです。しかし、転移で引き裂かれたため、おそらく今はアトランティスに飲み込まれているでしょうけど……」
「ちょっとよろしいですか?」
御園がマイラスの発言に割って入る。
「どうぞ」
「日本を説明するのに、一番良い方法が出来ました」
「はい?」
「日本も転移国家です。同一次元にあった星かは不明ですが、おそらくあなた方の昔いた星から転移してきたとおもいます。
あなたが今指差したこの4つの島が現在の我が国でしょう。そして……」
御園はバッグから地図を出す。
「これが現在の日本地図、そしてこれが私たちの過去にいた世界の地図です」
日本地図、そしてメルカトル図法を使用した世界地図がマイラスに見せられる。
その地図には、たしかにムーのいた、ムー大陸の存在しない前世界地図があった。
マイラスに衝撃が走る。御園が言葉を続ける。
「我々の元いた世界にも、1万2千年前に、突如として海に沈んだ大陸があると、言い伝え程度ですが残っています。
あなたが今アトランティスと呼んだ大陸は、南極になってしまっているようですね。もしかしたら、地軸がずれたのかな?」
「ははは……まさかの歴史的発見ですね。あなた方日本とは、個人的には友好国となってほしいものです。まさか……そんな事が……。
後で、すぐに上に報告いたします」
その後、マイラスは簡単に歴史を伝えた。
転移後の混乱、周辺国との軋轢、魔法文明に比べての劣勢、機械文明としての出発、そして世界第2位の国家へ。
ムーの歴史は、転移してからは苦難の歴史だったようだ。しかし、単一国家独力で車や飛行機を開発しているのは驚きの限りである。
一通り説明が終わり、日本の使者を海軍基地へ案内する。
日本に対してムーの……列強で最強かもしくは2番目の海軍力を誇るムーの姿を見せ付けてやらなければならない……
そこでマイラスは、日本の艦艇の魔写のことを思い出す。
「そういえば、貴国の軍艦の写真を見ました。とても変わった形をしていて、私にはどういう船なのか見当もつかない。あれは、どういう船なのですか?」
「我々の軍艦?」
「ええ。黒い……鯨のような。」
「ああ……地球の最新鋭戦闘艦ですね。」
「地球の……?」
日本の使節団は地球の現状について説明した。
ひとつになった世界。しかし制度上はそのままであること。様々な国際協調的制度をとりあえず入れておく便利な枠組みとして使われた国連、通称となった国際連邦、平和で豊かな世界、平和の中での戦争、そして、コンピュータ。
「地球は……そのようなことになっているのですね……
このフネは……武装は無いように見えますが……」
「ええっと、よく見れば……多分、ここのコブが砲塔でしょう。」
「1門だけですか?火力不足になるし、この配置は射界にも問題があるのでは?」
「精度も威力もありますし、連射も効きますので。
射界は……水上艦の戦闘も、航空機のようにドッグファイトをするようになっていたそうですよ?
詳しいことは知りませんが……」
衝撃的な情報の数々。マイラスは、これから自国の紹介を続けるにあたって気が重くなると同時に、自分たちの古巣である地球、自分たちの歩む機械文明の極致に触れて、未来への期待も抱いていた。