「写真を見ただけで負ける事が解るとは……。これは……技術レベルが50年くらい開いていないか!?」
列強2位、ムー、統括軍所属、情報通信部m情報分析課の技術士官マイラスは、新興国グラ・バルカス帝国の戦艦、グレードアトラスターの写真を分析し、ムーの行く末を案じていた。
そして、ムーとは離れているため、直接影響は無いであろう国の艦の写真が一枚ある。
東の文明圏外国家、ロウリア王国とクワ・トイネ公国の戦争、誰もがロウリア王国の圧勝と分析していたが、それを覆した国の船らしい。
魔写した者の情報によれば、これは日本とかなんとかいう国の船で、単に戦闘艦、としか呼ばれているのを見聞きしたことがない、とのことらしいが……
「うーん……全く解らん」
まず、形状が異様だ。真っ黒な鯨のような艦体に、前後に航空機の翼のようなものがついているように見える。
形状からして造船技術についてはかなりのものを持っていると見えるのだが、武装らしきものが一つも見当たらないし、そもそも人が乗れそうな場所もない。船内にはもちろん乗れるスペースはあるのだろうが、艦橋も窓もどこにもないのではまともに航海できるとは思えない。
体当たりで敵船を沈めたという情報があるので、武装を搭載していないことについては、技術レベル的にそういったものがない、という可能性もあるにはあるのだが、影のように黒い色、滑らかな形状、サイズ、そして艦橋も舵も帆もない、というのは、そこまで低い技術レベルの産物とは思えない。
この艦に関しては、設計思想も用途も全くもって理解できない。
「訳の解らない国が、突然出てきたな……」
技術士官マイラスの苦悩は続く。
その頃、文明国の一つ、アルタラス王国がパーパルディア皇国に滅ぼされていた。脱出した王女ルミエスは、王国の無事を祈りながら、商船にゆられていた。商船は南海海流にのり、ロデニウス大陸のクワ・トイネ公国の沖合いまで流されてきていた。
商船は、運良く日の丸国旗を掲げた白い船から臨検を受け、食料のつきかけていた商船乗組員は日本に保護され、王女ルミエスも日本に保護を求めることとなる。
パーパルディア皇国においては、皇帝の命によりフェン王国及び日本を叩き潰すことが決定され、本国艦隊が派遣された。
フェン王国では平和な風景が続いていた。日本からはそこそこの量の観光客がやって来ていたが、その、戦争の影を全く意識していないかのような振る舞いを見て、フェン王国の民の中には彼らを心配する人もいた。フェン王国の民は、列強パーパルディア皇国の影に怯えていた。
日本から再びパーパルディア皇国に派遣された使節団は、今までと異なりやけに丁寧な対応を第三外務局長直々に受けていた。
パーパルディア皇国の本国艦隊、大艦隊がフェン王国に向かっていた。戦争はすぐそこまで近づいていた。