国際連邦日本エリア召喚   作:TOMOKOTA

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14 皇国の狼狽

 フェン王国、ニシノミヤコ沖合い約30km先の海上を航行する、パーパルディア皇国皇軍海上竜母艦隊を、拡散編隊を組んだCP-237の索敵システムは、その配置を含めて正確に把握していた。

 前方の護衛戦列艦から警戒音が上がる。

 

「何だ!?」

 

 艦隊副司令、アルモスは前方を注視する。

小さく見えづらいが、黒い粒のようなものが見える。

 

「未確認騎です!」

 

「敵か!?」

 

「不明、しかし警告に応じません!」

 

「では敵だ、竜騎士隊、緊急発進!」

 

 指示を出した時には、それらははじめに見た時よりもはるかに大きくなっていた。

 なんて速さだ。アルモスは驚愕する。艦隊の竜母では精鋭の竜騎士たちが緊急発進しようとしている。素晴らしい手際の良さと素早さだったが、しかし、間に合わない――!

 そう思った次の瞬間には黒い物体、矢のようなそれは彼の真上を通り過ぎており、それを目で追ったと思ったのと同時に、彼は後ろからの爆風に吹き飛ばされた。

 

 同じような光景が艦隊の全ての艦で繰り広げられていた。

CP-237編隊の、無誘導爆弾による攻撃。撃沈艦や消滅した艦は居なかったが、動ける艦もまた居なかった。

 旗艦である、対魔弾鉄鋼式装甲をふんだんに使用した、美しく、強く、そして大きな竜母ミールや、パーパルディア皇国の誇る最新鋭の100門級戦列艦フィシャヌスを含めて。

 

 

 

 フェン王国ニシノミヤコの沖合いに展開しているパーパルディア皇国大艦隊。

 その大艦隊の旗艦、パーパルディア皇国の技術のすべてをつぎ込んだ最強の120門級フィシャヌス級戦列艦パール、その艦上にいた皇軍の将シウスは西を見たまま動けずにいた。

 その額はびっしりと汗に濡れている。

 西の方角で猛烈な爆発が連続してあった。

 その後、皇国竜母艦隊、計20隻と全く連絡が取れなくなっている。

 すべての艦が魔通信に応答せず、そして信じられない事に、全ての艦の魔力反応が消えている。

 非常に短期間で20隻もの列強艦隊が本部に通信を発する暇も無く沈む原因は、将軍シウスには想像できなかった。

 艦隊はすでに戦闘態勢に入っており、確認のために砲艦4隻が現場海域に向かい始めている。

もしも竜母艦隊が消滅していたら。

 シウスの脳裏に最悪なシナリオが浮かぶ。

 既にニシノミヤコには基地が造られ、陸戦隊主力は、首都アマノキに向け出陣し、支援攻撃のために砲艦20隻も出発した。

 もう戦いは後に引けない。

 今戦いは皇帝陛下の関心も高く、例え、敵が強かったとしても、撤退や敗北の2文字は許されない。

 

 一笑に付した監査軍の報告書が思い出される。

 シウスの思考は駆け巡る。

 

 

 

 竜騎士小隊長バルオスは眼下の惨状を見て、言葉が出なかった。

 突然竜母が連続して大爆発を起こした。そのようにしか見えなかった。

 彼は配下の12騎を引き連れ、ニシノミヤコに着陸する事を決める。

 

 そこに突撃する2機のCP-237。35mmレールガンポッドを搭載している。

2機の動きは完全にシンクロしていた。

まずヘッドオンで3騎を撃墜、竜騎士たちの上を通ってすれ違うその時、進行方向を変えないまま、その場で下向きに回転しながら1騎を撃墜、反転した後は加速、後方からの射撃で2騎を撃墜。一機につき6騎、計12騎を撃墜させて竜騎士隊を全滅させた。

 その後は速度を落とさず大きく反転して、元々進んでいた方向へと向きを戻して飛び去って行く。

 

 

 

 ニシノミヤコから首都アマノキに至る途中にコウテ平野という平野がある。

 平野部ではあるが、大地に栄養は無く、作物が育たないばかりか、水の吸収性が良く、雨は大地のはるか下層まで一気に落ちるため、水の確保が出来ない。

 よってここは無人の平野であり、木も育たず、短い草の生えるのみの草原となっている。

 

 パーパルディア皇国陸戦隊約三千はこのコウテ平野に至り、布陣を整えていた。

 この平原を抜けると首都アマノキに至る。

 この場所では、フェン王国軍が死に物狂いになって突進してくる事が想定されていた。

 陸将ドルボは南側を注視する。

 南の海上には、支援攻撃のための砲艦20隻が見える。

 列強戦列艦の雄姿を見る。

 このような平野部での戦闘は皇国軍の得意分野であり、また、艦艇からの支援が行いやすい土地でもある。

 一呼吸おいて、彼は命令を下す。

 

「よし、進軍するぞ!!」

 

 上空にワイバーンロードが12騎天空に舞い上がり、進軍進路上の偵察を開始する。

 横1列に並んだ地竜の先頭に、隊は進む。

 

「首都アマノキを落したら、そこの人間はやりたいようにするよう兵に伝えろ!!」

 

「ウォォォォ!!!」

 

 兵たちは、様々な想像をし、士気も上がる。

 

「今回も……皇国が勝つ!!」

 

 その良き、突如としてはじけるような炸裂音が鳴り響く。

 

「何の音だ!!!」

 

 音のする方向を見る。

 上空、偵察に向かおうとしていたいたワイバーンロード12騎がバラバラに粉砕され、肉片、いや、もはやただの液体となったその残骸が降ってくる。

 

「な、何だ!!??」

 

 ドルボは海を見る。

黒い鯨のようなものがそこに浮かんでいた。

それはパーパルディア皇国の支援艦隊に対して攻撃を仕掛ける。魔獣が放つ魔導を受けた戦列艦や砲艦たちは跡形もなく消滅しているように見えた。

 

「例の魔獣だと!?」

 

 このようなフェン王国に近い沖合に、どうして。

どうしてこうも、皇国に都合の悪い時に……!

ドルボは混乱しつつも、なんとか兵たちに遮蔽物に駆け込むように指示を出す。

 魔獣がさらに魔導を放つのを見た時、ドルボは気が付く。魔法陣も何も伴わないそれは、しかし、発砲炎を伴っているように見えた。

 

「大砲……?」

 

 魔獣が、大砲を積んでいる?いや、しかし……

ドルボの脳裏に、処刑された日本人(地球人)の様子が浮かぶ。これまでの戦いでも都合悪く現れた魔獣たち、目の前のそれの、どこか機械的な様子。話に聞いた機械文明の、魔導の光を伴わない大砲。この沖合に居ながら、被害を受けた様子のないフェン王国。ロウリア王国を圧倒したという日本の軍……!

 

「まさか……! やはり……!」

 

 気が付いた時には、地球軍戦闘艦の、対地砲撃用砲弾による砲撃が着弾している。

有り余る運動エネルギーからその砲弾は地面に突入し、そこで起爆、地面を、突然噴火が起こったかのように内側から吹き飛ばし、土砂と共に自らの破片と爆風をまき散らす。高速、高温となった土砂や爆風だけでも周囲の兵は死に絶えた。

そしてその破片、装甲兵力にも充分な威力を持つよう、鋭い弾丸状に割れるよう調整された砲弾の破片。これは小口径の対戦車砲の砲撃に等しかった。地竜などもそれを浴びて死に絶える。

 1発1発は対地砲撃用の艦載砲としては小口径であり、その場を根こそぎ破壊するほどの攻撃範囲を持っていない。しかし、高速で、執拗に思えるほどに連射されるそれらを浴びたパーパルディア皇国軍の居たその場所には、深く耕され、所々赤熱した地面と、亡骸とすら呼べない残骸と化した皇国軍の成れの果てだけが残った。

 

 

 ムーの技術士官マイラスと戦術士官ラッサンは急造された小屋からドローンでそれを眺めていた。

 ムーの誇る艦隊、否、この世界で今までに見たどんな艦とも全く異なる外見のそれ。ラ・カサミよりは一回り小さいが、しかし、攻撃的な印象を受けるそれは、ともすればラ・カサミよりも強烈な威圧感を人に与えるように思えた。いや、威圧感というより、これは、異質さからくる不気味さか。

 その船は1隻で列強パーパルディア皇国の20隻もの艦隊に戦いを挑み、一方的に撃破してしまった。

そして陸の戦力も。砲の射程距離は長く、常識では考えられない速さで連射できる上、凄まじい威力を持っている。

 

 そして何よりも驚くべきことは、敵も自分も海も動いているにも関わらず、百発百中の射撃精度。対地攻撃にしても、広い範囲を薙ぎ払うために艦本体の向きを変えてまで照準する場所を変えて行っていた。それはつまり、あの砲が極めて高い精度を持っていて、散布界が狭いということを意味する。

 砲そのものの精度はもちろん、波による船の動揺も考慮すればそれは極めて難しいことだ。あの艦は高機動をしていても全くと言っていいほど動揺していない。それにあの砲、一様に黒い上砲塔の旋回範囲が狭かったので分かりづらいのだが、わずかに見えた動いている部分からすると、砲身はかなり短いはずだ、どうやってあのような精度を得ているのか、全く見当もつかない。

 自分たちの軍事の常識がガラガラと音をたてて崩れ落ちる。

 マイラスは技術的考察に耽るのだった。

 

 

 

 超F(フィシャヌス)級戦列艦パールの艦上で、将軍シウスは悩んでいた。

 フェン王国を支配せんがために派遣された皇軍、当初の戦力であればあっさりとフェン王国を支配できていたはずだった。

 現にニシノミヤコはあっさりと落ちた。

 第1外務局の皇族レミールの命令により、日本人観光客を処刑してから何かが変わり始めた。

 先ほど竜母艦隊のあった所に偵察に行った砲艦4隻から竜母艦隊壊滅の報が来た。

 壊滅的被害ではなく、壊滅である。

 

 上空を飛んでいたワイバーンよりも圧倒的な速さを誇るワイバーンロードの12騎も超高速で飛翔する鉄竜により、あっさりとなす術も無く撃墜されている。

 そして、何よりも懸念すべきことは、そろそろ魔信不感地帯から出るはずの陸戦隊とも、支援攻撃のための戦列艦とも連絡が取れない。

 

「まさか……全滅か!?」

 

 いや、そんなハズは無いと否定したい自分もいるが、現に竜母は壊滅し、ワイバーンロードを落した鉄竜は常識を遥かに超える速さだった。

 

「南西方に未確認艦……いえ、あれは、例の黒い海魔です、黒い海魔が4!!!!」

 

 見張り員から報告があがる。

 

「何!? 例の奴らが来やがったか!!!」

 

 将軍シウスは皇軍に戦闘を指示する。

黒い魔獣。しかし彼は今までの状況から、また、今では半ば本能的に、それらがただの魔獣ではないことを確信していた。恐らくは日本、あの国と何か関係がある。

 

(だとしても、まだ、数において、我が軍が圧倒的に有利だ!!!)

 

 後に、フェン王国の戦いと、歴史上では一括りにされた海戦が始まろうとしていた。




パ皇の言う『砲艦』というのは戦列艦の呼び方が違うだけなのか、他の艦種なのか。
とりあえずここでは、ボムケッチとか、あるいは弾速や装甲貫徹力を犠牲に大口径でありつつ反動を減らしたような砲を舷側に搭載した、対地攻撃に特化した小型の戦列艦やフリゲート、コルベットのようなものだろうと解釈しています。
まぁしばらくはどんな船だろうとすぐやられるのであまり関係はありませんが……

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