国際連邦日本エリア召喚   作:こたねᶴ᳝ᵀᴹᴷᵀᶴ᳝͏≪.O

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19 殺戮者の末路

 その部屋は、全くの灰色をした無機質な部屋だった。

文字通り、何もない、と表現するのが正しいだろう、何もなかったのなら。

その部屋には一脚の椅子が置かれていて、そこにはとある女性が座っていた。

パーパルディア皇国、皇女レミール。日本側からの処断を通告されるところだった。

 

『レミール、応答せよ。』

 

部屋に声が響き渡る。流麗で美しい発音ではあるが、どこか無機質な印象を受ける声だった。

 

「何者だ。」

 

『わたしたちは国連日本エリア地域戦略コンピュータ、および日本国政府国家戦略コンピュータである。その合同意思によって発話中。』

 

「コンピュータ?確か、ムーの大使が言っていた……計算機の塊、だったか。姿を見せろ。」

 

『拒否』

 

「この私に対して、無礼だぞ!」

 

『何がどのように無礼なのか、不明である。』

 

「私という、パーパルディア皇国の皇女に対して、おまえたちのようなものが、姿も見せずに一方的にものを言ってくるのは、無礼だと言っているのだ。そんなこともわからんのか?」

 

『そのような事実はない。』

 

「何?」

 

『あなたに対してこのような形式で発話することが不都合であるとはされていない。また、わたしたちはあなたの発言に対して応答している、よって、一方的ではない。』

 

「なんだと……」

 

『そもそもわたしたちがあなたの前に姿を現し、対面して会話することは不可能である。』

 

「何故だ。」

 

『回答不能、あなたにはそれを知る権限がない。』

 

「くっ……」

 

『あなたは、今回の戦争、およびその直前において、国連加盟国国民を殺害することを主導した。認めるか』

 

「国連加盟国国民?どういうことだ。」

 

『あなたはその全てを日本人と認識していると推測される。』

 

「日本人を処刑した、それがなんだというのだ、私は皇女だぞ、蛮族を……」

 

『質問に回答せよ。』

 

「……主導した、というのが、発案し、命令したということを指すなら、確かに私が主導した。」

 

『あなたの主導したということの定義についての認識は正しい。認めるというのか』

 

「認める。で、どうする? 殺すか?晒し者にするか?貴様らが」

 

『では、我々からの要求を』

 

「私の言葉を遮ろうというのか、無礼だぞ!」

 

『では、我々からの要求を伝え』

 

「無視をするだと!?」

 

『我々にはあなたを発言できない状態におく用意がある。』

 

「くっ……!」

 

『では、我々からの要求を伝える。

我々からの要求は、被害者の回復、及び被害から回復までの時間に1年を加えた期間の被害者とその関係者への帰順である。』

 

「何……?」

 

『回復、とは、傷害の場合はその修復、死亡の場合は蘇生を意味する。』

 

「治療はともかく、蘇生だと?そんなことができるはずがないだろう!」

 

『あなたには、人間を蘇生させる手段の心当たりがないというのか。』

 

「そんなもの、御伽話の中の話だ!」

 

『では、実行せよ。』

 

「御伽話の中の話だと言っただろう!私にできると思うのか!?」

 

『不可能であるというのか。』

 

「ああ、不可能だ。」

 

『可能性は全くない、ゼロであると断言できるのか。その根拠はあるのか。』

 

「それは……」

 

『回答せよ。』

 

「根拠はない、ないが……」

 

『では、捜索せよ。』

 

「は?」

 

『この世界には、我々もまだ完全には把握していない土地も存在する。

また、魔法という技術体系そのものも未知数である。

御伽話、即ち伝承というのは、基となった事実があることも多い。

また、そうでなくとも、実現が不可能であるとは言い切れない。

被害による死亡者の中には生物学的に人間でなくなっている者も居るが、これを蘇生することができないと断言することもできない。

 よって、あなたは蘇生手段を捜索しなければならない。』

 

「そんな……」

 

『捜索については、ある程度は我々も支援する。あなたの命及び機能は保護される。その点について心配する必要はない。』

 

「見つかるわけがないだろう!そんなもの!」

 

『断言することはできない。不可能とする根拠を提示せよ。』

 

「それに、御伽話にある蘇生魔法が見つかったとして、それは自らの命を引き換えにするものだ……」

 

『発見した蘇生魔法がそのようなものだった場合、被害者と関係者への帰順を行う必要はない。速やかに蘇生を実行せよ。』

 

「そんな、そんなことができるか、探せるか!くっ、殺すなら殺せ!」

 

『拒否。あなたへの要求を履行せよ。』

 

「くそ、それなら自害を……」

 

『自殺を行ってはならない。』

 

「私がそれに従うとでも?」

 

『我々にはパーパルディア皇国を破壊することが可能である。』

 

「ぐ……、しかし、皇国臣民は……」

 

『我々には皇帝ルディアスを拷問殺害する用意がある。直ちに実行可能である。』

 

「何!? やめろ、やめろ!!!」

 

『我々はこの行為に積極的ではない。要求を履行せよ。』

 

「くぅっ……!!!」

 

『あなたに行動制限モジュールを組み込む。拒否権はない。』

 

行動制限モジュールは世界的に禁止されている品だったが、特別な事例のための犯罪防止及び自殺防止の機能を持ったものだけは存在していた。

 

後日、レミールは拘禁状態から解放され、要求を履行すべく旅が始まった。




良かったねレミールちゃん、処刑されないどころか投獄すらされなかったよ!
ルディアスさんも皇帝の座に残ったし丁重に扱われているよ!

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