国際連邦日本エリア召喚   作:TOMOKOTA

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20(閑話?) 各所の事情1

「やはり日本は皇国に勝ったな。」

 

クワ・トイネ公国のとあるカフェ、シャークンとブルーアイが話をしていた。

 

「当然、といったところかな。あれだけ恐れられていた皇国ですから、何か隠し玉の大魔導を持っているかもしれないと思ったのですが…… 案外単純なものでしたね。」

 

「魔法もそう便利なものではない、といったところか。

しかし、例の情報を見たか? エモール王国が、日本をVIP待遇したとかいう。」

 

「ああ、貴方も見ていたのか。ええ、空間の占いで日本が古の魔帝に対抗する鍵と出たとかいう。

先方の許可はとっているのでしょうが、他国との外交の席の、こんな重要な話を、私や貴方のような異国人が知れてしまうとは。」

 

「しかも俺は元敵国の、未だに現役の将軍だぞ。まあ、知られるとまずいようなことはちゃんと隠してあるのだろうが。

……エモール側がどう考えたかは知らんが、俺はおそらく、日本が鍵となるというのは直接戦力として、という意味だと思う。」

 

「ええ。私もそう思います。古の大魔法帝国の伝承に残っている兵器たち、たとえば誘導魔光弾なんかは、全て同じようなものが地球に存在していた。しかも、特殊な戦場事情の上とはいえ、今や過去の存在だ。

……日本ははじめ魔帝に対して、無視を決め込むか友好的に接するかもしれない。だが、すぐにでも争いになるだろう。日本側が積極的でなくとも、魔帝の側は地球人に危害を加えるような事態になるはずだ。そしてそうなれば、あのコンピュータたちは容赦はしない。」

 

「ああ。そして、国連軍は魔帝にも勝ってしまうかもしれない。軽く、だ。

それで良いと思っている者も多いだろうが……全て任せきりで良いとは俺には思えないな。

戦う理由が増えた。相変わらず精神的には違いないが、以前よりはずっと具体的だ。」

 

「この世界の全ての人類、あるいは生き物に対する脅威である魔帝との戦いを全て地球に任せきりにして戦わずにいるということは、自分たちの領域を守ろうとせず他者に委ねる、地球人類やそのコンピュータたちにこの世界を明け渡す、ということに等しい。これを国土に例えて考えるなら、全く精神的な問題ではありませんよ。現実的な大問題です。

それに加えて、自分たちにとっての脅威への対処、自分たちの世界を守ることを、よその存在、それも友にはなれない無機質で異質な存在に任せきりにするのは認めがたい、というのもあるのでしょう。これも、わかります。」

 

「そうだな。まさしく、俺が言いたかったのはその通りだ。

コンピュータたちは地球人の道具だ。騎士が槍で戦ったとして、敵を攻撃するのは槍だ。

では槍が戦っているのかというと、違う。戦っているのは騎士だ。

これは弓矢でも、罠でもそうだ。罠がいちばん近いかな、そういう理屈で考えれば、コンピュータたちが戦うのは地球人自身が戦うことだともいえる。コンピュータたちが地球人たちに忠実なのだから、それで問題はない。許可を出しているのは地球人だしな。地球人には戦っている自覚はないだろうし、それは問題なのだろうが、そうした問題にまで構えるほどの余裕はない。

コンピュータたちは俺たちの道具ではない。任せきりにはしておけない。」

 

「その通りだと、私も思う。あの異質さを体験すれば、そう思わずにはいられない。

して、どうするのです?」

 

「そこなんだ、問題は……」

 

シャークンは額に手を当てて、続ける。

 

「こうした考えを他の連中に話したとしても、同じ考えを持ったやつはそう多くはないだろう。

啓蒙家をやるような暇も能力もない以上、俺たちやこれから加わるかもしれない少数の仲間だけでやるしかない。

だが俺たちだけで、地球のコンピュータたちに俺たちを失うのは惜しいと思わせ、魔帝やなんかの脅威に対抗するのにおまけでなく参加することができるような、何かができるのか?

ましてや地球軍には、欠けているものがあるとは思えん。

地球の力を借りるのは構わんのだから、地球の製品を使っていけばある程度の力はすぐにでも手に入るのだが、地球の民間人と同じだけのものがあったところで、目的を達成できはしないだろう。」

 

「……そのことなのですが、面白い情報があります。確実なものではないのですが……」

 

「何だ?」

 

「以前、日本がトーパ王国の要請を受けて、国連軍が魔王退治に行った時です。その様子に興味があって、観戦させてくれないかと頼み込んだら、旅行代を支払うのならば受け入れはする、としてくれたんです。

我が国も支援をしてくれまして、ちょっとは自腹も切りましたが、行くことができたんです。」

 

「ほう、頼めば受け入れてくれるのか…… それで?」

 

「魔王やオーガ、エンシェントカイザーゴーレムなどの伝説上の存在が本当にいまして、確かに凄まじかったのですが地球の戦闘機が割とあっさりやってしまいました。いえ、間違いなく驚異的には違いないのですが…… いや、それはいいでしょう。

その時、魔王が、炎殺黒鳳波という技を放ったんです。闇の魔力を多分に含んだ、黒い炎の攻撃、といったところでしょうか。今の我々の魔法技術とはかけ離れていてよくはわからなかったのですが、とにかくその時、地球の戦闘機の回避が少し遅れたんです。」

 

「何?」

 

「遅れた、といってもひらりとかわしてはいたんですがね。

他の攻撃や、あるいは地球での戦争やロウリア、パーパルディアとの戦争の資料映像を見ても、攻撃の予兆を見せたときや狙いを付けた時など、攻撃が放たれる前にはすでに回避行動に入っていました。しかし炎殺黒鳳波については、放たれた攻撃を見てから避けているような避け方でした。魔王は魔力が目に見えるほど魔力を集中させていましたから、狙いがわからなかったのでしょうね。しかし、地球での戦争の資料映像からして、実体弾の攻撃を発射された瞬間に、可視光以外の様々な手段も使って捉えて回避行動に移ることができるはずなのに、それらのタイミングよりも遅かったのです。

 地球の機械のシステムの中に直接魔道具を組み込む方法もいまだに開発されていないようですし、電子機械は魔導に関するものと直接繋がる形での相性が悪いだけでなく、それを感知するのにも弱いのかもしれません。

 そして、中央世界の方には、光線魔法というものがあると聞きます。詳しいことはわかりませんが、レーザーと同質のものであれば、見てからでは回避はできないかもしれません。

それに少なくとも、魔道具をコンピュータシステムに組み込めない、接続して入出力ができない、ということは、魔法技術の塊に対してハッキングや電子攻撃なんかを仕掛けることはできないということでしょう。そういった戦いは現代地球軍の基本中の基本だというのに」

 

「……なるほど、地球軍と同じ土俵で対等になろうとするのではなく、コンピュータの弱い魔法技術に特化して、足りない部分で支援してやる、ということか。例えば、敵方の光線魔法の予兆を察知して警告を出したり、魔法版の電子戦攻撃のようなものを行って作戦を支援するといった。

 地球人は魔法を使えないようだし、我々独自のできることかもしれんな。」

 

「確実な情報ではありませんし、これから先もコンピュータたちがそれをできないとも限りませんが……」

 

「いや、十分だ。ひとまず進むべき方向が見えたんだ。

……しかしここで問題は振り出しに戻ってしまうな。俺達だけで何ができるのか……

ひとまずはできることをするしかないか。母国の仕事もある。

新しく入ってきたものに目を向けるばかりではなく、魔法を磨くこともしていこう。」

 

 

 

 クワ・トイネ公国のとある山中、一機のプロペラ機がエンジン音を響かせながら飛んでいた。

零式艦上戦闘機二一型。しかし、見るものが見れば、全体の印象は同じでも、細部が全く異なることがわかるだろう。響かせている音も全く違う。現代的な、モーター音が大部分を占める音だった。

 その機体は、クワ・トイネ公国、リーン・ノウの森のエルフの言葉でゼロを意味する言葉、『ナル』と名付けられた戦闘機だった。

リーン・ノウの森で眠っていた太陽神の使いの浮船が、かつて地球、日本の戦闘機であった零式艦上戦闘機であった、ということは公開された情報となり、すぐに知れ渡った。

日本は太陽神の使いの末裔であった。太陽神の使いの浮船は日本の戦闘機、『ゼロ戦』であった。

 

クワ・トイネ国内での日本、特に『ゼロ戦』人気は急速に高まり、日本エリアからの兵器輸入に際して、『ゼロ戦』を輸入しようという声は大きかった。

 政府はそこまで極端ではなかったものの、零式艦上戦闘機のスペックであってもパーパルディア皇国のワイバーンオーバーロードを圧倒するものであり、兵器の主な任務となる賊対策や自衛のための抑止力としては十分すぎるものだった。

よって、日本側に零戦の輸入の打診が行われたのだが、現代地球において、第二次世界大戦時の戦闘機、特にそのレシプロエンジンを再生産するための設備など存在せず、いくつかの技術はロストテクノロジー状態。さらには設計図や三面図もすぐには出てこない。

 地球における過去の様々な製品たちは、一度大規模アーカイブ事業によって集積され、電子データ化されていたのだが、とりあえず保存することそのものが目的であったため、全くの未整理の状態であった。ここから零戦の必要な資料を発掘し集めることは国家、国連のコンピュータですらも多少は骨の折れる作業であり、魔法などの全く未知数の存在が多数存在する異世界への転移によって、今後の日本、および周辺島嶼の身の振り方のために演算を行っていたコンピュータ群は、地球人の要請であれば拒否はしないものの極めて消極的であった。

 しかし、ここで、零式艦上戦闘機を完全に再現する必要はない、という意見が出る。

要するにクワ・トイネの人々の零戦への憧れを満たせればよいのだから、大体同じであればよい、と。

 

その方向性で開発することが決まった。ちょっとした兵器の開発程度なら、地球の大規模コンピュータシステムにとっては造作もないことだった。

リーン・ノウの森にあった零式艦上戦闘機を外部からのスキャンでモデル化し、国内に少数あったすぐに手の届く資料から大体の零戦の情報を得た。

エンジンはレシプロエンジンを再現することはなく、地球で主流となっていたコンデンサと電気モーターを採用。

 装備する武装も、7.7mm2門と20mm2門であるところは同じだが、いずれもレールガンだった。この電力までもを機のコンデンサから供給すればすぐに燃料切れとなってしまうため、レーザー砲のものを応用した使い捨てコンデンサを弾丸とセットとして弾とするシステムだ。

機体下面にはコンデンサを格納する増槽や400kgまでの無誘導爆弾、あるいは現在用意されているものとしては、竜騎士から転向した者に扱いやすいように弾道や炸裂などの特性の近い40mmレールガンポッドと、とにかくコストを下げることを考えた低機能多目的ミサイルが装備できた。

 ミサイルの管制用も兼ね、機内にはアビオニクスとしてタブレット端末を転用したディスプレイが一台。性能は2020年程度の水準であるが、十分すぎるほどだった。現代であれば枯れた技術たるそれには軍用航空機のアビオニクスとして十分な信頼性があったし、軽量で零戦にも載せられた。機内に配線を張り巡らせているわけではないので機関砲の残弾数や機の損傷状態、過熱や残燃料まではわからないが、現在の速度や高度、マップの表示、位置情報の表示、味方とのやり取りや司令部からの指示の表示、前方向きのカメラを使ったズーム機能に高機能な照準器など、WW2当時の水準を圧倒するアビオニクスとなっていた。

 

 積載量や取り回しを優先して最高速度は零戦よりは下がり411km/hほどであるものの、全く同じ機体形状のため、飛行特性などは零戦とほとんど変わらない。

原型機を圧倒するアビオニクスとあらゆる状況で安定して動作するエンジン、高精度な機銃、低機能とはいえミサイルを装備可能など、総合的な作戦能力では原型機を凌駕する戦闘機となった、100年以上の時を経て、異国向けに開発された、零戦の発展型。それがナル戦闘機であった。

 

 そんなナル戦闘機は現在、山賊対処の任務を帯びてクワ・トイネの山中上空を飛んでいた。

クワ・トイネ公国軍所属。WW2当時の旧日本軍の零戦、1943年ごろ以降のものと同じ、上面を緑、下面を白で塗った塗装。だだし、緑は原型機の塗装よりも明るいもので、白は少しくすんでいる。クワ・トイネ公国旧来の技術で塗られたものであるため、国産の自然由来の塗料の色が出ている。日の丸を塗ることは誤認のもとともなるため、白い円の縁だけが残され、その中にクワ・トイネの国章がある。

 山賊程度に対処するにはこの機は過剰だと思われるかもしれない。しかし、山中に逃げ込んだ山賊に対しては航空機でなければ対処は難しいし、けれどもワイバーンでの導力火炎弾や火炎放射の攻撃では山火事を起こしかねない。

目標の山賊は火喰い鳥を運用しているとの報告もある。事実であれば、陸戦部隊のみでの対応は危険だった。

ナル戦闘機のパイロットは時折ロールして下方も確認。火喰い鳥を見つけた。

まず魔信で呼びかけ、続いて搭載されたスピーカーをつかって呼びかける。反応はない。

横に付けようとすると、逃げるような素振りを見せ……急にこちらに騎首を向け、火炎放射で攻撃してきた!

 パイロットは司令部と魔信でのやり取りを行い、攻撃の許可を得る。

流石の零戦とはいえ、低速の鳥を相手に至近距離ですぐ攻撃態勢に入れるほどの運動性能はない。まずは上昇。火喰い鳥は全くついてこれない。攻撃は諦めたのか、急降下して逃げの姿勢に入る。

ナル戦闘機は反転、急降下。同じく急降下する火喰い鳥に軽々と追いつき、パイロットのトリガーによって、機首の7.7mm機銃が発射される。

独特の低周波音を伴って連射された機銃弾が、火喰い鳥に命中。火喰い鳥はズタズタに引き裂かれて墜落していく。

その位置をタブレット端末を使って送信したパイロットは、地上の山賊の捜索に戻る。

 その後、発見された山賊たちとそのアジトは、ナル戦闘機による機銃掃射で壊滅した。




思ったより長くなったので2つに分けます。

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