これからも更新ペースは落ちると思います。許して?
ムーラさんやパ皇の見せ場がなくなってしまったのは申し訳ないが、VTOLワイバーンが必要なかったのでどうにも。
原作通りで行くと展開も変わらなくなっちゃうし、仕方ないね。
竜の伝説 1
カルアミーク王国 王都アルクール 西側約10km 森の中
以前から国家が存在することが確認された、山と絶壁に囲まれた土地。
そこの国家のうちの一つであるカルアミーク王国と国交を結ぶべく、日本エリアから使節団が派遣されていた。
団、と言ってもその数はごく少ないものだし、何と言っても人間がいなかった。
地形的な要因から外務省の人間が向かうことは簡単ではなかったし、何よりパーパルディア皇国などの例から、いきなり人間を派遣することにコンピュータが反対していたのである。
森の中に、微かに甲高い音を立てて一機のヴィークルが降下する。
ローターのないヘリコプター、あるいは宇宙船のような印象を受けるその機体は、もっぱら民間で運用されるような輸送用航空機、それに軍用のコンピュータシステムやある程度の武装を施したものである。
推進器が存在しないように見えるが、実際には内部に電動のリフトファンが存在し、各部の弁を開閉して空気を噴出、スラスターとすることで姿勢制御を行っている。当然無人機。
ごく低空に降下したその機から、一人の人間が飛び降りた。完璧な三点着地で音もなく着地。着ているスーツを軽く払うと、ついていた汚れはすぐに落ちる。
"それ"は、正確には人間ではなかった。民間向けの人間型アンドロイドの筐体を流用した、外交を行うためのロボット。
その動きは流麗で、決してぎこちないものではなかったが、あまりにも流麗すぎ、合理的に過ぎる印象を受ける。人間に馴染むよう作られたわけではない、国家運営用や軍事用のコンピュータシステム故のことだった。
もちろん、民生品のプログラムを使って、人間同様の動きを行うことも可能だったが、しかし、未知の土地へと派遣される以上、ある程度の戦術運動能力を備えている方が良いとの判断で、軍部コンピュータシステムによってプログラムが作成されたのである。
男性型の"彼"が乗ってきたヴィークルは、少し移動して比較的開けた場所に降下、着陸する。と、武骨な黒色塗装のその姿がかき消えた。
ホログラム技術を使用した光学迷彩だ。何の設備もないただの空気や機体に対するそれは、目の良いものがよく見ればばれる程度のものだったが、十分だった。
「こちらTT-1、目的地に到着」
<こちらNDC、TT-1、了解。外交作戦行動を開始せよ。>
「TT-1、了解。」
TT-1……今回彼に与えられた仮名、タナカ・タロウから取られたコールサインだが、その彼はカルアミーク王国と外交関係を結ぶべく、町へと向けて歩き出す。
いきなり外交を行うのではなく、まずは偵察活動だ。この地域の超高高度からの景色はあまり見通しが良いものではなく、カルアミーク王国の文化、体制や状況等については、超高高度からの光学・音声偵察だけでははっきりしていなかった。
偵察の結果得られた文化などから外交活動のためのプランを練り、あるいは危険性の低い国家であれば、TT-1よりもより自然である、人間の外交官などを送る判断をするのだ。
TT-1は、整っていない山中にしてはあまりに滑らかで綺麗な、そして早足の動きで歩き出していたが、その時。女性の悲鳴が聞こえてきた。
TT-1は聴覚モジュールの情報からほとんど正確にその方向を割り出し、そちらを向いていた。彼の筐体にマイクは二つも存在するのだ。音の方向を割り出すことは、彼のような――今は彼しか存在しないのだが――外交官の能力のひとつだった。
国家・国連コンピュータシステムと同様に彼を見ていた政府の人間から、救助すべきだという意見が上がった。もしもカルアミーク王国の人間であれば、恩ともなり得るとの理由が加えられる。
NDCもそれに同意、しかしこちらはより慎重であった。何よりもまず確認することとなり、TT-1は陸上選手のような美しいフォームでそちらへと駆けて行った。