国際連邦日本エリア召喚   作:TOMOKOTA

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そもそも転移後世界に鯨っているんでしょうか


8 無感動な紛争

「あれが日本の戦船か……まるで鯨だな」

 

 剣王シハンは正直な感想を洩らす。

 

「いやはや、ガハラ神国から事前情報として聞いてはいましたが、これほどの大きさの金属で出来た船が海に浮かんでいるとは……」

 

 騎士長マグレブが同意する。

 

「私も数回、パーパルディア皇国に行った事がありますが、これほどの大きさの船は見た事がありません」

 

 彼らの視線の先には、国連軍の戦闘艦が5隻浮かんでいた。

 

「それに、あの……飛竜でいいのか? あれは。戦船といい、なんとも奇妙だ。しかし凄まじい。」

 

「剣王、そろそろ我が国の廃船に対する日本の兵器からの攻撃が始まります」

 

 剣王シハン直々に、日本の外務省に頼んだ

 

〔日本の力を見せてほしい〕

 

その回答が今出る。

 

 戦闘艦のさらに沖合いにフェン王国の廃船が4隻、標的船として浮かんでいた。

 距離は戦闘艦から2km離れている。剣王シハンは望遠鏡を覗き込む。

 まずは1隻だけで攻撃を行うらしい。

 

 日本の船から僅かな光と煙が吹き出る、僅かな時間の後、音が聞こえる。

 

 1度の轟音。

 直後、標的船に内部からあふれ出すような光が発生し、船は粉微塵となって海に溶けていく。

 続いて2度の轟音、その場で静止して向きを変えながらの高速射撃。別の標的船2隻が粉末と化す。使用した砲弾は、防御性能の低い敵艦に対しより効果的となるように貫通力を落とした新型砲弾だった。

 

 続いて航空機隊からの攻撃。航空機隊が装備しているのは、新たに生産された無誘導爆弾だった。

 機の電子戦能力とは別に、対艦攻撃用の爆弾だけは元々配備されていたのだが、分子単位で高い防御性能を発揮するよう組み上げられた戦闘艦の装甲を抜いて内部のコンピュータシステムにダメージを与えるよう設計されたそれは、有人仕様の木造船相手には過剰火力かつ効果的でないとされて保管されたままだった。

新生産のこの無誘導爆弾は、製品を"プリント"することのできる地球型工業においては極めて単純な構造をしており、なんと信管すら備えておらず、他の兵器からの起爆指示波の照射を受けて雷管を起動し起爆する。コンピュータシステムではなく、もっと原始的な、物理的構造による仕組みで、敵からの反撃を警戒して母機が素早く退避する必要のない、戦術戦闘能力上の圧倒的格下を相手にすることを前提としたコストカットであった。

 航空機隊は2機が編隊を保ったままに垂直上昇し、反転降下、急降下の勢いを乗せ、機の姿勢を僅かに変化させつつ爆弾投下、引き起こし。ねじれた翼によって回転しより高い精度を持った爆弾は狙い違わず命中、標的船全体に散らばって命中し焼き尽くす。同時に低空飛行で水平に接近して来ていた2機のリリースした爆弾が喫水線に命中。ボロボロになった木造船は、材質故に浮かんでは居たが、ただの廃材の塊同然だった。

水平飛行したまま急上昇した航空機隊は編隊を組み直して緩やかにターン、引き返し、再び艦隊上空を集会し始める。

 

「……これは……声も出んな……なんとも凄まじい。」

 

 剣王シハン以下フェン王国の中枢は、自分たちの攻撃概念とかけ離れた威力と機動を目の当たりにし、唖然としていた。

 1隻からの攻撃で、3隻をあっさり沈める。しかも、とてつもない速さの連続攻撃で沈めた。飛竜らしきものも、爆裂する物体を運搬し落としていたし、極めて精密な攻撃だったように見える。

列強パーパルディア皇国でも、そんな芸当は出来ない事をここにいる誰もが理解している。先ほどの攻撃で集団で取り掛かったのがただの演出であり、あのうちのどれか一つだけでも4隻を即座に沈められたであろうことも。

 

「すぐにでも、日本と国交を開設する準備に採りかかろう、不可侵条約はもちろん、出来れば安全保障条約も取り付けたいな……」

 

 剣王は満面の笑みで宣言した。

 

 この場に存在する地球型兵器システムたちは、西側から近づく飛行物体を検知した。時速にして約350kmで、20機ほどが近づいてくる。

 1隻だけの白い船、日本国政府所属の客船に乗り込んでいる人員にも通達がなされる。

 

「西には、パーパルディア皇国という国があったな」

 

「はい」

 

「フェン王国の軍祭に招かれているのではないのか?」

 

「とは思いますが……一応確認をします」

 

 その飛行物体はフェン王国首都アマノキ上空に至ったが、王国からの返答は無かった。

 

 

 

 パーパルディア皇国 皇国監査軍東洋艦隊所属のワイバーンロード部隊20騎は、フェン王国に懲罰的攻撃を加えるために、首都アマノキ上空に来ていた。

 軍祭には文明圏外の各国武官がいる。その目前で、皇国に逆らった愚か者の国の末路はどうなるか知らしめるため、あえてこの祭りに合わせて攻撃の日が決定されていた。

 これで、各国は皇国の力と恐ろしさを再認識することだろう。そして逆らう者の末路、逆らった国に関わっただけでも被害が出ることを知らしめる。

 

 ガハラ神国の風竜3騎も首都上空を飛行している。

 風竜が皇国ワイバーンロードを見ると、ワイバーンロードは、不良に睨まれた気の弱い男のように、風竜から目を逸らす。

 

「ガハラの民には、構うな。フェン王城と、そうだな……あの目立つ白い船に攻撃を加えろ!!」

 

 ワイバーンロードは上空で散開し、隊を2つに分けフェン王国王城に向けて急降下を始めた。

 

「何のデモンストレーションだ!?」

 

 誰もが疑問に思った時、急降下していた竜が口を開け、口内に火球が形成され始める。

 

「なんだと!?」

 

 次の瞬間、10騎のワイバーンから放たれた火球は、王城の最上階に着弾し、木製の王城は炎上を始める。

 

「本船に向けワイバーン10騎が急降下中!!!」

 

 日本政府客船の艦橋で悲鳴にも似た報告が上がる。

 

「いかんっっっ!!!!!!!」

 

 次の瞬間、パーパルディア皇国の皇国監査軍東洋艦隊所属のワイバーンロード10騎は、直下約500m付近に停泊中の日本政府客船に向かい、導力火炎弾を放出した。

 

 客船は攻撃を仕掛けられたことの認識し、その操舵手が指示を出すよりも速く、艦のシステムが自動回避を始める。

 しかし、政府の外交用かつ小型とはいえ客船の脚では全てを回避することはできない。

その時、客船に大きな影が差した。直上、海面から跳ね上がった戦闘艦がその艦体で客船を庇っていた。

戦闘艦に火炎弾が着弾。粘性を持った弾体はそこで燃え続けるも、客船の上を通り過ぎて着水した戦闘艦が水中に潜ったことで火は消えた。

 

 ドーーーーン・・・・

衝撃。着弾のものではなく、戦闘艦の着水によるものだった。

 

「ぐっ……!」

 

それによって起こった波により、客船は激しく揺さぶられる。

戦闘艦の規模と激しい着水からすれば異様に小さい波ではあるのだが、それでも間近に受ければ十分に大きい。艦体全面の表面を微細に制御することによるアクティブ整流・消波システムといえども、完全なものではなかった。

 

「船のコンディションは!?」

 

「オールグリーン!」

 

「最大船速へ、逃げるぞ!」

 

『こちらNTC-15、未確認機を敵性と断定。反撃を行う。確認を。』

 

「確認した!こっちにも何か護衛をつけてくれるか?」

 

『戦闘艦が2隻、貴船を護衛する。』

 

 

「何!! 何だ、あれはぁ!!?」

 

 急降下から、水平飛行に移行したワイバーンロード10騎は、突如割り込んで来た奇妙な水上物体に驚愕する。自分たちの攻撃は全て受け止められたうえ、受け止めたそれは全く堪えた様子もない。

 

「黒い……鯨? まさか、海魔だとでも言うのか!? 文明圏外国が……」

 

その目の前に、真っ黒な飛竜らしきものが現れる。水上の奇妙な海魔らしきものと似た趣を持ったそれは、ワイバーンと同程度の速度で、鈍い動きで、時々よろめきながら飛んでいる。

 

「何だか変わった見た目だが、大したこともない、しかも竜騎士は素人のようだなぁ!」

 

パーパルディア皇国の竜騎士はその獲物に狙いを定める。

その正確な狙いと、それを可能とする安定した飛行は竜騎士の高い練度、そしてワイバーンロードの高性能をうかがわせた。

 しかし、それがいけなかった。

真下、その場で航空機のコブラ機動のように真上を向いた戦闘艦の方向が、竜騎士たちを狙っていた。

地球の航空機、CP-237は突然そのふらふらした飛行を微動だにしない安定したものへと変え、機敏な動きで離脱していく。

 

「何?」

 

誘われていた。そのことに気付く間もなく、高速で連射される艦砲の精密射撃でもって、ワイバーン隊は大空に散った。過貫通によって粉々にされることなく、原型をとどめたままに海へと落ちていくのは、彼らにとって幸だったのか不幸だったのか。

同じような光景が、海の別の場所でも繰り広げられていた。

 

 

 剣王シハン及びその側近たちは、開いた口が塞がらなかった。

 ワイバーンロードは、間違いなくパーパルディア皇国のものだろう。

 我が国がワイバーンロードを追い払おうと思ったら至難の技だ。

 1騎に対して一個武士団でも不足している。そもそも、奴らは鱗が硬く、弓を通さない。

 

 バリスタを不意打ちで直撃させるか、我が国に伝わる伝説の剛弓、「ライジョウドウ」を使うしか無いが、ライジョウドウは硬すぎて、国に3名しか使える者はいない。

 戦闘態勢にあるワイバーンロードを仕留めるのは、事実上不可能に近い。

 文明圏外の国で、1騎でもワイバーンロードを落とすことが出来れば、国として世界に誇れる。

 我が国は、ワイバーンロードを叩き落すことが出来るほど精強であると……

 

 それを、日本の奴らは、いともあっさりと、怪我をして動けなくなったハエを踏み潰すかのように、自分はほとんど怪我を負わず、列強の精鋭、ワイバーンロード竜騎士隊を20騎も叩き落してしまった。

 

 日本は、文明圏外の武官が集まっている軍祭で、各国武官の目の前で、各国が恐れる列強パーパルディア皇国の精鋭ワイバーンロード部隊を赤子の手をひねるように叩き落とした。

 歴史が動く、世界が変わる予感がする。

 

 ワイバーンロードは、おそらく自分たち、フェン王国への懲罰的攻撃に来ていたのだろう。

 日本をこの紛争に巻き込めたのは、天運ではなかろうか……

 剣王シハンは、燃え盛る自分の城を、笑いながら眺めていた。

 

 

『すごいものだな……あの船や竜は……』

 

 風竜は感嘆の声をあげる。

 

『戦っている間、人間にとっては不可視の光で常に互いにやり取りをしている。奴らの行う連携の類は、全てが偶然ではないだろうし、事前に計画されたものでもないかもしれない。

あの船は、トカゲどもに光を浴びせ、船はそこから反射する光の方向を向き、トカゲどもの飛行する未来位置に向かって撃っている……あの船が技術の塊なのは見ただけでわかるだろうが、あれは見た目以上だな』

 

「そ……そうなのか?そんなにすごいのか!?」

 

『古の魔法帝国の伝承にある、対空魔船みたいなものだろう』

 

「ゲ……そんなにすごいのか……。帰ったら報告書が大変だな」

 

 上空では、ガハラ神国の風竜騎士団長スサノウと風竜の間で、そんな会話が行われていた。

 

 

 パーパルディア皇国、皇国監査軍東洋艦隊竜騎士のレクマイアは、フェン王国懲罰の命など簡単な仕事だと思っていた。

栄えある列強パーパルディア皇国のワイバーンロード部隊にかかれば、フェンのような蛮族の国など、自分1騎で1個騎士団を相手にしてもおつりが来る。

 

 軍祭などという、各国武官や船まで招いての祭りが行われているのであれば、蛮族どもにパーパルディアの力を再認識させる機会にもなる。

 フェン国などというパーパルディアに反目する国の祭りに参加していると、痛い目を見るということを解らせるために、目立つ白い船を狙った。

 

 しかし、必中距離で放った導力火炎弾のほとんどは奇妙な鯨のような海魔によって受け止められた。

 

 自分はその直後、真横を通過していった凄まじい速度の真っ黒な飛竜らしきものが起こしていった風と衝撃波に煽られて海へ落下し、海上から上空を見上げたところ、仲間たちはさらなる悲劇にみまわれていた。

 

 仲間たちは、他の海魔から放たれた大砲らしき攻撃によって、木っ端微塵に吹き飛ばされていた。

 

 大砲が空を飛ぶ物に当たるということも理解しがたい現実であるし、

あの海魔の動きも凄まじいものだ。それに、動きがどこか機械的だ。

まさかあれは船なのだろうか?

この世で自分たちの敵となりうる存在は、列強しか無いと思っていたが、自分たちがなすすべもなく破れた相手に興味も持った。

 彼は海に浮遊中、自分が攻撃した白い船に浮き輪を投げられ救助された。

 

 

 

「竜騎士隊との通信が途絶しました」

 

その通信士官の報告にパーパルディア皇国監査軍東洋艦隊に衝撃が走る。

 

「いったい何があった……」

 

 提督ポクトアールは嘆きたくなった。いやな予感がする。しかし、これは第3外務局長カイオスの命である。

 国家の威信をかけた命である。

 実行しない訳にはいかなかった。

 

 皇国監査軍東洋艦隊22隻は、フェン王国へ懲罰を加え、また、今回ワイバーンロードを倒した皇国にたてつく者を各国武官の前で滅するために、風神の涙を使用し、帆をいっぱいに張り、東へと向かった。


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