死に憑かれた少女の鬼滅譚   作:清内

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夜鈴家

小さい頃下の兄弟達と遊んでいて部屋に飾ってあった刀を弟が蹴飛ばしてしまった事がある。それを見た母様は顔を青ざめさせたと思えば次の瞬間には私達に重い拳骨を頭に一発ずつ食らわせ顔を真っ赤にした。

 

この刀は亡くなった貴方達お爺様の形見。誇り高く生き抜いた証なのです。それを足蹴にするとは何事ですか‼︎

 

そう言った母様は拳骨で涙目になっている私達を正座させ恐ろしい鬼とそれを斬る鬼狩り様、そしてその鬼狩り様を陰ながら支える私達夜鈴家について話し始めた。

 

祖母と父が止めに入る頃には足が痺れ暫く立てず芋虫のように畳の上でのたうち回っていた。

 

 

その事があって以来下の兄弟達は刀に近づくと母様に叱られると思ってしまったのか刀が飾られている部屋に入るのを大層嫌がるようになてしまった。

 

だが私は逆に趣味の本や琴を持ってきては部屋に入り浸り過ごす事が多くなった。

家族は不思議そうに首を傾げていたがなんだかこの刀の近くにいると守られているような雰囲気がするのだ。

母様の話しでそう思い込んだのかもしれない…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「凪(なぎ)姉様ー‼︎」

 

ぱちり

 

瞬き一つ。長い間酷使していた目は乾いて痛い。

 

「凪姉ぇ!…あ‼︎やっぱりここにいた‼︎」

「ほら練(れん)‼︎最初からここに来ればよかったのよ‼︎あっちこっち探し回ってさ‼︎もうへとへとぉ」

「う、うるさいな鳴(なる)姉‼︎」

 

目元を揉んで痛みを逃しているとスパンと気持ちよく襖を開た弟の練とその練に小言を垂れながらも少し息が乱れている妹の鳴が現れた。

 

「ん、どうかしたの?」

 

パタパタと駆け寄ってきた2人に開いていた本を閉じ体ごとそちらに向けると2人は私の羽織を引っ張ってにぱっと顔を綻ばせた。

 

…可愛い。

 

「晋(しん)兄帰ってくるって‼︎」

「‼︎ほんと⁉︎」

 

練の言葉に思わず本を取り落として目をまん丸にした。

 

兄様が帰ってくる…。前に会えたのは一月くらい前だったっけ…

 

「あ、兄様はいつ帰るって?」

「明後日よ」

「尚(なお)姉様!」

「姉様」

 

興奮気味に詰め寄ると開けっぱなしにしていた襖からひょっこりと姉の尚が顔を出した。

 

「ふふっさっきお父様宛にお便りがきてね、急だけど休みがとれたらしいのよ。それを聞いて練ったら凪姉に知らせて来るぅ〜‼︎って走り出しちゃうのよ。」

「なっ⁉︎俺そんななよっちい声出してないよ‼︎」

「凪姉に知らせて来るぅう〜‼︎」

「真似すんな鳴姉‼︎‼︎」

「ふ、ふふっ!」

「凪姉も笑うなよぉ‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

「でもね」

地団駄を踏み始めた練の肩にそっと手を置く尚。

笑いあっていた私達は声色の変わった姉に笑うのをやめそちらを向いた。

 

 

「お兄様のお仕事は鬼を斬ること。私達がこうやって暮らせるのもお兄様や鬼狩り様が命懸けで戦ってくれているおかげなのよ。」

「姉様…」

 

 

 

鬼…陽の光に嫌われ人を食らう化け物。見たことはないけどとても恐ろしいのだろう。…兄様は大丈夫なのだろうか、怪我はしていないだろうか。

 

「…だから帰ってきたらうんっっとゆっくりしてもらいましょ!お兄様がまた頑張れるように私達が支えるの。いい?特に鳴と練?嬉しいからってはしゃぎすぎてお兄様を困らせてはダメよ?」

「なんで私も⁉︎練みたいにお子ちゃまじゃないもの‼︎迷惑かけないわ‼︎」

「俺はお子ちゃまなんかじゃない‼︎」

「ふふっ私からしたら2人とも子供よ。もちろん凪もね」

 

ふわりと姉様のきめ細やかで綺麗な手が私の頬を撫でる。2回、3回と繰り返されるうち自然と体の力が抜ける。

いつのまにか体が強張っていたようだ。

 

「大丈夫。お兄様はとってもお強いの。凪も知ってるでしょ?無事にかえってくるわよ。」

「…うん、そうだよね。…ありがと姉様!」

「ふふっ、どういたしまして!」

 

一層にこっと笑った姉様に私もつられて表情が緩む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

兄様、すぐ帰ってきてとは言わないから無事に帰ってきてね。

 

 

とうとう口喧嘩から追いかけっこに発展した鳴と練。騒ぎ回っても刀に寄り付かない2人にクスリと笑って止めに入った。

 

 

 

 

 

 

 




夜鈴 尚(よすず なお)
17歳
・夜鈴家の長女
・おっとりした性格で年々言うことが母に似てきた
・お上品な口調でいつも微笑んでる
・兄を尊敬し、夜鈴家に誇り思っている

夜鈴 鳴(よすず なる)
8歳
・夜鈴家の三女
・お転婆でおませさんなツンデレ
・弟の練とは年が近いこともあってしょっちゅう喧嘩をしている

夜鈴 練(よすず れん)
7歳
・夜鈴家次男
・頭で考えるよりも体が先に動くタイプ。その反面人見知りが激しく初対面では借りてきた猫のように大人しい。



名前の由来
夜鈴家の人間は皆名前が一文字

晋→すすむ、とも読む。前へ前へと進んで欲しいという意味で名付けられた

尚→何事も大切にする優しい子という意味で名付けられた

凪→どんな時でも穏やかに過ごして欲しいという意味で名付けられた

鳴→思いやりのある心の広い子という意味で名付けられた

練→何度くじけても立ち上がるという意味でで名付けられた





設定考えるととたまんなくなりました。
この時凪の年齢は10歳です。
下の子達がお転婆すぎるため10歳のくせに落ち着きのある子に育ちました。

そしてややこしいですが家族の呼び方。

尚→お祖母様、お父様、お母様、お兄様

凪→婆様(ばばさま)、父様(ととさま)、母様(ははさま)、兄様(あにさま)、姉様(あねさま)

鳴→お祖母様、お父様、お母様、晋兄様(しんにいさま)、尚姉様(なおねえさま)、凪姉様

練→婆様、父様、母様(かかさま)晋兄、尚姉、凪姉、鳴姉


主人公にあにさまって呼ばせたくて色々考えてしまった。







大正コソコソ噂話

凪は「ん」と返事をする事がが多いんだって‼︎

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